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認知症チームケア推進加算

認知症チームケア推進加算とは?算定要件や加算取得に必要な準備について解説

2024-03-22

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2024年の介護報酬改定では、認知症における行動・心理症状への対応を評価する認知症チームケア推進加算が新設されます。この加算の詳細な情報を知りたい介護施設経営者も多いでしょう。

この記事では、認知症チームケア推進加算の算定要件や単位数などについて解説します。この記事を読むことで、加算取得に向けて今から準備できることが把握できます。

認知症チームケア推進加算とは?

認知症チームケア推進加算は、認知症の行動・心理症状(以下:BPSD)に対する早期対応を評価する加算です。

認知症の症状には、脳機能の低下から引き起こる中核症状と、中核症状に伴って現れる周辺症状があります。このうち、認知症によって現れる周辺症状をBPSDといいます。
例えば、記憶力や注意力の低下などは認知症の中核症状で、それによって引き起こされる徘徊や不穏状態などがBPSDに該当します。

BPSDが悪化することで介護者の負担が増大し、在宅生活が困難になるケースも多く、認知症介護において早い段階でBPSDに対応することは重要です。
認知症チームケア加算は、BPSDへ早期に対応する取り組みを実施している施設を評価するため、2024年の介護報酬改定で新設される予定です。

認知症チームケア推進加算が新設された背景とは?

2024年介護報酬改定で認知症チームケア推進加算が新設される背景として、現在の認知症介護分野を取り巻く3つの視点からBPSDへの早期対応ニーズが高まっていることが挙げられます。

ここでは、認知症チームケア推進加算が新設された背景にある3つの視点について詳しく解説します。

高齢化が進み、65歳以上の約5人に1人が認知症になる見込みとなっている

厚生労働省の資料「認知症の人の将来推計」では、2012年時点の認知症高齢者数は、約462万人と推計されていました。

さらに、その後も認知症高齢者数は徐々に増加することが予測されており、2025年には約700万人に達し、65歳以上の高齢者の約5人に1人が認知症になる予測も示されています。
一方で、厚生労働省の資料「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2025年には約32万人の介護人材が不足することも予測されています。

これらのデータから、65歳以上の認知症高齢者増加と介護人材の不足が同時に予測されているため、介護業界では認知症高齢者への支援強化が早急な課題とされています。

認知症予防に対してBPSD予防が重要視されている

認知症高齢者の日常生活能力を維持・向上させるためには、BPSDの予防・軽減が重要だとされています。

老人保健健康増進等事業で公開されている報告書「BPSDの予防・軽減等を目的とした認知症ケアモデルの普及促進に関する調査研究報告書」では、以下のデータが示されています。

【BPSD予防・軽減に係る調査研究結果】

  • 全国の施設、事業所を利用する認知症の方を対象に「BPSDの客観的評価」「全人的アセスメント」「PDCAサイクルで繰り返すチームアプローチ」の3つの要素に応じたケアを行う介入群と通常ケアを行う対象群で変化を比較。
  • 25項目のBPSDの状態を数値化した、BPSD25Q及び認知症高齢者の健康関連QOLを評価するShortQOL-Dを用いた。
  • 介入群のBPSD25Qについては、介入前後で有意に低下。ShortQOL-Dについては、介入前後で有意に高くなった。

参考:老人保健健康増進等事業「BPSDの予防・軽減等を目的とした認知症ケアモデルの普及促進に関する調査研究報告書」

この報告書の結果から、BPSD予防へアプローチすることが、認知症高齢者の生活の質向上や認知症の予防に効果的であるといえるでしょう。

BPSDへの適切な取り組みを評価する加算がない

これまでに、厚生労働省では認知症高齢者に対してBPSD予防を強化する重要性が指摘されてきました。

令和3年度介護給付分科会審議報告「認知症への対応力向上等に向けた取組の推進」では「行動・心理症状への対応や、中核症状を含めた評価の方策を検討していくべき」と指摘されています。

しかし、現状の介護保険制度では、BPSDへの対応を評価する加算は、医師とケアマネージャーが連携した場合に算定できる「認知症行動・心理症状緊急対応加算」があるのみで、平時から予防に資する取り組みを評価する加算はありませんでした。

そのため、日常的にBPSDへの早期対応を実施している事業所を評価するための加算の必要性が高まっているのです。

認知症チームケア推進加算の対象施設や単位数・算定要件とは?

認知症チームケア推進加算の新設に向けて、2024年の介護報酬改定で施行される告示改正は以下のとおりです。

【告示改正】

認知症対応型共同生活介護、介護保険施設に平時からの認知症の行動・心理症状の予防、早期対応の推進

  • 認知症の行動・心理症状(BPSD)の発現を未然に防ぐため、あるいは出現時に早期に対応するための平時からの取組を推進する観点から、新たに加算を設ける。

引用:厚生労働省「令和6年介護報酬改定の主な事項について」

ここでは、認知症チームケア推進加算の対象施設や単位数などについて詳しく解説します。

認知症チームケア推進加算の対象施設は?

厚生労働省の資料「令和6年介護報酬改定の主な事項について」によると、認知症チームケア推進加算を算定できるのは以下の5施設です。

  • 認知症対応型共同生活介護
  • 介護老人福祉施設
  • 地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護
  • 介護老人保健施設
  • 介護医療院

認知症チームケア推進加算は、主に入所系施設で算定できます。

認知症チームケア推進加算の単位数は?

認知症チームケア推進加算の算定単位数は以下のとおりです。

  • 認知症チームケア推進加算(Ⅰ)……150単位/月
  • 認知症チームケア推進加算(Ⅱ)……120単位/月

認知症チームケア推進加算の算定要件は?

認知症チームケア推進加算の算定要件は、加算(Ⅰ)と加算(Ⅱ)で異なります。ここでは、各加算の算定要件について詳しく解説します。

認知症チームケア推進加算(Ⅰ)

認知症チームケア推進加算(Ⅰ)の算定要件は以下のとおりです。

【認知症チームケア推進加算(Ⅰ)の算定要件】

  1. 事業所又は施設における利用者又は入所者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者の占める割合が2分の1以上。
  2. 認知症の行動・心理症状の予防及び出現時の早期対応に資する認知症介護の指導に係る専門的な研修を修了している者又は認知症介護に係る専門的な研修及び認知症の行動・心理症状の予防等に資するケアプログラムを含んだ研修を修了した者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員からなる認知症の行動・心理症状に対応するチームを組んでいる。
  3. 対象者に対し、個別に認知症の行動・心理症状の評価を計画的に行い、その評価に基づく値を測定し、認知症の行動・心理症状の予防等に資するチームケアを実施。
  4. 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症ケアについて、カンファレンスの開催、計画の作成、認知症の行動・心理症状の有無及び程度についての定期的な評価、ケアの振り返り、計画の見直し等を実施。

引用:厚生労働省「令和6年介護報酬改定の主な事項について」

認知症チームケア推進加算(Ⅰ)では、認知症ケアに関する専門的な研修等を修了した者を配置する必要があります。この研修の具体的な内容について、現段階ではまだ明らかになっていません。しかし、今後厚生労働省が公開するQ&A等でその内容が明確になるでしょう。

 

認知症チームケア推進加算(Ⅱ)

認知症チームケア推進加算(Ⅱ)の算定要件は以下のとおりです。

【認知症チームケア推進加算(Ⅱ)の算定要件】

  • (Ⅰ)の(1)、(3)及び(4)に掲げる基準に適合。
  • 認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者を1名以上配置し、かつ、複数人の介護職員からなる認知症の行動・心理症状に対応するチームを組んでいる。

引用:厚生労働省「令和6年介護報酬改定の主な事項について」

認知症チームケア推進加算(Ⅱ)を算定する場合、認知症チームケア推進加算(Ⅰ)と職員が修了すべき研修の内容が異なります。

今後、認知症チームケア推進加算の算定を予定している事業所は、この研修の違いを把握した上でどちらを算定すべきか判断する必要があるでしょう。

認知症チームケア推進加算取得に向けて準備すべきことは?

認知症チームケア推進加算を算定する場合、算定要件を把握した上で事前に準備を進めておくとスムーズに加算を算定できるでしょう。ここでは、認知症チームケア推進加算の取得へ向けて今から準備すべきことについて解説します。

事業所内の認知症の利用者割合を把握する

認知症チームケア推進加算の算定要件には「利用者又は入所者の総数のうち、周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症の者の占める割合が2分の1以上」という要件があります。

現在、施設を利用する認知症利用者の割合を事前に計算しておくと、算定の可否について判断できます。仮に、認知症高齢者が利用者全体の2分の1以下である場合は算定できないため注意しましょう。

また、現在分かっている情報では「周囲の者による日常生活に対する注意を必要とする認知症高齢者」の判断基準も曖昧です。今後、厚生労働省が発表する追加情報を確認しつつ、認知症高齢者数の把握を進めましょう。

認知症介護・BPSDに関わる研修を受講する(修了者がいない場合)

認知症チームケア推進加算の算定要件には「認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修を修了している者」を配置することが含まれています。この研修内容については、詳細な情報が出されていません。

一方、認知症専門ケア加算の算定要件には「認知症介護に係る専門的な研修を修了している者」という記載があり、この要件に該当する研修は以下の3つです。

  • 認知症介護実践リーダー研修
  • 認知症介護指導者養成研修
  • 認知症看護に関する適切な研修

今回、認知症チームケア推進加算の算定要件に含まれる研修は「認知症の行動・心理症状の予防等に資する認知症介護に係る専門的な研修」なので、上記の研修と異なる可能性はあります。

しかし、上記の研修を修了した者が対象となる可能性もあるため、余裕があれば研修の受講や人材配置などの準備をしておいてもよいでしょう。

まとめ:認知症への対応力を強化して、認知症チームケア推進加算を取得しよう

認知症チームケア推進加算とは、2024年の介護報酬改定で新設される加算です。認知症のBPSDに対する取り組みを評価する加算で、入所系施設を中心に算定できます。

この加算を算定するためには、専門的な研修を受けたスタッフを配置して、BPSDへ対応するためのチームを編成する必要があります。

加算の取得を検討している施設経営者は、認知症利用者数の把握や専門的な研修の受講によって認知症への対応力を強化し、認知症チームケア推進加算取得へ向けて準備を始めましょう。

お役立ち資料:加算取得を目指す方へ

訪問介護の事業者向けに、各種加算と減算の要件や、優先的に取得するべき加算などについて、わかりやすくまとめました。
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