重要事項説明書を変更する際には、利用者から同意を得る必要があります。変更について同意を得るためには変更同意書を作成し、署名してもらうのが一般的ですが、どのように変更同意書を作ったらいいか悩んでしまう方も多いのではないでしょうか。
本記事では重要事項説明書の変更に伴う変更同意書について詳しく解説します。介護報酬改定に伴う注意点についても解説するのでぜひ参考にしてください。
目次
介護報酬改定や新たに加算を取得し料金変更が行われる際など、既に説明を行い同意を得ている重要事項説明書に改定があった場合には、改めて利用者に説明を行い同意を得る必要があります。
令和6年は、4月の介護報酬改定と、6月に処遇改善加算などの1本化が予定されていますのでこれらにおいて変更の同意が必要です。
重要事項説明書に決定した書式はなく、定められているのは記載すべき項目のみです。変更時に同意を得るための変更同意書についても任意の書式となっています。
以下に参考例を載せますので、参考にしてください。
重要事項説明書は、介護事業を運営するために守るべきルールが定められている運営に関する基準において以下のように定められています。
訪問介護サービスの提供の開始に際しては、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、重要事項説明書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を文書により得なければならない
このことから、重要事項説明書に変更がある場合には、あらかじめ利用者や利用者の家族に説明のうえ、同意を得なければならないとされています。なお、重要事項説明書については以下の記事で詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。
介護サービスの重要事項説明書とは|ひな形や記載例について解説【令和6年度最新版】
今回の介護報酬改定では、料金(単位数)が変更になるほか、運営基準省令についても変更が行われています。以下に文例を記載しますので、参考にしてください。
料金については以下5点の変更があります。
これらについて変更された事を料金表を用いて説明する必要があります。
参考:厚生労働省「介護報酬の算定構造」
以下は、障がい者総合支援法と一体的に運営している事業所での改定例です。
身体拘束適正化が先駆けてスタートしており、委員会等についても虐待及び身体拘束と同時に開催することが認められているため、一緒に行われています。
【文例】
(虐待・身体拘束の防止について)第〇条
事業者は、利用者等の人権の擁護・虐待の防止等のために、次に掲げるとおり必要な措置を講じます。
- 虐待防止・身体拘束等の適正化のための対策を検討する委員会を定期的に開催し、その結果について従業者に周知徹底を図ります。
- 虐待防止・身体拘束等の適正化のための指針の整備をしています。
- 従業者に対して、虐待防止・身体拘束等の適正化のための定期的な研修を実施する等の必要な措置を講じます。
- 事業所はご利用者が成年後見制度を利用できるよう支援を行います。
- サービス提供中に、当該事業所従業者又は養護者(現に養護している家族・親族・同居人等)による虐待等を受けたと思われる利用者を発見した場合は、速やかに、これを市町村に通報します。
- 事業者は、利用者又は他の利用者等の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行いません。
- やむを得ず身体的拘束等を行う場合には、事前に十分な説明の上利用者又は家族等に同意を得るとともにその態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録致します。
- 虐待防止・身体拘束等の適正化に関する担当者を選定しています。
虐待防止担当者・責任者:管理者〇〇〇〇
感染症対策の強化と、業務継続計画(BCP)の策定について、業務継続計画の措置のみ対応を行えばよいと考えられている事業所さんが多くいらっしゃいます。
しかし、業務継続計画では、「感染症や災害発生時でも、いちはやく通常の運営に戻れるように」ということを目的として様々な措置を取ることが求められており、感染症対策の強化は「感染症を発生させない、まん延させない」ということを目的として措置を講じることが求められています。
このため、感染症の対策においては業務継続計画とは別に定める必要があります。
【文例】
(衛生管理について)第〇条
事業所において感染症等が発生し、又はまん延しないように、次に掲げる措置を講じます。
- 訪問介護員等の清潔の保持及び健康状態について、必要な管理を行います。
- 事業所の設備及び備品等について、衛生的な管理に努めます。
- 事業所における感染症等の予防及びまん延の防止のための対策を検討する委員会をおおむね6月に1回以上開催するとともに、その結果について、従業者に周知徹底しています。
- 事業所における感染症等の予防及びまん延防止のための指針を整備しています。
- 従業者に対し、感染症等の予防及びまん延防止のための研修及び訓練を定期的に実施します。
2024年度の介護報酬改定より業務継続計画(BCP)の策定が義務化されます。業務継続計画の策定がおこなわれていない場合、減算の対象となるため注意が必要です。
業務継続に向けた取組の強化についての重要事項説明書の例文は以下の通りです。
【文例】
(業務継続に向けた取組の強化について)第〇条
- 感染症等や非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(業務継続計画)を策定し、当該業務継続計画に従って必要な措置を講じます。
- 従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施します。
- 定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行います。
なお、業務継続計画(BCP)については以下の記事で詳しく解説しているのであわせて参考にしてください。
令和3年度より、従業者の就業環境が害されることを防止するため必要な措置が求められています。
職場の中で行われることだけでなく、顧客などからの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント)の防止のために、事業主が雇用管理上の配慮として重要事項説明書などに予め措置について明記するという事業所も増えており、これを推奨する自治体もあります。
参考:東京都「注意事項」
ハラスメントの対策について講じることは、大切な従業員を守るためにとても重要なことです。利用者や家族に予め説明し、同意を得ることにより、いざという時に守ることにも繋がります。
【文例】
(ハラスメント)第〇条
事業者は、介護現場で働く職員の安全確保と安心して働き続けられる労働環境が築けるようハラスメントの防止に向け取り組みます。
- 事業所内において行われる優越的な関係を背景とした言動や、業務上必要かつ相当な範囲を超える下記の行為は組織として許容しません。
- 身体的な力を使って危害を及ぼす(及ぼされそうになった)行為
- 個人の尊厳や人格を言葉や態度によって傷つけたり、おとしめたりする行為
- 意に沿わない性的言動、好意的態度の要求等、性的ないやがらせ行為
上記は、当該法人職員、取引先事業者の方、ご利用者及びその家族等が対象となります。- ハラスメント事案が発生した場合、マニュアルなどを基に即座に対応し、再発防止会議等により、同時案件が発生しない為の再発防止策を検討します。
- 職員に対し、ハラスメントに対する基本的な考え方について研修などを実施します。
また、定期的に話し合いの場を設け、介護現場におけるハラスメント発生状況の把握に努めます。- ハラスメントと判断された場合には行為者に対し、関係機関への連絡、相談、環境改善に対する必要な措置、利用契約の解約等の措置を講じます。
本来であれば、4月1日施行の介護報酬改定ですので、3月中に同意を得るのが原則のルールです。ところが、今回の介護報酬改定では解釈通知も3月の中旬に通知されており、詳細が分かるタイミングが遅くなってしまいました。
本来であれば、「予め」という記載が有るため介護報酬改定時においても3月中に説明と同意を行う事が望ましいとされていますが、国や自治体からの通知が3月中旬を超えている事から3月中に同意を得ることが現実的ではないため、福岡市等のように『4月末まで』という期限を設ける自治体も存在します。
このような自治体の通知が無い場合においても、可能な限り早いタイミングで利用者や家族に説明し、同意を得るようにしましょう。
参考:福岡市「令和6年度介護報酬改定に伴う利用者への対応及び本市への届出について」
今回の介護報酬改定は、変更の内容も多く、今後もQ&A等で情報が更新されていく可能性があります。
また、6月にも介護報酬改定が予定されていることから、利用者や家族への説明スケジュールはもちろん、情報の収集についても注意してください。