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【2024年】介護報酬改定をわかりやすく解説!注目ポイントと対策を紹介します!

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2024年には介護報酬改定が実施される予定です。次回の介護報酬改定に向けて、今やっておくべき対策を知りたい方も多いのではないでしょうか。

この記事では、2024年介護報酬改定の動向と対策について具体的に解説します。この記事を読むことで、介護報酬改定のスケジュールや、今すぐやるべきことがわかります。

 

2024年の介護報酬改定はいつ行われる?大まかなスケジュールを紹介

厚生労働省の公式サイトでは、2024年介護報酬改定へ向けた大まかなスケジュールが公開されています。

厚生労働省の資料「令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」によると、2023年の6月に主要な論点の議論を開始し、9月には事業者団体からヒアリングを実施する予定となっていました。

2023年10月時点で、関係事業団体からのヒアリング結果が公開されているので、おおむね計画通りに進んでいるものと思われます。

今後の計画として、2023年10月から12月には具体的な方向性についての議論が行われ、12月中には報酬や基準に関する基本的な方針がまとめられる予定です。そして、2024年1月には介護報酬改定案が諮問・答申されることが予定されています。

例年通りであれば、1月に開会される通常国会で法案を提出し、報酬告示の公布は通常3月であるため、介護事業所は4月までの短期間でサービス内容や事務の変更に対応する必要があります。また、都道府県によって対応は異なりますが、介護報酬改定による加算や運営規定の変更などは、4月〜6月中に提出することになるでしょう。

年末に向けて全体の方向性がまとめられていくため、今後厚生労働省から発表される内容は、かなり重要な情報です。年明けからスムーズに動き出せるように、今から情報を集めて準備しておきましょう。

参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」

2024年介護報酬改定の大まかな方針について解説

厚生労働省の資料「介護分野の最近の動向について」では、2024年介護報酬改定に向けて以下のような意見が出されています。

介護保険制度の見直しに関する意見(概要)

○全世代対応型の持続可能な社会保障制度の構築に向けて、質の高い医療・介護を効率的に提供するための基盤整備が必要。

○次期計画期間中に2025年を迎えるが、今後、85歳以上人口の割合が上昇し、サービス需要や給付費は増加する一方、生産年齢人口は急減。地域ニーズに対応したサービス等基盤の整備や、人材確保、保険制度の持続可能性の確保に向けた早急な対応が必要。

○社会環境の変化の中でも、高齢者の自己決定に基づき、必要なサービスを受けられ、希望する所で安心して生活できる社会を実現する必要。

引用:厚生労働省老健局「介護分野の最近の動向について」

厚生労働省の資料を確認すると「全世代対応型の持続可能な社会保障制度」というキーワードが確認できます。

生産年齢人口が減少していく日本において、介護保険制度の持続可能性確保は重要なテーマのひとつです。介護保険制度を維持し続ける鍵が、地域包括ケアシステムの構築です。

過去の介護報酬改定でも注目されてきた地域包括ケアシステムの構築ですが、この意見書から2024年介護報酬改定でも重要なテーマとなる可能性が高いでしょう。

また、将来的に認知症の高齢者や単身高齢者の増加によって、介護ニーズの増大・多様化が予測されています。これらの問題に対処するためには、各地域の特性や実情に応じた地域包括ケアシステムの推進が不可欠です。

将来的に介護サービスを利用する高齢者が増加し、それを支える人材や財源の不足が問題視されています。それらの課題へ対応するためにも、介護人材の確保に向けた職場環境の改善やサービスの適正化が求められています

参考:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)概要」

 

2024年介護報酬改定のポイント

2024年の介護報酬改定へ向けて、新しい複合型サービスの創設や介護現場の生産性向上などが議論されています。ここでは、2024年介護報酬改定における重要ポイントについて解説します。

地域包括ケアシステムの深化・推進

地域包括ケアシステムの深化・推進は、2024年介護報酬改定の重要なテーマのひとつです。地域包括ケアシステムの推進によって、医療と介護の連携を強化し、医療ニーズの高い方や終末期のケアに対処できる地域づくりを実行していきます。

さらに、感染症や災害時の対応、高齢者虐待の防止、認知症への対策など、幅広いニーズに柔軟かつ効率的に答えるためにも、地域包括ケアシステムの構築が必要とされています。

認知症への対応力強化

2040年には認知症高齢者が約800~950万人に達すると予測されており、これに対応するための施策が急がれています。

2019年には「認知症施策推進大綱」が策定され、2023年には「認知症基本法」が制定されました。介護報酬もこの流れに沿い、「認知症専門ケア加算」の設定など、認知症高齢者へ専門的なケアを提供できる体制を整えてきました。

しかし、認知症に特化したケアの提供はまだまだ不十分で、その実施状況や評価の在り方についての見直しが必要とされています。

特にBPSDの予防や対応、新しい評価尺度の導入など、今後の介護現場での取り組みが注目されています。

参考:厚生労働省老健局「認知症への対応力強化(地域包括ケアシステムの深化・推進)」

新しい複合型サービス

2024年介護報酬改定で注目されているポイントのひとつが「新しい複合型サービスの創設」です。

今後の介護ニーズの増加を見越し、より柔軟かつ効果的な在宅サービスの提供が必要不可欠です。特に、訪問介護と通所介護を組み合わせる複合的なサービスの必要性が高まっています。

訪問介護と通所介護を組み合わせた複合型サービスは、利用者の日常生活において切れ目のないケアを提供し、急なサービス変更やキャンセル時の対応も柔軟に行えるメリットがあります。

一方で、情報共有の質やタイムラグなどの課題も存在しているため、今後どのように議論されるか注目していかなければいけません。

参考:厚生労働省老健局「新しい複合型サービス(地域包括ケアシステムの深化・推進)」

LIFEの活用

LIFE(科学的介護情報システム)は、2021年度から導入され、2024年までに53,370の事業所での導入が確認されています。

LIFEの導入により、利用者の日常生活動作や認知症の状態を詳細に評価することが可能になり、多職種での情報共有やケアの質向上が期待されています。一方で、データ提出の手間や評価方法の難しさ、アウトカム評価の確立などの課題も浮き彫りになってきました。

今後、多くの事業所でLIFEを活用した科学的介護サービスを提供するためには、LIFEを活用したPDCAサイクルの推進と評価方法の再検討が必要になるでしょう。

参考:厚生労働省老健局「LIFE(自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進)」

介護人材の処遇改善

2024年の介護報酬改定において、介護人材の処遇改善は注目すべきポイントのひとつです。

現在、介護職員の給与向上を目的とした加算が3種類設定されており、前回の介護報酬改定以降に導入されたベースアップ等支援加算によって基本給が平均4.4%増加しています。しかし、全産業平均に比べて依然として給与が低いという課題が残るため、加算取得手続きの簡素化などを推進する必要性は高いでしょう。

また、職場の人間関係や労働条件の改善が早期離職防止において重要であり、職場環境の向上やキャリアアップをサポートする制度作りも重要です。

参考:厚生労働省老健局「介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」

業務継続に向けた取り組みの強化

介護サービスは、日常生活を支える基盤として、利用者やその家族に必要不可欠なサービスです。そのため、災害や感染症が発生した際も、継続的なサービス提供が求められています。

この問題に対応するため、非常時の業務継続計画(BCP)策定が義務付けられ、施設の防災・減災対策も強化されています。一方で、令和3年度の調査では、業務継続計画の策定が進行中の事業所が存在し、地域住民の防災訓練参加も9.2%に留まっている状況です。

現状、まだ業務継続計画(BCP)が策定できていない事業所も多いため、BCP策定支援や災害時における復旧支援計画の策定などが必要となるでしょう。

参考:厚生労働省老健局「介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」

介護現場の生産性向上

介護現場では、介護ロボットやテクノロジーの導入、介護助手の活用を通じて、業務の効率化と生産性の向上を目指しています。

令和3年度の改定では、夜間の人員配置の見直しやテクノロジーの活用が推進されました。しかし、介護ロボットの導入率は低く、全体的な普及が課題となっています。一方で、実証事業の結果、見守り機器の導入や介護助手の活用は、業務の質と効率を同時に向上させる効果が確認されています。

今後、テクノロジーの更なる活用と介護助手の役割拡大が期待される中、如何にして高品質なサービスを継続的に提供するかが焦点となるでしょう。

参考:厚生労働省老健局「介護現場の生産性向上の推進/経営の協働化・大規模化(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」

2024年介護報酬改定への対策

2024年介護報酬改定へ向けて実施すべき対策が理解できれば、報酬改定後もスムーズに事業所を運営できるでしょう。ここでは、現在発表されている情報をもとに、今実施しておくべき対策について具体的に解説します。

LIFEの導入と活用

2024年介護報酬改定における重要なキーワードのひとつが「LIFE」です。

LIFEは、前回の介護報酬改定から本格的に導入されましたが、いまだ導入している事業所数が少ない状況にあります。

介護サービスの質を底上げするためにLIFEの活用は欠かせません。そのため、次回の介護報酬改定でもLIFEに関する改定を実施する可能性は高いでしょう。

LIFEを導入していない事業所は、積極的にLIFEを導入することをおすすめします。また、すでにLIFEを導入している事業所は、LIFEを活用したサービス提供の準備を進めるとよいでしょう。

財務状況の整理

現在、2024年介護報酬改定に向けて、介護サービス事業者における財務状況等の見える化が検討されています。

介護サービス事業所の財務状況を公開する目的として、介護業界の実態を国民にも把握してもらうことや国が各事業所の実態を把握することが挙げられています。

財務状況の見える化が推進されることで、各介護サービス事業所は定期的に財務データを提出しなければいけなくなるでしょう。

これらの制度変更に備えて、財務データの整備や会計業務の整備を進めていくことをおすすめします。

参考:厚生労働省老健局「介護保険制度の見直しに関する参考資料」

業務継続計画(BCP)の策定

2024年4月以降、全ての介護事業所において業務継続計画(BCP)策定が義務化される予定です。そのため、2024年4月までに実施しておけばよい業務ともいえますが、できる限り早めに策定することをおすすめします。

介護報酬改定直前になると、報酬単価変更に伴って利用者へ同意書を取ったり、新たな加算の届出を提出したりと、さまざまな対応に追われることが予測されます。そんな中で、業務継続計画(BCP)を策定すると、業務負担がかなり大きくなるでしょう。

介護報酬改定直前には忙しくなることを見越して、早めに業務継続計画(BCP)を策定しておくことをおすすめします。

まとめ:2024年介護報酬改定の動向は年末に確定するため早めの準備を

この記事では、2024年介護報酬改定の動向と対策について解説しました。

2024年介護報酬改定は、これからの介護業界が進むべき方向性を決める重要な改定となるでしょう。改定の内容については、10月から12月にかけて議論が活発になり、年末には大まかな方向性が確定する予定です。

2024年介護報酬改定では、地域包括ケアシステムの推進と介護保険制度の持続可能性を確保することが重要なテーマとされています。介護業界が抱えている課題を達成するため、新しい複合型サービスの創設や、介護現場の生産性向上に向けた取り組みが本格化していく予定です。

2024年介護報酬改定に向けた対策として、LIFEの導入や業務継続計画(BCP)の策定、財務諸表データの整理などを進めておきましょう。

 

参考資料:

厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に向けた今後の検討の進め方について(案)」

厚生労働省老健局「介護分野の最近の動向について」

厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に向けた基本的な視点(案)概要」

厚生労働省老健局「認知症への対応力強化(地域包括ケアシステムの深化・推進)」

厚生労働省老健局「新しい複合型サービス(地域包括ケアシステムの深化・推進)」

厚生労働省老健局「LIFE(自立支援・重度化防止を重視した質の高い介護サービスの推進)」

厚生労働省老健局「介護人材の処遇改善等(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」

厚生労働省老健局「介護現場の生産性向上の推進/経営の協働化・大規模化(介護人材の確保と介護現場の生産性の向上)」

厚生労働省老健局「介護保険制度の見直しに関する参考資料」

 

お役立ち資料:最新の介護報酬改定内容を確認したい方へ

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