認知症の高齢者は増加傾向にあり、厚生労働省が発表した「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」では、2012年に462万人だったのに対し、2025年には730万人まで大幅に増加すると推測されています。
こうした背景から、認知症の知識が豊富で適切な対応ができるスタッフを配置している介護事業所を評価するため、認知症専門ケア加算が設置されました。今回は、認知症専門ケア加算が算定される要件や必要な研修について詳しく解説します。
目次
認知症専門ケア加算について、認知症高齢者の重症化の緩和や日常生活自立度Ⅱの者に対して適切に認知症の専門的ケアを行うことを評価する観点から、利用者の受入れに関する要件を見直しが行われる見込みです。
主な変更の対象となる介護サービスは以下です。
改定後の報酬区分や算定要件については、本記事内にて解説しているのであわせてご確認ください。
また、2024年の介護報酬改定について情報を得たい方は以下の記事もあわせてご確認ください。
【2024年介護報酬改定】改定ポイントまとめ|最新情報を元に一覧で徹底解説
認知症専門ケア加算は、認知症のケアができるスタッフを配置している介護サービスの事業所が算定できるものです。スタッフは介護経験があり、自治体や国に指定された専門的な研修を受けているなど定められた要件を満たしている必要があります。
以下の介護サービスは、加算の対象です。
加算で算定される単位数は、以下の通りです。
加算区分 | 単位数(1日あたり) |
認知症専門ケア加算(Ⅰ) | 3単位 |
認知症専門ケア加算(Ⅱ) | 4単位 |
認知症専門ケア加算(I)と(II)の2つの要件があり、それぞれを満たしている必要があります。詳しく見ていきましょう。
以下で紹介する加算率や算定要件は、2024年4月1日施行予定の介護報酬改定による変更点を反映したものになります。
現行の算定要件と異なる場合がございますのでご注意ください。
また2024年4月1日の介護報酬改定に伴う変更点は赤字で記載を行っています。
認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定要件は、以下の4点です。
認知症専門ケア加算(Ⅱ)の算定要件は、以下の5点です。
認知症専門ケアに関する専門的な研修とは、以下の3つの研修を指します。
詳しい内容を解説します。
認知症介護実践リーダー研修では、講義と演習、実習(他施設と自施設)を行います。
自施設で課題に取り組むことで、日常的な介護にすぐに活かせる実践的な学びが得られます。
認知症介護指導者の養成研修では、施設で実際に研修の企画や立案をします。専門的な知識や技術を持った指導者としての活躍が目的です。実際に研修の企画を考えるなど、実践的に学んで指導者としての学びを深めます。
そのため、認知症対応施設での管理者クラスに向けての指導や、認知症介護実践者研修等の講師を行えるようになります。
下記の課程や研修を終えている看護師は、認知症看護に関する必要な研修を受けたとみなされます。したがって、加算の算定要件に含まれます。
認知症専門ケア加算に関するよくあるQ&Aをまとめました。
常勤等の条件はありません。
しかし、加算される要件を満たすために行う認知症介護に関する研修を事業所内で実施しなければなりません。そのためには、加算対象の事業所のスタッフであることが必要なので注意してください。
必要ありません。
「認知症介護指導者養成研修」と「認知症介護実践リーダー研修」の両方を受けた者、もしくは「認知症看護に関する適切な研修」を受けた者が該当します。どちらか1名を配置すると、加算の対象者が20名未満の場合は、認知症専門ケア加算(Ⅱ)を算定できます。
職務や資格等については問われません。認知症の介護指導者研修を受けて、事業所にて認知症ケアの実施を行っていることがポイントです。
今回は、認知症専門ケア加算について算定のための要件や必要な研修などをまとめてご紹介しました。
認知症の高齢者は年々増加しているので、これからの時代はますます質の高い認知症ケアが医療や介護の現場で必要とされるようになります。
事業所全体で質の高いケアを行うためには、認知症を正しく理解しているスタッフの配置を積極的に行うことと、介護スタッフの育成や指導をすることが大切です。