訪問看護サービス事業者が収益力をつける手段の一つに特別管理加算があります。従業員の待遇改善にも役立つ制度ですが、要件適用には細かくルールが定められており、馴染みのない方にとっては非常に煩雑な内容に感じるかもしれません。そこで本記事では、特別管理加算取得を検討する事業者向けに制度の内容や申請時の必要事項、注意点について解説します。
目次
特別管理加算とは、医療依存度の高い持病者に特別な管理計画を提供する事業者に対して、月1回の報酬加算を行う仕組みのことです。サービス形態によって要件が変わるほか、区分も複数に分かれるため、詳しく確認しておきましょう。
特別管理加算は、訪問看護サービスを受ける利用者が介護または医療、どちらのケアを受ける場合もあることから介護保険と医療保険、どちらにもあります。
特別管理加算は、利用者の処置の難しさに応じて「特別管理加算Ⅰ」と「特別管理加算Ⅱ」の2種類の評価に分かれます。次の章で詳しく説明していますが、特別管理加算Ⅰ・特別管理加算Ⅱではそれぞれ加算額が異なります。
介護(予防)保険について、特別管理加算が適用された場合の単位数と算定に必要な要件について説明します。
介護(予防)保険における特別管理加算の単位数は以下の通りです。
特別管理加算の種類 | 単位数 |
特別管理加算Ⅰ | 500 |
特別管理加算Ⅱ | 200 |
※単位数は1ヵ月あたり
介護(予防)保険における特別管理加算の対象者は加算区分ごとに以下の通りです。
特別管理加算Ⅰの対象者は以下のいずれかに該当する方になります。
特別管理加算Ⅱの対象者は以下のいずれかに該当する方になります。
介護(予防)保険の特別管理加算の算定要件は以下の3つです。
介護保険の特別管理加算では主に3つの注意点があります。また介護保険、介護予防保険では内容が異なる点もあるのであわせて確認してください。
医療保険について、特別管理加算が適用された場合の単位数と算定に必要な要件について説明します。
特別管理加算の算定料は以下の通りです。
特別管理加算の種類 | 算定料 |
特別管理加算Ⅰ | 2,500円 |
特別管理加算Ⅱ | 5,000円 |
※算定料は1カ月あたり
介護(予防)保険における特別管理加算の対象者は加算区分ごとに以下の通りです。
特別管理加算Ⅰの対象者は以下のいずれかに該当する方になります。
特別管理加算Ⅱの対象者は以下のいずれかに該当する方になります。
医療保険の特別管理加算の算定には以下3つの要件をクリアしていなければなりません。
医療保険の特別管理加算では以下の点に注意しましょう。
実際に特別管理加算の算定を進めるにあたり以下の項目が必要です。
特別管理加算の算定には「緊急時訪問看護加算・特別管理体制・ターミナルケア体制に関わる届出書」が必要です。書類は厚生労働省のWebサイトにフォーマットがあります。必要項目を記載し地方厚生局宛に提出しましょう。
特別管理加算では以下の点にも注意しましょう。
特別管理加算では介護保険と医療保険の同時適用は認められません。
利用者の記録における注意点は厚生労働省より提供されている情報を基に下記2点に気をつけましょう。
ドレーンチューブを計画的な管理の下で使用している場合のみ算定できます。言い換えるとドレーンチューブを一時的な処置のみで使っている場合は特別管理加算は算定されません。
経皮経肝胆管ドレナージチューブなど留置されているドレーンチューブについては、留置カテーテルと同様に計画的な管理を行っている場合は算定できる。ただし、処置等のため短時間、一時的に挿入されたドレーンチューブについては算定できない。なお、定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び複合型サービスの特別管理加算についても同様の取扱いとなる。
引用:WAM NET「平成24年度介護報酬改定に関する関係 Q&A(平成24年3月16日)について 」
留置カテーテルを計画的に管理している場合は算定できます。単に挿入されているだけでは計画的な管理とは言えず算定基準を満たしません。排液の性状、量などの観察、薬剤の注入、水分バランスの計測などを実施していることが計画的管理とみなされます。
留置カテーテルからの排液の性状、量などの観察、薬剤の注入、水分バランスの計測等、計画的な管理を行っている場合は算定できるが、単に留置カテーテルが挿入されているだけでは算定できない。また、輸液用のポート等が挿入されている場合であっても、訪問看護において一度もポートを用いた薬剤の注入を行っていない場合は、計画的な管理が十分に行われていないため算定できない。なお、定期巡回・随時対応型訪問介護看護及び複合型サービスの特別管理加算についても同様の取扱いとなる。
引用:WAM NET「平成24年度介護報酬改定に関する関係 Q&A(平成24年3月16日)について 」
経管栄養や中心静脈栄養の状態の場合は、特別管理加算(Ⅰ)を算定します。
経管栄養や中心静脈栄養の状態にある利用者は留置カテーテルを使用している状態にある者であるため、特別管理加算(Ⅰ)を算定する。
引用:WAM NET「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.3)(平成24年4月25日)について」
必ずしも在宅患者訪問点滴注射指示書である必要はありません。そのほかの様式でも医師の指示であることが分かる形であれば有効です。
在宅患者訪問点滴注射指示書である必要はなく、医師の指示があることがわかれば通常の訪問看護指示書その他の様式であっても差し支えない。ただし、点滴注射の指示については7日毎に指示を受ける必要がある。
引用:WAM NET「平成24年度介護報酬改定に関する関係 Q&A(平成24年3月16日)について 」
点滴注射を7日間の医師の指示期間に3日以上実施していれば算定可能です。
点滴注射を7日間の医師の指示期間に3日以上実施していれば算定可能である。
例えば4月28日(土曜日)から5月4日(金曜日)までの7日間点滴を実施する指示が出た場合(指示期間)は、算定要件を満たす3日目の点滴を実施した4月に特別管理加算を算定する。加算は医師の指示期間につき1回算定できるが、月をまたいだ場合でも、4月、5月それぞれ3回以上点滴を実施しても両月で特別管理加算を算定することはできない。なお、上記の場合、5月中に再度点滴注射の指示があり要件を満たす場合は、5月も算定可能となる。
引用:WAM NET「平成24年度介護報酬改定に関するQ&A(vol.2)(平成24年3月30日)について」
理学療法士による訪問看護は、国が定めるところの「計画的な管理」に該当しないため特別管理加算として算定できません。
特別管理加算は介護保険と医療保険のそれぞれあり、その両方で算定要件が異なります。要件の違いを理解したうえで、管理を行っている利用者がどちらの算定に該当するのか十分に把握し、適切な算定をおこないましょう。