特定事業所加算を取得することは多くのメリットがありますが、算定内容が複雑です。今回は算定項目の中でも定期的な会議開催の算定要件と効率的に満たすための方法を紹介します。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
専門性の高い人材の確保やサービスの質の向上に取り組む事業所を評価する制度で、 国が定めた要件を満たし、事業所所在地の都道府県・市区町村に届け出ることで算定できます。
特定事業所加算は、2006年の介護報酬改定で創設された加算でしたが、算定要件の複雑さなどから取得する事業所は少数でした。しかし、現在では加算を取得することによるメリットなども幅広く理解されたなどの理由により、近年では全体の40%程度が加算を取得しています。
そんな、取得率が高くなった特定事業所加算ですが、下記の5つに分類されます。
これらの加算を取得するためには、それぞれ決められた算定項目を満たしておく必要がありますが、詳細は内容は下記の記事を参考にしてください。
参考:けあタスケル「訪問介護の特定事業所加算とは?取得するメリットや算定のための要件を解説」
なお、上記の記事からも分かるように、特定事業所加算Ⅰ〜Vの中でどれを算定するにあたっても必要な項目は下記です。
上記の項目で、理解するのが難しい内容は「会議の定期的な開催」「文書等による伝達、訪問介護員等からの報告」になると思いますが、「文書等による伝達、訪問介護員等からの報告」の詳細な内容に関しては下記の記事を参考にしてください。
参考:けあタスケル「【特定事業所加算】指示・報告の算定要件を効率的に満たすための方法は?様式の例や注意点を解説」
ここでは、もう1つの項目である「会議の定期的な開催」について紹介します。
特定事業所加算を算定するために必要な会議は毎月1回以上開催が必要です。また、会議の頻度は1ヵ月に1回以上であれば、何回開催しても問題はありません。
そのため、各事業所は定期会議を開催できるようにしっかりと計画を立てることが重要です。
しかし、定期的な会議を行えばよいだけではなく、下記でお伝えする会議内容と必要書類を必ず抑えましょう。
特定事業所加算を算定するための会議開催は、下記の2つの目的を満たす必要があります。
利用者の体調・日常生活の変化など、利用者に関連する情報は個人だけでなく、訪問介護員全体で把握する必要があるため、情報共有の場として会議を活用します。利用者は1人ずつ健康状態・病歴・服薬状況などの情報は異なり、それらを理解しておかなければ適切な介護は行えません。
特に、複数の訪問介護員が関わる場合、全職員が最新の情報を共通して把握しておかなければ、適切な介助が行えなかったり、場合によってはご利用に危害を及ぼす危険性もあります。
また、利用者だけでなく、ご家族との信頼関係の構築にも有効です。利用者やご家族が日常生活を過ごすにあたって感じている疑問・不安をしっかりと聞き、それを事業所全体で共有し対応することで大きな信頼を得られます。
利用者に関する情報とサービス提供時の留意事項を上手く伝達するために、毎回の会議時において、サービス提供責任者から各訪問介護職員に対して、各利用者の留意事項などの情報を伝達する時間を確保し、会議中に伝達した留意事項や情報は議事録に残しておきましょう。
訪問介護員等の技術指導を定期的に行うことで、訪問介護におけるサービスの質の向上・介護事故の予防・サービスの均一化・職員のモチベーション向上などの効果があります。
定期的な研修・技術指導を通じて、全訪問介護員は新しい技術を学ぶ機会が与えられ、それを実践することで、利用者に対して今まで以上に質の高い介護を行えるだけでなく、介護中の事故や怪我の危険性も減らすことができます。
また、どの介護員でも同じサービスを提供するために、技術指導を行い介護技術を均一化することで、利用者からの信頼度も高くなるはずです。
さらに、定期的な技術指導を行うことで、訪問介護員の成長にもつながるため、職員のモチベーションが向上し、職員の離職率低下だけでなく、利用者に対してより良いサービスを行えるはずです。
このように訪問介護員等への技術指導は大きなメリットがあるため、会議の中に毎回30分程度の研修時間を設けて積極的に行うようにしましょう。
参考:豊中市「訪問介護事業における特定事業所加算に係る留意事項について」
上記の内容を取り入れた定期的な会議を行うだけでは、それを証明することができないため、合わせて必ず証明するための書類も必要です。
もし、下記の書類が整っていなければ運営指導などで指摘を受けて、最悪の場合には数百万〜数千万と多額の返戻となる危険性もあるため注意しましょう。
また、下記の必要書類は2〜5年間保管する必要があるため、ご自身の自治体が何年間の保管が必要なのか事前に調べておくことも重要です。
なお、会議開催における必要書類は下記です。
事前に会議の予定と目的を明確にすることで、会議の時間を効率的に使用でき、焦点を絞った議論が可能です。
また、今回の会議でどのようなテーマや問題が議題に上がるかが分かるため、会議に参加するスタッフが関連情報や資料を事前に集めるなどの準備期間にもなります。
会議での議論内容・決定事項・行動計画などを正確に記録するために会議議事録は必要です。
議事録には、各スタッフがどのような意見を述べて、それに対してどのような決定をしたのか、次回までに何をするべきかなどを明記することで、会議の透明性を確保します。それだけでなく、議事録は将来的な参考資料としても重要であり、同じような問題などが生じた時の判断基準や改善のためにも役立ちます。
ただ、会議の内容を一字一句記録する必要はなく、議事録を読んでどんなことが話し合われたのかが分かる程度に要約しましょう。
また、会議で扱う事項を事前に順番に列挙するだけで、会議進行を効率的に行うことができます。
上記でも説明しましたが、定期的な会議の目的として、「利用者に関する情報とサービス提供時の留意事項を伝達」があるため、どのような情報伝達をしたのかを文書で保管する必要があります。
この文書を保管することで、全訪問介護員が同じ情報に基づいて介護することを示せます。それだけでなく、利用者やご家族とのコミュニケーションにおいても信頼性と透明性を確保するために役立ちます。
利用者に関する情報を伝達した際に、ケアプランや訪問介護計画書、アセスメントシートなど会議に使った資料があった場合は、他の書類と一緒に保管しておきましょう。
会議に誰が参加したかを記録することで、適切な会議が運営されたことを証明できます。なお、会議自体は全訪問介護員の出席が基本なため、欠席者だけを記録しておいても問題はありません。もし、会議に欠席者がいる場合は、その欠席者にどのように情報を伝達したかまで記録に残しましょう。
*会議出席者名簿は、会議議事録と一体化させても問題はありません。
定期的開催における算定要件を満たすためのポイントは多くありますが、今回は下記の主な内容を紹介します。
定期的な会議を行うにあたって、最も多い悩みは「訪問介護の業務が入っているため1度に集まることが出来ない」「時間の調整ができず、会議の集まりが悪い」などの悩みが多くみられますが、会議にはすべての訪問介護員が参加する必要があります。仮に、参加していない訪問介護員が議事録を確認したとしても、会議の場に参加していなければ要件を満たしたことにはなりません。
しかし、会議は毎月開催されるため、どうしても訪問介護員が同時参加できない事業所もあるはずです。
ここで重要な事は、「会議は必ずしも1回で全従業員を集める必要はない」ということです。そのため、主となる開催日を決定し、その日に出席できない職員には、同じ月内に同じ内容で開催・共有を行えば会議に参加したと認められます。
ただし、複数回の会議を開催する場合は下記の内容に注意が必要です。
上記の内容が必要なため、主となる会議が1回、個別に開催・共有したのが2回であれば、3つの議事録が必要です。
会議に欠席者が出た場合は、会議議事録・配布資料を渡したうえで、会議のポイントを説明します。
しかし、会議の中で研修を実施した場合は、後日に欠席者だけを集めて補講を行う必要があります。その際、補講を実施したことを下記の内容を記録で残します。
定期的な会議は全訪問介護員の参加が必要ですが、毎日の業務がある中で、どうしても会議に参加できない場面があるはずです。
しかし、そんな方でも会議に参加できるように、前回の介護報酬改定で、定期会議の開催方法としてテレビ電話等のICTの活用が可能となりました。テレビ電話等を活用すれば、訪問介護員がどこにいても会議に参加できるため、定期会議を開催しやすくなりました。
ただ、定期会議の内容を録画して視聴するだけでは「要件を満たしていない」と判断される可能性もあるため注意が必要です。
下記の内容は運営指導時によく確認されるため注意が必要です。
会議の実施体制では下記のような指摘があります。
会議については、「月に1回以上」の頻度で「サービス提供責任者」を中心に実施し、登録ヘルパーも含めて、事業所においてサービス提供にあたる訪問介護員等のすべてが参加する必要があります。
会議内容は下記のような指摘があります。
会議内容は「利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達又は当該指定訪問介護事業所における訪問介護員等の技術指導を目的」とした内容が必要なため、経営上の定例会議は認められません。
また、訪問介護員等の技術指導を目的としていない「食中毒について」などの研修内容は、特定事業所加算における会議開催の要件ではなく、個別の研修計画と認定される可能性があります。
特定事業所加算を算定するための届出時期には下記の注意が必要です。
*4月1日から加算の算定を開始するため、3月10日に届出を提出した場合、12月〜2月分が対象となる
参考:東京福祉局「特定事業所加算(体制要件)の添付書類の不備事例」
特定事業所加算を算定するためには、さまざまな算定要件を理解しておく必要があります。
加算を算定し、継続するのは簡単ではありませんが、事業所の運営・スタッフのモチベーション向上などを考えると取得するメリットは多くあります。
ぜひ、今回の内容をしっかり理解して特定事業所加算の取得を検討してください。