特定事業所加算は、質の高いケアマネジメントを提供する事業所を評価する加算です。
事業所の収益をあげ、経営を安定させるためにも、経営者であれば取得を目指したいところです。
今回は、居宅介護支援における特定事業所加算の算定要件について、区分ごとに解説します。
訪問介護の特定事業所加算についてはこちらの記事を参考にしてください。
【令和4年最新版】訪問介護の特定事業所加算とは?加算割合や算定要件について徹底解説!
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目次
特定事業所加算とは、一定の条件を満たして質の高い介護サービスを提供している介護事業所を評価する制度のことです。
介護保険法に基づき、訪問介護サービスと居宅介護支援にて適用されています。
特定事業所加算を取得している事業所には、要件の達成区分に応じて手当が支払われます。
より多くの要件を満たしている事業所ほど、加算単位も大きくなり、手当として支給される額が大きくなるという仕組みです。
2021年度の介護報酬改定により、居宅介護支援における特定事業所加算の算定単位や区分が改められました。
1ヵ月あたりの加算単位数は、特定事業所加算(Ⅰ)で500単位から505単位へ、特定事業所加算(Ⅱ)で400単位から407単位へ、特定事業所加算(Ⅲ)で300単位から309単位へと引き上げられています。
また、新たに特定事業所加算(A)として、1ヵ月あたり100単位を加算する区分が設けられました。
区分 | 加算単位数 |
特定事業所加算(Ⅰ) | 1ヵ月あたり505単位 |
特定事業所加算(Ⅱ) | 1ヵ月あたり407単位 |
特定事業所加算(Ⅲ) | 1ヵ月あたり309単位 |
特定事業所加算(A) | 1ヵ月あたり100単位 |
それぞれの加算を取得するためには、算定要件を満たすことが求められます。
区分ごとに定められた算定要件について、順番にみていきましょう。
4つの区分のうち、もっとも算定要件が厳しいのが、特定事業所加算(Ⅰ)です。
取得がむずかしいからこそ、加算単位数も1ヵ月あたり505単位と、4つの区分の中でもっとも大きな手当が得られます。
特定事業所加算(Ⅰ)を取得するためには、次の13の要件を満たしていることが求められます。
①専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を2名以上配置していること
②専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を3名以上配置していること
③利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議を定期的に開催すること
④24時間連絡できる体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者等の相談に対応する体制を確保していること
⑤算定日が属する月の利用者の総数のうち、要介護状態区分が要介護3、要介護4及び要介護5である者の占める割合が100分の40以上であること
⑥当該指定居宅介護支援事業所における介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施していること
⑦地域包括支援センターから支援が困難な事例を紹介された場合においても、当該支援が困難な事例に係る者に指定居宅介護支援を提供していること
⑧地域包括支援センター等が実施する事例検討会等に参加していること
⑨居宅介護支援費に係る運営基準減算又は特定事業所集中減算の適用を受けていないこと
⑩指定居宅介護支援事業所において指定居宅介護支援の提供を受ける利用者数が当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員1人当たり40名未満であること
⑪介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していること(平成28年度の介護支援専門員実務研修受講試験の合格発表の日から適用)
⑫他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施していること
⑬必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービス(介護給付等対象サービス以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等をいう)が包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること
引用:厚生労働省
上記の算定要件のうち、「①専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を2名以上配置していること」および「⑤算定日が属する月の利用者の総数のうち、要介護状態区分が要介護3、要介護4及び要介護5である者の占める割合が100分の40以上であること」については、ほかの区分には見られない要件です。
実務経験や知識の豊富な人材を揃えているのみならず、より介護度の高い利用者にも積極的に介護サービスを提供しているかどうかが大きな評価ポイントとなっていることがうかがえます。
特定事業所加算(Ⅱ)を取得することで加算される単位数は、1ヵ月あたり407単位です。
特定事業所加算(Ⅱ)を取得するためには、次の要件を満たす必要があります。
①特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件のうち、②、③、④、⑥、⑦、⑧、⑨、⑪、⑫、⑬を満たしていること
②専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を配置していること
③指定居宅介護支援事業所において指定居宅介護支援の提供を受ける利用者数が当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員1人当たり45名未満であること
特定事業所加算(Ⅱ)の取得においても、(Ⅰ)と同様に常勤の主任介護支援専門員を配置していることが必要です。
ただし、配置人員の数についての条件がないという点において、(Ⅰ)よりは要件を達成しやすいといえます。
また、介護支援専門員1人当たりの利用者数において、他の3つの区分では40名未満とされているのに対し、特定事業所加算(Ⅱ)では45名未満という要件が定められています。
特定事業所加算(Ⅲ)を取得することで加算される単位数は、1ヵ月あたり309単位です。
特定事業所加算(Ⅲ)の取得には、次の算定要件を満たす必要があります。
①特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件のうち、③、④、⑥、⑦、⑧、⑨、⑩、⑪、⑫、⑬を満たしていること
②特定事業所加算(Ⅱ)の算定要件のうち、②を満たしていること
③専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を2名以上配置していること
特定事業所加算(Ⅰ)および(Ⅱ)においては、指定居宅介護支援の業務のみに従事する常勤の介護支援専門員を3名以上配置していることが必要です。
一方で、特定事業所加算(Ⅲ)の算定要件では、必要な常勤の介護支援専門員の人数は2名以上と定められています。
特定事業所加算(A)は、2021年4月の介護報酬改正により新設された新しい区分です。
特定事業所加算(A)の取得によって加算される単位数は1ヵ月あたり100単位と、ほかの3つの区分と比較して大きくはありません。しかし、そのぶん取得しやすい要件が設けられています。
特定事業所加算(A)の算定要件は次の通りです。
①特定事業所加算(Ⅰ)の算定要件のうち、③、④、⑥、⑦、⑧、⑨、⑩、⑪、⑫、⑬を満たしていること。
このうち、④、⑥、⑪、⑫においては、他の事業所との連携により満たしてもかまわない
②専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を配置していること
③専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を1名以上、非常勤の介護支援専門員(他の事業所との兼務可)を1名以上配置していること
特定事業所加算(A)の区分が新たに設けられた背景には、小規模な事業所でも特定事業所加算を取得しやすくすることで、地域の介護サービスの質を向上させていきたいという厚生労働省のねらいがあります。
今一度(A)の算定要件②および③を見てみると、要件を満たすための人員配置として、常勤の主任ケアマネージャーが1名以上、常勤のケアマネージャーが1名以上、非常勤のケアマネージャー(他事業所との兼務可)が1名以上必要となっています。
つまり、少なくとも3名(うち1名は非常勤・兼務可)配置できれば、人員要件はクリアできるというわけです。
また、特定事業所加算(A)の算定要件において特徴的なのが、他の事業所と連携しての実施が可能であるということです。
これら4点については、他の事業所との連携によっても要件を満たすものとされます。
なお、算定要件③にある非常勤の介護支援専門員について、兼務できる事業所は連携先に限られます。
特に地方などの地域において、介護サービスの質を維持・向上させるためには、時として事業所間での連携が必要になります。
特定事業所加算(A)の取得は、事業所間で協力して地域の介護課題に向き合うきっかけともなり得るのです。
特定事業所加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)、(A)それぞれの算定要件について紹介しました。
ここで、区分ごとの算定要件を以下の一覧に示します。
算定要件 | 特定事業所加算(Ⅰ) | 特定事業所加算(Ⅱ) | 特定事業所加算(Ⅲ) | 特定事業所加算(A) | 主な根拠書類 |
①専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の主任介護支援専門員を配置していること | 2名以上 | 1名以上 | 1名以上 | 1名以上 | 主任介護支援専門員検収修了証書(写) 介護支援専門員証(写) |
②専ら指定居宅介護支援の提供に当たる常勤の介護支援専門員を配置していること | 3名以上 | 3名以上 | 2名以上 | 常勤1名以上 非常勤1名以上(他事業所との兼務可) | 従業者の勤務体制および勤務形態が分かる資料 介護支援専門員証(写) |
③利用者に関する情報又はサービス提供に当たっての留意事項に係る伝達等を目的とした会議を定期的に開催すること | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 1年間の週単位の予定表および会議録様式 |
④24時間連絡できる体制を確保し、かつ、必要に応じて利用者等の相談に対応する体制を確保していること | 〇 | 〇 | 〇 | 〇(他事業所との連携でも可) | 24時間連絡体制を明示した重要事項説明書 利用者や家族の同意を得ることが分かる資料(Aのみ) |
⑤算定日が属する月の利用者の総数のうち、要介護状態区分が要介護3、要介護4及び要介護5である者の占める割合が100分の40以上であること | 〇 | – | – | – | 直近3ヶ月の利用者の要介護度一覧表 |
⑥当該指定居宅介護支援事業所における介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施していること | 〇 | 〇 | 〇 | 〇(他事業所との連携でも可) | 介護支援専門員全員の研修実施計画 |
⑦地域包括支援センターから支援が困難な事例を紹介された場合においても、当該支援が困難な事例に係る者に指定居宅介護支援を提供していること | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 困難事例であっても指定居宅介護支援の提供を行う旨を宣言したもの |
⑧地域包括支援センター等が実施する事例検討会等に参加していること | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 募集通知および申込書 介護支援専門員別の参加状況一覧 |
⑨居宅介護支援費に係る運営基準減算又は特定事業所集中減算の適用を受けていないこと | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 直近の特定事業所集中減算算定表 |
⑩指定居宅介護支援事業所において指定居宅介護支援の提供を受ける利用者数が当該指定居宅介護支援事業所の介護支援専門員1人当たり40名未満であること | 〇 | 45名未満 | 〇 | 〇 | 直近3ヶ月の国保連提出の介護給付費請求書 |
⑪介護支援専門員実務研修における科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力又は協力体制を確保していること | 〇 | 〇 | 〇 | 〇(他事業所との連携でも可) | 介護支援専門員実務研修における科目に協力または協力体制を確保していると確認できる書類 |
⑫他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で事例検討会、研修会等を実施していること | 〇 | 〇 | 〇 | 〇(他事業所との連携でも可) | 事例検討会の内容や開催時期、共同で実施する他事業所等まで記載した計画 |
⑬必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成していること | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 必要に応じて、多様な主体により提供される利用者の日常生活全般を支援するサービスが包括的に提供されるような居宅サービス計画を作成することを宣言したもの |
参考:船橋市
実際に加算を得るには、各市区町村に届出をし、承認を得る必要があります。
この際、介護支援相談員の在籍状況や、1年間の会議の予定表、直近3ヶ月の介護給付費請求書など、各要件を満たしていることを示す根拠書類の提出が求められます。
必要となる根拠書類の内容やフォーマットは市区町村によって異なるため、自治体のHPなどで確認するようにしてください。
なお、特定事業所加算(Ⅰ)、(Ⅱ)、(Ⅲ)、(A)を併せて算定することはできません。
また、年度の途中であっても、算定要件を満たさなくなった場合などは変更の手続きが必要です。
居宅介護支援における特定事業所加算の算定要件について解説しました。
特定事業所加算の取得によって収益が増えれば、職員の給料へ反映させたり設備を新しくしたりなど、自由に使える資金も増えます。結果として人材の定着につながり、経営の改善も期待できます。また、利用者からより信頼を得られるのも大きなメリットです。
特定事業所加算(A)の新設により小規模な事業所でも取得しやすくなっているため、算定要件を確認のうえ、取得を検討してみてください。