看護体制強化加算は介護保険指定訪問看護事業所が算定できる加算のひとつです。
一般社団法人全国訪問看護事業協会の調査によると、2022年度中の訪問看護事業所の新設事業所数は全国で1968事業所もあり、10年の間に事業所数は2倍以上に増えています。
それだけに、訪問看護ステーションの利用者獲得やシェア争いはますます熾烈になっています。
そこで重要なのが差別化です。事業所の強みを活かし、ケアマネジャーや医療機関にアピールすることが重要な鍵となります。訪問看護事業所としての質の高さを示す意味でも、看護体制強化加算は大きなアピール材料となります。
看護体制強化加算の概要、単位数、算定要件などを詳しく解説し、加算取得を目指す事業所の方に有益な情報をお届けします。
目次
看護体制強化加算とは、質の高い訪問看護サービスを提供する事業所を評価するために設けられた加算です。
中重度の医療ニーズを抱える在宅の利用者が増えたことや、在宅看取りが増えていることから、質の高い看護サービスを提供する事業所を増やす必要がありました。そのような背景から、平成27年の介護報酬改定を機に作られています。
看護体制強化加算は、厚生労働省が定めた一定の条件を満たすことで算定できます。看護体制強化加算は、看護師の配置や加算の算定率、ターミナルケアの実施状況などの要件をクリアすることで加算の算定ができます。
看護体制強化加算には、以下の種類があります。
加算の名称 | 単位数 |
看護体制強化加算(Ⅰ) | 550単位/月 |
看護体制強化加算(Ⅱ) | 200単位/月 |
また、要支援の利用者を対象にした介護予防訪問看護では、看護体制強化加算は1種類のみで単位数が異なります。
加算の名称 | 単位数 |
看護体制強化加算(介護予防訪問看護) | 100単位/月 |
なお、訪問看護同様に看護師が自宅を訪問するサービスとして看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービス)があります。ただし、看護小規模多機能型居宅介護には看護体制強化加算はありません。加算の算定要件については、加算の種類によって異なります。
看護体制強化加算(Ⅰ)の算定要件は以下の6つです。
看護体制強化加算(Ⅱ)の算定要件は以下の内容になっています。
このように、看護体制強化加算(Ⅰ)(Ⅱ)の違いはターミナルケア加算の算定利用者数です。
規模の小さい事業所は、ターミナルケアの算定数が少なく(Ⅰ)の基準に満たない場合があるため(Ⅱ)を算定します。
要支援の利用者を対象にした介護予防看護の看護体制強化加算も算定要件が一部異なります。
算定要件1~5までは、要介護の看護体制強化加算と同じです。
介護予防訪問看護の場合は、ターミナルケア加算の算定数については要件に含まれておらず、この点のみが異なります。
看護体制強化加算は(Ⅰ)と(Ⅱ)の2種類ありますが、どちらかを選択して届出をおこないます。変更が必要な場合は、変更の届出をしなければいけません。
特別管理加算の算定割合や、看護職員の割合など、算定要件に該当するか毎月確認し、加算に誤りがないように注意が必要です。
また、留意点として、看護体制強化加算の算定要件には以下の文言が付記されています。
医療機関との連携のもと、看護職員の出向や研修派遣などの相互人材交流を通じて在宅慮要支援能力の向上を支援し、地域の訪問看護人材の確保・育成に寄与する取り組みを実施していることが望ましい。
つまり、看護体制強化加算を算定する事業所は、地域の訪問看護の人材確保や育成など、地域の訪問看護を支える中心的な役割を担うことも期待されています。
「望ましい」という記述であるため、必須の要件ではありませんが、その役割を自覚して事業所運営やサービス提供をしていくことが必要です。
看護体制強化加算を算定するためには、都道府県への届出が必要です。
加算を算定するには、まず加算の要件をすべて満たさなければいけません。実績などから、確実に要件をクリアしていることを確認します。6ヵ月間の実績をもとに算定する加算なので、開設して半年に満たない事業所が算定することはできません。
加算の要件を全て満たすことを確認したら、都道府県に加算の届出申請をおこないます。看護体制強化加算の(Ⅰ)もしくは(Ⅱ)のどちらかを選択します。
提出書類には、過去6ヵ月間の緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナル加算の算定数、総従業員数とそのうちの看護職員の常勤換算数を記載します。
書類は郵送もしくは窓口持参で提出します。受理した都道府県が確認することで、加算が算定できるようになります。
加算を算定開始するとき、加算の種類を変更するとき、または加算を取り下げるときにはいずれも届出を提出する必要があります。変更がない場合は届出を提出する必要はありません。
加算の届出は、前月の15日までが期限となっています。例えば、看護体制強化加算の要件を満たしたため、新たに4月から算定開始する場合を例にします。
まず、加算の算定開始について、利用者・家族に説明をおこないます。同意を得たら、過去6ヶ月間の実績を届出書に記載し、3月15日までに都道府県に届出をおこないます。
都道府県が受理したら、4月分の実績から看護体制強化加算の算定が開始できます。
届出書類の原本については、各都道府県のホームページに掲載されてます。フォーマットが異なる場合もあるので、必ず事業所の指定権者である都道府県のホームページからダウンロードしましょう。
看護体制強化加算に係る届出書に加え、介護給付費算定にかかる体制等に関する届出書・介護給付費算定にかかる体制等状況一覧表も併せて提出が必要です。
届出の提出先は都道府県になります。都道府県のホームページに、提出先の住所や担当課などが記載されています。郵送する場合は送付先を間違えないように必ず確認しましょう。
また、看護体制強化加算の届出をする際に、他にも算定開始できる加算がないか、必ずチェックしておきましょう。
看護体制強化加算の他にも、事業者にとってメリットの大きい加算があります。以下の3つの加算についても検討することをお勧めします。
サービス提供体制強化加算も看護体制強化加算と同様に、質の高い看護サービスを提供する事業所を評価するために生まれた仕組みです。
加算の名称 | 単位数 |
サービス提供体制強化加算(Ⅰ) | 6単位/回 |
サービス提供体制強化加算(Ⅱ) | 3単位/回 |
算定要件としては、全ての看護師に対して個別の研修計画を作成し、計画に沿って研修を実施していることや、健康診断を年に1回以上実施していること、利用者に関する情報伝達や技術指導を目的とした会議を開催していることなどがあります。
それに加えて、勤続年数7年以上の者の占める割合が30%以上であればサービス提供体制強化加算(Ⅰ)を、勤続年数3年以上の者の占める割合が30%以上であれば加算(Ⅱ)を算定することができます。
看護体制強化加算が月単位の加算なのに対し、サービス提供体制強化加算はサービス提供回ごとに算定できる加算です。単位数自体は小さいですが、実績が増えれば加算による報酬も増える仕組みになっています。看護体制強化加算と併せて取得できるか確認しましょう。
中山間地域における小規模事業所加算は、厚生労働大臣が定める地域に所在する事業所を対象にした加算です。小規模事業所のみを対象とした加算のため、月の延べ訪問件数が100件以下であることも条件のひとつです。
加算の名称 | 単位数 |
中山間地域における小規模事業所加算 | 所定単位数の10% |
都市部に比較して中山間地域は移動時間が長くなるなど、効率的な事業所運営が難しいというデメリットがあります。ただ、中山間地域にも訪問看護を必要とする利用者が多く、サービス提供が維持できるよう、加算が設定されています。
ターミナルケア加算は主に終末期の利用者の看取りを在宅でおこなう訪問看護事業所を評価するための加算です。死亡日及び死亡日前14日以内に2日以上ターミナルケアを提供した場合を算定条件としています。
加算の名称 | 単位数 |
ターミナルケア加算 | 2,500単位/月 |
看護体制強化加算の算定要件の一部にターミナルケア加算の算定実績があるため(介護予防訪問看護を除く)ターミナルケア加算の算定は必須です。
ターミナルケア加算の算定数を増やしていくためには、訪問診療医やケアマネジャーとの連携は欠かせません。また、ターミナルケアに柔軟に対応できるよう、癌末期の利用者へのケア技術や「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」の理解など、事業所の体制を整えていく必要があります。
ターミナルケア加算についての詳細は、以下の記事で説明していますので併せてご覧ください。
【2024年改定対応】ターミナルケア加算とは?単位数や算定要件について徹底解説!
看護体制強化加算に関するよくある質問に、わかりやすくお答えします。
看護職員の離職等によって、看護職員の割合が基準値である60%を下回る場合の対応について、厚生労働省では以下のように回答しています。
令和5年3月末日時点で看護体制強化加算を算定している事業所であって、急な看護職員の退職等により看護職員6割以上の要件を満たせなくなった場合においては、指定権者に定期的に採用計画を提出することで、採用がなされるまでの間は同要件の適用を猶予する。
参考:厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」
また、離職以外にも下記のような場合も猶予の対象となります。
看護体制強化加算は(Ⅰ)もしくは(Ⅱ)のいずれかを選択し、同時に算定することはできません。
そのため、看護体制強化加算は(Ⅱ)から(Ⅰ)に変更する場合は、事前に変更届を提出する必要があります。
看護体制強化加算の算定率は低く、2020年の厚生労働省介護給付費分科会資料では、事業所ベースで加算(Ⅰ)が0.61%であり、加算(Ⅱ)が0.39%という算定率になります。
最も大きな障壁となっているのが特別管理加算の割合です。2021年の報酬改定時より、特別管理加算の割合は30%から20%に引き下げられましたが、やはり条件としては厳しく算定事業所数は少ないのが現実です。
6ヵ月間の実績を確認して対象者の割合を計算する作業ができていないために、加算を取り逃がしている事業所もあります。算定できれば報酬の大きな加算ですので、必ずチェックしましょう。
看護体制強化加算は、訪問看護事業者にとって大きなメリットのある加算です。報酬がアップするだけでなく事業所としての質の高さを示す大きなアピール材料となります。
要件を満たすまでのハードルは非常に高く、難しい挑戦です。緊急対応の質を上げ、終末期の対応を強化し、医療ニーズの大きい利用者を獲得していかなければ看護体制強化加算取得にはたどり着きません。事業所として目標を定め、中長期的な計画を立て、要件を満たせるように取り組みましょう。