この記事では、令和3年に行われた介護報酬改定の訪問入浴介護部分の情報をまとめてご紹介します。
目次
2021年度の介護報酬改定は、新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代の全てが75歳以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「介護人材の確保・介護現場の革新」、「制度の安定性・持続可能性の確保」を図るという観点から、0.70%のプラス改定となりました。
この年度の報酬改定の特徴としては、元来『介護報酬改定』で指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準に改定が入ることはあまり見られませんでしたが、人員基準、運営基準が大きく変わる改定であったことが特徴です。
また、世界中を震撼させた新型コロナウイルスの流行により、一定期間の休止や休止による経営難に陥り介護サービスの継続が困難になる法人が多い中で迎えた背景から、感染症や災害への対応力を強化していく取り組みが直前に追加となっている事にも注目が集まりました。
2040年を見据えたときに、2021年現在において制度や体制が整いきれていないのが下記5点です。
感染症や災害が発生した場合であっても、利用者に必要なサービスが安定的・継続的に提供される体制を構築することが必要だが、現在は十分ではない
住み慣れた地域において、利用者の尊厳を保持しつつ、必要なサービスが切れ目なく提供されるよう取組を推進する必要がある
制度の目的に沿って、質の評価やデータ活用を行いながら、 科学的に効果が裏付けられた質の高いサービスの提供を推進していかなければならない
喫緊・重要な課題として、介護人材の確保・介護現場の革新に対応していくべき
必要なサービスは確保しつつ、適正化・重点化を図らないといけない
これらの課題を解決するために実施されているのが令和3年度の介護報酬改定です。それでは次項から細かく確認していきましょう。
介護サービス事業者に、感染症の発生及びまん延等に関する取組の徹底を求める観点から、以下の取組を義務づける。その際、3年の経過措置期間を設けることとする。【省令改正】
・ 施設系サービスについて、現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加え、訓練(シミュレーション)の実施・ その他のサービス(訪問系サービス、通所系サービス、短期入所系サービス、多機能系サービス、福祉用具貸与、居宅介護支援、居住系サービス)について、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等
感染症や災害が発生した場合であっても、必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた計画等の策定、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等を義務づける。その際、3年間の経過措置期間を設けることとする。【省令改正】
介護現場において、仕事と育児や介護との両立が可能となる環境整備を進め、職員の離職防止・定着促進を図る観点から、各サービスの人員配置基準や報酬算定について、以下の見直しを行う。【通知改正】
・ 「常勤」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による育児の短時間勤務制度を利用する場合に加えて、介護の短時間勤務制度等を利用する場合にも、週30時間以上の勤務で「常勤」として扱うことを認める。
・ 「常勤換算方法」の計算に当たり、職員が育児・介護休業法による短時間勤務制度等を利用する場合、週30時間以上の勤務で常勤換算での計算上も1(常勤)と扱うことを認める。
・ 人員配置基準や報酬算定において「常勤」での配置が求められる職員が、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合に、同等の資質を有する複数の非常勤職員を常勤換算することで、人員配置基準を満たすことを認める。
この場合において、常勤職員の割合を要件とするサービス提供体制強化加算等の加算について、産前産後休業や育児・介護休業等を取得した場合、当該職員についても常勤職員の割合に含めることを認める。
介護サービス事業者の適切なハラスメント対策を強化する観点から、全ての介護サービス事業者に、男女雇用機会均等法等におけるハラスメント対策に関する事業者の責務を踏まえつつ、ハラスメント対策を求めることとする。【省令改正】
「指定訪問介護事業者は、適切な指定訪問介護の提供を確保する観点から、職場において行われる性的な言動又は優越的な関係を背景とした言動であって業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより訪問介護員等の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じなければならない。」
運営基準や加算の要件等において実施が求められる各種会議等(利用者の居宅を訪問しての実施が求められるものを除く)について、感染防止や多職種連携の促進の観点から、以下の見直しを行う。【省令改正、告示改正、通知改正】
・ 利用者等が参加せず、医療・介護の関係者のみで実施するものについて、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を参考にして、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
・ 利用者等が参加して実施するものについて、上記に加えて、利用者等の同意を得た上で、テレビ電話等を活用しての実施を認める。
利用者の利便性向上や介護サービス事業者の業務負担軽減の観点から、政府の方針も踏まえ、ケアプランや重要事項説明書等における利用者等への説明・同意について、以下の見直しを行う。【省令改正、通知改正】
ア 書面で説明・同意等を行うものについて、電磁的記録による対応を原則認めることとする。
イ 利用者等の署名・押印について、求めないことが可能であること及びその場合の代替手段を明示するとともに、様式例から押印欄を削除する。
介護サービス事業者の業務負担軽減やいわゆるローカルルールの解消を図る観点から、運営規程や重要事項説明書に記載する従業員の「員数」について、「○○人以上」と記載することが可能であること及び運営規程における「従業者の職種、員数及び職務の内容」について、その変更の届出は年1回で足りることを明確化する。【通知改正】
介護サービス事業者の業務負担軽減やいわゆるローカルルールの解消を図る観点から、介護サービス事業者における諸記録の保存、交付等について、適切な個人情報の取り扱いを求めた上で、電磁的な対応を原則認めることとし、その範囲を明確化する。【省令改正】
○ 記録の保存期間について、他の制度の取り扱いも参考としつつ、明確化を図る。
介護サービス事業者の業務負担軽減や利用者の利便性の向上を図る観点から、運営規程等の重要事項について、事業所の掲示だけでなく、閲覧可能な形でファイル等で備え置くこと等を可能とする。【省令改正】
全ての介護サービス事業者を対象に、利用者の人権の擁護、虐待の防止等の観点から、虐待の発生又はその再 発を防止するための委員会の開催、指針の整備、研修の実施、担当者を定めることを義務づける。その際、3年 の経過措置期間を設けることとする。【省令改正】
運営基準(省令)に以下を規定 ・ 入所者・利用者の人権の擁護、虐待の防止等のため、必要な体制の整備を行うとともに、その従業者に対し、 研修を実施する等の措置を講じなければならない旨を規定。 ・ 運営規程に定めておかなければならない事項として、「虐待の防止のための措置に関する事項」を追加。 ・ 虐待の発生又はその再発を防止するため、以下の措置を講じなければならない旨を規定。 ー 虐待の防止のための対策を検討する委員会(テレビ電話装置等の活用可能)を定期的に開催するとともに、 その結果について、従業者に周知徹底を図ること ー 虐待の防止のための指針を整備すること ー 従業者に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること ー 上記措置を適切に実施するための担当者を置くこと (※3年の経過措置期間を設ける。)
介護職員処遇改善加算(Ⅳ)及び(Ⅴ)について、上位区分の算定が進んでいることを踏まえ、廃止する。
【告示改正】
※令和3年3月末時点で同加算を算定している介護サービス事業者については、1年の経過措置期間あり
訪問入浴介護については、以下の単位数に変更となっています。
認知症専門ケア加算等について、各介護サービスにおける認知症対応力を向上させていく観点から、以下の見直しを行う。
訪問介護、訪問入浴介護、夜間対応型訪問介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護について、他のサービスと同様に、認知症専門ケア加算を新たに創設する。【告示改正】
なお、 上記の専門研修については、質を確保しつつ、eラーニングの活用等により受講しやすい環境整備を行う。
<認知症専門ケア加算(Ⅰ)>(※既往要件と同)
・ 認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が利用者の100分の50以上
・ 認知症介護実践リーダー研修修了者を認知症高齢者の日常生活自立度Ⅲ以上の者が20名未満の場合は1名以上、20名以上の場合は1に、当該対象者の数が19を超えて10又は端数を増すごとに1を加えて得た数以上配置し、専門的な認知症ケアを実施
・ 当該事業所の従業員に対して、認知症ケアに関する留意事項の伝達又は技術的指導に係る会議を定期的に開催
<認知症専門ケア加算(Ⅱ)>(※既往要件と同)
・ 認知症専門ケア加算(Ⅰ)の要件を満たし、かつ、認知症介護指導者養成研修修了者を1名以上配置し、事業所全体の認知症ケアの指導等を実施
・ 介護、看護職員ごとの認知症ケアに関する研修計画を作成し、実施又は実施を予定
介護サービス事業者の認知症対応力の向上と利用者の介護サービスの選択に資する観点から、全ての介護サービ ス事業者(居宅療養管理指導を除く)を対象に、研修の受講状況等、認知症に係る事業者の取組状況について、介 護サービス情報公表制度において公表することを求めることとする。
訪問入浴介護について、利用者への円滑な初回サービス提供と、利用者の状態に応じた臨機応変なサービス提 供に対し適切な評価を図る観点から、以下の見直しを行う。
新規利用者へのサービス提供に際して、事前の居宅訪問を行うなど、事業者に一定の対応が生じていることを踏 まえ、新規利用者に対して、初回のサービス提供を行う前に居宅を訪問し、訪問入浴介護の利用に関する調整(浴 槽の設置場所や給排水の方法の確認等)を行った場合を評価する新たな加算を創設する。【告示改正】
【単位数】 現行 なし ⇒ 初回加算200単位/月(新設)
【算定要件】
訪問入浴介護事業所において、新規利用者の居宅を訪問し、訪問入浴介護の利用に関する調整を行った上で、利用者に対して、初回の訪問入浴介護を行うこと。
初回加算は、初回の訪問入浴介護を実施した日に算定すること。
清拭又は部分浴を実施した場合の減算について、サービス提供の実態を踏まえ、減算幅を見直す。【告示改正】
【単位数】
清拭又は部分浴を実施した場合は 30%/回を減算
⇒
清拭又は部分浴を実施した場合は 10%/回を減算
【減算要件】
訪問時の利用者の心身の状況等から全身入浴が困難な場合であって、当該利用者の希望により清拭又は部分浴(洗髪、陰部、足部等の洗浄をいう。)を実施したとき。
中山間地域等において、地域の実情に応じた柔軟なサービス提供をより可能とする観点から、令和2年の地方 分権改革に関する提案募集における提案も踏まえ、特例居宅介護サービス費等の対象地域と特別地域加算の対象 地域について、自治体からの申請を踏まえて、それぞれについて分けて指定を行う。【告示改正】
○サービス確保が困難な離島等の特例 指定サービスや基準該当サービスの確保が著しく困難な離島等の地域で、市町村が必要と認める場合には、これ らのサービス以外の居宅サービス・介護予防サービスに相当するサービスを保険給付の対象とすることができる。
【対象地域】①離島振興対策実施地域 ②奄美群島 ③振興山村 ④小笠原諸島 ⑤沖縄の離島 ⑥豪雪地帯、特別豪雪地帯、辺地、過疎地域等で あって、人口密度が希薄、交通が不便等の理由によりサービスの確保が著しく困難な地域
○中山間地域等に対する報酬における評価 訪問系・多機能系・通所系サービスについて、中山間地域等に事業所が所在する場合や居住している利用者に対してサービス提供をした場合、介護報酬における加算で評価。
運営基準にも多くの改定が入ることとなった令和3年度の介護報酬改定ですが、これは2040年に向けて制度設計を急いでいるというのが背景に有ります。
このような背景から、これからの報酬改定はスピードを増していくことが想定され、これをしっかり読み解いて今から準備しておくことが大切です。
次回は引き続き介護報酬改定についてその2をご紹介してまいります!