「最近、どこの事業所も経営が苦しいって聞くけど、実際どうなの?」そんな疑問に対する答えが、厚生労働省から発表された最新の「介護事業経営実態調査」に隠されていました。
平均の収支差率は2.4%。その中身を覗くと「えっ、これ本当?」と耳を疑うような格差が広がっています。今日は、「5つの衝撃的な事実」を分かりやすく紐解きます。
※収支差率(しゅうしさりつ)とは、主に介護事業や社会福祉事業、非営利組織において、「全収入のうち、経費を差し引いた利益がどれくらい残ったか」を示す経営指標です。
一般企業における「売上高利益率」に相当します。
今回の調査で最も衝撃的な対照をなしているのが、在宅復帰の要である「訪問リハビリテーション」と、生活の最末端を支える「施設サービス」です。
・施設サービスの構造的疲労地域介護の中核である介護老人福祉施設(特養)は▲1.0%、介護老人保健施設(老健)は▲1.1%と、軒並み赤字に転落しました。
・訪問リハビリの驚異的な収益性一方で、訪問リハビリテーションの収支差率は、前回調査の▲0.4%から9.1%へと急騰しました。
「介護老人福祉施設:1.2%(令和3年度)→▲1.0%(令和4年度)」「訪問リハビリテーション:▲0.4%(令和3年度)→9.1%(令和4年度)」
訪問リハビリの躍進は、近年のリハビリ重視の報酬改定が功を奏した形ですが、一方で固定費の重い施設サービスが赤字に沈んでいる事実は深刻です。これは単なる経営努力の差ではなく、人件費・物価高騰を基本報酬で吸収しきれなくなった施設運営の「構造的限界」を示唆しています。
地域密着型サービスにおいて、ひときわ高い改善幅を見せたのが「夜間対応型訪問介護」です。収支差率は3.8%から9.9%へと、6.1ポイントもの劇的な上昇を記録しました。
しかしながら夜間訪問介護は、2027年の介護報酬改定にて原則として「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」に移行・統合される案が出ており、それにむけて検討されています。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護は、サービスの対象や内容に重複する部分があり、24時間対応の定巡にまとめることで効率化を図るためです。
参考:人口減少・サービス需要の変化に応じたサービス提供体制の構築等
令和5年の調査では、コロナ関連補助金や物価高騰対策補助金の有無による収支の差が明文化されています。実態は、補助金なしには安定して運営が出来ないという非常に苦しい時期でもありました。
「税引前収支差率」において、補助金を含まない数値と、含む数値(<>内)を比較すると以下の様になります。
・介護老人福祉施設:▲1.0%<補助金込み:0.1%>
・介護老人保健施設:▲1.1%<補助金込み:0.0%>
特に介護老人保健施設(老健)は、多額の補助金を投入してなお、収支差率は「0.0%」です。
一時的な支援が途切れた瞬間、地域インフラが即座に崩壊しかねないと言っても過言ではありません。
経営を根底から揺さぶっているのが、上昇し続ける「給与費割合」です。介護老人福祉施設では、収入に対する人件費の割合が64.3%から65.2%へと上昇しました。介護は「人が人を支える」労働集約型産業であるため、賃金高騰は即座に経営を圧迫します。
このコスト増を価格(報酬)に転嫁できない制度構造が、特に小規模事業者を倒産へと追い込んでいます。実際に、昨年の訪問介護事業者の倒産件数は過去最多を更新しました。
この現場の悲鳴とも言える指摘は、統計上の2.4%という「平均値」がいかに私たちの思う現実と離れたものかを考えさせられます。
苦戦が続く介護サービスの中で、独自の効率性を見せているのが「福祉用具貸与」です。収支差率は3.4%から6.4%へとほぼ倍増しました。
その背景にあるのは、他サービスとは一線を画す経営構造です。給与費割合が38.5%(令和3年度)から35.3%(令和4年度)へと低下しており、人件費の影響をコントロールできています。
直接的な身体介護を伴う「対人援助サービス」が人件費増で赤字に苦しむ一方、機器のレンタルという「モノのサービス」が利益を伸ばしている事実は、介護保険制度が抱えるジレンマを象徴しています。
しかし、全てのサービスをこのモデルに転換することは不可能です。モノではなく「人」による介護をどう持続させるか、それを考えていかなければいけません。
私たちは、このような背景を鑑みて次回改定の準備を始めなければいけません。
すでに2026年度の臨時報酬改定の情報が出てきていますが、算定出来る加算は算定し、次期報酬改定に備えましょう。

介護経営実態調査とは?事業所に届くアンケートを回答しないと起こる怖い事