2024年2月6日に開催された障害福祉サービス等報酬改定検討チーム(第45回)にて、2024年の障害福祉サービス等の報酬改定の内容が定められました。本記事では障害福祉サービス全体の報酬改定の内容について解説します。
目次
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定において、複数のサービス種別をまたいで影響のあるポイントは以下の通りです。
福祉・介護職員などの処遇改善を目的として設けられている、処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算について見直しがおこなわれます。3加算を一本化し算定要件を改めて「福祉・介護職員等処遇改善加算」として新たに設けられる見込みです。
なお、処遇改善加算の一本化については以下の記事で詳しく解説しているのであわせてご確認ください。
【2024年介護報酬改定】処遇改善加算が一本化!変更点とポイントは?
障害者の重度化・高齢化や、親亡き後を見据えた居住支援としての機能をもつ体制のことを指す地域生活支援拠点などについて、機能の充実を図ることを目的に加算の新設や算定要件の見直しがおこなわれます。追加・変更点は以下の通りです。
地域生活支援拠点などにおいて、情報連携などを担うコーディネーターの配置を評価することを目的に、地域生活支援拠点等機能強化加算が新設されます。単位数は月当たり500単位で、対象のサービスや算定要件は以下の通りです。
【対象のサービス】
【算定要件】
以下のうち、いずれかに該当すること。
- 計画相談支援及び障害児相談支援*¹と自立生活援助、地域移行支援及び地域定着支援のサービスを一体的に運営し、かつ、地域生活支援拠点等に位置付けられた相談支援事業者等において、情報連携等を担うコーディネーターを常勤で1以上配置されている場合
- 計画相談支援及び障害児相談支援*¹、自立生活援助、地域移 行支援及び地域定着支援に係る複数の事業者が、地域生活支援拠点等の ネットワークにおいて相互に連携して運営されており、かつ、地域生活 支援拠点等に位置付けられた場合であって、当該事業者又はネットワーク上の関係機関*²において、情報連携等を担うコーディネーターが常勤で1以上配置されている場合
*¹:機能強化型(継続)サービス利用 支援費(Ⅰ)又は(Ⅱ)を算定する場合に限る
*²:基幹相談支援センター等
※算定人数の上限は配置されたコーディネーター1人につき1月当たり合計100回までとする
平時からの情報連携を整えた通所系サービス事業所について、緊急時の受入れを評価することを目的に緊急時受入加算が新設されます。単位数は1日当たり100単位で、対象のサービスや算定要件は以下の通りです。
【対象のサービス】
【算定要件】
地域生活支援拠点等に位置付けられ、かつ、関係機関との連携調整に従事す る者を配置する通所系サービス事業所において、障害の特性に起因して生じた 緊急事態等の際に、夜間に支援を行った場合に加算する。
緊急時対応加算について、関係機関との連携調整に従事する者を配置することが要件に加えられます。改定後の算定要件は以下の通りです。
【算定要件(居宅介護の例)】
地域生活支援拠点等に位置付けられ、かつ、関係機関との連携調整に従事する者を配置している場合に、更に1回につき50単位を加算する。
強度行動障害を有する障害者のうち、支援が困難な状態にある児者の受け入れ拡大や支援の充実の観点から重度障害者支援加算の拡充がおこなわれます。変更後の算定要件はサービス形態ごとに以下の通りです。
【重度障害者支援加算(Ⅱ)】
- 生活支援員のうち20%以上の基礎研修修了者を配置し、区分6かつ行動関連項目10点以上の者に対して、実践研修修了者作成の支援計画シート等に基づき個別支援を行った場合(360単位/日)
※個別支援を開始した日から180日以内は+500単位/日- 1を満たした上で、行動関連項目18点以上の者に対して、中核人材養成研修修了者作成の支援計画シート等に基づき個別支援を行った場合(1に加えて150単位/日)
※個別支援を開始した日から180日以内は1※に加えて200単位/日
【重度障害者支援加算(Ⅲ)】
- 生活支援員のうち20%以上の基礎研修修了者を配置し、区分6以上かつ行動関連項目10点以上の者に対して、実践研修修了者作成の支援計画シート等に基づき個別支援を行った場合(180単位/日)
※個別支援を開始した日から180日以内は+400単位/日- 1を満たした上で、行動関連項目18点以上の者に対して、中核人材養成研修修了者作成の支援計画シート等に基づき個別支援を行った場合(1に加えて150単位/日)
※個別支援を開始した日から180日以内は1※に加えて200単位/日
※重度障害者支援加算(Ⅱ)および(Ⅲ)は、指定障害者支援施設等が施設入所者に指定生活介護等の提供を行った場合は算定しない
【重度障害者支援加算(Ⅰ)】
- 区分6かつ行動関連項目10点以上の者等を受け入れた場合(50単位/日)
※実践研修修了者作成の支援計画シート等に基づき、基礎研修修了者が支援を行った場合(+100単位/日)- 1を満たした上で、行動関連項目18点以上の者に対して、中核人材養成研修修了者作成の支援計画シート等に基づき支援を行った場合(1に加えて50単位/日)
【重度障害者支援加算(Ⅱ)】
- 区分4以上かつ行動関連項目10点以上の者等を受け入れた場合(30単位/日)
※実践研修修了者作成の支援計画シート等に基づき、基礎研修修了者が支援を行った場合(+70単位/日)- 1を満たした上で、行動関連項目18点以上の者に対して、中核人材養成研修修了者作成の支援計画シート等に基づき支援を行った場合(1に加えて50単位/日)
【重度障害者支援加算(Ⅰ)】
- 生活支援員のうち20%以上の基礎研修修了者を配置し、区分6かつ行動関連項目10点以上の者に対して、実践研修修了者作成の支援計画シート等に基づき個別支援を行った場合(360単位/日)
※個別支援を開始した日から180日以内は+500単位/日- 1を満たした上で、行動関連項目18点以上の者に対して、中核人材養成研修修了者作成の支援計画シート等に基づき個別支援を行った場合(1に加えて150単位/日)
※個別支援を開始した日から180日以内は1※に加えて200単位/日
【重度障害者支援加算(Ⅱ)】
- 生活支援員のうち20%以上の基礎研修修了者を配置し、区分4以上かつ行動関連項目10点以上の者に対して、実践研修修了者作成の支援計画シート等に基づき個別支援を行った場合(180単位/日)
※個別支援を開始した日から180日以内は+400単位/日- 1を満たした上で、行動関連項目18点以上の者に対して、中核人材養成研修修了者作成の支援計画シート等に基づき個別支援を行った場合(1に加えて150単位/日)
※個別支援を開始した日から180日以内は1※に加えて200単位/日
状態が悪化した強度行動障害を有する児者に対して、適切なアセスメントと有効な支援方法の整理をともに行い、環境調整を進めることを評価するために、集中的支援加算が新設されます。単位数・対象のサービス・算定要件はそれぞれ以下の通りです。
強度行動障害を有する児者の状態が悪化した場合に、広域的支援人材が指定障害者支援施設、共同生活援助事業所等を訪問し、集中的な支援を行った場合、3月以内の期間に限り1月に4回を限度として所定単位数を加算する。
指定短期入所事業所、指定障害者支援施設、指定共同生活援助事業所又は指定障害児入所施設が、集中的な支援が必要な利用者を他の指定障害福祉サービス事業所又は指定障害者支援施設等から受け入れ、当該利用者に対して集中的な支援を行った場合、3月以内の期間について、1日につき所定単位数を加算する。
※集中的支援加算(Ⅱ)を算定する場合、集中的支援加算(Ⅰ)の弊算定が可能
感染症発生時に備えた平時からの対応として、医療機関との連携や新興感染症の発生時などにおける対応を取り決めること、および協力医療機関が協定締結医療機関である場合に、新興感染症の発生時等における対応についても協議を行うことが義務付けられます。
また、感染症発生時における施設内感染防止などを目的に、平時から一定の体制を構築していることや、施設内で感染者が発生した場合の感染制御などの実地指導を受けることについて加算で評価がおこなわれます。
対象サービスは、施設入所支援・共同生活援助・福祉型障害児入所施設で、加算の算定要件や単位数はそれぞれ以下の通りです。
- 指定障害者支援施設等は、第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を取り決めるよう努めなければならない
- 指定障害者支援施設等は、協力医療機関が第二種協定指定医療機関である場合においては、当該第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応について協議を行わなければならない
- 第二種協定指定医療機関との間で、新興感染症の発生時等の対応を行う体制を確保していること
- 協力医療機関等との間で、感染症の発生時の対応を取り決めるとともに、感染症の発生時に、協力医療機関等と連携し適切に対応することが可能であること
- 医科診療報酬点数表の感染対策向上加算又は外来感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関が行う院内感染対策に関する研修又は訓練に1年に1回以上参加していること
医科診療報酬点数表の感染対策向上加算に係る届出を行った医療機関から3年に1回以上実地指導を受けているものとして都道府県知事に届け出た指定施設入所支援等の単位において、1月につき所定単位数を加算する
入所者が別に厚生労働大臣が定める感染症に感染した場合に、相談対応、診療、入院調整等を行う医療機関を確保している指定障害者支援施設等において、当該入所者に対し、適切な感染対策を行った上で、指定施設入所支援等を行った場合に、1月に5日を限度として所定単位数を加算する
※別に厚生労働大臣が定める感染症については、今後のパンデミック発生時に必要に応じて指定する
サービス利用者の人権を守り虐待を予防する観点から、虐待防止措置未実施減算が新設されます。なお、虐待防止措置を講じることは2021年度の介護報酬改定にて義務化されており、経過措置期間が2024年度まで設けられていました。算定要件は以下の通りです。
【虐待防止措置未実施減算】
以下の基準を満たしていない場合に、所定単位数の1%を減算する。
- 虐待防止委員会を定期的に開催するとともに、その結果について従業者 に周知徹底を図ること
- 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること
- 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと
食事提供体制加算は2024年3月31日までの経過措置として設けられていた加算ですが、2027年3月31日まで経過措置が延長されたうえで、食事提供時における栄養面での配慮を評価する観点から見直しがおこなわれます。見直し後の算定要件は以下の通りです。
【算定要件】
収入が一定額以下*¹の利用者に対して、事業所が原則として当該施設内の調理室を使用して、次の1から3までのいずれにも適合する食事の提供を行った場合に所定単位数を加算する。
- 管理栄養士又は栄養士が献立作成に関わること(外部委託可)又は、栄養ケア・ステーション若しくは保健所等の管理栄養士又は栄養士が栄養面について確認した献立であること
- 利用者ごとの摂食量を記録していること
- 利用者ごとの体重やBMIを概ね6月に1回記録していること
*¹:生活保護受給世帯、市町村民税非課税世帯、所得割16万円未満
補足給付とは、低所得の施設入所者の負担を軽減することを目的に、食費や居住に要する費用を、所得に応じた負担限度額を控除した差額として支給されている費用のことを指します。
補足給付の基準費用額は現行で54,000円でしたが、2024年度の報酬改定により55,000円に見直しとなります。
サービスを横断する改定のポイントについては、その他に以下のトピックで改定や変更がおこなわれています。
訪問系サービスにおける改定ポイントは以下の記事で紹介しています。
【2024年障害福祉報酬改定】訪問系サービスの改定ポイントまとめ|最新情報を元に一覧で徹底解説
日中活動系サービスにおける改定ポイントは以下の記事で紹介しています。
【2024年障害福祉報酬改定】日中活動系サービスの改定ポイントまとめ|最新情報を元に一覧で徹底解説
施設・居住支援系サービスにおける改定ポイントは以下の記事で紹介しています。
【2024年障害福祉報酬改定】施設・居住支援系サービスの改定ポイントまとめ|最新情報を元に一覧で徹底解説
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定において、訓練系サービスの改定ポイントは以下の通りです。
自立訓練(生活訓練)における個別計画訓練支援加算(Ⅰ)について、標準化された支援プログラムの実施と客観的な指標に基づく効果測定を行い、内容を公表している事業所を評価する観点から、以下の算定要件が追加されます。
支援プログラムの内容を公表するとともに、社会生活の自立度評価指標(SIM)に基づき利用者の生活機能の改善状況等を評価し、当該評価の結果を公表していること
自立訓練(機能訓練)における利用者の自立に向けた意欲の向上や、地域生活を続ける上での不安の解消を目指す観点から、ピアポート実施加算が新設されます。単位数は100単位/月で算定要件は以下となります。
各利用者に対し、一定の支援体制*¹のもと、ピアサポートを実施した場合に、当該支援を受けた利用者の数に応じ、各月単位で所定単位数を加算する
*¹:障害者ピアサポート研修(基礎研修及び専門研修)を修了した障害者(障害者であったと都道府県等が認める者を含む。)と管理者等を2名以上配置し、これらの者により各事業所の従業員に対し、障害者に対する配慮等に関する研修が年1回以上行われていること
訓練系サービスについては、その他に以下のトピックで改定や変更がおこなわれています。
2024年度の障害福祉サービス等報酬改定において、就労系サービスの改定ポイントは以下の通りです。
現行の規程では、就労移行支援事業所は定員を20人以上とする必要がありましたが、今回の改定で10人以上に変更される見込みです。なお、離島などにおいてはかねてより10人以上の規程となっていましたが、今回の改定で変更はありません。
経営状況の改善や一般就労への移行などを促すことを目的に、スコア方式による評価項目について、以下の観点で見直しがおこなわれます。
- 事業者の経営改善への取組が一層評価されるよう、「生産活動」のスコア項目の点数配分を高くするなど、各評価項目の得点配分の見直しを行う
- 労働時間の評価について、平均労働時間が長い事業所の点数を高く設定する
- 生産活動の評価について、生産活動収支が賃金総額を上回った場合には加点、下回った場合には減点する
- 利用者の知識及び能力の向上のための支援の取組を行った場合について新たな評価項目を設ける
- 経営改善計画書未提出の事業所及び数年連続で経営改善計画書を提出しており、運営基準を満たすことができていない事業所への対応として、自治体による指導を行うとともに、経営改善計画に基づく取組を行っていない場合について新たにスコア方式に減点項目を設ける
就労系サービスについては、その他に以下のトピックで改定や変更がおこなわれています。
相談系サービスにおける改定ポイントは以下の記事で紹介しています。
【2024年障害福祉報酬改定】相談系サービスの改定ポイントまとめ|最新情報を元に一覧で徹底解説
障害児支援における改定ポイントは以下の記事で紹介しています。
【2024年障害福祉報酬改定】障害児支援の改定ポイントまとめ|最新情報を元に一覧で徹底解説
2024年度の障害報酬改定について、大枠の改定内容が明らかになりました。今後詳細なQ&Aなどが回答されることが予想されるので、最新の情報から目を離さずに対応を進めていきましょう。