本記事では
「実地指導とは何かが分からない」
という方に向けて
・実地指導の概念
・実地指導対象事業所の選定方法
・通知から実施までの期間
について解説致します。
目次
実地指導は、自治体の担当職員が事前に通知の上事業所へ出向き
・事業運営の適正化と透明性の確保
・利用者保護及び利用者の視点に立ったサービス等の提供並びに質の向上
・利用者の人権の擁護、虐待の防止等のための体制整備を図ること
に主眼を置いて概ね3年に1回自治体により実施されるものです。
『指導』には、以下の3つがあります。
①集団指導
自治体が地域の事業所を集め、守るべきルールやその変更事項を一斉に伝達します。
毎年実施している自治体と、数年に1度実施する自治体とが存在しますが、報酬改定や法改正のタイミングで実施されることが多い様です。
②書面監査
新型コロナウイルスの流行で、令和2年度は書面監査が多く実施されたようですが、流行前からも1部自治体で実施されていました。
自治体からの書面を受け取り、その書面に運営状況を返答する形で返送します。
個別の計画書等の運営基準書類提出を求められる事も有り、提出後に指導を受けることも有ります。
③実地指導
自治体の担当職員が事前に通知の上事業所へ出向き、事業運営の適正化と透明性の確保、利用者保護及び利用者の視点に立ったサービス等の提供並びに質の向上、利用者の人権の擁護、虐待の防止等のための体制整備を図ることに主眼を置いて概ね3年に1回自治体により実施されるもの。
実地指導と実地検査は、自治体により呼び名が異なるだけで、同じことを意味しています。
自治体が実施する指導と似たものに、『監査』があります。指導の目的があくまで『指導』であるのに対し、監査の目的は『処分』です。
監査とは
自治体の担当職員が事業所へ出向き、法令・基準条例等の違反、自立支援給付に係る費用等の不正請求又は不適切な福祉サービスの提供が明らかな場合には、福祉制度への信頼維持及び利用者保護の観点から、公正かつ適切な措置を採ることに主眼を置いて実施されるもの。
特に虐待など重大な人権侵害が疑われる場合には、状況に応じて、法の権限行使等が実施されます。
また、実地指導、実地検査と目的が異なるため、事前の通知なく自治体の担当者が出向く場合も有ります。
各自治体における実施方針にて、その年度対象となる事業所の選定方法を定めています。
◆参考資料:令和2年度 障害福祉サービス事業者等実地検査実施方針
以下は東京都の障害サービスの例ですが、選定方法は全国で大きな差は有りません。
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【東京都 障害福祉サービス実地検査選定方法】
a 過去の実地検査において、指摘事項の改善が図られていない事業所等
b 過去の指摘事項の改善状況の確認が必要な場合など、継続的に指導することが必要と認められる事業所等
c 東京都から民間移譲された事業所等
d 苦情・告発等が多く寄せられている事業所等、又は苦情・告発等の内容から運営上の問題を有することが疑われる事業所等
e 福祉サービス第三者評価を受審していない事業所等、又は当該評価結果において、問題がある事業所等
f 毎年度、現況報告書又は施設調査書を提出していない事業所等
g 事業開始後実地検査を実施していない事業所等
h 相当の期間にわたって、実地検査を実施していない事業所等
i 前年度、集団指導を実施した事業所等(集団指導を欠席した事業所を優先する。)
j 当該事業所等を運営する社会福祉法人が指導検査の時期に当たる事業所等
k その他実地検査の実施が必要と判断される事業所等
なお、aからkの選定に当たっては、利用者の安心・安全を担保する観点から、障害児入所施設、障害者支援施設、共同生活援助を行う事業所を優先して実施する。
また、区市が実施する指導検査を支援する観点から、可能な限り全ての区市の事業所等を選定するよう配慮する。
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また、これ以外に特定事業所加算を算定している場合や、特殊な報酬実績がある場合は選定される可能性が高くなります。
※特殊な報酬実績とは
売上が他事業所と比べて高い(毎日身体のサービスが帯で入っている利用者が多い)等
各行政が定める方針では『当日を含む』という書き方がされており、苦情や事故等で実施される場合は当日に通知を持参して実施されることも多い様です。
苦情や事故が発端ではなく、通常に実施される実地指導や実地検査の通知から実施までの期間は、自治体により異なり、最短で7日程度~2か月程度と開きがあります。(平均14日程度)
また、必要な書類は常に適正な時期に作成しなければなりませんので、当然ながら実地指導(実地検査)が来てから書類を遡って作成することは認められません。
実地指導で指摘を受けた結果、数百万円〜数千万円の返還を求められた例がありますので、甘くみてはいけません。
実地指導で指摘を受けた場合は、その後の対応が見られます。指摘された内容を受け止め、真摯な対応を心がけましょう。