本記事では、実地指導で実際に指摘された内容を、特定事業所加算要件の項目ごとに紹介します。
目次
所属する職員すべてに個別の研修計画を策定し、実施していること
〇所属している職員全員の計画を策定していなかった(勤務形態一覧表に氏名が記載されている職員はすべて必要)
〇策定している年間個別研修計画に位置付けられた研修が、基本的な研修であった(特定事業所加算取得にあたっては、個別具体的な計画を立て実施しなければいけない)
〇計画された研修を実施した記録の確認が取れなかった
〇全体で実施される研修と同様の研修が位置付けられており、個別具体的な研修計画といえない
〇研修計画に、具体的な実施時期等必要な項目の記載がない
等
特定事業所加算における個別研修計画は、個々の介護の質を向上するための目的をもって計画策定を行わなければなりません。
特定事業所加算の趣旨をふまえながら、要件を満たした運用を行うことが大切です。
介護事業者向けに個別研修計画の目的と要件、ポイントについて詳しくまとめました。
<目次>
1.研修実績の要件を満たすには
2.研修計画書の例
3.個別の目標・カリキュラムの例
4.未履修者に対するオンライン研修動画の活用
5.対応漏れによる返還事例
利用者に関する情報もしくはサービス提供にあたっての留意事項の伝達または当該指定訪問介護事業所におけるヘルパー等の技術指導を目的とした会議を定期的に開催すること
〇所属する職員全員が参加したことが確認できない(勤務形態一覧表に氏名が記載されている職員はすべて必要)
〇議事録から、必要な項目を検討した記録が確認できない
〇ヘルパー等の技術指導を目的とした会議の内容が『研修』になっており、会議とは言えない
〇開催した会すべての議事録確認が出来ず、開催しているのかが不明瞭
等
〇月に1回以上実施していることが確認できない
定期的に行わなければいけない会議は、会議の議題とする項目、実施回数が定められており、所属する職員は全員が参加しなければいけません。
1回の開催で全員が集まる必要はありませんが、別日に開催し、必ず全従業員が出席する必要があります。
指定訪問介護の提供にあたっては、サービス提供責任者が、利用者に関する情報やサービス提供にあたっての留意事項を文書等の確実な方法により伝達してから開始するとともに、サービス終了後、担当するヘルパー等から適宜報告を受けること。
〇必要な項目について伝達(指示)できていない
〇サービス提供開始前に伝達(指示)したことが確認できない
〇文書等の確実な方法で伝達(指示)できていない
〇サービス終了後に適宜連絡を受けていない
〇前回提供時の様子に明らかな利用者の容態変化があるにも関わらずサービス提供にあたっての留意事項が『変化なし』等、矛盾している
〇残っている文章が似たようなものばかりで、利用者の様子を適宜確認していると言い難い
留意事項伝達・指示報告は、毎日サービス提供ごとに発生します。量が膨大になるため、しっかりと運用できているかの確認がとても大変です。
それでも1回たりとも抜けてしまえば、特定事業所加算は算定できず、抜けてしまったことに気づかずに加算の取得をし続ければ、返還の対象となってしまうため、注意が必要です。
〇当該指定訪問介護事業所のすべてのヘルパー等に対し、健康診断等を定期的に実施すること。
〇指定居宅サービス等基準第29条第6号に規定する緊急時等における対応方法が利用者に明示されていること。
〇健康診断の受診が、前回受診日から365日以上経過している職員がいる
〇全従業員の健康診断受診の確認がとれない
〇重要事項説明書を用いて緊急時の対応を明示している場合において、連絡先に主治医の記載欄が設けてあるが、空白であり要件を満たしていると言えない
〇重要事項説明書を用いて緊急時の対応を明示している場合において、重要事項説明書自体の同意日、署名に空白があるため、要件を満たしているといえない
〇特定事業所加算の要件を満たしているかの管理を行う体制がない
〇特定事業所加算の要件を満たしているか、毎月確認を行っていない
特定事業所加算の要件を満たしているかの管理を、取得している事業所においては毎月行わなければなりません。
これにより、加算の要件を満たしていない事が発覚すれば、ただちに加算を取り下げる必要があります。
また実地指導の際には、人材要件、重度者要件、体制要件の管理をどのように行っていたかを確認されることもあります。
特定事業所加算の要件は、大きな収入を得る代わりに大きな責任も伴い、運用や管理は簡単ではありません。
にもかかわらず、現在の新型コロナウイルス等の影響で次回の法改正では大変厳しくなることが想像される中、特定事業所加算の取得、特定処遇改善加算の取得は必須とされています。
運用に不正が認められた場合は、取得した一度特定事業所加算の返還を求められる場合もありますので、くれぐれも抜け漏れがないよう、注意しましょう。