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介護サービスの重要事項説明書とは|ひな形や記載例について解説【令和6年度最新版】

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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介護サービスの重要事項説明書とは、利用者がサービスを選択するために必要な事項を説明するために用いられる書類です。しかし、運営指導にて確認が行われる書類であることや、介護報酬改定に応じて内容の更新が必要な点から、重要事項説明書の作成・更新に不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

本記事では介護サービスにおける重要事項説明書について詳しく解説します。作成の際に参考になるひな形や、作成する際の注意点についても解説しているので是非参考にしてください。

目次

介護サービスにおける重要事項説明書とは?

訪問介護事業所における重要事項説明書とは、訪問介護サービスの提供の開始に際し、運営規程の概要や訪問介護員などの勤務の体制、その他の利用申込者のサービス選択に影響を与えると認められる重要事項を記した文書のことを呼びます。

重要事項の説明は、運営に関する基準においても以下のように定義されています。

訪問介護サービスの提供の開始に際しては、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、重要事項説明書を交付して説明を行い、当該提供の開始について利用申込者の同意を文書により得なければならない

このことから、運営指導でも確認が入る書類となりますので、記載すべき事項や令和6年度の報酬改定事項にも注意し作成、更新を行っていきましょう。

重要事項説明書に記載する必要がある項目

重要事項を記した文書(重要事項説明書)に記載すべきと考えられる事項は、以下の通りです。

【記載すべき項目】

  1. 法人・事業所の概要
    (法人名・事業所名・事業所番号・併設サービスなど)
  2. 営業日・営業時間・サービス提供日・サービス提供時間
  3. 利用料やその他費用の額
  4. 従業者の勤務体制
  5. 通常の事業の実施地域
  6. 事故発生時の対応
  7. 苦情処理窓口
    (事業所担当、市町村、国民健康保険団体連合会などの相談・苦情の窓口も記載)
  8. 提供するサービスの第三者評価の実施状況
    (実施の有無、実施した直近の年月日、実施した評価機関の名称、評価結果の開示状況)
  9. 利用申込者がサービスを選択するために必要な重要事項
    (従業者の研修機会の確保、衛生管理、秘密の保持など)

このほか、以下のようなあらかじめ利用者から理解を得たい項目を載せておくとよいでしょう。

【その他記載する項目の例】

  1. ハラスメントに対する方針など
  2. 虐待・身体拘束適正化のための取組に関する方針など
  3. 業務継続計画に関する方針など

また、重要事項説明書は運営規程と情報が一致すべきものであるため、例えば営業日や営業時間、実施地域などが相違していないか確認が必要です。

重要事項説明書と契約書の違いは?

重要事項説明書は、利用者がサービスを選択するにあたって必要となる情報が書き記された説明書であり、介護保険の事業所を運営するために守るべきルールが記載されている「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」により作成と説明が義務付けられています。

一方契約書は、法人と個人が行う契約内容を明確にし、後日契約内容の証拠とするために作成される、当該契約の内容を表示する文書を指します。
重要事項説明書が利用者に理解を求めることを目的としていることに対し、契約書はこの理解を得た上で行う契約について、双方で合意した契約内容を書面として残すことを目的としている点で違いがあるといえるでしょう。

重要事項説明書を用いた契約締結の流れ

初めて介護事業所で働く方や、初めてサービス提供責任者として勤務される方にとって、重要事項説明書はあまり馴染みのない書類かと思います。しかし、この書類を用いて十分に利用者から理解を得ることが大切な業務の1つですので、ご自身の会社の重要事項説明書を今一度確認しましょう。

実際の現場で行われる契約締結は以下のように進んでいきます。

1.重要事項説明書を用いて事業所における重要な事項を説明する

利用者の家に初めて訪問する際に契約を行うという事が多く、介護支援専門員がサービス担当者会議を開催し、その日はほかの介護サービスの担当者も訪問して全部が一緒に締結を行うという事も珍しくありません。

この場合、時間が大きく限られることが想定されますが、必ずポイントとなる項目についてはしっかりと説明を行い、後日内容について問い合わせがあれば再度説明に応じましょう。
特に重要事項説明書に必須とされている項目については丁寧に説明を行い、中でも営業時間と連絡先、担当者については間違いの無いよう伝え、料金については月の見込み額も含めた説明を行います。

また、事故発生時や緊急時についてもあらかじめ取り決めを行い、主治医や頓服薬などについても確認をしましょう。

2.重要事項説明書に同意が得られたら契約書の締結を行う

重要事項についての説明に利用者が同意を行った後に、契約書を用いて契約の締結を行います。契約書については契約期間や解約についての事項などの説明が必要です。

特に解約事項については質問が多くあがりますので、「どういった問題が発生したら解約になるか」「ヘルパーとの相性が合わず解約したい場合は対応してもらえるか」など、想定される質問に答えられる準備をしておきましょう。

3.個人情報の同意書に同意を頂く

最後に個人情報を取り扱うにあたって個人情報同意書を締結します。利用者本人だけでなく家族の個人情報も取り扱うため、家族にも個人情報を扱うことに同意を得る必要があります。

昨今の運営指導では、多くの行政で家族分の個人情報同意書があるかについて確認が行われていますので、家族にも同意を得ることを忘れないようにしましょう。

4.法人・事業所で準備をしているそのほかの同意書に同意を頂く

もし、法人や事業所単位でそのほかの同意書を用意している場合は、あわせて同意を得るようにしましょう。具体例としては、肖像権の使用同意書や、金銭管理(買い物代行)、鍵の預かりや保管に関するものなどがあげられます。

あらかじめ同意を得ておいた方がよいことについて、利用者にとって不利益とならぬよう、施設と一体的にサービスを提供している場合や、自宅で生活する利用者に向けて提供を行う場合など事業所の形態に応じて必要な同意書を検討してみましょう。

介護サービスにおける重要事項説明書のひな形

重要事項説明書にどのようなことを記載すれば良いのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

重要事項説明書は各法人、各事業所の実情に応じて作成されるものですが、以下の文例を参考に、アレンジをしてみてください。

1.法人・事業所の概要

この項目では、法人や事業所について概要を記します。

【文例】

(運営の方針)
第〇条 事業所の訪問介護員等は、要介護者等の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、入浴、排せつ、食事の介護その他の生活全般にわたる援助を行います。

一 事業の実施にあたっては、関係区市町村、地域包括支援センター、地域の保健・医療福祉サービスとの綿密な連携を図り、総合的なサービスの提供に努めるものとします。
二 事業所は、居宅介護支援事業所の介護支援専門員(セルフプランの場合には当該被保険者)に対して、自身の事業所のサービス利用に係る不当な働きかけを行わないこととします。

 

(事業の目的)
第〇条 〇〇株式会社が開設する〇〇事業所〇〇(以下「事業所」という。)が行う指定訪問介護の事業(以下「事業」という)の適正な運営を確保するために人員及び管理運営に関する事項を定め、事業所の介護福祉士又は介護保険法第8条第2項に規定する政令で定める者(以下「訪問介護員等」という。)が、要介護状態にある高齢者に対し、適正な指定訪問介護を提供することを目的とする。

 

(事業所の名称等)

第〇条 事業を行う事業所の名称及び所在地は、次のとおりです。
法人は以下の通り
 一 名 称 〇〇〇〇
 二 代表取締役 〇〇〇〇
 三 所在地 〇〇〇〇
 四 電話番号 〇〇〇〇

事業所は以下の通り。
 一 名 称 〇〇〇〇
 二 管理者 〇〇〇〇
 三 所在地 〇〇〇〇
 四 電話番号 〇〇

2.サービス提供に関する概要(営業日・営業時間など)

ここでは、サービス提供に関する事を記載します。営業時間とは、事務所が空いている時間を指し、サービス提供可能時間と異なることに注意してください。

例えば土日祝日関係なくサービス提供が行われるようであれば、以下のように記載します。

【文例】

(営業日及び営業時間)
第〇条 事業所の営業日及び営業時間は、次のとおりです。
 一 営業日 月曜日から金曜日
   ただし、祝日及び12月29日から1月3日までを除く。
 二 営業時間 午前9時から午後6時
 三 電話等により、24時間常時連絡が可能な体制
 四 サービスの提供は、365日、24時間

3.サービスの利用料金

サービス料金については、介護報酬改定や加算・減算の取得等により変動が想定されます。このため、別紙として用意しておくとよいでしょう

【記載すべき料金項目の例】

  1. サービス種別と単位数 
  2. 10割負担額、1割~3割負担額
  3. 加算・減算額
  4. その他料金(キャンセル料など)

4.従業員の勤務体制

ここでは、説明を行う事業所でどのような職種が何人働いているかを明示します。以前は〇名以上という記載が認められていませんでしたが、令和3年度より〇名以上という記載を行うことが認められました。

このことにより、例えばサービス提供責任者の増減に伴い変更が必要でしたが、この変更の必要がなくなりました。また、事務員がいない場合は、下記文例より削除しても問題ありません。

【文例】

(職員の職種、員数及び職務内容)
第〇条 事業所に勤務する職種、員数及び職務内容は次のとおりとする。
 一 管理者 1名
   管理者は、事業所の従業者の管理及び業務の管理を一元的に行います。
 二 サービス提供責任者 〇名以上
   サービス提供責任者は、事業所に対する指定訪問介護等の利用の申込みに係る調整、訪問介護員等に対する技術指導、訪問介護計画の作成等を行います。
 三 訪問介護員等 〇名以上(サービス提供責任者を含む。)
   訪問介護員等は、指定訪問介護等の提供にあたります。
 四 事務員 〇名以上
   事務員は、事業所において請求業務を行います。

5.事業の実施地域

あらかじめ届出を行っている実施地域を記載します。届出および運営規程と一致させるように注意してください。実施地域は以下のように記載します。

【文例】

(通常の事業の実施地域)
第〇条 通常の事業の実施地域は、〇〇市、〇〇市とします。

6.事故発生時の対応

事故発生時の対応を手順を含め記載します。また、法令では書類の保存期間が2年とされていますが、条例で多くの自治体が5年と設定していますので、事業所の管轄している自治体に従ってください。

【文例】

(事故処理)
第〇条 利用者に対する指定訪問介護の提供により事故が発生した場合は、市町村、利用者の家族、利用者に係る居宅介護支援事業者等に連絡を行うとともに、必要な措置を講じます。
一 当事業所は、前項の事故の状況及び事故に際して採った処置について記録し、当該利用者の契約終了の日から5年間保存します。
二 当事業所は、利用者に賠償すべき事故が発生した場合には、損害賠償を速やかに行います。
  保険会社名:〇〇
  保険名:〇〇

7.苦情処理窓口

苦情の処理についても定める必要があります。ここでは、担当となる窓口や電話番号、受付時間等を記すとともに、自治体や国保連等の連絡先も記すようにしましょう。

【文例】

(相談・苦情対応)
第〇条 提供した指定訪問介護に関し、法の定めるところにより区市町村又は国民健康保険団体連合会等が行う質問、若しくは照会に応じ、 市区町村が行う調査に協力するとともに、市区町村から指導又は助言を受けた場合は、当該指導又は助言に従って 必要な改善を行うものとします。
二 提供した指定訪問介護に係る利用者及びその家族からの相談及び苦情を受け付けるための窓口を設置します。(下表に記す【事業者の窓口】のとおり)
三 相談及び苦情に円滑かつ適切に対応するための体制及び手順は以下のとおりとします。
  〇〇ヘルパーステーション:
   電話番号 XXX-XXX-XXXX
   受付時間 月曜日から金曜日 〇時から〇時
   担当者名 〇〇〇〇
  苦情受付機関:
   〇〇町福祉課 電話 XXX-XXX-XXXX
   〇〇市介護保険課 電話 XXX-XXX-XXXX
   〇〇県国民健康保険団体連合会 電話 XXX-XXX-XXXX

【手順】

  1. 苦情発生
  2. 管理者及びサービス提供責任者が当該担当訪問介護員へ状況、事実確認
  3. 処遇、処理について上長及び関係機関、必要に応じ市区町村へ報告し、利用者およびその家族へ再発防止策の説明とともに謝罪
  4. 検討の結果、翌日までには具体的な対応をする
    (利用者に謝罪訪問するなど)
  5. 記録を台帳に保管し、再発を防ぐために役立てる

8.提供するサービスの第三者評価の実施状況

第三者評価とは、サービスの質の向上、利用者に対する情報提供を行うとともに、公表することにより利用者本位の福祉の実現を目指すものです。
情報公表制度とは異なり、評価を受けることは任意とされていますが、評価を受けているか否かについて運営規程や重要事項説明書には記載する必要があります。

【文例】

(第三者評価実施状況)
第〇条 当事業所は、第三者評価機関による評価を実施しておりません。

9.その他利用申込者がサービスを選択するために必要な重要事項

そのほか、利用者にとって必要な情報を記します。こちらは任意での掲載となりますが、自治体が出すモデル書式では以下の項目について記載されていることが多いようです。

  1. 研修実施状況について
  2. ハラスメントに関する事項について
  3. 虐待・身体拘束適正化のための取組に関する事項について
  4. 業務継続計画に関する事項について
  5. 衛生管理に関する事項について
  6. 秘密保持に関する事項について

重要事項説明書は書面掲示を行う必要がある

事業所の利用者やその家族、利用申込者が見やすい場所に、

  • 運営規程の概要
  • 訪問介護員などの勤務の体制
  • 利用料その他のサービスの選択に資すると認められる重要事項(苦情処理の概要等)

を掲示しなければなりません。なお、重要事項を記載した書面をファイルなどで事業所に備え付け、これを利用申込者、利用者またはその家族がいつでも自由に閲覧可能な体制を整えることで、掲示に変えることができます。

2025年度以降はWebサイトへの掲載も義務化へ

令和6年の介護報酬にて、サービス事業者は、原則として重要事項等の情報をWebサイト(法人のホームページ等又は情報公表システム上)に掲載・公表しなければならないこととされることが決定しました。

これまで事業所内で書面掲示(備え付けの書面(紙ファイル等)又は電磁的記録の供覧により、書面による壁面等への掲示を代替できる)が求められていましたが、「書面掲示」に加え、インターネット上で情報の閲覧が完結するよう、改正が行われています。なお、Webサイトへの掲載は令和7年度から義務付けとなります

令和7年度以降は、インターネット上で重要事項説明書等の確認が出来ない場合、運営基準違反として指導対象となることに注意しましょう。

重要事項説明書を変更する場合は利用者の同意が必要

冒頭ご説明した通り、重要事項説明書はサービス提供に際し説明の上、利用者や家族の同意が必要となります。このことから、特に料金に変更が伴う介護報酬改定においても、重要事項説明書の内容に変更があった場合は、説明と同意を行うことが必要です。

以下のように通知を出す自治体もありますので、事業所の管轄自治体に確認をしてみましょう。

参考:久留米市「令和6年度介護報酬改定に伴う重要事項説明書及び契約書及の取り扱いについて

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運営指導で指摘されやすい重要事項説明書のポイント

重要事項説明書は、運営の基準省令にて作成が定められているので、運営指導で適正か否かの確認が行われます。ここで訂正すべき事項が有った場合には、訂正の上改善の報告を行うことになります。

以下、運営指導にてよく行われる指導事例について記載しますので、参考にしてください。

1.重要事項説明書と運営規程の内容が一致していない

重要事項説明書は、運営規程の内容を利用者にあらかじめ説明するための書類です。このことから、運営規程と重要事項説明書は一致させる必要があります。

2.利用者から同意を得ていない。もしくは同意を得たことが確認できない

運営基準省令において、以下が定められていますので、説明を行い同意を得たことが文書で確認できる状態であり、かつその同意はサービス提供前に行われていなければいけません。

参考:厚生労働省「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準

3.個人情報同意書について利用者家族の同意が取れていない

個人情報の同意書は、家族の情報を取り扱う場合(例えば担当者会議においてその名前を取り扱う、アセスメントや緊急連絡先に家族の氏名や電話番号を取り扱う)においても必要となります。

利用者の家族が遠方に住んでいる場合でも必要になるので、丁寧な説明のうえ、同意を得るようにしましょう。

4.書面掲示がおこなわれていない

重要事項説明書は、書面にて掲示をすることが運営基準省令に定められています。そのため、掲示がない場合には指導の対象となります。

重要事項説明書を印刷し、ファイルに格納の上誰でも閲覧できる状態であればよいので、掲示が出来ていない場合は早々に対応しましょう。

まとめ

令和6年の介護報酬改定においては、どの事業も報酬内容が変更され、また運営基準省令の変更も多くありました。

今後、Q&Aなどで細かい解釈が出てくることや、令和6年6月にも介護報酬改定が行われる予定があることから、今後の情報についてもご注意ください。