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応益負担とは?障害者総合支援法におけるサービスを提供する事業所必読!

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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障害者総合支援法で提供されている福祉サービスは、利用する頻度や回数に応じて料金が設定される「応益負担」という方式で提供されています。しかし、福祉事業所経営者の中には「応益負担がわからない」「応益負担の特徴を知りたい」という方も多いのではないでしょうか。今回は、障害者総合支援法における応益負担の概要と問題点について解説します。利用者負担の減免措置についても解説しているので、ぜひ最後までお読みください。

障害者総合支援法とは

障害者総合支援法とは「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」の総称です。社会福祉協議会が出している資料「障害福祉サービスの利用について(障害者総合支援法)地域社会における共生の実現に向けて」によると、障害者総合支援法の目的と理念について以下のように示されています。

 

【法の目的】

・障害者及び障害児が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活または社会生活を営む
・地域生活支援事業による支援を含めた総合的な支援を行う

 

【基本理念】

・全ての国民が、障害の有無にかかわらず、等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されること

・全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現すること

・全ての障害者及び障害児が可能な限りその身近な場所において必要な日常生活または社会生活を営むための支援を受けられること

・社会参加の機会が確保されること

・どこで誰と生活するかについての選択の機会が確保され、地域社会において他の人々と共生することを妨げられないこと

・障害者及び障害児にとって日常生活または社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物、制度、慣行、観念その他一切のものの除去に資すること

 

参考:全国社会福祉協議会「障害福祉サービスの利用について(障害者総合支援法)地域社会における共生の実現に向けて」

 

障害者総合支援法では障害支援区分を設け、障がい者に対して以下の支援を実施します。

 

  •  重度訪問介護の対象拡大(重度の肢体不自由者等であって常時 介護を要する障害者として厚生労働省令で定めるものとする)
  •  共同生活介護(ケアホーム)の共同生活援助(グループホーム)への一元化
  •  地域移行支援の対象拡大(地域における生活に移行するため重点 的な支援を必要とする者であって厚生労働省令で定めるものを加える)
  •  地域生活支援事業の追加(障害者に対する理解を深めるための研修や啓発を行う事業、意思疎通支援を行う者を養成する事業等)

 

引用:厚生労働省「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律の概要」

 

障害者総合支援法の対象者

障害者総合支援法の第4条において「障害者」を以下のように定義しています。

 

  • 身体障害者のうち18歳以上である者
  • 知的障害者のうち18歳以上である者
  • 精神障害者のうち18歳以上である者
  • 難病のある18歳以上の者
  • 身体障害、知的障害、精神障害、難病のある児童(18歳未満)

 

障害者総合支援法の対象疾患(難病等)に関しては、定期的に見直されており、令和3年11月の見直しで366疾患にまで広げられています。

 

参考:厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」

参考:厚生労働省「児童福祉法」

参考:厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)の見直しについて」

障害者総合支援法の福祉サービス

 

障害者総合支援法で利用できるサービスは、介護や就労支援などのサービスを個別に利用する自立支援給付と、各自治体で柔軟にサービスを行う地域生活支援事業の2つに分類されます。各サービス内容について解説していきます。

自立支援給付

自立支援給付には、在宅で介護を受ける介護給付、就労支援を受ける訓練等給付、医療費を支援する自立支援医療制度などがあります。各給付内容について解説します。

介護給付

介護給付とは、日常生活で必要な介護支援を提供するサービスが対象になります。介護給付で利用できるサービスは以下のとおりです。

 

  • 居宅介護(ホームヘルプサービス)
  • 重度訪問介護
  • 同行援護
  • 行動援護
  • 療養援護
  • 生活介護
  • 短期入所(ショートステイ)
  • 重度障害者等包括支援
  • 施設入所支援

 

訓練等給付

 

訓練等給付では、障がい者が日常生活や社会生活を営むために必要な訓練などを提供するサービスが対象となります。訓練等給付で利用できるサービスは以下のとおりです。

 

  • 自立訓練
  • 就労移行支援
  • 就労継続支援
  • 自立生活援助
  • 共同生活援助
  • 就労定着支援

 

自立支援医療制度

 自立支援医療制度は、心身の障害を除去・軽減するための医療について、医療費の自己負担額を軽減する制度です。対象者は、精神通院医療、更生医療、育成医療の3種に分類されます。

 

  • 精神通院医療:統合失調症などの精神疾患を持ち、通院による精神医療が継続的に必要な者
  • 更生医療:身体障害者手帳の交付を受け、その障害を除去・軽減する治療によって確実に効果が期待できる者(18歳以上)
  • 育成医療:身体障害を持った児童で、その障害を除去・軽減する治療により確実に効果が期待できる者(18歳未満)

 

世帯収入に応じて、月ごとに負担上限額が設定されます。ただし、この負担上限額がひと月あたりの医療費の1割を超える場合は、自己負担は1割です。また、高額治療継続者にも1ヶ月当たりの負担に上限額を設定するなどの負担軽減措置があります。

補装具費の支給

補装具とは、障がい者の身体機能を補完し、長期的に継続して利用される福祉用具を指します。例えば、義肢や車いす等が対象です。障害者総合支援法では、補装具の購入や修理費用を一部支給されますが、自己負担額は利用者の所得等によって決定するため、詳しく知りたい方は各市区町村窓口へ問い合わせましょう。

相談支援

相談支援とは、サービス等計画書の作成などで障がい者の地域生活をサポートするサービスです。相談支援は、計画相談支援と地域相談支援の2つに分類されます。各相談支援の内容は以下の通りです。

 

  • 計画相談支援:サービス利用支援、継続サービス利用支援
  • 地域相談支援:地域移行支援、地域定着支援

 

地域生活支援事業

地域生活支援事業とは、地域で生活する障がい者のニーズを踏まえ、地域の実情に応じた柔軟な事業形態で実施されるサービスです。都道府県または市区町村が主体となって実施される事業なので、詳細な事業内容は各自治体の窓口へ問い合わせると良いでしょう。

 

障害者総合支援法の利用者負担額

障害福祉サービスの自己負担は、原則1割です。しかし、所得に応じて負担上限月額が設定されており、サービス量にかかわらず上限月額以上の事故負担は生じません。4つの上限金額は以下のとおりです。

 

区分

世帯の収入状況

負担上限月額

生活保護

生活保護受給世帯

0円

低所得

市町村民税非課税世帯

0円

一般1

市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます。

9,300円

一般2

上記以外

37,200円

 

引用:厚生労働省「障害者の利用者負担」

応能負担と応益負担

私たちが支払う税金等の社会負担料には、応能負担と応益負担という2つのタイプがあります。障害者総合支援法は応益負担の制度です。障害者総合支援法を理解するためには、応益負担のメリットとデメリットも理解しておかなければいけません。応能負担と応益負担の特徴について解説します。

応能負担のメリットとデメリット

応能負担とは、利用者の支払い能力に応じて負担額が決定するシステムです。収入が多い方は多く支払い、収入が少ない方は少なく支払います。累進課税制度を採用している所得税などが応能負担の代表的な例です。

支払い能力に応じた負担しか求められないので、所得が少ない方でも安心して利用できるメリットがあります。一方で、自己負担が大きい高所得者層から不満が出てくるデメリットもあるでしょう。

応益負担のメリットとデメリット

応益負担とは、利用者が受けたサービスの量によって全ての人が同じ金額を支払うシステムを指します。例えば、消費税や介護保険制度などは応益負担を採用した制度です。

受けたサービスに対して利用者全員が同じ金額を支払うので、全員が平等に負担するメリットがあります。一方で、低所得者は収入に対する負担割合が大きくなるため、所得が少ない方ほど利用しづらくなるでしょう。

障害者総合支援法における応益負担の問題点

 

障害者総合支援法において応益負担が採用されていることで、低所得者の負担割合が大きくなる点が問題とされています。身体障害や精神障害の状況によっては、治療や介護を頻繁に利用しなければいけないケースも多いでしょう。

応益負担の場合、利用頻度が高ければ高いほど利用者の負担が大きくなります。負担額が大きくなることで、低所得者層がサービスを利用できなくなるかもしれません。問題を解決するためには、所得に応じた利用料の減免措置や援助が必要でしょう。

 

参考:早稲田大学客員准教授 岡部耕典氏「障害者自立支援法における『応益負担』についての考察」

障害者総合支援法の応能負担に対する減免措置

障害者総合支援法では、応益負担による影響を軽減するため、利用者負担額の上限が定められています。また、利用者負担の上限額以外にも減免措置があるため、いくつかご紹介します。

医療型個別減免

医療型個別減免とは、療養介護を利用する場合の医療費と食費を減免する制度です。療養介護を利用する方は、従前の福祉部分負担相当額と医療費、食事療養費を合算して上限額が設定され、利用者負担額を減免します。医療型個別減免を受けるためには、申請が必要なので注意しましょう。

高額障害福祉サービス

高額障害福祉サービスとは、同じ世帯に障害福祉サービスを利用する家族が複数人いる場合の負担を軽減する制度です。

仮に、同じ世帯に障害福祉サービス、障害児(通所・入所)支援等を利用している方が複数人含まれる場合、利用者負担の世帯合計金額(1ヶ月)が世帯の基準額を超過する可能性があります。この場合に、世帯の基準額を超過した金額が支給される制度が高額障害福祉サービスです。

実費負担の減免措置

実費負担の減免措置とは、食費等の実費負担に対する減免措置のことです。

20歳以上の入所者の場合、入所施設の食費・光熱水費の実費負担は、54,000円を限度として施設ごとに金額が設定されています。また、低所得者については、費用の基準額を54,000円で設定し、食費・光熱費の実費負担をしても少なくとも手元に25,000円が残るように補足給付されます。なお、就労等により得た収入の24,000円までは収入として認定せず、24,000円を超える額についても30%は収入として認定しません。

通所施設の場合は、少し内容が異なります。低所得、一般1の場合は、食材料費のみの負担となる、実際にかかる額のおおよそ3分の1の負担となります。なお、食材料費は、施設ごとに額が設定されているので注意しましょう。

グループホームの家賃助成

グループホームの利用者に対して家賃助成があります。グループホームの利用者(生活保護または低所得の世帯)が負担する家賃を対象として、利用者1人あたり月額1万円を上限に補足給付されます。グループホームには、重度障害者等包括支援の一環として提供される場合を含まれているので、確認しておきましょう。

生活保護への移行防止策

上記のような負担軽減策を講じても、食費等の実費負担によって生活保護の対象となる場合もあるでしょう。その際には、生活保護の対象とならない額まで自己負担の負担上限月額や食費等実費負担額を引き下げることも可能です。障害福祉サービスの自己負担額で困った方は、お近くの自治体相談窓口へ相談しましょう。

まとめ

今回は、障害者総合支援法における応益負担について解説しました。障害者総合支援法は、障がい者の日常生活、社会生活を支援する制度で、利用したサービスに応じて費用が定められる応益負担の制度です。低所得者は収入に対する負担割合が大きくなるため、福祉サービスを利用できない方も多くなるでしょう。しかし、低所得者への負担を軽減するため、複数の減免措置があります。申請しなければ受けられない減免措置もあるため、内容を確認して利用できる制度は最大限利用しましょう。

 

参考:

全国社会福祉協議会「障害福祉サービスの利用について(障害者総合支援法)地域社会における共生の実現に向けて」

厚生労働省「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律の概要」

厚生労働省「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」

厚生労働省「児童福祉法」

厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)の見直しについて」

厚生労働省「障害者の利用者負担」

早稲田大学客員准教授 岡部耕典氏「障害者自立支援法における『応益負担』についての考察」

 

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