訪問介護の特定事業所加算Ⅰ〜Ⅴを算定するためには、多くの要件があります。今回は、それぞれの算定要件について紹介します。
ぜひ、最後までお読みください。
目次
要介護度が高い利用者が対象であっても、専門性の高い従業員を多く配置するなどをして、質の高い介護サービスを提供することで事業所に対して支払われる加算のことを「特定事業所加算」といい、近年では全体の40%程度が加算を取得しています。
この特定事業所加算は、介護保険領域においては「訪問介護」「居宅介護支援」の事業で算定が可能です。
参考:
株式会社 三菱総合研究所「居宅介護支援および介護予防支援における 令和3年度介護報酬改定の影響に関する調査研究事業」
厚生労働省「訪問介護における平成30年度介護報酬改定の影響に関する調査研究事業(結果概要)(案)」
訪問介護の特定事業所加算は下記の5つに分類されます。
参考:厚生労働省「社会保障審議会 介護給付費分科会(第220回)」
特定事業所加算Ⅰ〜Ⅴを算定するためには、下記の要件を理解する必要があります。
全ての訪問介護員に対して、個別ごとに研修計画を作成し、計画に従って研修(外部研修を含む)を実施しているまたは実施することが予定されている。
利用者に関する情報若しくはサービス提供に当たっての留意事項の伝達又は訪問介護員等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催している。
なお、会議の定期的開催については以下の記事でも詳しく解説を行っています。
【特定事業所加算】会議開催の算定要件を効率的に満たすための方法は?
サービス提供を実施するにあたってサービス提供責任者が訪問介護員等に対して、利用者に関する情報やサービス提供に当たっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始するだけでなく、サービス提供終了後担当する訪問介護員等から適宜報告を受ける体制を整備している。
なお、利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告については、以下の記事でも詳しく解説を行っています。
【特定事業所加算】指示・報告の算定要件を効率的に満たすための方法は?様式の例や注意点を解説
全ての訪問介護員等に対する定期的な健康診断を実施する体制を整備している。
緊急時等における対応方法を利用者に明示している。
①訪問介護員等の総数のうち介護福祉士の占める割合が30%以上である。
②訪問介護員等の総数のうち介護福祉士、実務者研修終了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者の占める割合が50%以上である。
①3年以上の実務経験を有す介護福祉士
②5年以上の実務経験を有する実務者研修終了者、介護職員基礎研修課程修了者、1級課程修了者
利用者の総数のうち、要介護4及び要介護5である者、認知症日常生活自立度ランクⅢ、Ⅳ又はMである者並びにたんの吸引等が必要な者が占める割合が20%以上である。
それぞれの算定項目をまとめると下記のようにまとめられます。
算定要件 | (Ⅰ) | (Ⅱ) | (Ⅲ) | (Ⅳ) | (Ⅴ) |
(1)訪問介護員等ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
(2)利用者に関する情報またはサービス提供に当たっての留意事項の伝達等を目的とした会議の定期的な開催 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
(3)利用者情報の文書等による伝達、訪問介護員等からの報告 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
(4)健康診断等の定期的な実施 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
(5)緊急時等における対応方法の明示 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
(6)サービス提供責任者ごとに作成された研修計画に基づく研修の実施 | 〇 | ||||
(7)訪問介護員等が以下のいずれかを満たす ●介護福祉士の占める割合が30%以上 | 〇 | △ | |||
(8)全てのサービス提供責任者が以下のいずれかを満たす ●3年以上の実務経験がある介護福祉士 | 〇 | △ | |||
(9)常勤のサービス提供責任者を配置し、基準を上回る数の常勤のサービス提供責任者を1人以上配置 | 〇 | ||||
(10)訪問介護員等の総数のうち、勤続年数7年以上の占める割合が30%以上 | 〇 | ||||
(11)利用者のうち、要介護4以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が20%以上 | 〇 | 〇 | |||
(12)利用者のうち、要介護3以上、日常生活自立度Ⅲ・Ⅳ・M、たんの吸引等を必要とする利用者の占める割合が60%以上 | 〇 |
*:7.または8.の要件のいずれかを満たすこと
特定事業所加算を取得する意義は、今後国内における高齢化問題が大きく関係しています。その問題で近年生じるのが「2025年問題」です。「2025年問題」は2025年以降に約670万人いる「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者になることで生じるさまざまな問題のことです。実際、厚生労働省の予測では、2025年時点の高齢者割合は65歳以上が30.3%、75歳以上が18.1%になると推計しています。
また、高齢化が進むと要介護者も同じように増加します。厚生労働省によると、介護保険制度が開始された2000年度の要介護認定者数は約256万人でしたが、2020年度の要介護認定者数は約682万人と、約2.66倍にもなっています。
一方、訪問介護の事業所数は年々増加していますが、質の低い介護サービスを行っている事業所があるのも事実です。
しかし、特定事業所加算を取得することで、その事業所が「介護の質の向上」「人材確保」に取り組んでいることが第三者でも評価できます。
加算を取得すると下記のようなメリットがあります。
特定事業所加算は、総単位数から何%かが加算されます。特に「特定事業所加算Ⅰ」を取得すれば、総単位数プラス20%と大きく収益が上がり経営が安定します。
例えば、月商が200万円の場合であれば、年間で480万円も収益が上がります。
特定事業所加算Ⅰ・Ⅱのどちらかを取得すれば、特定処遇改善加算の中でも加算率が1番高い「特定処遇改善加算Ⅰ」の算定が可能です。
この加算は介護職員の処遇改善を目的としているため賃金の改善ができます。
なお、特定処遇改善加算Ⅰであれば1ヵ月の総単位数に、6.3%を乗じて単位数を算定します。
特定事業所加算は、第三者でも質の高いサービスを提供している事業所ということが分かるため、加算を算定しているだけで、質の高いサービスを提供する事業所と証明されます。
今回は、訪問介護の特定事業所加算を算定するための要件について解説しました。特定事業所加算はⅠ~Ⅴに分類されますが、加算Ⅰを取得するためには、多くの細かく算定項目を理解し、全てにおいて超えておく必要があるため、人的で行うと思わぬ所でミスをしてしまった結果、加算分数百万〜数千万円の返還を求められる場合があります。
このようなミスを無くすためには、積極的に介護システムの導入を検討を進めることが重要です。