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訪問介護のM&Aはどう行う?M&Aの際の流れやポイントについて徹底解説!

今回の記事では、訪問介護業界のM&Aについて詳しく解説します。

M&Aを成立させるためには、いくつかのステップが必要です。

そのステップを踏まえた上で、訪問介護のM&Aで売却する際のポイントを交えお伝えします。

訪問介護業界におけるM&Aの成功に役立つ情報ですので、ぜひご一読ください。

訪問介護とは

訪問介護とは、ホームヘルパーが利用者の居宅を訪問して、入浴や排せつ、食事などの介護をはじめ、調理や洗濯、掃除などの家事を行うサービスです。

支援する内容に応じて3種類のサービスに分けられ、利用者の身体に直接触れて行う身体介護、身体介護以外において利用者が日常生活を営むことをサポートする生活援助、通院などのための乗車や降車の介助をする通院等乗降介助などがあります。

訪問介護についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

【2022年最新版】訪問介護とは?サービス内容や受け方、費用についてご紹介!

参考:厚生労働省

訪問介護業界のM&Aに関する現状

東京商工リサーチが発表した2022年(令和4)年1月〜9月における老人福祉・介護事業の倒産件数は100件と、介護保険法が施行された2000年以降で最多を記録しました。

そのうち訪問介護事業所は36件と全体の約4割程度を占めています。

新型コロナウイルスや物価高の影響で、中小規模の訪問介護事業所は厳しい状況が続いており、異業種から介護業界への参入を含めたM&Aは活発に行われています。

今後は、さらに訪問介護事業所の多くが経営難に陥り、大手企業へのM&Aがより加速すると考えられます。

参考:東京商工リサーチ

要介護高齢者の増加

要介護高齢者は、介護保険法が施行された2000年4月の218万人に対し、10年後の2010年末には506万人、さらに2022年11月末にはおよそ698万人まで増加しています。

また、要介護認定率は年齢が上がるにつれて上昇傾向にあり、65歳以上の認定率が全体の18.6%に対し、75歳以上で32.1%、85歳以上では60.6%にまで伸びています。

さらに2025年になると、65歳以上の高齢者数は3677万人と全人口の30%を占め、75歳以上の高齢者は2180万人と全人口の17.8%に上ると推定されます。

要介護高齢者の増加に対して、訪問介護事業所はどのように対処していくのかが大きな課題です。

参考:厚生労働省

参考:厚生労働省

介護人材不足

介護業界全体として人材は不足傾向にあります。

介護事業所の半数以上が、人材不足の要因として同業他社との人材獲得競争の厳しさを挙げています。

また、介護職員が退職を検討するきっかけとして、法人や事業所の理念および運営のあり方、職場の人間関係、将来の見込みが立たない、収入の減少などを挙げています。

特に訪問介護事業所の場合、介護施設で働く職員と比べて残業や深夜勤務が少ないため、身体的な負担が軽減される反面、高収入は見込めないために新規で介護業界へ転職する人材が少なく離職も多い傾向です。

さらに訪問介護は、利用者宅を訪問してマンツーマンでサービスを提供する観点から、介護の知識や技術を一定程度身に付けている必要があり、有資格者でないと従事できない点も介護人材不足の要因です。

参考:厚生労働省

訪問介護のM&Aを成立させるまでの6つのステップ

訪問介護のM&Aを成立させるまでには、M&Aの専門家に相談するところから始まり最終的な契約締結まで、主に6つのステップを踏みます。

1.M&Aの専門家に相談する

2.M&Aの方針や売却価格などを検討する

3.M&Aの買い手を見つけ、交渉をする

4.基本合意の締結をする

5.買い手側が企業監査を行う

6.最終締結を行う

①M&Aの専門家に相談する

信頼できるM&Aの専門家に、買い手を選定するためのマッチングを相談・依頼して進めます。

M&Aの専門家は、マッチング支援などを行う民間の業者であり、主に仲介者とフィナンシャル・アドバイザー(FA)の2種類に分類されます。

相談・依頼する際は、M&Aに関する希望条件をはじめ、業務範囲および具体的な業務内容は何か、秘密保持条項は設けられているのか、契約期間はいつまでなのかなどの点について留意しましょう。

②M&Aの方針や売却価格などを検討する

M&Aの専門家が、介護事業の現状や今後の動向、売り手側企業の実績などを含め、相場に見合う売却価格の推定を算出。

それを参考に改めてM&Aの方針や売却価格などを検討します。

売却価格の算出方法は主に3つあり、純資産を基準に算出するコストアプローチが一般的です。

「価格=時価総資産−時価総負債+(過去3年間の営業利益の平均×3年)」

しかし最終的な価格は、買い手側企業と売り手側企業が同意した金額で決まります。

③M&Aの買い手を見つけ、交渉をする

M&Aの専門家は、売り手側企業が提示したM&Aの方針や売却価格から、希望に合う買い手企業を選定します。

選定された中から買い手企業の候補が見つかった場合は、買い手企業に連絡をして交渉を持ちかけます。

そして買い手企業が興味を示したのであれば、経営者と実際に面談を行いましょう。

実際に面談を行う際は、企業の詳細な情報を開示するために秘密保持契約を締結し交渉を進めます。

④基本合意の締結をする

買い手側企業の経営者との面談を重ね、両者が条件に合意できた場合は、基本合意書の締結を行います。

基本合意書は、締結時点における売却条件や、売り手側企業と買い手側企業の今後の交渉における独占交渉権などを定める目的で締結する確認書です。

基本合意の内容で契約が成立することを念頭に置き、第三者が基本合意書を見ても理解できるよう、詳細な条件を明記しておきましょう。

⑤買い手側が企業監査を行う

基本合意書を締結後は、買い手側企業が売り手企業側の財務や法務、ビジネスや税務などの実態について企業監査を実施します。

この企業監査のことをデュー・ディリジェンスといい、売り手側企業は調査に必要な範囲において内部資料を買い手側企業に提供します。

なお、企業監査で問題が発覚した場合は、基本合意を行った際に比べて譲渡価格が減額されるケースがあることを留意しておきましょう。

⑥最終締結を行う

企業監査で問題が発覚した点について再度交渉を行い、最終締結へと進みます。

売り手側企業の株主が買い手側企業に対して売り手企業の株式を譲渡する株式譲渡か、売り手側企業が買い手側企業に対して自身の事業を譲渡する事業譲渡のどちらかを用いるケースが多いです。

そして最終契約書の締結をもってM&Aが成立し、最終段階のクロージングとして、売り手側企業は株式や事業の譲渡を行い、買い手側企業は譲渡代金を支払います。

参考:経済産業省

訪問介護のM&A売却をする際のポイント

訪問介護のM&Aで売却する際は、事前準備が重要なポイントです。

特に売却理由を明確にし、従業員の処遇や待遇改善を条件とすることで、買い手側企業との交渉がスムーズに進むだけではなく、高値によって売却できる可能性が高まるためです。

また、訪問介護サービスの利用者へ理解を得られるようにしておくことも、利用者を守るという観点において重要なポイントです。

売却理由を明確にする

売却理由を明確にしておきます。

M&Aを検討する売り手側企業の理由で多いのが、事業の承継です。

ただし事業の承継という理由のみであると、あまりにも抽象的すぎてしまい、買い手側企業のターゲットを間違えてしまうことにつながります。

人材不足によるものなのか、または後継者不足によるものなのか、それとも事業の成長と発展によるものなのかなど、売却理由をより具体化しておきましょう。

従業員の処遇や待遇改善を条件とする

売却する上でさらに重要なことは、従業員の雇用の維持です。

訪問介護に限らず介護業界全体が人材不足であるため、より優秀な人材を確保した状態で売却することが、売り手側企業にとっての強みとなります。

また、買い手側企業にとっては買収後の人材確保への労力が軽減できるため、優秀な人材が在籍する売り手側企業に魅力を感じます。

より優秀な人材を確保しておくためにも、従業員の処遇や待遇の改善を条件としておきましょう。

利用者の理解を得られるようにする  

訪問介護に限らず言えることですが、利用者の存在があってのサービスの提供です。

売却することになった場合、利用者にとっては今までのサービスが継続されるのかと不安になります。

また、買い手側企業にとって利用者がそのまま引き継がれるのであれば、継続的に安定した経営が成り立つことにつながります。

売却理由や従業員の処遇だけではなく、利用者の理解を得られるよう、今後のサービスについての説明を丁寧に行いましょう。

参考:経済産業省

参考:中央企業庁

まとめ

今回は、訪問介護のM&Aについて、介護業界における現状と成立させるまでの流れ、売却する際のポイントを交えお伝えしました。

今後はさらに高齢化社会が進展するため、訪問介護のM&Aは活発になることが予想されます。

大切な従業員や利用者を守るとともに、思い入れのある企業をより良い形で承継することができるよう、M&Aの専門家に相談しながら売却を成功させましょう。

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