昨今の介護業界では、多くの事業所が人材不足や業務効率化の課題に直面しており、介護ソフトの導入や事務代行サービスの活用を検討している事業者も少なくありません。介護現場では、日々の記録作業や請求業務、職員の負担軽減が重要な課題となっています。これらの業務を効率化し、質の高いサービス提供を実現するための手段として、介護ソフトと事務代行のどちらを選ぶべきか検討する必要があります。
これらのサービスはどちらも業務改善に貢献しますが、その特性や効果は大きく異なります。本記事では、両者を詳しく比較し、どのような事業所に適しているのかを解説します。
目次
介護ソフトは比較的コストを抑えながら業務の効率化を実現できる一方で、事務代行は人的リソースを確保しつつ、業務の確実性を高める方法です。費用対効果を考えると、業務のデジタル化を進めるために介護ソフトを導入するのが合理的な選択となるケースが多いですが、日々の業務負担を大幅に削減したい場合には、事務代行を活用することが適しています。それぞれの特徴を踏まえた上で、自社の課題に合った選択を行いましょう。
まずは介護ソフトを導入するメリットからご紹介します。
従来は紙の記録や複数のExcelファイルで管理していた利用者情報、ケア記録、請求データなどを一元管理できるようになります。これにより、書類の紛失リスクが減少し、必要な情報への素早いアクセスが可能になります。また、職員間でのデータ共有や引き継ぎもスムーズになり、チームケアの質の向上にもつながります。
記録入力の自動化機能や帳票作成支援により、日々の業務時間を大幅に短縮できます。特に介護報酬の請求業務では、計算ミスを防ぎながら作業時間を削減できます。また、スマートフォンやタブレットでの入力に対応したソフトであれば、現場でのリアルタイム記録も可能になり、二重入力の手間も省けます。
次に事務代行を導入するメリットをご紹介します。
介護保険制度の理解や細かな計算が必要な請求業務、各種加算の管理などを外部の専門家に委託することで、職員は本来の業務である利用者へのケアに集中できます。これにより、サービスの質の向上と職員の残業時間削減を同時に実現できます。
介護保険制度や加算要件に精通した専門家が対応するため、複雑な制度改正にも迅速かつ適切に対応できます。また、専門家による確認作業により、算定漏れや請求ミスのリスクも大幅に減少します。これは事業所の収益改善にも直接的に貢献します。
介護ソフトと事務代行それぞれのメリットを紹介してきましたが、ここからはそれぞれの違いについて、詳しくご紹介します。
介護ソフトは情報管理や業務の効率化をサポートするツールですが、実際の作業は職員がおこなう必要があります。一方、事務代行では業務自体を委託できるため、職員の作業量を大幅に削減できます。このため、人材不足が深刻な事業所では事務代行の方が即効性の高い解決策となることがあります。
介護ソフトの利用は月額制のものが多く、一般的に月額数万円程度で導入することが可能です。しかし、事務代行は人的リソースを活用するため、委託する業務量に応じてコストは高めに設定されていることが多いです。ただし、単純な費用比較だけでなく、人件費の削減効果や業務効率化による経費節減効果も含めて総合的に判断する必要があります。
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)とは、災害や緊急事態が発生した場合でも、業務の停止を最小限に抑え、迅速な対応をおこなうための計画のことです。
職員の突然の退職や長期休暇、災害時などの緊急事態が発生しても、事務代行を利用していれば重要な業務を停止することなく継続できます。併せて、業務を外部に委託することで、急な人手不足の際にも請求業務や必要な書類作成が滞ることなく進められるため、これは事業継続計画(BCP)の観点からも重要な利点となります。
例えば訪問介護の特定事業所加算の取得を目指す場合、職員の研修体制や業務の適正管理が求められるため、加算算定に必要な要件管理がどの程度サポートされているかを確認することが重要です。
介護ソフトの場合は、要件を満たすための記録機能や警告機能の有無を確認。事務代行の場合は、加算取得に向けた具体的なアドバイスや必要書類の作成支援が含まれているかを確認しましょう。
介護ソフトと事務代行は、それぞれに特徴があり、事業所の課題や目的によって最適な選択肢が変わってきます。予算と相談しながら、自事業所の最優先課題は何かを見極めることが重要です。また、両方のメリットを活用したい場合は、基本的な業務は介護ソフトで管理しつつ、専門性の高い業務のみを事務代行に委託するという併用も検討価値があります。
最適なサービスを選択するためには、まず自事業所の現状と課題を明確にし、それぞれのサービスの特徴を十分に理解した上で判断することをおすすめします。