訪問看護サービスの提供をおこなうと、状況に応じてさまざまな加算を算定できます。一方で、状況によっては減算となってしまい、得られる報酬額が減ってしまう可能性もあります。
本記事では、訪問看護サービスの提供にあたって算定可能な加算および減算を一覧で紹介します。
目次
介護保険における加算とは、ある一定の要件を満たした場合、基本の単位数にプラスして報酬の算定をおこなうことを指します。
加算は国が進めていきたい方向や、均衡を保つためのもの、また訪問介護事業所として備えるべき仕組みや制度を要件として創設され、反対に減算は仕組みや制度として無くしたい、評価できないと考えているものについて創設されています。
加算・減算の要件を知ることは、今後国が介護サービスをどういった方向に進めていきたいかを知ることにも繋がるためとても大切です。
訪問看護サービスで算定できる加算は以下の通りです。
訪問看護サービスの基本報酬は、サービス提供時間に応じて以下のように定められていますが、1時間30分以上の訪問看護をおこなう場合、300単位が加算されます。
区分 | 単位数 |
20分未満*¹ | 314単位 |
30分未満 | 471単位 |
30分以上1時間未満 | 823単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 1,128単位 |
1時間30分以上 | 1,128+300単位 |
理学療法士、作業療法士または言語聴覚士の場合*² | 294単位 |
*¹:週に1回以上、20分以上の保健師または看護師による訪問を行った場合算定可能
*²:1日に2回を超えて実施する場合は90/100
区分 | 単位数 |
20分未満*¹ | 266単位 |
30分未満 | 399単位 |
30分以上1時間未満 | 574単位 |
1時間以上1時間30分未満 | 844単位 |
1時間30分以上 | 844+300単位 |
夜間・早朝・深夜にサービス提供をおこなった場合、サービス提供1回ごとに基本単位数に加算がおこなわれます。なお、夜間・早朝・深夜の定義および加算率については以下の通りです。
区分 | 定義 | 加算率 |
早朝 | 午前6時~午前8時 | 基本単位数+25% |
夜間 | 午後6時~午後10時 | 基本単位数+25% |
深夜 | 午後10時~午前6時 | 基本単位数+50% |
なお、利用時間が長時間にわたる場合に、加算の対象となる時間帯におけるサービス提供時間が全体のサービス提供時間に占める割合がごくわずかな場合(半数を切る)においては、加算は算定できないため注意してください。
1人で看護をおこなうことが難しい利用者に対して、看護師等が2名もしくは看護師等1名と看護補助者1名でサービス提供をおこなう場合、複数名訪問加算の算定が可能です。
複数名訪問加算はⅠとⅡに分かれており、それぞれの単位数と算定要件は以下の通りです。
加算区分 | 算定要件 | サービス提供時間 | 単位数 |
複数名訪問加算(Ⅰ) | 2人の看護師等によるサービス提供 | 30分未満 | 254単位 |
30分以上 | 402単位 | ||
複数名訪問加算(Ⅱ) | 看護師等と看護補助者によるサービス提供 | 30分未満 | 201単位 |
30分以上 | 317単位 |
定期巡回・随時対応訪問介護看護事業所は、訪問介護と訪問看護の両方を24時間体制で提供するサービス形態です。
定期巡回・随時対応訪問介護看護事業所と連携して、要介護5以上の利用者にサービス提供する場合、800単位の加算を算定できます。
特別地域訪問看護加算は、介護サービスの確保が著しく困難な地域において、介護サービスの提供をおこなっている事業所を評価する加算です。
特別地域加算については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
【2024年度改定対応】特別地域加算とは?対象地域や算定要件について詳しく解説
中山間地域等における小規模事業所加算とは、厚生労働大臣が定める地域に所在し、かつ、厚生労働大臣が定める施設基準に適合する指定訪問介護事業所、またはその一部として使用される事務所の訪問介護員等が指定訪問介護を行った場合に算定できる加算です。
サービス提供1回につき、基本単位数の10%にあたる単位数が加算されます。
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算とは、厚生労働大臣が定める地域に居住している利用者に対して、通常の事業の実施地域を越えて、指定訪問介護を行った場合に算定できる加算です。
サービス提供1回につき、基本単位数の5%にあたる単位数が加算されます。
緊急時訪問看護加算とは、緊急の連絡や緊急の相談、緊急時の訪問依頼などに対する体制を備えている場合に算定できる加算です。
緊急時訪問看護加算はⅠとⅡに分かれており、それぞれの単位数と算定要件は以下の通りです。
【算定要件】
次に掲げる基準のいずれにも適合すること
- 利用者又はその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること
- 緊急時訪問における看護業務の負担の軽減に資する十分な業務管理等の体制の整備が行われていること
【単位数】
区分 | 単位数(1ヵ月あたり) |
指定訪問看護ステーション | 600単位 |
病院または診療所 | 325単位 |
一体型定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所 | 325単位 |
【算定要件】
利用者又はその家族等から電話等により看護に関する意見を求められた場合に常時対応できる体制にあること
【単位数】
区分 | 単位数(1ヵ月あたり) |
指定訪問看護ステーション | 574単位 |
病院または診療所 | 315単位 |
一体型定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所 | 315単位 |
特別管理加算とは、医療依存度の高い持病者に特別な管理計画を提供する事業者に対して、月1回の報酬加算を行う仕組みのことを指します。
特別管理加算については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
訪問看護の特別管理加算とは?介護・医療保険の算定要件と注意点を詳しく解説!
専門管理加算は、専門性の高い看護師による計画的な管理を評価する加算です。以下の算定要件を満たした場合、1ヵ月あたり250単位の加算を算定できます。
【算定要件】
以下の専門の研修を受けた看護師または特定行為研修を修了した看護師が、指定訪問看護の実施に関する計画的な管理を行った場合に、所定単位数に加算する。
- 緩和ケア、褥瘡ケア又は人工肛門ケア及び人工膀胱ケアに係る専門の研修を受けた看護師が計画的な管理を行った場合
- 悪性腫瘍の鎮痛療法又は化学療法を行っている利用者
- 真皮を越える褥瘡の状態にある利用者
- 人工肛門又は人工膀胱を造設している者で管理が困難な利用者
- 特定行為研修を修了した看護師が計画的な管理を行った場合
- 診療報酬における手順書加算を算定する利用者
※対象の特定行為
- 気管カニューレの交換
- 胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換
- 膀胱ろうカテーテルの交換
- 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去
- 創傷に対する陰圧閉鎖療法
- 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整
- 脱水症状に対する輸液による補正
ターミナルケア加算とは、介護保険の利用者に対して体制が整っている訪問看護事業所がターミナルケアを行うことで算定できる加算のことです。
ターミナルケア加算については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
【2024年改定対応】ターミナルケア加算とは?単位数や算定要件について徹底解説!
遠隔死亡診断補助加算は、看護師が情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助をおこなったケースを評価する加算です。以下の算定要件を満たした場合、1回につき150単位を加算できます。
【算定要件】
情報通信機器を用いた在宅での看取りに係る研修を受けた看護師が、医科診療報酬における死亡診断加算を算定する利用者について、主治医の指示に基づき、情報通信機器を用いて医師の死亡診断の補助を行った場合に、所定単位数に加算する。
初回加算は訪問看護の新規利用者に対して算定できる加算です。
初回加算については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
【2024年改定対応】訪問看護の初回加算とは?改定後の算定要件や注意点を詳しく解説
退院時共同指導加算は地域の訪問看護ステーションと医療機関との連携強化を評価するために作られた加算です。
退院時共同指導加算については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
【2024年改定対応】退院時共同指導加算とは?算定要件や注意点を詳しく解説!
看護・介護職員連携強化加算は、訪問看護の職員が訪問介護事業所と連携し、利用者に関わる計画作成の支援などをおこなった場合に1ヵ月あたり250単位を算定できる加算です。算定要件は以下の通りです。
【算定要件】
- 喀痰吸引等の業務が円滑に行われるように、たんの吸引等に係る計画書と報告書を作成し、緊急時の対応について助言を行うこと
- 当該訪問介護員に同行して利用者の居宅において業務の実施状況の確認すること、または利用者に対する安全なサービス提供体制整備・連携体制確保のための会議に出席すること
- 同行や会議への出席の内容を記録すること
- 訪問看護が24時間おこなえる体制を整えている事業所として、緊急時訪問看護加算の届出をしていること
看護体制強化加算とは、緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算の実績が一定以上ある事業所を評価するための加算です。
緊急時訪問看護加算はⅠとⅡに分かれており、それぞれの単位数と算定要件は以下の通りです。
【算定要件】
次に掲げる基準のいずれにも適合すること*¹
- 緊急時訪問看護加算を算定した利用者が全体の50%以上であること(算定日が属する月の前6ヵ月において)
- 特別管理加算を算定した利用者が全体の20%以上であること(算定日が属する月の前6ヵ月において)
- ターミナルケア加算を算定した利用者が5名以上であること(算定日が属する月の前12ヵ月において)
- 従業者の総数のうち看護職員の占める割合が60%以上であること*²
*¹:指定訪問看護ステーションもしくは、病院または診療所の場合のみ算定可能
*²:指定訪問看護ステーションの場合のみ満たす必要がある
【算定要件】
次に掲げる基準のいずれにも適合すること*¹
- 緊急時訪問看護加算を算定した利用者が全体の50%以上であること(算定日が属する月の前6ヵ月において)
- 特別管理加算を算定した利用者が全体の20%以上であること(算定日が属する月の前6ヵ月において)
- ターミナルケア加算を算定した利用者が1名以上であること(算定日が属する月の前12ヵ月において)
- 従業者の総数のうち看護職員の占める割合が60%以上であること*²
*¹:指定訪問看護ステーションもしくは、病院または診療所の場合のみ算定可能
*²:指定訪問看護ステーションの場合のみ満たす必要がある
口腔連携強化加算は、介護施設と歯科医院が情報連携を実施することで算定できる加算です。
口腔連携強化加算については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
口腔連携強化加算とは?算定要件や必要な準備について解説
サービス提供体制強化加算は、介護福祉士など介護職員の資格の有無や勤続年数などをもとに、より質の高いサービスを提供する体制が整っている事業所を評価するために創設された加算です。
サービス提供体制強化加算については以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
サービス提供体制強化加算とは?単位数や算定要件について徹底解説!
訪問看護サービスで減算となってしまうものは以下の通りです。
准看護師によるサービス提供をおこなう場合は、所定単位数に対して90%で算定されます。
高齢者虐待防止措置未実施減算は、利用者への虐待の発生や再発を防止するための措置が講じられていない場合に適用される減算です。
以下の対策などを講じていない場合、所定単位数×1%の減算となります。
業務継続計画未策定減算は、感染症や非常災害の発生時にむけた業務継続計画(BCP)の策定をおこなっていない場合に適用される減算です。所定単位数×1%の減算となります。
介護保険給付の公平性を確保する観点から、事業所と同一建物に居住する利用者へのサービス提供は効率的にできることから減算の対象になります。
算定要件および減算率は以下の通りです。
No | 区分 | 減算率 |
1 | 事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する者*¹ | 10% |
2 | 事業所と同一敷地内又は隣接する敷地内に所在する建物に居住する利用者が、1ヵ月あたり50人以上の場合 | 15% |
3 | 1以外の範囲に所在する建物に居住する利用者が、1ヵ月あたり20人以上の場合 | 10% |
*¹:2の場合を除く
医療保険の訪問看護が必要である場合、主治医が発行する訪問看護指示期間の日数1日につき、97単位の減算となります。
以下の要件を満たしている場合、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問1回につき8単位が減算となります。
【算定要件】
- 訪問看護事業所における前年度の理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること
- 緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算をいずれも算定していないこと
加算は、一定の要件を満たすことによって報酬が得られるものです。運営指導時には要件を満たしているかの確認が行われます。要件をしっかり守り、守ったことが分かるように書類に残す必要があります。