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2000年4月の介護保険スタートにあわせて、先代が訪問看護事業を創業したところから始まっています。10年後の2010年に高齢になった先代から共通の友人を介して私に打診があり、2011年1月から私が経営することになりました。
それまで私は、公益法人(財団法人や社会福祉協議会など)の会計ソフトなどを開発・販売・運用サポートする会社を経営していました。それは、“ITを通してエッセンシャルワーカーをサポートすることで、間接的に社会貢献をする”という理念のもとだったのですが、そのような考え方を持つ私になら、直接的に社会貢献ができる介護事業を経営することもできるだろうと声を掛けてくれました。このことは私にとっても人生の大きな転機になる、と思って引き受けました。
私の母が保育園で働いていたのを目のあたりにしていたので、そういったエッセンシャルワーカーの方への尊敬の念もあったんですよね。そして私も旅行での体験で、“昇る(成長する)ことだけでなく、下る(老化する)ことも楽しむという人生観を持ちたい”と気付きました。それをご利用者様にお伝えできるようにこの仕事に取り組んでみたい、というのもこの仕事を始めた理由の意味合いとしてあったかな、と思っています。
創業の経緯の通り、事業所名をつけているのも先代の経営者ですが、【すずらん】は、地域に花の名前の事業所が多いことで、“地域への調和”を意味するものとしてとらえ、介護にとっての“調和”を私もとても気に入っています。
【ありがとう足立】はご利用者様やそのご家族、同業者などすべての人や地域・環境に対する“感謝”を表しています。そして福祉の仕事をするうえで最も大切なことは、「感謝の心」だという意志の表れだと思うんです。
前の会社を経営していたときから、経営理念として、「より楽しく、より仲良く、より元気に」を掲げ続けています。かれこれ30年くらいです。常に現状に満足せず、そして絶対評価ではなく、相対評価で考えるようにしているんです。今日よりもっと楽しく、という具合に。
そう考えたときに、経営の神様が唱える「利益の最大化と経費の最小化」には、納得できない部分があるんですよね。経費ではなく、予算と考えていて、どれくらいが適当か、という考え方をするようにしています。サービス業での経費削減は人件費の削減につながってしまいがちです。しかしそれはサービスの質・会社の質を軽んじていることと同じことになります。そうなってしまっては窮屈な職場環境になってしまう。人が持つスキルや人の力が必要なこの介護のビジネスにおいて、そのように考えないほうがいいと考えています。
私も現場を知ろうとサービスに入ったことがあるのですが、経験もスキルも足りないので、何もうまくできなかったんですね。現場でのサービスは繰り返し問題を改善していく体験が必要です。熟練したことのないものが、たまにやる、というレベルではありませんでした。
だったらもっとヘルパーさんのスキルを信じて、各ヘルパーさんが訪問サービスに集中できる状況にしたいと思ったんです。目先で起きる問題の解決は各現場でスピーディに対応できるように、管理者やサービス提供責任者に必要な権限を与えて適切に動いてもらうようにしています。
介護サービスには施設で受けるものもありますが、家族のある人にとっての介護施設は、学校などのように帰る家があってこそ、その場所に意味が生まれるのだと私は思います。ほとんどの人にとって、生活のすべては自宅にあります。それをお手伝いすることが訪問介護の価値であり、社会的な意味のあるサービスです。
これを仕事にすることで、私自身も改めて、自分の生活を自分で守るという意識が芽生えてきました。そして、そうしたくても出来ないご利用者の方々を、ヘルパーという仕事を通して、その人らしく生活するための支援ができるということが、わかりやすく、世のため・人のため、になっているなと実感しています。これが一番のやりがいだと思います。
ヘルパーの方に適した評価基準をしっかり作りたいと思っています。他の業界の一般的な評価は、“仕事ができる”という生産性における基準に重きが置かれています。一方で介護・福祉の現場では、必ずしもそういう人が向いている、
またヘルパーさんの多くは、“社員”より“職員”として、“会社”よりも“介護職”に就いている意識が強いように思います。そういった方の評価やキャリアアップなども正しく見える化することがいま当社では必要だと考えています。