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【2024年4月義務化】介護施設のBCP(事業継続計画)策定のポイントや作成手順を徹底解説!

2024-01-19

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2024年4月からすべての介護施設でBCP策定が義務化されます。しかし、まだBCPを策定できていない事業所も多くあります。BCPを策定する方法や手順について知りたい経営者も多いのではないでしょうか。

この記事では、介護施設でBCPを策定する際のポイントや具体的な作成手順について解説します。この記事を読むことで、どのようにBCPを策定すればよいのかわかります。

BCP(事業継続計画)とは

BCP(事業継続計画)とは、自然災害や新型ウイルス感染症などの予期せぬ状況に備え、企業や組織が重要な業務を継続できるように策定する計画のことです。

BCPは、平常時から災害や混乱状況に備え、最小限の影響で業務を継続し、迅速に復旧することを目的としています。また、2021年4月からは、すべての介護事業者においてBCPの策定が求められています。

介護施設で予期せぬトラブルが発生した場合、利用者の健康に悪影響を与えるかもしれません。利用者の命を守るためにも介護施設におけるBCP策定は重要です。

特に、近年発生した新型コロナウイルスの蔓延や大規模な自然災害によって、BCPの重要性が評価されています。大規模災害や感染症の発生時にも介護サービスの提供を継続し、迅速に復旧するためのBCPは、介護施設運営にとって欠かせないものといえるでしょう。

介護施設のBCP策定は4月から義務化。3月までには策定が必要!

近年、新型感染症や大規模災害が増加している実態を受けて、令和3年度の介護報酬改定では、すべての介護施設でBCPの策定が義務化されました。

仮に、予期せぬトラブルが発生した場合でも、要支援・要介護者の支援体制を維持することが改定の目的です。しかし、2021年4月〜2024年3月までは完全義務化までの経過措置が設けられています。

厚生労働省の資料「業務継続に向けた取組の強化等(改定の方向性)」によると、「BCPの策定が完了している」と回答した介護施設は、感染症BCPで29.3%、自然災害BCPで26.8%でした。この結果から、まだBCPを策定できていない介護施設は多いといえるでしょう。

BCPを策定しない場合、基本報酬が減算に

BCPの策定がおこなわれていない場合、基本報酬が減算となる見込みです。以下の基準に適合していない場合、業務継続計画未実施減算が適用されます。

【減算要件】

  • 感染症や災害の発生時における業務継続計画を策定すること
  • 作成した業務継続計画に従い必要な措置を講ずること

業務継続計画未実施減算の減算率は、施設・居住系サービスの場合所定単位数の3%、施設・居住系サービス以外の場合所定単位数の1%となっています。BCPの策定がまだ進んでいない事業所は速やかに対応を進めるようにしましょう。

介護施設がBCPを策定するメリット

介護施設がBCPを策定するメリットは、リスクマネジメントだけではありません。BCPを策定することで、税金の優遇や補助金・助成金を受けられる、ワクチンを優先的に接種できるなどのメリットもあります。ここでは、BCPを策定するメリットについて解説します。

税金が優遇される

介護施設がBCPを策定するメリットの一つとして、税制上の優遇を受けられる点が挙げられます。

中小企業防災・減災投資促進税制の優遇措置として、事業継続力強化計画や連携事業継続力強化計画の認定を受けた事業者は、特別償却18%の税制措置を受けられます。

この税制措置は、中小企業による防災・減災の事前対策を支援するための制度で、事業継続計画を立てた企業の税金を優遇するものです。具体的には、BCPに基づいて災害対策や設備の整備を行った場合、対象設備に特別償却18%が適用され、税金の負担が軽減される仕組みです。

BCPを策定することで、事業運営のリスクマネジメントができるだけでなく、節税というメリットがある点も理解しておきましょう。

補助金や金融支援を受けられる

介護施設がBCPを策定すると、補助金や金融支援を受けられる場合もあります。自治体などによっては、BCPを策定した事業所に助成金を提供しており、BCP計画に基づく物品や設備の導入にかかる経費の一部を助成しています。これにより、介護施設のBCP策定を後押しすることが行政機関の目的です。

BCP策定によって受け取れる補助金・助成金の事例を一部ご紹介します。

  • 社会環境対応施設整備資金(日本政策金融公庫)
  • BCP実践促進助成金(東京都中小企業振興公社)
  • 中小企業等BCP策定等支援補助金(静岡県焼津市)
  • BCP・事業承継補助金(新潟県長岡市)

上記以外の自治体でも、BCP策定に対する補助金や助成金を提供しています。これらの補助金や助成金を利用することで、BCPの策定と実践にかかるコストを軽減できるでしょう。

ワクチンを優先接種できる

介護施設がBCPを策定するメリットのひとつとして、新型感染症発生時に優先的にワクチン接種を受けられる点が挙げられます。

新型インフルエンザ等対策特別措置法では、感染症が発生した際に国民生活や国民経済への影響が大きい業務を行う事業者や公務員に対して、臨時の予防接種を行うことが規定されています。介護・福祉の事業所もその対象となり、BCPの作成をしている事業所は、国民生活や国民経済への影響が大きい業務を行う事業者や公務員として該当するのです。

BCPに感染症発生時の業務継続方針などを記載している場合、登録事業者として認められ、感染症予防のためのワクチン接種が優先的に行われます。これにより、施設内での感染拡大を防ぎ、利用者と従業員の健康を守れるでしょう。

経営改善につながる

介護施設がBCPを策定することで、経営改善につながるメリットもあります。BCPによって非常時でも運営が可能となり、補助金や税制優遇の恩恵を受けられるため、想定外のトラブルでも比較的安定して事業所を運営できるでしょう。

また、基本的な感染対策の強化も図れるため、利用者の体調も安定して、継続的にサービスを提供できるようになります。さらに、BCPを策定している事業所は、利用者やその家族、従業員から「危機的な状況においても対応できる事業者」と認識され、信頼と高評価を得やすくなるでしょう。

BCPの策定は、非常時の対策を立てるだけではありません。普段からの感染症対策を強化し、利用者が健康で安全に利用できる施設となることで、利用者からの信頼度が増して利用回数が増加します。これにより、施設の経営状況を改善できる可能性もあるのです。

介護施設がBCPを策定する際のポイント

介護施設では、感染症BCPと自然災害BCPの2種類を策定する必要があります。2種類のBCPは、想定される状況が異なるため、それぞれポイントを押さえて策定することが推奨されています。ここでは、厚生労働省の資料をもとにBCP策定のポイントについて解説します。

感染症への対策

感染症BCPを策定する際には、感染症が発生した際の施設内感染対策だけでなく、関連機関への報告や連携が重要ポイントです。厚生労働省の資料によると、以下の5つのポイントに注意して策定することを推奨しています。

【感染症BCP作成のポイント】

  1. 施設・事業所内を含めた関係者との情報共有と役割分担、判断ができる体制の構築
  2. 感染(疑い)者が発生した場合の対応
  3. 職員確保
  4. 業務の優先順位の整理
  5. 計画を実行できるよう普段からの周知・研修、訓練

引用:厚生労働省「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」

自然災害への対策

自然災害BCPの場合は、事前の対策と被災時の対策を分けて作ることが重要なポイントです。厚生労働省の資料では、以下の4つのポイントを押さえてBCPを策定するように推奨しています。

【自然災害BCP作成のポイント】

  1. 正確な情報集約と判断ができる体制を構築
  2. 自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて、同時にその対策を準備
  3. 業務の優先順位の整理
  4. 計画を実行できるよう普段からの周知・研修、訓練

引用:厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」

BCP策定の手順

BCPには決まった書式等がありませんが、厚生労働省の公式サイトではBCP策定のガイドラインやひな形を公開しています。ここでは、厚生労働省の公式サイトで公開されているガイドラインやひな形を参考に、BCP策定の手順について解説します。

1.BCP策定の責任者を選定する

まずは最初にBCP推進体制の構成メンバーを決定していきます。例えば、感染症BCPの場合、ひな形の様式1に記載されている構成メンバーとして以下の部署が挙げられています。

  • 対策本部長
  • 事務局長
  • 事務局メンバー

上記の構成メンバーに加え、必要に応じて部署と担当者を任命していきましょう。

2.連絡先リストを作成する

介護施設外の連絡先リストを作成します。想定外のトラブルが発生した場合、現場が慌ただしくなり、冷静な判断ができなくなることもあるでしょう。冷静な判断ができなくなった場合でも、スムーズに外部機関と連携が取れるように連絡先リストを作成しておきます。

3.必要物品の整理をおこなう

非常時に物品がなくなると、事業所を運営できなくなる可能性もあります。新型感染症が蔓延した場合は、消毒に必要な物品や衛生用品が大量に必要です。また、大規模な自然災害に巻き込まれた場合は、食料や水の備蓄なども必要になります。各BCPで必要物品のリストを作成し、日常的に点検できるように様式を作成しましょう。

4.優先業務を選定する

BCPにおいて、特に重要なポイントのひとつが優先業務の選定です。想定外のトラブルが発生した場合に、どの程度の影響を受けたら業務を止めるのか、逆にどの程度までの被害であれば業務を継続するのか、などの内容を事前に決めておきます。

感染症や自然災害が発生した場合、職員が被害を受けて出勤できなくなることもあるでしょう。職員数が減った場合に、どこまで業務を減らすのか、利用者は何人まで受け入れられるのかなどの条件を決めておくことが重要です。

5.安否確認の優先順位表を作成する

災害発生時の安否確認について優先順位を決めておきます。災害が発生した直後は、やるべきことが数多くあります。やることが多い状況で確認するため、事前に準備をしておかなければ、安否確認が適切に実行できない可能性もあるでしょう。

利用者の身体機能や健康状態を考慮して、早急に安否確認が必要となる利用者をリストアップしておく必要があります。利用者の命を守るためにも重要な手順です。

6.復旧時間の目標を設定する

復旧時間の目標設定も重要なポイントです。特に、自然災害によって水や電気などのインフラが止まった場合、利用者によっては命を脅かす問題となります。

特定の医療機器が止まった場合や、水が止まった場合などに、どの程度の時間まで耐えられるのか事前に計算しておきましょう。その目安をもとに、復旧までの時間について目標を設定します。

生活インフラの復旧時間については、予測が難しいところですが、過去に発生した震災時の復旧時間を参考に計画を策定するとよいでしょう。

まとめ:義務化に向けてBCPの策定を急ぎましょう

この記事では、2024年に義務化されるBCPについて、策定時のポイントや策定手順などを中心に解説しました。

BCPとは、自然災害や新型ウイルス感染症などの予期せぬ状況に備え、企業や組織が重要な業務を継続できるように策定する計画のことです。

令和3年度の介護報酬改定時にすべての介護施設でBCPの策定が義務付けられ、2024年3月までは猶予期間とされていました。そのため、2024年4月以降はすべての介護施設で完全義務化されます。BCPを策定しなかった場合、基本報酬が減算となるほか、運営上のリスクが非常に高くなるため注意しましょう。

策定方法や手順については、厚生労働省の公式サイトでも公開しています。まだBCPを策定していない介護施設の経営者は、できるだけ早めに策定することをおすすめします。

お役立ち資料:介護報酬改定に備えたい方に

介護事業所向けに2024年の介護報酬改定に関する情報をまとめました。
2024年の介護報酬改定に向けて、事前に準備をしておきたいという方は、ぜひご一読ください。
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