訪問介護の現場では、ご利用者様の状態や提供したサービス内容を記録する「訪問介護記録」の存在は重要です。なぜなら、スタッフ間との情報共有だけでなく、トラブルや訴訟が発生した際の証拠としても活用されるからです。
また、訪問介護記録への記録は、スタッフ間の情報共有だけでなく、利用者家族との情報共有においても重要な役割を持っています。
訪問介護サービスを安全に運営しつつ、家族や利用者からの満足度を向上させるためには、訪問介護記録に何を記載するかは重要なポイントになります。この記事では、訪問介護記録の書き方や注意点とコツについて解説します。
目次
訪問介護記録とは、訪問介護サービスの提供内容や、その際のご利用者様の状態を正確に記録したものです。訪問介護記録は、介護サービスの質を保つだけでなく、ご利用者様の安全を確保するためにも重要な記録です。また、スタッフ間での情報共有や法的証拠としても活用されます。
訪問介護記録は、単なる業務記録の一部ではなく、ご利用者様やご家族の安心安全や、事業所への信頼感を支えるために重要な役割を持つ書類のひとつです。
訪問介護記録は、法律で作成が義務付けられています。記録を残さない場合、事業者は運営指導や行政監査から改善指導を受ける可能性があります。
記録がない状態では、提供したサービス内容を証明できず、ご利用者様やそのご家族からの信頼を損ねるリスクもあります。また、万が一トラブルや訴訟が発生した際にも、記録が適切に残されていなければ、事実関係を証明できません。
訪問介護記録は、サービス提供後すぐに記入する必要があります。なぜなら、時間が経過すると、記憶が曖昧になり正確な記録ができない可能性があるからです。サービス提供後は、速やかに記録を記載して、紛失しないように保管しましょう。
訪問介護記録を残す際には、記録が持つ役割を理解することが重要です。訪問介護記録には、スタッフ間の情報共有ツールやサービス提供の証拠としての役割があります。ここでは、訪問介護記録の役割について解説します。
訪問介護では、複数のスタッフが訪問してサービスを提供する場合があります。前回訪問時の情報や、サービス提供時の注意点など、スタッフ間で共有しておかなければいけない情報を伝える際に、訪問介護記録が役立ちます。
訪問介護記録は、提供したサービスを裏付ける重要な証拠です。記録を通じて、細かなサービス内容が明確になり、運営指導やトラブル発生時の証拠としても活用できます。特に、介護報酬の算定においては、重要な記録になるため、運営指導時に確認される重要な書類です。
また、過去の訪問介護記録は、5年間保管することが決められています。保管期間中に紛失することがないように管理しておきましょう。
訪問介護記録を見返すことで、サービス内容の改善点が見つかる場合もあります。利用者の健康状態と提供した介護サービスの内容を把握し、サービス内容を見直すことで、サービスの質向上につながります。サービスの質を向上していくためにも、日々の記録を見返してご利用者様の状態を把握することが重要です。
訪問介護記録は、利用者の家族に対してケアの状況を伝えるためのツールとしても活用できます。訪問介護記録を通してサービス提供時の様子を家族に伝えることで、家族も安心して利用者を任せられるでしょう。
また、介護事業所からの連絡を伝えるだけでなく、家族からの連絡を事業所に伝える役割もあります。介護記録に自宅での様子を記載してもらうことで、自宅での様子から、よりよい介護サービスを提供できるようになることもあるでしょう。訪問介護記録は、家族との信頼関係を築くためにも重要なツールです。
訪問介護記録には、サービスを提供した日時やご利用者様の健康状態、サービスの内容などの情報を正確に記載する必要があります。最低限必要な情報を記載していなければ、いつどのようなケアがおこなわれたかを確認できなくなります。ここでは、訪問介護記録に記載すべき情報について詳しく解説します。
サービス提供の日時は、記録の基本情報として必ず記載する項目です。いつどのサービスが提供されたのかが明確になり、サービス内容の透明性が保たれます。特に、運営指導時に、計画通りにサービスが提供されているのか確認する際には、日時の記録が重要となります。
仮に、運営指導時にサービス提供の日時不明な記録があると、サービス提供自体が提供されなかったことになり、指導を受ける可能性があります。訪問介護記録の基本となる情報なので、サービス提供の日時は確実に残すようにしましょう。
訪問介護記録では、サービス内容を具体的に記載する必要があります。特に訪問介護では、食事介助や排泄ケア、掃除など、利用者のニーズに応じてさまざまなサービスを提供しなければいけません。
実際に提供したサービス内容を明確にしなければ、報酬を正しく算定できているのか確認することもできないでしょう。また、万が一トラブルが発生した際に、サービス提供に関する詳細な情報がないと、事実を証明できなくなります。
サービス提供に関するトラブルを避けるためにも、サービスの提供内容は明確に記載することが必要です。
ご利用者様の健康状態も必ず記載する必要があります。訪問時の体調変化や異常の有無を正確に記録することで、関係者間での情報共有がスムーズになり、迅速な対応ができます。
また、訪問介護記録を通して、健康状態の変化を把握ができれば、必要に応じてサービス内容を変更できる場合もあるでしょう。また、トラブルが発生した際には、記録を遡り、原因分析としても活用することも可能です。
記録には必ず、サービスを提供した職員の名前を記載します。これにより、責任の所在が明確になり、ご利用者様やご家族からの問い合わせやトラブル発生時にも迅速に対応できます。
また、誰が記載したのか明確にすることで、記録するスタッフも責任感を持ってサービスを提供するようになるでしょう。その結果、サービスの透明性と信頼性を向上させることにもつながります。
記録を書く際には、相手がスムーズに理解できるような読みやすい文章にまとめる必要があります。特に、訪問介護記録は、スタッフとの情報共有だけでなく、ご家族に報告するなどの用途で幅広く活用するため、わかりやすい文章を作成しなければなりません。ここでは、記録を書く際の注意点とコツについて解説します。
記録を作成する際は5W1H(誰が、何を、いつ、どこで、なぜ、どのように)を意識しましょう。5W1Hが不明な記録は、後から見返した際に、事実確認が難しくなります。5W1Hが明確に記載されているだけで、情報がわかりやすくなり、関係者全員が記録をもとに正確な情報を理解できる文章になるでしょう。
また、5W1Hが明確に記録されているだけで、情報が網羅的でわかりやすくなる効果もあります。そのため、5W1Hで記載された記録は、関係者全員が記録をもとに正確な状況を把握できるメリットもあります。
訪問介護記録は、客観的な事実に基づいて、正確に情報を記載しましょう。
例えば「元気な様子だった」ではなく「食事を完食した」「歩行時にふらつきが見られた」など、具体的な観察内容の記録が重要です。利用者の様子を具体的に記録することで、読み手もご利用者様の状態を客観的に把握できます。
誰が読んでも、その時の状況が明確に伝えられるように、主観的な情報は排除して客観的な情報のみで記録を記載するように心がけましょう。
訪問介護記録には、できるだけ専門用語を多用せず、誰が読んでも分かるような表現を意識しましょう。
スタッフ間でのコミュニケーションは、専門用語を多用した方がスムーズに状況が伝わります。しかし、訪問介護の記録は、介護職員だけでなく関係者やご家族も記録を確認する場合があります。そのため、簡潔でわかりやすい言葉を選び、誰が読んでも理解できるような言葉を選んで記録することが重要です。
訪問介護記録には、どんな小さな変化でも記載しましょう。
大きな変化がないからといって「変化なし」とまとめてしまうと、後から情報を見返しても、原因が分析できなくなってしまいます。
小さな変化でも、利用者の体調の変化や身体機能低下などの早期発見に繋がることもあるため、必ず記載しましょう。
訪問介護記録は、訪問介護サービスで必ず残さなければいけない記録の一つです。トラブルの回避やご利用者様やご家族との信頼関係を築くためにも重要な役割を果たしてくれます。
また、訪問介護記録を通じてスタッフ間の情報共有がスムーズになることで、サービスの質向上にもつながります。
訪問介護記録は、訪問介護サービスの運営を安定させるうえで重要な役割を担っています。全スタッフで正しい記録方法を周知して、事業所運営に役立てましょう。