この記事では、介護保険における処遇改善加算におけるQ&Aについてご紹介していきます。
目次
キャリアパスとは、「職務経歴上の道すじ」を進んでいくことを支援する職場の制度を指します。
この「キャリアパス」が構築されることを前提に、介護職員の処遇改善のための交付金や加算の受給要件として設定した基準を「キャリアパス要件」と呼び、「キャリアパス要件」では、就業規則等により制度化し、確実に運用されるとともに、職員に周知することも重要です。
キャリアパスで求められる項目・内容等と「キャリアパス要件」との関係は以下の通り
①要件Ⅰ、要件Ⅲ:段階的に法人が決定した役割、仕事をしてもらう (職位・職責・職務内容を定める)
②要件Ⅰ、要件Ⅲ:①を果たすためには、経験、資格、能力が必要 (任用の要件、昇給の要件を定める)
③要件Ⅱ:②を満たすための支援体制がある (資質向上(人材育成)計画を定める)
④要件Ⅰ・要件Ⅲ:これらを満たすことでその分、給与が増える (賃金体系を定める)
次の全てを満たす必要があります。
①介護職員の任用における職位、職責又は職務内容等の要件を定めていること
⇒具体的には、就業規則の中に「介護福祉士等の資格要件」「経験年数」「介護技術」「研修受講歴」「過去に従事した職務内容」などの「任用にあたっての要件」についての記載があること。
②職位、職責又は職務内容等に応じた賃金体系について定めていること
⇒具体的には、等級に応じた基本給の仕組みや、役職、資格、能力、経験又は職務内容に応じた手当等が賃金体系に定められており、具体的な賃金テーブルがあること。もしくはキャリアパス表があること。事業所規模などの理由で賃金規程等の作成が難しい場合は、「一般職、主任、係長、課長、施設長」等の役職ごとに役職手当の支給額が規定されていること。
③整備した内容を、就業規則等に明記し、職員に周知していること
⇒就業規則や賃金規程を整備していない場合は、それに代わる書類を別途作成し、必ず全ての介護職員に周知を行います。
次の全てを満たす必要があります。
①職員の仕事内容等を踏まえて、資質向上の目標及び次の①②のどちらかについて具体的な計画を立て、研修の実施又は研修の機会を確保すること
〇資質向上のための計画に沿って、研修機会の提供又は技術指導等を実施(OJT、OFF-JT 等)し、介護職員の能力評価を行うこと
〇 資格取得のための支援を実施すること
⇒介護職員の意見を聴き、事業所として資質向上のための目標を設定します。
◆「資質向上のための目標」の例
・利用者のニーズに応じた良質なサービスを提供するために、介護職員
が技術・能力(介護技術、コミュニケーション能力、協調性、マネジメント能力等)の向上に努める 等
・事業所全体での資格(介護福祉士、介護員養成研修、居宅介護従業者養成研修等の取得)の取得率向上を図る 等
◆「資格取得のための支援」の例
・研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助 等
②この内容を職員に周知していること
⇒キャリアパス要件Ⅰと同様、就業規則や賃金規程を整備していない場合、それに代わる書類を別途作成し、必ず全ての介護職員に周知を行います。
下記、次の全てを満たす必要があります。
①「経験若しくは資格等に応じて昇給する仕組み」又は 「一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み」を設けていること。具体的には、次の①から③のどれかに該当する仕組みがあること
〇「勤続年数」や「経験年数」などに応じて昇給する仕組み
〇 「介護福祉士」等の資格取得に応じて昇給する仕組み
〇 「人事評価」などの結果に基づき昇給する仕組み
⇒介護職員について、何らかの昇給の仕組みを設ける必要があります。
② この内容を就業規則等に明記し、職員に周知していること
⇒就業規則や賃金規程で整備していない場合も、それに代わる書類を別途整備し、キャリパス要件Ⅰ、Ⅱと同じく全ての介護職員に周知してください。
キャリアパス要件等はすべての介護職員に周知した上で届け出ることとなっており、当該内容の実際の運用等については、基本的には使用者と介護職員の関係において解決なっています。
例えば、要件(Ⅱ)において、資質向上のための取り組みがすべて計画どおりに実施できない場合もありますが、この事実のみをもって要件(Ⅱ)を満たさないことにはなりません。
ただし、そもそも虚偽の計画を策定する等、虚偽又は不正の手段により交付金を受給した場合は、実施要領8の規定により、都道府県は交付金を返還させる、支給停止を行う等の対応をする可能性があるので、注意が必要です。
法人全体の取扱要領や労働基準法上の就業規則作成義務のない事業場(常時雇用する者が10人未満)における内規等が想定されており、当該書面のような就業規則と異なる労働基準法上の作成義務のな
い書類については、キャリアパス要件等届出書に添付する必要があるとされています。
ポストの設定と実際の職員配置が完全に一致する必要はなく、無理な昇進等はかえって組織の停滞を招く等、キャリアパスの本来の趣旨を逸脱することも考えられることを踏まえ、適切な人事労務管理を実施することとなっています。
個別面談や、自己評価に対し先輩職員・サービス担当責任者・ユニットリーダー・管理者等が評価を行う手法が考えられるとされています。
本日は処遇改善加算のキャリアパス要件についてご紹介してまいりました。
すでに処遇改善加算はほぼすべての事業所で取得が終わっている加算ですが、だからこそ、これから返還という処分に至らないためにも今一度自社の制度の確認を行いましょう。