「訪問介護の同一建物減算って何?」「同一建物の定義は?」
訪問介護の事業所の方の中には、このような疑問を持っている方は多いのではないでしょうか?
この記事では、同一建物減算の目的や要件、減算の対象となる同一建物の定義等について解説していきます。
訪問介護の事業者向けに、各種加算と減算の要件や、優先的に取得するべき加算などについてまとめました。
<目次>
1.加算とは
2.訪問介護における加算・減算一覧
3.各種要件と解説
4.優先的に取得すべき加算
5.まとめ
目次
同一建物減算とは、介護事業所と利用者の居住している建物が同一している場合、サービスを提供した際に減算される仕組みとなっています。
理由として、同一建物に事業所があることで効率的なサービスを受けられるためです。
また、訪問サービスか通所サービスによって、減算の対象となる範囲が異なります。
同一建物の利用者数などによっても、減算率が異なりますので注意してください。
近年、同一建物に介護事業所を開設し、訪問介護のサービスを提供することが増えています。
そのため、同一建物の居住者ではない利用者との、公平性を保つために減算をしています。
ですが、区分支給限度基準額の範囲でサービスを利用すると、減算をすることにより、多くの回数で利用できることになります。
利用回数の観点から、減算しても公平性が保たれていないとの声があがっているため、平成30年度の介護報酬改正にて、区分支給限度基準額については減算前の報酬で計算するなどの見直しがありました。
参考:厚生労働省
対象となる介護サービスは訪問系の介護サービスと通所系の介護サービスになります。
内訳は下記になります。
訪問系介護サービス
・訪問介護
・(介護予防)訪問入浴介護
・(介護予防)訪問看護
・(介護予防)訪問リハ
・夜間対応型訪問介護
・定期巡回、随時対応型訪問介護看護
通所系介護サービス
・通所介護
・(介護予防)認知症対応型通所介護
・地域密着型通所介護
・(介護予防)通所リハ
令和3年度介護報酬改定で、同一建物減算を算定する際の、区分支給限度基準額の計算方法が適正化されました。
具体的には、通所系サービス、多機能系サービスの同一建物減算の適用を受ける利用者の区分支給限度基準額ついて、同一建物減算を受けない人との公平性を保つために、減算の適用前の単位数を用いることになりました。
区分支給限度額には単位数の上限が定められているため、減算後の単位数を用いてしまうと、減算を受ける利用者の方が、より多くサービスを利用できてしまうからです。
訪問系介護サービスは以下の内容になります。
介護サービス | 同一敷地内建物に居住している利用者 同一建物に利用者が月に20人以上の場合 | 同一敷地内建物に居住する利用者が50人以上の場合 |
訪問介護 | 10%減算 | 15%減算 |
(介護予防)訪問入浴介護 | 10%減算 | 15%減算 |
(介護予防)訪問看護 | 10%減算 | 15%減算 |
(介護予防)訪問リハ | 10%減算 | 15%減算 |
夜間対応型訪問介護 | 10%減算 | 15%減算 |
定期巡回、随時対応型訪問介護看護 | −600単位/月 | −900単位/月 |
通所系介護サービスは以下になります。
介護サービス | 事業所と同一建物に居住する利用者 |
通所介護 | −94単位/日 |
(介護予防)認知症対応型通所介護 | −94単位/日 |
地域密着型通所介護 | −94単位/日 |
地域密着型通所介護 | −94単位/日 |
(介護予防)通所リハ | 要支援1 −376単位 要支援2 −752単位 |
上記の表で出てきたように訪問介護については、同一建物減算は利用者によって異なります。
・同一敷地内建物等にサービス提供した場合は10%減
・同一建物に利用者が20人以上居住している場合は10%減
・同一敷地内建物等に利用者が50人以上居住している場合は15%減
ここで注意すべきなのは「同一建物」と「同一敷地内建物等」が異なるということです。
違いについては後述します。
訪問系サービスでは、以下の要件を満たす場合に減算が適用されます。
・事業所と同一敷地内建物または隣接する敷地内の建物に居住する利用者にサービスを提供した場合
・同一敷地内等以外の建物で、月に20人以上の利用者が居住する集合住宅等の利用者にサービスを提供した場合
※上記の場合は10%の減算ですが、利用者が50人以上の場合は15%の減算になります。
参考:厚生労働省
通所系サービスでは、以下の要件を満たす場合に減算が適用されます。
・事業所と同一建物に居住している利用者に対してサービスを提供した場合
・事業所と同一建物から通う利用者にサービスを提供した場合
参考:厚生労働省
減算の対象となる同一建物と、それに似た同一敷地内建物とはなにか、詳しく解説していきます。
訪問系の同一敷地内建物と同一建物との違いを解説します。
まず、同一敷地内建物の定義は以下の通りです。
・同一敷地内建物は訪問介護事業所と一般的な外形状や一体となっている建物
・訪問介護事業所と同一敷地内、隣接する敷地にある建物で効率的にサービスを提供できる
この2つを満たしているものが同一敷地内建物に該当します。
そして、事業所と構造上または外形上、一体的な建築物は同一建物とみなされます。
同じ建物の違うフロアに事業所がある場合などが該当します。
訪問系の同一建物に20人以上居住する建物の場合は、同一敷地内建物等に該当しない建物とみなされます。
同一敷地内にある別棟の建物や道路を挟んで隣接する建物の利用者は効率的にサービスを提供できないと判断される場合は合算されません。
同一建物の定義は外形状、一体的な建物を想定されています。
事業所のある建物と渡り廊下が繋がっていることや、1階に事業所がある場合などが該当します。
ですが、同一敷地内で別棟の建物や道路を挟んで隣接する場合は該当されません。
同一建物減算では訪問系サービスと通所系サービスで対象となる建物や支給限度額が異なります。
そこで、訪問系サービスと通所系サービスの留意点をそれぞれ説明していきます。
訪問系サービスでは下記の4つの留意点について説明していきます。
・事業所と建物の運営法人が異なる場合でも同一建物減算の対象
・同一建物減算の対象となる利用者の計算方法
・同一建物等減算を算定する場合、支給限度基準額には減算前の単位数を算入する
建物の運営管理と訪問系サービス事業の運営が異なる場合でも、同一建物減算の対象となります。
同一建物減算の対象となる利用者数を計算する場合は、1ヶ月の利用者数の平均値を算定することによって決まります。
計算する月の1日ごとの建物に居住する利用者の合計を日数で割ることで平均値を出します。
ただし、小数点以下は切り捨てしてください。
同一敷地内でサービスを提供していても、広大な土地で建物が複数ある場合や道路、河川などで横断するために迂回するなどの場合があります。
効率的なサービスができないため、減算対象となりません。
同一建物等減算が適用された場合、支給限度基準額の算定では減算前の単位数で計算しなければなりません。
理由としては、同一建物の利用者の支給限度基準額が減って、利用回数が増えると、利用者間の公平性を保てなくなってしまうからです。
通所系サービスでは以下の3点について説明していきます。
・事業所と建物の運営法人が異なる場合でも同一建物減算の対象
・やむを得ない理由で送迎を行なった場合は減算の対象外
・同一建物減算は支給限度額の対象外
訪問系サービスと同様で、建物の運営管理と訪問系サービス事業の運営が異なる場合でも、同一建物の定義に当てはまる場合は、同一建物減算の対象となります。
怪我などでやむを得ない理由や建物の構造上、自力での通所が困難で2人以上の介助が必要な場合は同一建物減算の対象となりません。
通所系サービスにおいては、支給限度額算定について、同一建物減算は対象外となります。
同一建物減算に関するQ&Aをまとめました。
集合住宅減算の対象となるサービスコードの単位数を合計から減算率をかけて算定してください。
また、区分支給限度基準額を超える場合の管理に対して、超過分に同一建物減算に割り振ることはできません。
参考:厚生労働省
対象の建物にエレベーターがない建物やエレベーターが故障している場合のことを指します。理由として、エレベーターがない場合は移動の時間がかかってしまい、効率的なサービス提供が難しくなるためです。
効率的なサービスができないという点が基準となります。
参考:厚生労働省
算定月の利用者の実績で判断されます。
例えば、前月の利用者が20人以下でも算定月が20人以上の利用者の実績がある場合は減算の対象となります。
この場合は、同一建物に利用者が20人以上いるとされるので、10%の減算率になります。
参考:厚生労働省
今回解説したように、同一建物の定義は公平性を保つために複雑になっています。
一般的には同一建物だと思っていても減算の対象とならない場合もあります。
より質の高いサービスを提供できるよう、加算、減算の知識を深めていきましょう。