2024年の介護報酬改定では、口腔連携強化加算が新設されます。この加算は、介護事業所と歯科医院との連携を強化することを目的とした加算です。
口腔連携強化加算の取得に向けて、算定要件や算定単位数などを詳しく知りたい介護施設経営者も多いのではないでしょうか。
この記事では、口腔連携強化加算の算定要件や単位数について詳しく解説します。また、この記事を読むことで、加算取得に向けて今からできることもわかります。
目次
口腔連携強化加算は、介護施設と歯科医院が情報連携を実施することで算定できる加算です。
厚生労働省の資料「介護保険最新情報リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」では、口腔連携強化加算について以下のように記載しています。
【口腔連携強化加算に関する基本的な考え方】
口腔連携強化加算は、介護事業所が口腔の健康状態の評価の方法や在宅歯科医療等について歯科医療機関に相談できる体制を構築するとともに、口腔の健康状態の評価の実施並びに歯科医療機関及びに介護支援専門員への情報提供することを評価したものである。これにより、利用者毎の口腔の健康状態の把握並びに歯科専門職の確認を要する状態の利用者の把握を通じて、歯科専門職による適切な口腔管理の実施につなげることが目的である。
引用:厚生労働省「介護保険最新情報vol.1217 リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」
口腔連携強化加算の目的は、歯科医療機関からの専門的な情報共有を通じて、利用者に適切な口腔ケアを提供することです。
ここでは、口腔連携強化加算の算定条件や単位数などについて詳しく解説します。
厚生労働省の資料「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」によると、口腔連携強化加算の算定要件として、2つの事項が示されています。
【口腔連携強化加算の算定要件】
- 事業所の従業者が、口腔の健康状態の評価を実施した場合において、利用者の同意を得て、歯科医療機関及び介護支援専門員に対し、当該評価の結果を状況提供した場合に、1月に1回に限り所定単位数を加算する。
- 事業所は利用者の口腔の健康状態に係る評価を行うに当たって、診療報酬の歯科点数表区分番号にC000に掲げる歯科訪問診療料の算定の実績がある歯科医療機関の歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、当該従業者からの相談等に対応する体制を確保し、その旨を文書等で取り決めていること。
引用:厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」
口腔連携強化加算の算定要件には「情報提供」と「相談体制の確保」という2つのポイントがあります。
「情報提供」のポイントとして、歯科医療機関やケアマネージャーに対する情報提供を実施することが求められます。情報提供をする際には、施設の職員が口腔の健康状態を評価する必要があるため、評価方法や記録方法などを理解しておくことが重要です。
2024年3月時点では、情報提供の頻度や回数に関する詳しい情報が開示されていません。今後、詳細な情報が公開される可能性はあるため、厚生労働省の最新情報に注意しておきましょう。
「相談体制の確保」のポイントとしては、必要に応じて相談できる歯科医療機関と連携することが求められています。ただ連携するだけでなく、具体的な連携内容を示した文書を取り交わす必要がある点には注意しましょう。
厚生労働省の資料「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」では、口腔連携強化加算を算定できる対象施設として以下の6施設が記載されています。
口腔連携強化加算の算定単位数は「50単位/回」です。
利用者の同意を得た後に、歯科医療機関やケアマネージャーに口腔の健康状態を評価した情報を提供することで、1人につき1月に1回算定できます。
厚生労働省では、これまで高齢者に対する歯科治療の重要性について多くの議論を重ねてきました。
厚生労働省の資料「口腔・栄養(改定の方向性)」では、訪問サービスと短期入所サービスにおける口腔管理の連携に対して以下のような意見が出されています。
【訪問サービスと短期入所サービスにおける口腔管理の連携に対する評価】
<論点>
- 高齢者は歯科治療が必要である者においても、治療が行われていない現状がある。特に在宅療養者においては、治療が行われていない割合が多い。
- 訪問サービスや短期入所サービスにおいては、口腔に問題がある利用者の把握や歯科医療機関との連携における評価はない。
- 歯科医師に対して利用者の口腔に関する情報提供を行った介護支援専門員は約3割であり、情報提供しなかった理由として、「担当する歯科医師に伝えるべき情報を取得していないため」であった。
- 歯科医療従事者に相談できる環境が口腔アセスメント実施を促している可能性があるとした報告もある。
- 在宅療養者において個々の口腔の状態を効率的に把握し、適切な口腔管理や口腔の状態の改善の取組につなげていく観点から、どのような対応が考えられるか。
多くの高齢者にとって歯科治療の重要性が高いにもかかわらず、これまでの介護保険制度では歯科医療機関との連携を評価する加算はありませんでした。
ケアマネージャーと歯科医師が連携できない理由として、ケアマネージャーが必要な情報を取得していないことが挙げられています。
介護施設が口腔連携強化加算を算定することで、ケアマネージャーが利用者の口腔状態に関する情報を取得し、介護施設はより良いサービスを提供できるでしょう。
口腔連携強化加算を算定するためには、事業所で利用者の口腔の健康状態について評価する必要があります。
厚生労働省の資料「介護保険最新情報vol.1217リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」では、事業所で実施する評価内容として以下の10項目が挙げられています。
上記の10項目のうち「その他」以外の項目は2つの選択肢から選ぶ方式になっているため、比較的容易に評価を実施できます。
評価内容を記載する様式は、別紙様式6(訪問系)と別紙様式11(施設系)があり、それらの書類を連携先の歯科医療機関やケアマネージャーに提出することで連携強化を図ります。様式は厚生労働省の公式サイトからダウンロード可能です。
今後、口腔連携強化加算の算定を検討している場合、今から準備を進めていくことでスムーズに加算を算定できます。
ここでは、口腔連携強化加算の算定に向けて準備すべきことについて詳しく解説します。
口腔連携強化加算を算定するためには、歯科医療機関と連携して、施設従業員からの相談等に対応してもらえる体制を構築しておく必要があります。そのため、口腔連携強化加算の算定に向けて、提携できる歯科医療機関を探しておくとよいでしょう。
2023年3月時点では、提携先となる歯科医療機関の条件として「歯科点数表区分番号C000に掲げる歯科訪問診療料の算定実績がある歯科医療機関」という内容が含まれています。
周辺の歯科医療機関の中で、訪問診療を行っている歯科医院を探し、連携できないか相談するとよいでしょう。ただし、連携する際には必ず文書で提携内容を残し、施設の従業員からの相談に対応してもらえる旨を記載することも必要です。
口腔連携強化加算を算定するためには、事業所内で職員が口腔機能評価を実施する必要があります。口腔の健康評価を実施していない事業所は、早めに口腔機能評価を始めておくとよいでしょう。
また、厚生労働省では実際に口腔連携強化加算で使用する評価用紙も公開しています。それらの用紙を使って、算定する前から実際に利用者の口腔評価を実践していくのもよいでしょう。
加算を算定する前から口腔評価を実践していることで、スムーズに口腔連携強化加算を算定できます。
特に、口腔に関する専門知識を持った職員が少ない施設では、口腔の健康管理に関する勉強会を開催するのもおすすめです。
口腔連携強化加算とは、介護施設と歯科医療機関との連携を強化するため、2024年介護報酬改定で新設される加算です。
口腔連携強化加算を算定するためには、事業所の職員が口腔の健康に関する評価を実施することと、事業所職員が相談できる歯科医療機関と提携する必要があります。
それらの算定要件を満たすためには、施設内では実際に口腔機能評価を始めて、施設外では提携先の歯科医療機関を探すことから始めるとよいでしょう。
スムーズに口腔連携強化加算を算定するため、加算取得の前に事業所内外で準備を進めることをおすすめします。
【参考資料】
厚生労働省「介護保険最新情報vol.1217 リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」
厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」
厚生労働省「口腔・栄養(改定の方向性)」