訪問介護、通所介護などお役立ち情報・書式が満載

  1. HOME
  2. 介護保険法
  3. 算定要件
  4. 介護職員処遇改善加算とは?取得方法・区分・種類・注意するポイントを徹底紹介

介護職員処遇改善加算とは?取得方法・区分・種類・注意するポイントを徹底紹介

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

詳細プロフィール

続きを読む

介護職員処遇改善加算とは、利用者に直接サービスを提供する介護職員の環境整備と賃金改善を目的に創設された加算です。

介護職員処遇改善加算の取得ができてない事業所や、制度が理解できず十分な加算を受けれていないケースも多くあります。

今回はそんな方のために介護職員処遇改善加算の定義や取得方法、取得条件や区分について詳しく説明していきます。

介護職員処遇改善加算を受けていない方はもちろん、すでに介護職員処遇改善加算を取得している事業所の方でも処遇改善加算を正しく理解することにより、より加算率の高い区分で介護職員処遇改善加算を取得できる場合があるので、是非最後まで読んでみてください。

介護職員処遇改善加算とは?

介護職員処遇改善加算とは、利用者に直接サービスを提供する介護職員の環境整備と賃金改善を目的に創設された加算です。

介護職員処遇改善加算を取得する事業所には、キャリアアップの仕組みを作り、職場環境を改善するように求められます。

それらをクリアした介護施設や事業所に、介護報酬の加算としてお金を支給する制度のことを介護職員処遇改善加算といいます。

キャリアアップの仕組みは具体的に作成する必要があります。介護職員が何をどうすれば職責を上げていけるかを介護職員自身が理解できるように作成します。

介護職員が「自分も上を目指せる」と思えるような仕組みを作ることにより、介護職員はモチベーションを維持しながら仕事をすることができます。

行政に提出する計画書の雛形には具体的な職場環境要件が記載されており、事業所が選んだ要件を満たす必要があります。

給与が改善されるだけではなく、上を目指せる仕組みや職場環境の改善により、介護職員は同じ事業所で仕事を続ける動機づけを持つことができます。

事業所は介護職員が定着することで、安定した経営をしていくことができるのです。

介護職員処遇改善加算の流れ

介護職員処遇改善加算を取得するためには、介護職員のキャリアアップの仕組みを作成し、職場環境を改善するための計画を立てる必要があります。

次にその計画を実施したことを行政に報告します。

そして、介護職員にどのような形で介護職員処遇改善加算を支払うかを具体的に計画して行政へ報告します。

キャリアアップや職場環境の改善の計画が介護職員のためになっていると判断され、介護職員への支払いの計画もしっかりされていると判断された事業所には、介護職員処遇改善加算が介護報酬として支払われることになります。

事業所に介護報酬として支払われた介護職員処遇改善加算は、行政へ報告した計画通りに介護職員へ支払う必要があります。

介護職員処遇改善加算は介護職員に支払われることが義務付けられているため、事業所は必要な経費などに回すことはできません

介護職員処遇改善加算を取得する条件は?

介護職員処遇改善加算を取得する条件は、3つのキャリアパス要件と職場環境要件を満たす必要があります。

職場環境要件

職場環境要件は、下記の表の中からいずれか1つ以上の取り組みを実施することが求められます。

年度ごとに取り組む内容の申告と実施報告を行政に行います。何を取り組んでいるかについて、全ての介護職員に周知する必要があります。

職場環境等要件の区分

内容

入職促進に向けた取組

・法人や事業所の経営理念やケア方針

・人材育成方針、その実現のための施策

・仕組みなどの明確化

・事業者の共同による採用

・人事ローテーション

・研修のための制度構築

・他産業からの転職者、主婦層、中高年齢者等、経験者

・有資格者等にこだわらない幅広い採用の仕組みの構築

・職業体験の受入れや地域行事への参加や主催等による職業魅力度向上の取組の実施

資質の向上やキャリアアップに向けた支援

・働きながら介護福祉士取得を目指す者に対する実務者研修受講支援や、より専門性の高い介護技術を取得しようとする者に対する喀痰吸引、認知症ケア、サービス提供責任者研修、中堅職員に対するマネジメント研修の受講支援等

・研修の受講やキャリア段位制度と人事考課との連動

・メンター(仕事やメンタル面のサポート等をする担当者)制度等導入

・上位者

・担当者等によるキャリア面談など、キャリアアップ等に関する定期的な相談の機会の確保

両立支援・多様な働き方の推進

・子育てや家族等の介護等と仕事の両立を目指す者のための休業制度等の充実、事業所内託児施設の整備

・職員の事情等の状況に応じた勤務シフトや短時間正規職員制度の導入、職員の希望に即した非正規職員から正規職員への転換の制度等の整備

・有給休暇が取得しやすい環境の整備 ・業務や福利厚生制度、メンタルヘルス等の職員相談窓口の設置等相談体制の充実

腰痛を含む心身の健康管理

・介護職員の身体の負担軽減のための介護技術の修得支援、介護ロボットやリフト等の介護機器等導入及び研修等による腰痛対策の実施 ・短時間勤務労働者等も受診可能な健康診断

・ストレスチェックや、従業員のための休憩室の設置等健康管理対策の実施

・雇用管理改善のための管理者に対する研修等の実施

・事故・トラブルへの対応マニュアル等の作成等の体制の整備

生産性向上のための業務改善の取組

・タブレット端末やインカム等のICT活用や見守り機器等の介護ロボットやセンサー等の導入による業務量の縮減

・高齢者の活躍(居室やフロア等の掃除、食事の配膳・下膳などのほか、経理や労務、広報なども含めた介護業務以外の業務の提供)等による役割分担の明確化

・5S活動(業務管理の手法の1つ。整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとったもの)等の実践による職場環境の整備

・業務手順書の作成や、記録・報告様式の工夫等による情報共有や作業負担の軽減

やりがい・働きがいの醸成

・ミーティング等による職場内コミュニケーションの円滑化による個々の介護職員の気づきを踏まえた勤務環境やケア内容の改善

・地域包括ケアの一員としてのモチベーション向上に資する、地域の児童・生徒や住民との交流の実施

・利用者本位のケア方針など介護保険や法人の理念等を定期的に学ぶ機会の提供

・ケアの好事例や、利用者やその家族からの謝意等の情報を共有する機会の提供

参考:厚生労働省

上記の表から1つ以上を選び、要件を満たす必要があります。

介護職員等特定処遇改善加算との違い

処遇改善加算に加え、2019年に介護職員特定処遇改善加算が創設されました。

介護職員の処遇を改善するという点では同じですが、違いもあります。

違いを下記の表にまとめました。

介護職員処遇改善加算

介護職員等特定処遇改善加算

目的

・介護職員全般の処遇改善

・技能・経験を持ったリーダー級の介護職員の処遇改善(主に介護福祉士)

算定要件

・キャリアパス要件と職場環境等要件を満たしていること

・処遇改善加算Ⅰ〜Ⅲのいずれかを取得していること ・職場環境要件のうち一つ以上の取り組みを行っていること ・処遇改善加算に基づく取り組みについて、ホームページに掲載するなど、見える化を行なっていること

配分ルール

・特になし

・介護職員以外にも配分可能 ・リーダー級の職員への配分がその他の介護職員よりも高くなるように設定する必要がある

その他

・職場環境要件は処遇改善加算と特定処遇改善加算で重複が可能。

介護職員の処遇を改善するという点では同じですが、目的や分配ルールに違いがあることが分かります。加算率も特定処遇改善加算の方が低く設定されています。

特定処遇改善加算について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

特定処遇改善加算とは?算定要件や配分ルールなどについて徹底解説!

処遇改善加算の区分

処遇改善加算の区分ごとの単位数をまとめました。

月の総単位数に各種加算や減算を加えた単位数へ加算率を乗ずることで、単位数を算定することができます。

サービスごとの介護職員処遇改善加算の加算率

処遇改善加算(Ⅰ)

処遇改善加算(Ⅱ)

処遇改善加算(Ⅲ)

訪問介護

13.70%

10.00%

5.50%

訪問入浴介護

5.80%

4.20%

2.30%

通所介護

5.90%

4.30%

2.30%

通所リハビリテーション

4.70%

3.40%

1.90%

短期入所生活介護

8.30%

6.00%

3.30%

短期入所療養介護<老健>

3.90%

2.90%

1.60%

短期入所療養介護<病院等>

2.60%

1.90%

1.00%

特定施設入居者生活介護

8.20%

6.00%

3.30%

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

13.70%

10.00%

5.50%

夜間対応型訪問介護

13.70%

10.00%

5.50%

認知症対応型通所介護

10.40%

7.60%

4.20%

小規模多機能型居宅介護

10.20%

7.40%

4.10%

認知症対応型共同生活介護

11.10%

8.10%

4.50%

地域密着型特定施設入居者生活介護

8.20%

6.00%

3.30%

地域密着型介護老人福祉施設

8.30%

6.00%

3.30%

看護小規模多機能型居宅介護

10.20%

7.40%

4.10%

介護老人福祉施設

8.30%

6.00%

3.30%

介護老人保健施設

3.90%

2.90%

1.60%

介護療養型医療施設

2.60%

1.90%

1.00%

介護医療院

2.60%

1.90%

1.00%

訪問介護が加算率が高く設定されていることが分かります。

また、区分が下がるごとに加算率が低くなることも分かります。

できるだけ高い加算率で、介護職員の処遇を改善したいと考えると思います。

どうしたら高い加算率で処遇改善加算を取得できるか、区分ごとの算定要件をまとめました。

処遇改善加算Ⅰ

・キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲ、職場環境要件を全て満たす必要がある。

処遇改善加算Ⅱ

・キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、職場環境要件を満たす必要がある。

処遇改善加算Ⅲ

・キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱのどちらかと、職場環境要件を満たす必要がある。

処遇改善加算Ⅳ

・キャリアパス要件Ⅰ、キャリアパス要件Ⅱ、職場環境要件のいずれかを満たす必要がある(処遇改善加算Ⅳは令和4年3月31日に廃止されました)

処遇改善加算Ⅴ

・キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅲ、職場環境要件を全て満たしていない(処遇改善加算Ⅴは令和4年3月31日に廃止されました)

処遇改善の計算方法

処遇改善加算の計算については、こちらの記事を参考にしてください。

【令和4年最新版】介護職員処遇改善加算の計算方法を詳しく解説!

事業所によって加算の割合が異なる

事業種別ごとの取得割合はどうなっているでしょうか。加算算定率は下記の通りです。

加算(Ⅰ) 算定率

加算(Ⅱ) 算定率

加算(Ⅲ) 算定率

加算(Ⅳ) 算定率

加算(Ⅴ) 算定率

合計

訪問介護

68.9%

10.6%

8.9%

0.3%

0.4%

89.1%

訪問入浴介護

80.0%

7.5%

5.8%

0.4%

0.2%

93.9%

通所介護

80.6%

8.0%

6.1%

0.2%

0.4%

95.3%

通所リハビリテーション

59.6%

8.2%

7.2%

0.5%

0.4%

76.1%

短期入所生活介護

89.6%

6.0%

2.9%

0.1%

0.2%

98.9%

短期入所療養介護

79.7%

8.4%

6.0%

0.5%

0.5%

95.0%

特定施設入居者生活介護

90.5%

4.2%

3.4%

0.2%

0.1%

98.4%

定期巡回・随時対応型訪問介護看護

91.5%

3.2%

1.9%

0.0%

0.0%

96.7%

夜間対応型訪問介護

91.6%

2.4%

1.2%

0.0%

0.6%

95.8%

地域密着型通所介護

64.7%

11.2%

9.5%

0.5%

0.5%

86.5%

認知症対応型通所介護

86.5%

6.7%

3.8%

0.1%

0.1%

97.3%

小規模多機能型居宅介護

88.5%

5.6%

3.5%

0.2%

0.3%

98.2%

認知症対応型共同生活介護

86.4%

6.4%

5.0%

0.2%

0.4%

98.3%

地域密着型特定施設入居者生活介護

86.1%

7.0%

4.9%

0.0%

0.0%

98.0%

地域密着型介護老人福祉施設

90.5%

6.8%

2.0%

0.1%

0.2%

99.6%

複合型サービス (看護小規模多機能型居宅介護)

87.1%

4.2%

3.2%

0.6%

0.3%

95.5%

介護老人福祉施設

89.9%

5.8%

3.1%

0.1%

0.3%

99.2%

介護老人保健施設

80.1%

8.7%

6.3%

0.4%

0.6%

96.2%

介護療養型医療施設

39.7%

11.0%

15.0%

1.1%

1.7%

68.6%

介護医療院

57.1%

8.1%

12.8%

0.7%

0.7%

79.4%

合計

77.2%

8.3%

6.4%

0.3%

0.4%

92.6%

参考:厚生労働省

※介護予防サービスを除く。

各事業所によって算定率にばらつきがあるものの、処遇改善加算Ⅰを取得している事業所が多いことが分かります。

処遇改善加算Ⅰを取得するためには、職位や職責など定めて実行する必要がありますが、取得している事業所が多いことから、介護職員の処遇を改善するために各事業所が努力していることが伺えます。

加算がもらえない事業所もある

処遇改善加算は、介護職員のみを対象としているため、介護職員以外の職種は対処遇改善加算の対象となりません。

それで、訪問看護や訪問リハビリなど、介護職員が働いていない事業所は対象になりません。

対象外の事業所は、下記の通りです。

・訪問看護

・訪問リハビリテーション

・福祉用具貸与

・特定福祉用具販売

・居宅療養管理指導

・居宅介護支援

・介護予防支援

算定できる事業所でも介護職員以外は対象とならないため、管理者や事務員、ケアマネージャーや生活相談員なども処遇改善加算の恩恵を受けることはできません。

デイサービスなど介護職員とともに看護師や生活相談員が所属する事業所は、介護職員の給与がアップしますが、他の職種は給与がアップしないので、他の職種の不満が出る場合があるかもしれません。

処遇改善加算は事務負担が増えるため、事務職員も大変な作業をしているのに、処遇が改善されないことで不満を持つ場合もあります。

介護職員の給与がアップするので嬉しい加算ですが、他職種との給与のバランスが難しい事業所もあることでしょう。

処遇改善加算をピンハネする業者はいる?

処遇改善加算を受け取っているにも関わらず、それを職員に支払ったように偽造し私利を上げる、いわゆる「ピンハネ」を行うことはできるのでしょうか。

結論、ピンハネを行うことはできません

ピンハネを行っても行政からの実地指導などで問題が発覚し、行政処分として指定取り消しになる場合が多いです。

年度末以後に介護職員へ処遇改善加算分の支払額を報告する必要があるので、基本給を下げて処遇改善加算で埋め合わせることは原則できません。

処遇改善のピンハネについて詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

介護職員処遇改善加算がピンハネされることはある?処遇改善加算がもらえないときの対処法についても解説!

2019年に特定処遇改善加算が新設

2019年に特定処遇改善加算の制度が新設されました。

特定処遇改善加算は、経験豊富な介護職員への処遇改善に重きをおいたものです。

特定処遇改善加算について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

2019年度の処遇改善加算まとめ!変更点・要件についてご紹介

まとめ

介護職員への処遇改善加算は、高齢化社会で需要が増え続けている介護サービスを充実させるためのものです。

今後、介護職員の待遇は向上していくことが予想されます。

処遇改善加算については、最新の情報を確認するようにしましょう。

お役立ち資料:処遇改善加算の取得を目指す方へ

介護事業所向けに、処遇改善加算の取得から運用までを詳しくまとめました。
処遇改善加算の取得を考えている方や、すでに取得しているものの運用に不安を感じる方は、ぜひご一読ください。
詳しく見る