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サービス付き高齢者住宅における実地指導(運営指導)指摘事項

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームと併設されている訪問介護事業所では、併設していない訪問介護事業所と少し指導の注意すべきポイントが異なります。

本日はサービス付高齢者住宅、有料老人ホームならではの指導時のポイントをご紹介させて頂きます。

老人福祉法における基準

有料老人ホームは老人福祉法においてその基準が定められています。

高齢者が安心して暮らせる高齢者向け住まいに対するニーズの高まりの中、有料老人ホームは増加しています。有料老人ホームにお住いの方の居住の安定を確保するため、有料老人ホームに対する適切な指導監督が不可欠とされています。

このような背景を踏まえ、老人福祉法が改正され、都道府県に届出のあった有料老人ホームの情報を市町村に通知することが義務付けられました。また、未届の疑いのある有料老人ホームを市町村が発見したときは、都道府県に通知するよう努めることとされています。
そのほか、令和3年度介護報酬改定が行われたこともあり、令和3年4月1日付けで標準指導指針が改正されました。

厚生労働省参考資料

併設事業所の指摘事項例

人員関係

勤務体制の確保に関する指摘

【主な指摘事項例】

①勤務表について、日々の勤務時間、職務の内容、常勤・非常勤の別、管理者との兼務関係等が明確になっていない。
②職員の兼務関係が勤務表から確認できない。

【改善への指導例】

① 勤務表は、原則として月ごとに作成し、職員の日々の勤務時間、職務の内容、常勤・非常勤の別、管理者との兼務関係等を明確にし、人員を適正に配置されていることが確認できるようにしてください。
② 職員が職務を兼務する場合

・「併設事業所」と「高齢者住まい」の双方に従事する者の兼務状況が不明確である。
・「高齢者住まい」と兼務していることで、「併設事業所」としての人員基準を満たさない状況になっている。
・「併設事業所」のサービスと「高齢者住まい」のサービスが区分されていない。

 上記の事例のような状況は、人員基準を満たす状況が確認できませんので、サービス毎に勤務表をそれぞれ作成し、人員基準を満たしているか確認をお願いします。
 あわせて、勤務表と合わせて各職員の1日の動きを示したシフト表を作成するなどの方法により、施設サービスの時間帯と訪問サービス等の時間帯とを明確に把握できるようにしてください。

秘密保持等に関する指摘

【主な指摘事項】
 職員であった者が利用者等の秘密を漏らすことがないよう必要な措置がとられていない

【改善への指導例】
 職員は、その業務を行う上で利用者又はその家族の秘密を知る機会が多くありますが、正当な理由なく、そうした秘密は職員の退職後も当然漏らしてはなりません。
 また、事業者は、職員であった者が利用者およびその家族の情報を漏洩することがないよう、必要な措置をとる必要があります。
「採用時だけでなく、退職時に、退職後の守秘義務を守る旨を記載した誓約書の提出を求める」、「雇用契約書に秘密を保持する旨を明記する」など、必要な対応を行いましょう。

職員の資格証に関する指摘

【主な指摘事項】
 資格が必要な職員の資格証の写しが確認できない。

【改善への指導例】
 事業を運営するにあたっては、事業所として適切な人員配置基準を満たすことができているかを常に確認し、サービスを実施する必要があります。

職員の法定研修に関する指摘

【主な指摘事項】
①職員に対する研修が実施されていない又は研修の記録が確認できない。
②研修参加者(出席者)以外への周知が行われていない。

【改善への指導例】
① 研修については、職員の資質の向上のために計画的に実施するようにしましょう。
また、運営基準において実施が必要とされている場合は確実に実施し、研修の実施内容について記録することが必要です。(基準で規定されていない研修についても、後日、内容を確認し、欠席者が確認できるよう、研修で使用した資料等とともに記録するようにお願いします。)

② 施設・事業所以外で研修を受講した場合の他の職員や、施設・事業所内で研修を実施したが勤務等の関係で研修に出席できなかった職員に対しても、研修の内容が周知できるようにしましょう。

運営関係

衛生関係

【主な指摘事項例】
 ①薬の管理が適切ではない。(利用者の手の届く場所に置かれている。)
 ②タオル、ヘアブラシが共用されている。
 ③検食の保存について、原材料等が一部保存されていない。(入所系等、食事の提供がある場合)
 ④調理職員の検便の結果記録が確認できない。(入所系等、食事の提供がある場合)
 ⑤福祉用具の保管及び消毒の委託について、業務の実施状況に関する定期的な確認等が十分にされていない。(福祉用具貸与)

【改善への指導例】

 ① 薬が利用者の手の届く場所に置いてある事例があります。利用者が自由に持ち出せる状態にあることは誤飲等の可能性があり、望ましくないので、鍵のかかる場所に保管するなど、適切に管理しましょう。

② 共用により感染症が広がることがありえます。共用のタオル等は、使い捨てのペーパータオルや、利用者ごとに個々に用意する等の対応をお願いします。ヘアブラシ、爪切り、髭剃り等、感染症が拡がり得るものは、共用しないことが求められています。

 ③・ ④ 調理業務を委託している場合については、委託業者にも確実に保存するように依頼しましょう。委託している場合も、業者を選定している法人の管理責任が問われます。

 ⑤ 福祉用具の貸与に関し、福祉用具の保管・消毒を他の事業者に委託している場合は、委託事業者の業務の実施状況を定期的に確認し、その結果等を記録しなければなりません。複数の事業者と委託契約をしている場合は、1社のみではなくすべての委託事業者に対しての確認を行い、結果等については記録して適切に保管しましょう。

非常災害対策に係る指摘例

【主な指摘事項例】
 ①棚等の転倒防止策が施されていない。避難経路に物が置かれ、避難時の妨げになっている。
 ②定期的に避難訓練を行っていない。または実施した記録が確認できない。
 ③消防設備の定期点検(機器点検を6月に1回、総合点検を1年に1回実施)が実施されていない。

【改善への指導例】

 ① 棚、冷蔵庫、テレビなど、大規模地震等の際に転倒の恐れがある備品について、転倒防止策が施されていない事例があります。大規模地震等に備えて、転倒の恐れがある備品等について、転倒防止金具等により固定をおしましょう。
また、非常口や通路に使用していない備品等が置かれており、避難経路が十分に確保されていない事例があるため、非常災害の際に迅速に避難できるよう、常時、避難経路を確保しておきましょう。

② ・ ③ 特別養護老人ホームや介護老人保健施設、老人短期入所施設などの(消防法施行令別表第1の6項ロに掲げられる)防火対象物で、利用者及び職員(建物全体の収容人員)が10人以上、老人デイサービスセンターなどの(消防法施行令別表第1の6項ハに掲げられる)防火対象物で、利用者及び職員(建物全体の収容人員)が30人以上の施設・事業所は防火管理者を選任し、消防計画を作成した上で所轄消防署へ届出が必要です。

このような施設・事業所は、消火及び避難訓練を年2回以上実施し、訓練の計画と結果を所轄消防署へ報告する必要があります。また、消防用設備等の機器点検を6月に1回、総合点検を1年に1回以上実施し、点検結果を踏まえ、設備等を整 備しなければなりません。防火管理者を選任する必要がある施設・事業所で、防火管理者を選任した場合(変更した場合も含む)は、消防署に届出が出来ているか確認しましょう。

身体拘束

【主な指摘事項例】
 ①身体拘束に関する利用者家族等からの同意書が確認できない。
 ②身体拘束を行った経過観察記録や身体拘束の廃止に向けて検討した状況についての記録が確認できない。

【改善への指導例】

身体拘束は、①拘束をされた利用者の関節の拘縮、筋力の低下といった身体機能の低下・圧迫部位の褥瘡の発生等身体的弊害、②利用者の不安や怒り、屈辱、あきらめなどの精神的苦痛を引き起こす精神的弊害、③看護・介護スタッフ自身の士気が低下する、施設等に対する社会的な不信、偏見を引き起こすおそれがあるなどの社会的弊害、が引き起こされるものですので、原則、行ってはなりません。
(詳しくは、「身体拘束ゼロへの手引き」を参照)

内容及び手続の説明及び同意・運営規程に関する指摘

【主な指摘事項】
 ①運営規程等に盛り込むことが必要な規定が定められていない。〈運営規程・重要事項説明書・契約書〉
 ②介護保険の自己負担額が1割、2割のみ記載されている。〈重要事項説明書・契約書〉
 ③介護報酬単位数が(正しく)記載されていない、地域加算額が加味されていない。
 ④記録の保存年数が市条例で定める5年間ではなく2年間と記載されている。
 ⑤苦情受付窓口が記載されていない。
 ⑥運営規程の概要等、重要事項が未掲示

【改善への指導例】

サービス提供の開始にあたり、あらかじめ、利用申込者又はその家族に対し、利用申込者がサービスを選択するために必要な重要事項について、文書を交付し、説明し、同意を得なければならないこととされています。(運営規程の概要、職員の勤務体制、事故発生時の対応、苦情処理の体制等)

① 各事業について、運営規程に定めるべき内容が基準条例で規定されていますが、必要な項目が規定されていないことがあります。

② 介護保険の自己負担割合が平成30年8月より一定所得以上の方は3割とされましたが、規定が改正されていない事例が多く確認されました。介護保険の自己負担額の記載方法について、「利用料のうち各利用者の負担割合に応じた額」などに変えるようにお願いします。

③ 介護保険サービス利用料金や、介護保険外に負担する費用について書面上の記載漏れや、単位数誤り等が確認されます。利用料金等について、正しく説明していただくために、正しく記載しましょう

④ 基準条例により、利用者に係る記録の保存年数を完結の日から「5年間」としている自治体が多いです。誤って記載されている事例がございますので、条例に基づき5年間と修正をお願いします。

⑤ 各事業所の窓口、自治体の介護保険課や国民健康保険団体連合会の窓口に関する電話番号、受付時間等の記載に誤りがある場合があります。

⑥重要事項等が掲示・ファイリングされていない事例です。利用者等がいつでも確認できるよう、見やすい場所に、運営規程の概要、職員の勤務の体制、その他の利用申込者のサービスの選択に資すると認められる最新の重要事項を掲示するか、まとめてファイリングしていつでも見ることができるようにしてください。

サービス計画に関する指摘

【主な指摘事項】
 ①居宅サービス計画が変更されているが、個別サービス計画が居宅サービス計画に沿って変更されていない。
 ②各サービス事業所が居宅介護支援事業所から居宅サービス計画の提出を受けていない。
 ③個別サービス計画に利用者の同意を得たことが確認できる書類が整備されていない。または事後に同意を得ている。

【改善への指導例】

① 居宅サービス事業所が作成する個別サービス計画については、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、居宅サービス計画に沿って作成する必要があります。
既存の居宅サービス計画を反映させるため、サービス担当者会議等によりサービス事業者間の密接な連携に努めていただき、最新の居宅サービス計画を取得することによって、居宅サービス計画に沿った個別サービス計画を作成しましょう。

② サービスの提供にあたっては、居宅サービス計画と個別サービス計画の連動性を高くして、居宅介護支援事業者とサービス提供事業者の意識の共有を図ることが大切です。

③ 個別サービス計画については、その内容等を説明し利用者の同意を得た上で交付しなければなりませんので、計画について作成後、速やかに利用者又はその家族に対して説明し、当該サービスが始まる前に同意を得るようにしましょう。

サービスの提供の記録に関する指摘

【主な指摘事項】
 ①サービス提供記録の内容が不十分である。

【改善への指導例】

① サービス提供記録について、サービス内容の記載誤りや、サービスを提供した日時等の記載漏れが確認されます。サービス提供に係る記録は、基本報酬だけでなく加算請求に係る根拠ともなりますので、事業者は利用者にサービスを提供した際には、提供した具体的なサービスの内容等を記録するようにしてください。

事故・事件報告時の対応に係る指摘

 ①「サービスの提供により利用者がけがをし、外部の医療機関を受診した」又は「疥癬又はインフル
  エンザに感染している利用者がいる」等、岐阜市へ報告が必要な事例について、事故・事件報告書
  が介護保険課へ提出されていない。
 ②ヒヤリハット記録が作成されていない。また作成はされているが、職員間で情報共有されていない。

【改善への指導例】

① 自治体へ報告が必要な事故等の事例として、以下のものが挙げられます。

・サービスの提供による、利用者のケガ又は死亡事故の発生
(ケガの程度については、外部の医療機関で受診を要したものを原則とする)
(事業者側の過失の有無は問わない)

・食中毒及び感染症、疥癬の発生

・職員(職員)の法令違反・不祥事等の発生(利用者の処遇に影響があるもの)

・その他、報告が必要と認められる事故・事件の発生

 ② 事故を未然に防止するためには、日常業務において気に留まったささいなことであっても、気付きの意識を持ち、記録を残すとともに、事故を防ぐための対応策を職員間で話し合うなどの取り組みを行い、情報を職員間で共有することが重要です。

介護給付費及び各種加算

【主な指摘事項】
 ①事業所と隣接する敷地内(事業所と建築物が道路等を挟んで設置している場合を含む。)の建物に居住する者に対してサービス提供を行った事例に対し、減算を行っていない。(訪問介護)
 ②介護職員処遇改善加算について、賃金改善等の内容を職員に書面で通知したことが確認できない。

【改善への指導例】

介護給付費の請求にあたっては、事業所が作成する各種サービス提供記録、サービス利用票と、国保連への請求書類等とに「不整合」がないか、事業所内でよく確認し、請求誤りの防止に努めてください。
また、各種加算や減算については、その要件を必ず確認し、確実に要件を満たした上で介護報酬請求を行いましょう。

まとめ

令和2年度老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業にて、有料老人ホーム等の高齢者向け住まい及び併設する介護サービス事業所に対する実地指導の推進に関する調査研究事業が実施されています。

ここでは、各自治体が併設法人について何を重点的に確認しているか等の確認が行われ、介護保険サービス事業所の指導担当と有料老人ホームの指導担当、サービス付き高齢者向け住宅の指導担当との連携に着目し、関係部署との連携・協働の実態と効果、また、家賃や管理費等の不当な値下げに対する指導の実態について把握し、効果的・効率的な指導のあり方について検討しています。

併設法人については、ご利用者様が多数ご入居されていることから、訪問介護単体の事業所よりも安定した運営が求められていることから、特に人員や衛生、介護報酬請求についてはルールを遵守した運営が求められています。

 

運営指導(実地指導)対策お役立ち情報
運営指導(実地指導)で確認される項目別25種類の書類チェックリスト
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<項目>
1.人員基準
2.設備基準
3.介護報酬改定
4.運営基準

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