訪問介護の需要は高く、今後も訪問介護事業は増加していく事が予想されます。
では実際に「訪問介護事業を開業しよう。」と考えた時に、事業を開始するにあたってどのような用意が必要なのか、など気になる点についてまとめてみましたのでぜひ参考にして下さい。
訪問介護事業をもし開業したら1ヶ月の売り上げはだいたいどれくらいなのか…気になるところではありますよね。
ここでは、訪問介護以外の介護サービスで起業した場合の比較や訪問介護事業所の平均売上の分布をご紹介します。
厚生労働省による「令和4年度介護事業経営概況調査結果の概要」の各介護サービスにおける収益差率を見てみましょう。
過去2年の訪問介護事業所の収益差率は約6〜7%です。
施設サービスである介護老人福祉施設は約1~2%、同じ居宅サービスである通所介護が約1~4%であることから、訪問介護事業所の収益差率は高く、その他の介護系事業所と比べて平均収益が高いことがわかります。
参考:厚生労働省
訪問介護の平均売上 | |
100万円未満 | 21.3% |
100万~200万円 | 26.8% |
200万~400万円 | 28.3% |
400万円以上 | 23.6% |
訪問介護の平均売上高は事業所の規模によって左右されますが、日本政策金融公庫から資料が出ているのでそちらを参考にご紹介させて頂きます。
全体の1ヶ月の平均売上高は、100万円未満が21.3%、100〜200万円が26.8%、200〜400万円が28.3%、400万円以上が23.6%です。
参考:日本政策金融公庫
介護事業の収入源は基本的に、9割は国費(介護給付負担)・1割は利用者の自己負担によりまかなわれています。
こちら厚生労働省の資料に基づいて詳しく紹介していきましょう。
参考:厚生労働省
身体介護の場合、基本料金の単位は時間によって4段階になっています。
20分未満 | 167単位 |
20分以上30分未満 | 250単位 |
30分以上1時間未満 | 396単位 |
1時間以上 | 579単位 |
上記に加え、1時間以上の場合は、30分増すごとに84単位を加算します。
生活援助の場合は、時間により2段階になっています。
20分以上45分未満 | 183単位 |
45分以上 | 225単位 |
身体介護に引き続き生活援助を行った場合は、所要時間が20分から起算して25分を増すごとに67単位を加算する事が可能です。
しかし、上限は201単位を限度として定められています。
手厚いサービス内容や体制に対して、基本料金に上乗せされることを加算と言います。
様々な加算があり、それぞれ一定の要件を満たすことにより報酬を得る事が可能です。
2人の訪問介護員の場合 | 基本単位を2倍 |
夜間もしくは早朝の場合 | 基本単位に25%上乗せ |
深夜の場合 | 基本単位に50%上乗せ |
緊急時訪問介護加算 | 1回につき100単位 |
特定事業所加算 | 条件によって5%・10%・20%上乗せ |
特別地域訪問介護加算 | 基本単位に15%上乗せ |
初回加算 | 1月につき200単位加算 |
中山間地域等における小規模事業所加算 | 基本単位に10%上乗せ |
中山間地域等に居住する者へのサービス提供加算 | 基本単位に5%上乗せ |
生活機能向上連携加算 |
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介護保険に基づく訪問介護事業は、法人であることが必須です。
ですが、法人であればその種類は問いませんのでそれぞれのメリット・デメリットを知り、適した法人を選びましょう。
営利を目的とする法人は、合同会社・株式会社などがあります。
メリット | デメリット | |
合同会社 |
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株式会社 |
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合同会社は、設立費用も会社設立後にかかる費用も株式会社と比べると非常に安くなるというのが一番のメリットです。
しかし、小さな会社組織を前提としている部分があり、認知度も低いので、もし会社を大きくしていきたいという考えなのであれば合同会社はあまり向いていません。
そして意思決定は業務執行社員の過半数で決めるので、意思決定が迅速に行われる事もメリットではありますが、一人ではなく二名以上で立ち上げた場合、意見が割れた時に迅速に決まらない可能性もあります。
そのデメリットも考慮して出資者を一人にする、あるいはパートナーを選ぶという事が必要です。
株式会社は主要な法人である為、利用者さんの安心度が高く、更にヘルパーさんなど従業員を雇う場合、広告を出した際にも有利になるでしょう。
更に事業拡大をしていきたい場合にも、新たな事業で必要な資金調達も可能となります。
デメリットとしては、設立に費用がかかるという事です。
営利を目的としない非営利法人は、一般社団法人・社会福祉法人・NPO法人などがあります。
メリット | デメリット | |
一般社団法人 |
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社会福祉法人 |
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NPO法人 | ・登録免許税が非課税 | ・設立までに6ヶ月程度必要 ・設立に10人以上の社員が必要 |
株式会社に比べると公益性のある事業という印象が強いので、利用者を集めやすいというのが一番のメリットです。
更に登記申請のみで設立が出来る事や、設立時の費用が安い事もメリットと言えます。
デメリットは、事業活動を行って余剰利益が出た場合も社員に分配する事ができません。
そして、一般社団法人では任期があり、任期を終了すると同じ人が再任する場合でも登記手続きが必要です。
更に株式会社とは異なり、株式市場へ上場する事が出来ない為、将来的に事業を拡大してより多くの利益を得たいと考えている場合にはオススメ出来ないので気を付けましょう。
社会福祉法人のメリットは、施設設備に対して一定額の補助を受けられるので充実した介護施設の開設を目指す事が可能です。
更に税制優遇措置を受ける事が可能で、退職金制度なども設けられています。
デメリットは、設立や運営の際、細かな要件を満たす必要がある為、設立できないケースもあるというところです。
そして資金調達は、寄付金や補助金のみの為、株式の発行による調達は出来ません。
NPO法人のメリットは、設立時に納付する登録免許税が非課税(0円)である事です。
更に、NPO法人が行うことは介護事業の公的なイメージと重なるため、非営利的なイメージや社会的信用を得やすいでしょう。
デメリットは、設立する際にまず社員が10人以上必要な事、そして設立までに約6ヶ月ほどかかるので急いで事業を開始したい場合には不向きです。
訪問介護事業を開業するにあたり、気になる事についてまとめてみました。
営利法人・非営利法人は種類がさまざまあり、それぞれメリットとデメリットがあります。
介護事業を考えているのであればまず、どの法人格が望ましいかなども考えながら進めていきましょう。