訪問介護事業所が介護保険法に基づいて適切に運営されているかどうか、都道府県等が定期的に行うものが訪問指導です。
その際に訪問介護事業所は、様々な書類を準備する必要があります。
こちらの記事では、訪問指導において準備すべき必要書類の種類や確認項目について詳しくご紹介します。
目次
各都道府県の担当者が訪問介護事業所を訪れて、保険給付の適正化や質の良いサービスの確保を目的として現状確認をするのが訪問指導です。
確認する内容によりオンラインツールを使用して実施されることもあります。
有効期間は6年間で、その間に少なくとも1回以上は実施されます。
訪問指導において何か指摘される点があった場合は「助言」「口頭指導」「文書指導」等、程度に応じた指導を受けることになります。
訪問指導についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
実地指導・運営指導とは?点検項目・当日の流れ・監査との違いについてご紹介
訪問指導を受けるにあたって、必要書類や確認項目を前もって知っておくのがいいでしょう。
訪問指導が行われる前には通知書が届きますが、それから準備するとなると大変です。
また訪問介護事業所は、施設系の事業所よりも加算関係についての指摘が比較的多い傾向にあります。
計画書や実績報告書、数字などは、あらかじめ確認しておくことでスムーズに訪問指導を受けることができます。
以下では、必要書類と確認項目について具体的に説明します。
厚生労働省の報告による確認文書一式は以下の通りです。
確認される書類の一覧 | 重要事項説明書 (利用申込者又は家族の同意があったことがわかるもの) 利用契約書 サービス担当者会議の記録 サービス担当者会議の記録 居宅サービス計画 サービス提供記録 居宅サービス計画 訪問介護計画 (利用者又は家族の同意があったことがわかるもの) アセスメントシート モニタリングシート 勤務実績表/タイムカード 勤務体制一覧表 訪問介護員等の資格証 管理者の雇用形態が分かる文書 管理者の勤務実績表/タイムカード 介護保険番号、有効期限等を確認している記録等 請求書 領収書 緊急時対応マニュアル サービス提供記録 運営規程 雇用の形態(常勤・非常勤)がわかる文書 研修計画、実施記録 方針、相談記録 業務継続計画 研修及び訓練計画、実施記録 感染症及び食中毒の予防及びまん延防止のための指針、研修の記録及び訓練の記録、対策を検討する委員会名簿、委員会の記録 個人情報同意書 従業者の秘密保持誓約書 パンフレット/チラシ 苦情の受付簿 苦情者への対応記録 苦情対応マニュアル 事故対応マニュアル 市町村、家族、居宅介護支援事業者等への報告記録 再発防止策の検討の記録 ヒヤリハットの記録 虐待防止の対策を検討する委員会の開催記録 虐待の発生、再発防止の指針 虐待防止の研修及び訓練計画、実施記録 担当者を設置したことが分かる文書 |
引用:厚生労働省
各都道府県によって必要書類には違いがあるので、HPにて確認してください。
上記の必要書類を大まかに分類し、種類ごとに解説していきます。
訪問指導の際に、事前に提出する必要書類があります。
事前に提出する理由は、運営基準に違反している点がないかの確認と、訪問指導当日に確認するポイントを絞るためです。
訪問指導を行う側は、事前にチェックしておくことで、当日は実際に適正な運用ができているかの確認と改善指導を行うだけで済みます。
各都道府県によって事前提出書類には違いがありますが、主な必要書類は以下の通りです。
・事業所平面図
・自己点検シート
・勤務実績表
・状況報告書
・事業概要が分かる書類(パンフレット等)
・運営規程
「自己点検シート」は、運営基準に基づいた運営が実施されているかどうかを確認するためで、不適切な点があれば当日に確認が行われます。
「運営規程」は、適切な内容が記載されているかどうか、また、それが実際に行われているかどうか確認するためです。
また「運営規程」や「パンフレット」については、提出日の時点で最新のものかどうかの確認も行われるので注意してください。
さらに、変更した場合に変更届が提出されたかどうかもチェックの対象です。
人員に関する必要書類は、資格の有無や利用者に対する介護職員の人数が適切かどうか、また、管理者の勤務形態が適切かどうかを確認するためのものです。
・従業員・管理者の勤務実績表/タイムカード
・勤務体制一覧(就業規則・給与規定・賃金台帳など)
・訪問介護員等の資格証・免許証(コピーでも可)
・管理者の雇用形態が分かる文書(雇用契約書・辞令・従事経験がわかる履歴書など)
・秘密保持誓約書
「勤務体制一覧」は、資格保有者が勤務しているかどうかの確認のためであり、訪問指導が行われる月を含めて3ヶ月分を必要としている場合や、前月分・直近3か月等様々です。
訪問指導の当日は、記載されている資格証の有無が確認される場合もあります。
また、事業所ごとの介護職員等の人数が、常勤換算2.5以上であるかどうかの確認も行われます。
サービス提供責任者においては、勤務体制や必要な資格や研修等を修了しているかなどもチェックの対象です。
適切な運営が行われているかどうか確認するための必要書類です。
・重要事項を記載した説明文書
・契約書
・個人情報使用の同意書
・訪問介護計画書
・アセスメント表等及び居宅サービス計画書
・マニュアル(緊急時対応・苦情対応・事故対応など)
・サービス提供の記録
・苦情・事故に関する記録
各種マニュアルは、利用者に対するサービスが適切であるかどうかの判断対象となります。
また、代替措置の経緯や再発防止に対する取り組みが行われているかの記録も重要な書類となります。
管理者・介護職員の資格はもちろん、利用者の被保険者資格・要介護認定の有無や有効期限の確認などを事業所が責任を持って行っているかどうかも要確認事項です。
訪問介護の目的は、利用者が自立した生活を行えるようになるための手助けをすること。
「訪問介護計画書」にはそれを達成するための具体的なサービスの内容が記載されているかが重要なポイントです。
訪問介護事業所が、従事している介護職員に対して適切な報酬を支払っているかどうかに関する書類です。
・業務日誌
・サービス提供記録
・居宅サービス介護給付費明細書
・担当者を設置したことが分かる文書
・月毎のサービス提供時間の分かる記録、平均利用者数がわかる記録
・車両運行記録、車検証
・請求書
・領収書
訪問介護の場合、介護に要する時間そのものではなく、訪問介護計画の内容に基づいて行う介護に要する「標準的な時間」での算定となりますが、所定単位数の算定は適正であることが必要です。
報酬に関わる書類はすべて必要となります。
また、訪問介護では利用者の通院の送迎を行う場合もありますが、送迎・受診等の手続き・移動などの介助を行った際の所定単位数が算定されているかどうかも確認対象になります。
・事業所平面図(見取り図)
・パンフレット等事業所の概要を示す文書
・サービス利用者名簿
・送迎サービスを実施する車の車検証
訪問介護事業所は、必要な設備が整っていなければ営業できません。
まずは必要な広さの専用区画を有しているか。
さらに、事務所内に受付や利用者やその家族との相談に適切なスペース、洗面台や感染予防グッズなど衛生に関する設備や備品等を備える必要があります。
利用者の送迎を行う車両の駐車スペースの確保や、車両に関しての必要書類も確認対象となります。
訪問指導を行う目的は、利用者にとって質の良いサービスの提供の継続や介護保険制度の信頼性の維持、報酬の適正性の確認です。
介護保険制度や健全なサービスを維持するために重要な仕事なので、事前に確認項目をチェックして対策をしておけば安心して訪問指導に臨めます。
主に確認すべき項目は以下の通りです。
訪問指導での確認項目リスト
・利用者に対する介護職員の人数が適切であること
・管理者・介護職員が必要な資格を有していること
・管理者の兼務体制が適切であること
・介護計画書に目的達成に向けたサービスの内容が具体的に記載されていること
・介護計画に沿ったサービスを提供していること
・研修の実施状況が適正であること
・苦情の内容がすべて記録として残されていること
・事故が発生した場合の対策が適切であること
・サービス担当会議などに参加して利用者の状況をしっかり把握していること
・事業所内が整理整頓されて清潔に保たれていること
・報酬において基本報酬と加算の算定要件を満たされていること
・被保険者資格・要介護認定の有無・有効期限を確認していること
・介護報酬の請求額とサービスの提供内容に差異がないこと
参考:厚生労働省
自己点検シートは適正な運営かどうか確認すべき各種点検項目が記載されている書類です。
訪問指導で担当者から指導を受けた場合は、それを改善し、改善報告しなければいけません。
改善が認められない場合は、改善命令が出るか、最悪の場合は事業所が営業停止になります。
自己点検シートを使い、訪問指導で指摘を受けないように事前に確認するようにしましょう。
各都道府県のホームページからダウンロードが可能ですが、提出期限はそれぞれ異なるので窓口での確認が必要です。
自己点検シートについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
実地指導における自己点検シートとは?自己点検シートがある理由や点検項目について徹底解説!
訪問指導で特に注意したい点は、報酬に関する加算関係の確認です。
訪問介護事業所においては「特定事業所加算」「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」などの加算があります。
これらのうち処遇改善加算等処遇系の加算については、給与明細などに記載されている額と実際に報酬として手にした加算額が同じでなければ認められません。
場合によっては、2年分の加算取得分をすべて返還しなければいけないケースもあるので、しっかりと確認しましょう。
訪問介護事業所に対する訪問指導は、適切な運営のために定期的に行われます。
必要書類を揃えるのは大変ですが、訪問指導によって優良な事業所であることが認められればその後の運営に好影響を与えるのは間違いありません。
来たるべき訪問指導に備えるためにも、ぜひご紹介した内容を参考にしてみてください。