この記事では、介護保険法における実地指導(令和4年度より名称が運営指導に変更)についてご紹介してまいります。
介護保険のもとで事業を開始するにあたっては、都道府県等自治体の指定許可を受ける必要があります。
私たち介護事業所は、国や自治体が定めたルールに従い介護サービスを提供することで『介護報酬』を受けることが出来ます。
この『国や自治体が定めたルール』に反した運営を行えば、指定を取り消す処分や介護報酬の返還が求められたりといった行政処分に至ります。
介護事業所は『適切に事業を運営すること』が求められ、国や自治体は介護事業所に対し適切な運営が出来るよう指導を実施するとともに『適切に運営しているか』の確認を行うことが義務付けられています。
この確認や指導の手段の1つに『運営指導(実地指導)』というものが存在します。
【参考通知】
〇介護保険最新情報:R4.3.31発Vol.1061介護保険施設等の指導監督について(通知)の送付について
〇介護保険最新情報:R4.3.31発Vol.1062介護保険施設等運営指導マニュアルについて(通知)の送付について
〇介護保険最新情報: R4.3.31発Vol.1063「老人福祉施設に係る指導監査について」の一部改正について(通知)の送付について
〇介護保険最新情報:R4.3.31発Vol.1064「市町村における地域密着型サービス事業者等の指定及び指導監督等の事務にかかる指導監督について」の一部改正についての送付について
〇令和4年3月7日開催:全国課長会議資料
指針の目的:指導の基本的事項を定めることによりご利用者様へ対し、サービスの質の確保及び保険給付の適正化を図ることが目的
指導方針 :介護保険施設等に対し介護 給付等対象サービスの取扱い、介護報酬の請求等に関する事項について周知徹底させること
指導形態等:
①集団指導
介護報酬請求の内容、制度改正内容及び指導事例等に基づく指導内容について、年1回以上、一定の場所に集めて講習等の方法により行う※令和4年より正式にオンライン・動画配信も可能となる
②運営指導
運営指導は次内容について、原則、実地に行う。
居宅サービス(居住系サービスに限る。)地域密着型サービス(居住系サービス又は施設系サービスに限る。)又は施設サービスについては、3年に1回以上。その他は6年(指定更新)に1回以上。
1:介護サービスの実施状況指導個別サービスの質に関する指導
2:最低基準等運営体制指導
3:報酬請求指導
令和4年度に入り、新型コロナウイルスが落ち着きを見せ始め昨年度は3分の1程度の件数しか実施がなかった運営指導(実地指導)でしたが、全国どの自治体でも再開し始めています。
令和4年3月に示されている運営指導(実地指導)マニュアルには、『指導の1部にオンラインを認める』ことで、決められた回数を確実にこなすことが定められており、これまで延期や中止が相次いでいた運営指導(実地指導)に歯止めをかけるものになっています。
今後、再度新型コロナウイルスが流行したとしても、運営指導(実地指導)が中止となることは原則的に有りません。1部に限ってオンライン上で実施することとなります。
令和4年度の運営指導(実地指導)で確認されていることは、多い順に以下の通りです。
①令和3年度介護報酬改定事項の対応進捗
BCPの策定や虐待防止に関する事項等、令和6年4月まで猶予をもった改定事項についての進捗確認がほぼ全事業で入っています。猶予のあるものなので指導当日に出来ている必要は有りませんが、進捗状況について聞かれた際は返答ができる状態にしておきましょう。
②パソコン上での確認実施
今回の運営指導マニュアルは『介護事業における文書削減』の取り組みの一環の中で改定が決定したものであり、『指導のために印刷は求めない』ということを前提にしています。
実際に行われた4月~7月まで全20件の事業所に確認させて頂いたところ、4分の1に対してパソコンを確認されているという結果になっています。事前に届く通知に記載のある書類を印刷して用意していた場合は、あえてパソコンの中身を見ないことが多く、マニュアル通り『指導のための印刷を事業所にさせない』という事を守られている印象です。
運営指導に名称を変えた『実地指導』ですが、私たち介護事業所が守るべきルールに変更は有りません。これまでと同様に法令を遵守した運営を行い、介護サービスを安定して提供することが大切です。