特定事業所加算とは、複数の算定要件を満たすことで算定が出来る加算です。
複数の算定要件を満たすことが必要となりますので、特定事業所加算の取得しているという事は、それだけ体制や仕組みが整っている事業所であるということを第三者に示すことができる手段でもあり、地域に根付いた事業運営をしていくためにも有効な手段であると言えます。
今回は、特定事業所加算算定のメリットとデメリットをご紹介します!
目次
特定事業所加算とは、介護保険においては「訪問介護」「居宅介護支援」、障害者総合支援法は「居宅介護」「重度訪問介護」「同行援護」「行動援護」等の事業において、安定継続的に必要な体制が整備され、より専門性の高い職員によるサービス提供、重度者対応などの点において、質の高い運営を行ったことを評価する加算です。また、当該加算は、特定の利用者のみを対象として算定するものではなく、事業所がサービスを提供するすべての利用者を対象として算定するため、利用者への説明、利用者負担額への影響なども知っておく必要があります。
また加算は、上乗せのサービス提供を評価して算定されるものであり、最低限必要と定められた要件をすべて満たしていなければ、報酬請求することはできません。
また、加算の届出以降も常にその要件を満たしている必要があり、要件に該当しないことが判明した場合には、その時点で加算廃止届を出し、翌月分から算定できないことになります。
①収益改善が可能
居宅介護支援においては、1人あたりの介護支援専門員に対し担当できるご利用者の上限が決まっています。このため、単価が要介護度別に定められた居宅介護支援の介護給付で収益改善を行うことはとても困難です。
特定事業所加算取得に伴い、ご利用者1人あたりの単価が100~505単位上がるため収益改善へとつなげることが出来ます。
②ご利用者負担の心配が少ない
ケアプラン有料化が話題となっていますが、2024年の介護報酬改定では導入が見送られる方向です。2023年現在ではご利用者負担はなく、今なら導入がしやすいと言えます。
①業務は増える
加算を取得するためには、複数の要件を満たすことが必要です。
詳しくはこちら:居宅介護支援の特定事業所加算の算定要件とは?
通常業務に加え、人材の採用や定期的な会議の実施が必要になります。
②運営指導により注意が必要
特定事業所加算取得において最も注意が必要になるのは『運営基準減算』に伴う特定事業所加算分の返還です。
特定事業所加算の取得を行っている場合、運営基準減算が有る月は算定を行うことが出来ません。
運営指導時に1人でも運営基準減算が見つかれば、伴って特定事業所加算分も全員分が返還になるため、多額の返還金が発生することも珍しくありません。
①収益改善が可能
算定は事業所全体で行うため、すべてのご利用者が総単位数の5%~20%アップします。現在、大手の法人を中心に44.2%(2020年)の事業所で取得されており、その加算に加え特定処遇改善加算の取得を行うことで他事業所より多くの賃金を支払うことや、管理者・サービス提供責任者の膨大な作業を削減することに使用されています。
②従業員の採用活動に影響する
特定事業所加算Ⅱを取得した場合、特定処遇改善加算の中でも加算率が1番高い『特定処遇改善加算Ⅰ』を算定できます。
訪問介護の特定処遇改善加算Ⅱは4.2%の加算率ですが、特定処遇改善加算Ⅰになると6.3%の加算が受けられます。これにより従業員に対し、さらなる処遇改善をすることが可能です。
①手間がかかる・何をしたらいいのか分からない
特定事業所加算を取得するにあたり、特に多い声が『手間がかかる』『よくわからない』ということです。要件を正しく理解せず、その運用を怠れば返還を求められてしまうのがこの加算です。
実際のところ、求められる要件は決して甘くなく、数百万〜数千万円の返還を求められた事例も少なくありません。
そのため正しく要件を理解し、かつ効率的に運用をしていくことが必要です。
②利用者の負担が増える・介護支援専門員からの紹介が減るのでは?
10年ほど前は、まだまだこの加算の認知度が低く、ご利用者も介護支援専門員の皆様も『特定事業所加算を取得している事業所』を選びにくいというお声もありました。
現在では、大手を中心に特定事業所加算の取得は『当たり前』になってきており、むしろ特定事業所加算の取得がない=賃金が少ないというイメージを持っている介護職員もいます。
介護職員が不足すれば、サービスを提供することは出来ず、ご利用者にとって一番大切な『継続してサービスを提供する』ということが出来なくなります。
ご利用者の負担が増えるのは事実ですが、今まで4,000円の自己負担を支払っていた場合、
加算のⅠで800円、加算のⅡ・Ⅲで400円の負担が増える計算になります。
『800円、400円を支払っても、このヘルパーさんに来てほしい』
『800円、400円負担が増えるなら、このヘルパーにはもう来てもらわなくていい』
多くのご利用者が、800円、400円を支払うことを選ぶことは明らかです。
近年の介護報酬改定では、どの事業も『加算』が新設されてきています。
一方で基本報酬には大きな変化が無く、物価の上昇に伴い賃金改善が必要であると言われる中、今後も基本報酬が上がる見込みは有りません。
物価の上昇に合わせた賃金を支払い、安定した経営を行っていくためには、今後も加算の取得が大きなポイントとなってきます。
介護事業者向けに加算取得が可能かどうかをまとめたチェックシートです。