「訪問介護を利用したいけどどんなサービスが受けらる?」「料金はどのくらい?」
このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
今回の記事では、訪問会について、対象者やサービス内容、料金などについて解説します。
目次
訪問介護とは、自分や家族だけで日常生活を送るのが難しくなった要介護者に対して、訪問介護員(ホームヘルパー)が要介護者の自宅を直接訪問して、食事・入浴・排泄などの「身体介護」や、洗濯・掃除・調理などの「生活援助」を行うサービスです。
訪問介護は「訪問介護員」が「対象者」の「自宅」に来て必要な介護サービスを実施する公的な福祉サービスです。
例えば医療機関に入院中であったり、自宅と異なる旅行先等では実施することが出来ません。
また、ここで言う「自宅」は、原則として住民票の存在する場所となっていますが、老人ホーム等の施設に入所する場合等は特例として訪問介護を受けれる制度が存在します。
訪問介護とは、有資格者を自宅に派遣し介護サービスを行う公的な支援サービスです。
派遣される有資格者の資格は以下の通りです。
介護福祉士・実務者研修修了者・初任者研修修了者・旧ホームヘルパー2級・旧ホームヘルパー1級・看護師・准看護師等
看護師資格の保持者が派遣されることも有りますが、訪問介護として派遣された時間内で看護師の業務を行う事はできません。
受けることの出来るサービスは、大きく2つの項目に分類されます。
①身体介護:入浴、排せつ等身体に接して提供される介護サービス
②生活援助:買い物、掃除等家事がメインとなる介護サービス
ただし、介護支援専門員が課題の分析を行い、その上で必要となる介護サービスしか提供することが出来ないことに注意が必要です。
事前に行われる要介護認定と、介護支援専門員が作成する居宅介護サービス計画(ケアプラン)にもよりますが、週1日から週7日、1日1回から複数回まで必要な方に必要な分だけ提供することが可能です。
ただし、日に2回以上の訪問介護サービスを利用する場合は、原則としてサービスの時間間隔を2時間以上空けてサービスを行う必要があります。
これは、2つの訪問介護サービスの間隔が2時間以上空いていなかった場合、2つのサービスを一度のサービスと見なす、「2時間ルール」という規定があるからです。
また、サービスを受けることが可能な時間帯や曜日については、法人ごとに異なりますので、事前に確認するとよいでしょう。
法人によっては24時間365日のサービスを提供していたり、連絡が可能な状態にしていたりと様々です。
平日はA事業所、休日夜間はB事業所といったように複数の事業所を使用することも可能です。
介護サービスは、65歳以上の方は介護が必要になった際に要介護認定されるといつでも利用可能となり、40歳~64歳までの方は特定持病(以下16種類)に認定された場合にサービスを受ける事が出来ます。
筋萎縮性側索硬化症、脳血管疾患、後縦靭帯骨化症、進行性核上性麻痺・大脳皮質基底核変性症及びパーキーソン病、骨折を伴う骨粗しょう症、閉寒性動脈硬化症、多系統萎縮性、慢性関節リウマチ、初老期における認知症、慢性閉寒性肺疾患、脊髄小脳変性症、脊柱管狭窄症、糖尿病性神経障害・糖尿病性腎性症および糖尿病性網膜症、両側の膝関節または股関節に著しい変形を伴う変形性関節症、早老症、末期がん
引用:厚生労働省ホームページ
訪問介護は要介護1~5の認定を受けている方が対象、要支援1~2の認定を受けた方は「介護予防訪問介護」という形でサービスを利用する事が可能です。
ただし介護予防はあくまで「予防」という目的の為、身体介護ではなく生活援助がメインとなり、更には「要支援1の場合は週2回まで」という一部の利用制限もあります。
訪問介護で受けられる具体的なサービス内容を、「身体介護サービスの具体例」「生活援助サービスの具体例」「医療行為」の3つに分けて解説していきます。
食事介助:食事の際の支援
入浴介助:全身又は部分浴(顔、髪、腕、足、陰部など部分的な洗浄)の支援
清拭:入浴ができない場合などに体を拭いて清潔にする支援
排泄介助:トイレの介助やおむつの交換等の支援
歩行介助:自分の足で歩くことができるように介助を行う支援
更衣介助:衣類の着脱など着替えの介助の支援
体位変換:ベッド上など床ずれ予防のための姿勢交換の支援
移乗介助:ベッドから車いすに移す際の介助の支援
掃除:居間の掃除、ゴミだし等の支援
洗濯:衣類を洗う、干す、たたむ、整理までの支援
食事準備:食材の買い物代行から調理、配膳、片づけまでの支援
移動介助:「起き上がる」「座る」「歩く」といった行為が困難な場合や、移動の際に介助をする支援
その他:爪切り・血圧測定・耳垢の除去など医療行為ではないもの
訪問介護員は原則として医療行為は出来ませんが、一定の要件を満たした研修修了者のみ以下の支援が提供可能になります。
喀痰吸引等:喀痰吸引、経管栄養の支援
訪問介護で受けられるサービスは『老計10号』という国の通知で決定されています。
ここに無い事項は原則提供することが出来ず、例えば来客対応やペットの世話、庭の手入れ等は介護保険サービスとして提供することが出来ません。
同居家族がいる場合は、家族が使用した部分は介護保険サービスで提供することが出来ないという背景から、介護の対象者となる方と家族とが「共同で使用」する部分については原則的に実施することが出来ません。
ただし、同居と言っても様々な状況が有りますので、個別の状況から判断されることとなります。
見守りの時間は介護保険サービスとしての提供が認められていませんので、行うことができません。
留守番や見守り、介護の対象者ではないけれど「夕食を一緒に作っておいてほしい」等の要望がある場合は、「介護保険外のサービス」として提供してくれる場合があります。
この場合は、訪問介護の会社のスタッフか、介護支援専門員(ケアマネ)に相談をしてみましょう。
訪問介護員は医療行為が出来ません。
例えばインスリンの注射や、人工呼吸器の酸素濃度の操作等は行うことが出来ません。
一定の研修を修了した職員は、喀痰吸引及び経管栄養の実施が可能となります。
介護保険の自己負担額は基本的に1割負担とし、一定以上の所得がある場合は2割・3割となります。
訪問介護の料金は「単位」で決められ、その単位は地域ごとに変わるのですが、「サービス内容」「所要時間」「その他料金(加算)」で決まります。
訪問介護の料金は「サービス内容×利用時間+その他料金(加算)」で計算する事が可能です。
単位数は下表の通りです。
サービスの種類 | 利用時間 | 単位 | 料金 | 1割負担での自己負担額 |
身体介護 | 20分未満 | 167 | 1,670円 | 167円 |
20分以上30分未満 | 250 | 2,500円 | 250円 | |
30分以上1時間未満 | 396 | 3,960円 | 396円 | |
1時間以上 | 579 (以降30分ごとに+84) | 5,790円~ | 579円 | |
生活援助 | 20分以上45分未満 | 183 | 1,830円 | 183円 |
45分以上 | 225 | 2,250円 | 225円 | |
通院時の乗車・降車介助 | 1回につき99 | 990円 | 99円 | |
身体介護に引き続き 生活援助を行った場合 | 生活援助20分ごと | 67 (201単位を限度とする) | 670円~ | 67円~ (身体介護の料金に加算) |
訪問介護の費用については、こちらの記事でさらに詳しく解説しているので、是非参考にしてください。
【事例付き】訪問介護の料金はどのように決まる?計算方法は?
訪問介護を受けるまでのステップは下記の5つです。
①要介護認定の申請
②介護認定の通知
③介護支援専門員(ケアマネジャー)の決定
④介護サービス計画(ケアプラン)の作成
⑤事業者の選定と契約
それぞれ解説していきます。
要介護認定申請書に記入のうえ、住民票のある保険者の窓口に申請します。
原則は本人が申請することとなっていますが、これが叶わない場合は家族や地域包括支援センター等が申請を代行します。
申請日から約30日以内に市区町村から訪問介護サービスを利用する本人(被保険者)へ郵送で通知されます。
その際、被保険者証に該当する要介護状態区分が記載されます。
要介護1以上の場合は、居宅介護支援事業所にケアマネジャーの選任を依頼します。
ケアマネージャは保険者の窓口か、地域包括支援センターから紹介をうけることが出来ます。
ケアマネジャーが自宅へ訪問し面談(アセスメント)を行います。
面談(アセスメント)から得られた情報から課題を分析し、どのようなサービスが必要かを盛り込んだ「介護サービス計画書(ケアプラン)」が作成されます。
ケアプランに基づき、実際にサービスを受ける訪問介護事業所と直接契約を結びサービスを利用します。
訪問介護サービスを利用する際には、下記の書類を確認して契約を締結する必要が有ります。
・契約書:訪問介護サービスを受けるにあたって必要な契約を定めた書類
・重要事項説明書:契約しようとする訪問介護事業所の詳細が書かれた書類
・個人情報同意書:訪問介護サービスを受ける本人と家族の情報を取り扱うことに関して同意をしたことを証する書類
特に重要事項説明書は訪問介護サービス提供の開始に際し説明を受けるもので、提供する訪問介護サービスの詳細や、利用するにあたってのルール、担当者の名前と相談先の電話番号等が記載されています。
訪問介護の人員基準とは、看護師など、どの役割の人を何人配置する必要があるかを定めたものです。
訪問介護の人員基準を知ることは事業者はもちろん、利用者側もしっかりとした運営が行われているか判断するために知っておいて損はないです。
こちらの記事をぜひ参考にしてみてください。
訪問介護の開業に必要な人員基準について計算方法など徹底解説!
訪問介護を利用するにあたって、トラブルを避けるためには、下記の6点に注意する必要があります。
①キャンセル料
②交通費
③緊急時の対応
④用意するもの
⑤調理について
⑥排泄介助について
それぞれ解説していきます。
急な予定変更や体調不良等で訪問介護サービスを休む際に「キャンセル料金がかかるか否か」を確認しましょう。
殆どの事業所でキャンセル料金を定めており、前々日までは無料、前日までは〇〇円、当日は〇〇円等の規定を設けています。
通院介助を実施する場合等、訪問介護サービス中に発生する交通費は訪問介護サービスを受ける側が負担することとなりますが、訪問介護員(ホームヘルパー)がご自宅まで伺う際の交通費を定めている場合が有ります。
訪問介護サービス中に事故や体調変化等の緊急事態が発生した場合の対応や連絡先を決定しておきましょう。
訪問介護サービスを受けるにあたって必要になる備品や場所を案内しましょう。
また、必要になる物が何かも確認しておきましょう。
調理器具やガス、水道等の使い方を案内しておきましょう。
また、洗い物の際に使用するスポンジ、ふきん、ごみの捨て方等も案内をするようにしましょう。
使用するタオル、排せつ物の捨て方、更衣後の洗濯物の置き場所を案内しましょう。
訪問介護サービスを利用する場合は、「このやり方が当たり前」ではなく、「私たちの生活ではこのやり方です」ということを予め伝え、その通りに実施してもらう打合せがとても重要になります。
訪問介護に関するQ&Aをまとめました。
A:ヘルパーの指名という制度は有りませんが、「相性が悪い」「信用が出来ない」等の場合は介護支援専門員又は訪問介護事業所の管理者・サービス提供責任者に相談を行う事で解決を図ってもらえます。
A:訪問介護員は医療行為を行う事は出来ませんが、喀痰吸引や経管栄養等の対応を行っている事業所もあります。
訪問介護が行うことが適切か、訪問看護が行うことが適切かの相談を医師や介護支援専門員と行い、訪問介護が行うことが適切な場合は相談をしましょう。
A:介護保険上での提供は認められていませんが、法人によって介護保険外としてサービスの提供を実施している場合が有ります。
介護保険と組み合わせることで割引を設定している法人も有りますので、問い合わせてみましょう。
A:介護サービスは状況に応じいつでも辞めることが可能ですが、料金の支払いが困難である場合や生活に心配が有る場合等は、公的な支援を受けられることも有ります。
ひとまずは状況を介護支援専門員や市町村へ相談しましょう。
A:法律上は異なる役職であり、それぞれ事業所に1名配置が義務付けられていますが、この2つの役職は兼務が認められています。
このため、兼任している可能性があり、1名の場合も有ります。
A:どちらも都道府県の指定を受けており、行政の指導も定期的に入る仕組みになっています。
また、派遣されるヘルパーも有資格者であり、資格者以外は国のルール上派遣出来ない決まりです。
大手は他地域に展開しており、会社のルールが全体で決定しています。
一方、中小は地域に根付いて展開していることが多く、細かい部分で大手と異なるルールで運営されている事もあります。
比較する場合は、大手と大手の法人、中小と中小の法人ではなく、地域の中での大手と中小を比較して、自分に合うヘルパーさんを見つけるのが良いでしょう。
A:同姓が良いという希望を伝えることが大切です。
訪問介護とは、女性が多く活躍する場所でもあります。
もちろん男性も沢山いますので、入浴介助を希望していること、同姓の派遣を希望していることを伝えましょう。
A:訪問介護ステーションも、訪問介護事業所も同じものを指します。
訪問介護の事業所は、令和2年度現在で全国にやく35,000件存在しています。
介護事業所によって加算等で料金が異なったり、行える介護サービス内容が異なったりと様々ですので、事前にしっかりと確認を行いましょう。