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もともとは里親になってファミリーホームを経営したかったんです。これはいまも夢です。それまでの経済基盤を作るために何かの仕事をしたかったんですが、母親が介護の仕事をしていたのをきっかけに、まずはそこで一緒に働かせてもらいました。そこで学びながら、老人ホームを作ったのがはじまりです。
当時は、必ずしも介護である必要はなかったかもしれないですね。ただ、里子に出される子供と、老人ホームに入ってくる高齢者たちは、本来愛情をもらえるはずだった家族のもとを何らかの理由で離れてしまうことになった人、という意味では同じ。そんな両者が一緒に同じ施設で生活を出来るなら、まさに愛情の補完になるのでは、と今では考えているし、そういう意味ではまずは介護施設を経営するということにしたのはよかったかな、とは思ってます。
【コイノニア】というのは、ギリシャ語で「主と共に交わる」という意味です。起業の際に知り合いの宣教師の先生に相談したところ、この【コイノニア】を使うのがいいのではないか、とつけてもらいました。自分としては、「愛を持って交わる。」という意味と解釈して、こういった機会では伝えています。
必然を大切にする、ということを大切にしています。働き口に困っている人と出会えば、その人が自社で働けるように入居者を増やすだとか、困っている人の助けになることを枠にとらわれずやる、という意識をすることですね。
福祉の本質を見失わないように、競争に入っていかないということも気を付けています。もっと売り上げを上げよう、とか考えて営業することもほとんどありません。
福祉は「生活を支えるもの」であるということを大切にしていきたいです。そのために、通常の一般家庭の、例えば親と子のように、施設内でも様々な役割を担ってもらうようにしています。利用者さん同士も支えあいながら、互いに出来ることをやっていますし、だからご利用者さん同士の交流も盛んです。スタッフは可愛がってもらう、子の役割でいることが多いですね。
今も私は施設の近くのところに住んでおり、息子はご利用者さんと仲良く過ごしたりしています。長男の出産は施設内でした。看取りもするご時世なんだからいいだろうと思って。産まれたあともご利用者さんが一緒に赤ちゃんのお世話をしてくれていて、息子にとってはたくさんのおじいちゃん・おばあちゃんがいるような感覚かもしれないですね。
現在は7名、30代が中心です。最年長は現在78歳の方。施設の考え方にも合っている方なので、いまは私か妻が出退勤の送迎もして働いてもらっています。
口コミで入ってくるような人が多いですね。スタッフもご利用者さんも、同居している家族のような関係。休憩時間に昼寝出来たら一人前ですね(笑)緊張しないで過ごす、という意味で。
福祉をまるで聖職のように扱う風潮に課題があると思います。とにかく尽くしなさいだとか、その風潮はよくないですね。また、医療の下請けのような扱いになっていることもおかしいと感じます。福祉は「生活を支えるもの」として医療とは別の分野でのプロフェッショナルのはず。この扱いや風潮を変えていかないと給料や人材不足といった表面的な課題を解決できないはずです。
家族の関係性を作るのは、血の繋がりではなく、接する距離と時間、覚悟の深さだと思うんです。子のため、親のため、という行動は美徳ではありますが、それは決して血の繋がりがあるからではないはずです。その構図、家族の機能を体現できる施設を作っていきたいというのが、1つの夢ですね。