2015年度の介護報酬改定は今後の要介護者増加への対応と、圧迫される介護保険制度への改善策、そして介護人材確保対策の推進のため実施されました。
今回の記事では2015年度の介護報酬改定の内容解説と、改定によって介護事業にどのような影響が及んだかを説明します。
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目次
2015年の介護報酬買い手について解説する前に、そもそも介護報酬改定とは何か詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
介護報酬改定とは?2021年の改定内容や何年ごとに行われるかなどについて徹底解説!
2015年度の介護報酬改定は、中重度の要介護者や認知症高齢者が安心して生活できる地域包括ケアシステムを実現するため、また在宅生活を支援するサービスを充実させるために実施されています。
さらに今後も増える介護の需要に対して、質の高い介護サービスを確保するために介護職員の安定的な確保と資質向上への取組を推進しています。
そのため、必要なサービス評価の適正化や規制緩和を進め、介護報酬改定の改定率も見直されました。
○ 地域包括ケアシステムの実現に向け、介護を必要とする高齢者の増加に伴い、在宅サービス、施設サービス等の増加に必要な経費を確保する。
○ また、平成27年度介護報酬改定においては、介護職員の処遇改善、物価の動向、介護事業者の経営状況、地域包括ケアの推進等を踏まえ、▲2.27%の改定率とする。
改定率▲2.27%
(処遇改善:+1.65%、介護サービスの充実:+0.56%、その他:▲4.48%)
(うち、在宅 ▲1.42%、施設 ▲0.85% )
(注1)▲2.27%のうち、在宅分、施設分の内訳を、試算したもの。
(注2)地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護は、在宅分に含んでいる
(施設分は、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護療養型医療施設)。
参考:厚生労働省
ここからは2015年度の介護報酬改定の3つの柱についてみていきましょう。
中重度の要介護者と認知症高齢者への対応強化には、中重度の要介護者等への重点的な支援・リハビリテーションの推進・看取り期対応の充実・口腔、栄養管理の充実の4つの項目があります。
中重度の要介護者等への重点的な支援とは、24時間365日の在宅生活を支援する定期巡回・随時対応型サービスなどの短時間・一日複数回訪問や通い・訪問・泊まりといったサービスの組み合わせを提供する包括報酬サービスの機能強化と、普及に向けた基準緩和・リハビリテーション専門職の配置等を踏まえた介護老人保健施設における在宅復帰支援機能の更なる強化が目的です。
参考:厚生労働省
リハビリテーションの推進には主に、高齢者のリハビリテーションと通所・訪問リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメントがあります。
高齢者のリハビリテーションには、
・地域や家庭内での役割をもってもらうことで高齢者の居場所づくりを支援する参加へのアプローチ
・家事や外出など日常生活の中でも複雑な動作(IADL)ができるように意欲への働きかけと環境を調整したり、食事や排せつ・着替えなど日常生活に必要な基本的な動作(ADL)ができるように意欲への働きかけと環境を調整するというアプローチ
・そして座る・立つ・歩く等ができるように訓練する心身機能へのアプローチ
などがあります。
通所・訪問リハビリテーションにおけるリハビリテーションマネジメントでは、居宅での情報収集をおこない、リハビリテーション計画を作成します。
そして、計画に基づいたリハビリテーションサービスの提供がおこなわれ、経過をモニタリングすることで、その結果報告を医師や介護支援専門員などに情報提供します。
その情報を元に利用者の状況に合わせた参加(役割作り・通所介護・地域の集いの場)へと繋げることが目的となります。
介護職、看護職、医師だけでは看取りに関してのケアが不十分なため、以下のような看取り期対応の充実が図られました。
・看取り介護加算に家族等への介護の情報提供を加えて評価
・ターミナルケアに係る計画の作成と多職種協働によるターミナルケアの実施を評価
・退所後の生活を含め、人生の終末期まで切れ目ない支援計画を多職種協働で策定を評価する
口から食べる楽しみの支援の充実のため、咀嚼・嚥下能力に応じた食形態・水分量の工夫や食べるときの姿勢の工夫(机や椅子の高さ・硬さ、ベッドの角度、食具など)などの取り組みが推進されました。
介護人材の確保には介護職員処遇改善加算の更なる充実とサービス提供体制強化加算(介護福祉士の評価)の拡大が重要となります。
参考:厚生労働省
現行の3つの加算に加えて新たに1つ加算を新設し、介護職員処遇改善加算の更なる充実を図ります。
サービス提供体制強化加算にでは、介護福祉士の配置割合がより高い状況を評価するようになりました。
参考:厚生労働省
サービス評価適正化と効率的なサービス提供体制の構築には6つのポイントがあります。
2015年度の介護報酬改定が実施された理由の一つとして、介護事業は他業種と比較して収益性が高いためサービス評価の適正化のため、介護報酬が引き下げられました。
・訪問系サービス(訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、夜間対応型訪問介護)への評価の見直しがおこなわれ、利用者に対する報酬を10%減算
・定期巡回・随時対応型訪問介護看護には利用者に対する報酬を新たに1月あたり600単位減算
・小規模多機能型居宅介護、複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)には基本報酬を新たに創設
という3つの評価の見直しがおこなわれました。
参考:厚生労働省
報酬の体系化・適正化と運営の効率化においては、訪問リハビリテーションにおける身体機能の回復を目的とした「短期集中リハビリテーション実施加算」について、早期かつ集中的な介入を行う部分の評価を平準化し、見直す」としました。
参考:厚生労働省
簡単に説明すると、訪問リハビリテーションで短期集中リハビリテーションを実施する場合には、その部分への評価を今までより平均的なものに見直すということです。
訪問看護ステーションからの理学療法士等の訪問と、訪問リハビリテーションのサービス提供実態について、利用者の年齢や性別、要介護度、プログラム内容等が類似であることを踏まえて、基本的な報酬の整合を図るとされました。
参考:厚生労働省
改定前は理学療法士等による訪問の場合は318単位/回だったのですが、改定後は理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士による訪問の場合 302単位/回に変更されています。
同一事業者が訪問リハと通所リハを提供する場合は運営の効率化のため、リハビリテーション計画や同意書、診療記録への記載等を効率的におこなうように見直しされました。
参考:厚生労働省
人員配置基準等の緩和は4つあります。
①訪問介護におけるサービス提供責任者の配置基準の緩和
常勤のサービス提供責任者が3人以上で、サービス提供責任者の業務従事する者が1人以上配置されている事業所は、サービス提供責任者の配置基準を「利用者 50 人に対して1人以上」に緩和されます。
ただし、複数のサービス提供責任者が共同して利用者に関わる体制が構築されていることや、利用者情報が共有されていてサービス提供責任者の業務が効率化できているという条件を満たす必要があります。
参考:厚生労働省
②通所介護における看護職員の配置基準の緩和
病院、診療所、訪問看護ステーションと連携し、健康状態の確認を行った場合には、人員配置基準を満たしているとするようになりました。
参考:厚生労働省
③定期巡回・随時対応型訪問介護看護におけるオペレーターの配置基準等の緩和
夜間から早朝まで(午後6時から午前8時まで)の間にオペレーターとして充てることができる施設・事業所の範囲に関して「同一敷地内又は隣接する施設・事業所」が追加されました。
これにあわせて、通報を受ける業務形態の規定も緩和されています。
参考:厚生労働省
④小規模多機能型居宅介護における看護職員配置の緩和
小規模多機能型居宅介護事業所の看護職員が兼務可能な施設・事業所について、「同一敷地内又は隣接する施設・事業所」を追加するとともに、兼務可能な施設・事業所の種別について、介護老人福祉施設や介護老人保健施設等が追加されました。
参考:厚生労働省
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ここでは、2015年度の介護報酬改定に関するQ&Aを紹介していきます。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護や看護小規模多機能型居宅介護などでは、2015年度介護報酬改定による効果がみられ経営状況が好転しています。
また、福祉用具貸与では、2015年度改定でのプラス項目はありませんでしたが、収支差率はプラス3.3ポイントと改善しており、事業所のコスト削減や高単価での貸与などが影響しています。
厚生労働省よると、平成 25 年度の経営実態調査結果で介護事業は他業種に比べて収益性が高いため、報酬単価の引き下げと見直しが2015年度の介護報酬改定によって実施されましたが、倒産する事業所が相次ぎ、特に通所介護は一番の影響を受ける形となりました。
先ほども触れたように、他業種と比較して介護事業の収益性が高かったのは事実ですが、施設の建替や大規模な修繕を控えている法人などは、将来必要な資金を確保するために利益を確保しておかなければならず、2015年度の介護報酬改定によって事業計画の見直しやコスト管理に対してシビアになる必要性が出てきました。
介護報酬は3年ごとに見直されていますが、他業種と比較して数字上の収益性が高いというだけで安易に大幅なマイナス改定率に変更せず、慎重に全体の数字を分析する必要性があります。
2015年度の介護報酬改定では改定率変更が介護事業者にとって一番大きな変更点となりました。
介護事業も厳しい状況が続きますが、AI、介護ロボットなどの技術を利用することで事業者の負担を減らせる環境づくりが待ち望まれます。