ターミナルケアは、人生の最終段階を迎えた方に向けた医療・介護によるケアです。介護施設などにおけるケアによって人生の最期までその人らしい生活を送れるようにすることが大切です。
利用者の生活の質を向上させるための重要なサポートであるため、ターミナルケアを行った場合には、介護報酬を算定できます。この記事では、ターミナルケア加算について、2024年度の介護報酬改訂を踏まえて算定要件や単位数について解説しますので、理解を深めていきましょう。
目次
ターミナルケア加算とは、介護保険の利用者に対して体制が整っている訪問看護事業所がターミナルケアを行うことで算定できる加算のことです。ターミナルケアでは、無理な延命治療を行わずに、訪問看護の利用者の尊厳を保ちその人らしい最期を迎えられるように療養の支援を行います。
ターミナルケアは、厚生労働省の定めている「人生の最終段階における医療・ケアの決定に関するプロセルのガイドライン」の内容を考慮して、利用者本人の意思を大切にしながら行うことが重要になってきます。
医師をはじめとした医療従事者と人生の最期を迎える利用者やその家族と一緒に、より良い医療とケアを提供していく指針となるのがこのガイドラインです。ターミナルケアの在り方についてや、医療・ケアの方針の決定手続きについて定められています。ここでは、簡単に紹介します。詳しく知りたい方は、厚生労働省のWebサイトをご覧ください。
(1)医師を中心とした医療・ケアチームで十分に話し合いを行い、本人の意思決定を基本としたうえでターミナルケアを進めていく。本人の意思は変化するもの、本人が意思を伝えられない状態になる可能性も考慮して、家族なども含めて本人の話し合いを繰り返し行う。
(2)ターミナルケアについて、医療・ケアの開始、変更、中止などは医学的妥当性と適切性をもとに医療・ケアチームが慎重に判断する。
(3)医療・ケアチームが出来る限り疼痛や不快な症状を緩和して、本人とその家族の精神的、社会的な援助を含めた医療・ケアを行う。
(4)命を短縮させるための積極的安楽死は行わない。
(1)本人の意思の確認ができる場合の医療・ケア方針
(2)本人の意思が確認できない場合の医療・ケア方針
(3)複数の専門家からなる話し合いの場の設置
ターミナルケア加算が算定できるサービスは以下の4つです。
訪問看護でも、利用者が要支援者である「介護予防訪問看護」ではターミナルケア加算の対象外となるので注意しましょう。
2024年度の介護報酬改定においてターミナルケア加算の見直しが行われます。
介護保険の訪問介護で提供されるターミナルケアと医療保険で提供されるターミナルケアの内容が同様であることを踏まえて、単位数が変更されることになりました。
また、介護老人保健施設・在宅復帰・在宅療養支援を行う施設におけるターミナルケア加算についても、看取りへの対応を充実させ、適切な評価を行うために単位数や区分が見直されることになりました。とくに死亡日の前日および前々日、死亡日におけるケアを重視するために単位数が大きく変更になっています。
訪問看護におけるターミナルケア加算の介護報酬改定は2024年6月1日から施行されます。
これは、診療報酬改定が2024年6月1日から施行されることに基づいており、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所リハビリテーションなどではこの日から施行されることとなっています。
また、そのほかの介護老人保健施設、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護におけるターミナルケア加算の介護報酬改定は2024年4月1日から施行となります。
対象サービスによって、加算の単位数と算定要件が異なるのでそれぞれ説明します。
訪問看護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅施設におけるターミナルケア加算の算定要件は以下の通りです。
〇以下のいずれにも適合している利用者であること
- 死亡日、死亡日前14日間以内に2日以上訪問し、ターミナルケアを行っていること
- ターミナルケアを受ける利用者へ24時間連絡、訪問看護ができる環境にしておくこと
- 主治医と連携を取り、ターミナルケアに関わる計画や体制について、利用者、利用者の家族に対して十分な説明を行い合意を得ていること
- ターミナルケアを行うにあたって、利用者の身体状況の変化など必要な記録をしておくこと
- 厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」を踏まえて、利用者の意思決定を基本とした医療やケアを医療・ケアチームが提供すること
上記を満たすことによって、利用者の死亡月に2,500単位を算定することができます。
介護老人保健施設におけるターミナルケア加算の算定要件は以下の通りです。
〇以下のいずれにも適合している入所者であること
- 医師が医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断した者であること
- 入所者またはその家族などの同意のもと、入所者のターミナルケアについての計画が作成されていること
- 医師、看護師、介護職員、支援相談員、管理栄養士などが共同して、入所者の状態または家族の求め等に応じた説明を本人や家族に行い、同意のうえでターミナルケアが行われていること
上記を満たすことで、ターミナルケア加算が算定できるようになります。
単位数は、ターミナルケアを行ったタイミングによって異なり、それぞれ以下の通りです。
ターミナルケアの実施タイミング | 単位数 |
死亡日45日前~31日前 | 72単位/日 |
死亡日30日前~4日前 | 160単位/日 |
死亡日前々日、前日 | 910単位/日 |
死亡日 | 1,900単位/日 |
先ほど紹介したターミナルケアにおけるガイドラインのほか、日本老年医学会による「高齢者ケアの意思決定プロセスに関するガイドライン 人工的水分・栄養補給の導入を中心として」等が挙げられます。
しかし、まず何よりも本人の意思決定を第一にして医療・ケアチームが連携してターミナルケアを実施していくことが重要です。
介護療養型老人保健施設内で入所者の死亡日前30日間において入所していた間でターミナルケアを実施していた期間については、医療機関で亡くなった場合であってもターミナルケア加算を算定することができます。
ターミナルケアを実施中に、医療機関に搬送され、24時間以内に死亡が確認された場合はターミナルケア加算の算定対象となります。
現在では、高齢化によって、ターミナルケアを受けられる介護施設が求められるようになっており、今後も需要や重要性が高まることが予想されます。人生の最終段階を迎えた利用者、入居者に対して質の高いケアを提供できるように体制を整えていきましょう。