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訪問介護の開業で失敗してしまう4つの理由と解決策

少子高齢化に伴って、今まで以上に訪問介護の需要は高くなると考えられます。

訪問介護の事業所を開業しようと考えている人も多いのではないでしょうか?

今回の記事では、訪問介護の開業で失敗してしまう4つの理由と解決策をまとめました。

是非参考にしてください。

訪問介護の開業をするには

訪問介護を実際に開業するためには、以下のステップを踏む必要があります。

1.法人を設立
2.物件・設備の準備
3.人員の確保
4.指定申請を行う

1.法人を設立
訪問介護だけでなく、介護保険事業を開業するには、個人事業主では開業ができず、法人格を取得する必要があります。

2.物件・設備の準備
訪問介護の事務所は一般的な事業所とは異なり、事務スペースだけでなく、相談室・手洗い場を設ける必要があるなどの条件があります。

3.人員の確保
訪問介護員は常勤換算で2.5人以上が必要なため、訪問介護事業所を開業するには、最低でも介護職員として、「介護職員初任者研修」の受講だけでなく、修了試験に合格しているスタッフが3人以上必要です。

4.指定申請を行う
開業するにあたって指定権者からの許可が必要です。

指定権者は都道府県・市区町村になりますが、各地域により異なるため、事前に開業する地域のホームページで確認をする、もしくは直接問い合わせてみてください。

訪問介護を開業するためのステップや、資金調達の方法など、より詳細な情報を知りたい場合は、【2022年最新】訪問介護で開業する方法を徹底解説!必要資金や流れを参考にしてください。

訪問介護の開業で失敗してしまう4つの理由と解決策

少しでも、訪問介護の開業に伴う失敗をしないためには、下記のような失敗する主要な理由と、その解決策を事前に理解しておくことが重要です。

①資金が不足してしまう

事業を継続するには、ある程度の資金が必要です。訪問介護は介護サービスの中でも比較的、少ない資金で開業することが可能ですが、それでも総額800〜1,000万円程度は必要です。

具体的には、開業時に必要な資金・資金収支が同じ状態になるまでの補填するための資金だけでなく、資金収支が同じになった状態での月次資金3ヵ月分程度の資金が必要です。

開業資金は「新規開業資金」を活用する

必要な資金において、開業資金を集めたい場合は、「新規開業資金」の活用を検討しましょう。

新規開業資金は、日本政策金融公庫が行っている、新しい事業を始めるため、または事業開始後、おおむね7年以内に必要となる設備資金および運転資金として活用できる創業関連融資です。

新規開業資金を活用することで、低金利で融資を受けることが可能です。

融資限度額は、7,200万円となっており、そのうち運転資金が4,800万円となっています。

返済期間も比較的長く、設備資金は20年以内で、うち据置期間2年以内、運転資金は返済期間が7年以内でうち据置期間2年以内となっています。

参考:日本政策金融公庫

開業資金は、まとまった資金が必要になりますが、新規開業資金を利用することで、大きく負担を減らすことができます。

運転資金は助成金を活用する

資金は解説したように、開業資金だけでなく運転資金も必要です。

この運転資金においては先程紹介した「新規開業資金」の活用もできますが、融資制度のため返済する必要があります。

その一方で、運転資金に活用できる「介護労働環境向上奨励金」という助成金があります。

介護労働環境向上奨励金は、名称の通り、労働時間に関する問題・身体的負担の軽減・賃金の処遇など、労働条件の向上や、労働者が働きやすい環境を整えることを目的とした費用に対する助成金で、「介護福祉機器等助成」「雇用管理制度等助成」の2種類が主要でした。

しかし、この中で、「介護福祉機器等助成」は、令和3年度から廃止となっているため、現在では、「雇用管理制度等助成」が主要となります。

「雇用管理制度等助成」は、事業主が、諸手当等制度・研修制度・健康づくり制度・メンター制度・短時間正社員制度などの雇用管理改善制度を導入し、労働者の定着や離職率の低下などの効果が認められた場合に受けられる助成金です。

「雇用管理制度整備等管理計画」を作成して、都道府県の労働局の認定を受ける必要があります。

ただ、「雇用管理制度助成」は令和4年4月1日より整備計画の受付を休止しているため、令和4年度以降は、令和4年3月31日までに計画を提出した申請についてのみ手続きが可能となるので注意が必要です。

参考:厚生労働省

助成金は厚生労働省による支援金となるため、返済が不要です。

また、法令違反があれば申請が受理されないため、助成金を受けることで事業の信用にもつながるというメリットがあります。

助成金についてより詳しく知りたい方は、【2022年最新】訪問介護で開業する方法を徹底解説!必要資金や流れをご紹介を参考にしてください。

②人材が不足してしまう

厚生労働省によると、2019年度における訪問介護員の有効求人倍率は「15.03倍」となっており、施設介護員の有効求人倍率は4.31倍と比べて、4倍近く人手が足りていないことが分かります。

参考:厚生労働省

実際、2021年8月23日に介護労働安定センターが発表した「令和2年度 介護労働実態調査結果」によると、訪問介護員の採用率は15.0%、離職率は15.6%となっており、採用率より離職率の方が高くなっています。

参考:介護労働安定センター

また、厚生労働省の「2025年に向けた介護人材にかかる需給推計」によると、2025年には37.7万人もの介護人材が不足すると予測していることからも、訪問介護における人材不足は非常に大きな問題です。

参考:厚生労働省

労働環境を整える

訪問介護だけでなく、介護職は、全般的に、「体力的にきつい」「給与が安い」というイメージがありますが、介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査」によると、

男性では、退職理由の1位は「自分の将来の見込みが立たなかったため」、女性では「結婚・出産・妊娠等のため」が1位となっています。

なお、どの職場でも退職理由の上位に入る、「職場の人間関係」は、介護業界でも上位になっています。

一方、労働条件などの不満として、「仕事内容のわりに賃金が低い」「身体的負担が大きい」という意見があることから、「給与面や身体的な負担についての不満はあるものの、直接的な退職理由になりにくい」ことが分かります。

参考:介護労働安定センター

しかし、実際に労働環境を整えるためには、退職理由・労働条件などの不満を1つずつ改善することで働きやすい職場を作ることができます。

スキルアップするためのサポート体制を整える

介護労働安定センターの「令和2年度介護労働実態調査」によると、訪問介護で働いている68%のスタッフは、今の勤務先で働き続けたいと回答しており、その理由の多くは、「働きがいのある仕事だから」となっています。

参考:介護労働安定センター

この回答結果からも、労働環境だけでなく、働きがいを失わせないために、スキルアップするためのサポート体制を整えることも重要なのが分かります。

そのために、介護職としてスキルアップになる資格である「介護職員実務者研修」「介護福祉士」などの取得をサポートする体制を積極的に整えるようにしましょう。

ただ、資格取得を促すだけでは、サポート体制が充実しているとはいえません。

そのため、「キャリア支援制度」として、「各種研修費用・資格試験の受験料は会社が全額負担」などを取り入れるなど、スキルアップするためのサポート体制を整えることが重要です。

介護ロボットやictを活用する

介護業界は今後多くの人材不足が懸念されており、その対策として、近年では介護ロボットが注目されています。

介護ロボットを利用することで、慢性的な人手不足や介護者の身体的・精神的負担の軽減に役立つため、日本国内においても、ベンチャー企業などが介護現場で活躍できる介護ロボットの開発をしています。

しかし、介護労働安定センターが発表した「事業所における介護労働実態調査 結果報告書」によると、導入できる予算がないなどが理由で、75.6%の割合で介護ロボットを導入していないとのことでした。

しかし、今後はより働いているスタッフの負担軽減のためにも、今まで以上に導入を検討する必要があります。

参考:介護労働安定センター

また、介護ロボットと同じくらい注目されているのが、ICTの導入です。

訪問介護のICT化は、紙で運用されている介護記録を電子化することで、記入漏れがなくなるなどのメリットがあります。

実際、厚生労働省が発表した「介護現場におけるICTの利用促進」によると、約90%の事業所が「情報共有がしやすくなった」「事業所内の情報共有が円滑になった」と回答しています。

参考:厚生労働省

ICTの導入は介護ロボットと比較しても、費用負担が少ないため、積極的に導入を検討することが重要です。

③集客力や営業力の不足

厚生労働省が発表した、2022年4月度における「介護給付費等実態統計」によると、事業所の数が過去最大となる3万4372事業所になっており、10年前の2013年が3万272事業所と比較しても、約4000事業所も増えているのが分かります。

参考:厚生労働省

その一方で、東京商工リサーチによると、訪問介護事業の倒産件数は、2022年の上半期(1〜6月)で22件となっており、競争が激化していることも同時に分かります。

参考:東京商工リサーチ

今後、国内は高齢者率がより高くなるため、今まで以上に集客力や営業力が不足していると、訪問介護の開業で失敗してしまう可能性が高くなってしまうため、下記のような対策を行うことがより重要になります。

ターゲット層にあった営業を行う

訪問介護の開業を失敗しないためには、まず事業所を多くの方に認識してもらう必要があるため、それぞれのターゲット層にあった営業を行いましょう。

認知度を高める方法として、近年では、スマートフォン・パソコンの利用者も増加しているためホームページを見やすくするなど充実させます。

ホームページは、事業内容のアピールだけでなく、また、地域のケアマネージャーさんなどの目に留まるなどスタッフ獲得に向けた効果も期待できます。

ホームページの充実だけでなく、実際に訪問介護を利用する方は比較的年齢層が高くなるので、チラシや電話で営業することも非常に重要です。

チラシや営業は1件ずつの営業になるため、時間・身体的にも大変ですが、丁寧な対応をすることで、その場で利用者を獲得できるというメリットもあります。

④人員・設備・運営基準の理解不足

訪問介護を含めた介護事業所を運営するには、厚生労働省令で決められた、人員・設備・運営基準を満たしておかなければ、基準違反として行政処分を受ける可能性があります。

行政処分を受けると場合によっては、都道府県知事から受けた指定が取り消される・指定の効力停止などの処分が下ると、事業を運営できなくなる場合もあるため、人員・設備・運営基準をしっかり理解しておく必要があります。

人員・設備・運営基準をしっかりと把握し、満たす

人員・設備・運営基準は普段からしっかりと把握して、事業を運営する必要があります。

訪問介護を運営するための人員は、「管理者」1名以上・「サービス提供責任者」1名以上・「訪問介護員(ホームヘルパー)」常勤換算2.5人以上が基準となっており、サービス管理責任者に関しては、利用者が40人またはその端数を増すごとに1人以上の配置が必要です。

設備に関しては、下記の国から定められた条件や運営基準が必要です。

・事務所
・相談室
・手洗い場
・準備する備品(デスク・椅子・相談室用の机と椅子・電話・パソコン・プリンター・キャビネット・カギ付きの書庫・消毒液・石鹸・ペーパータオルなど)

運営基準には、業務運営と訪問介護サービスがあります。

業務運営は、利用料などの受領方法・訪問介護計画書の作成などに関することです。

一方、訪問介護サービスは、利用者本人やその家族と相談のうえ作成した計画書を作成し同意を得ることや、サービスの提供が難しくなった場合や緊急事態への対応などになり、これらを作成する必要があります。

人員・設備・運営基準の詳細内容を確認したい場合は、【2022年最新】訪問介護で開業する方法を徹底解説!必要資金や流れをご紹介を参考にして下さい。

まとめ

訪問介護の開業は、今後より高齢化が進む国内において、今まで以上に需要が高くなります。

しかし、それだけ需要が高くなると、事業数も多くなるため競争が激しくなり、運営を続けることが難しくなります。

訪問介護の開業は、決して簡単なことではありませんが、ぜひ今回ご紹介した情報を参考にしてみて下さい。

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