訪問介護事業所は、介護保険制度の中の公的なサービスですが、訪問介護サービスに来てくれる人は『法人』から派遣されます。
事業所から派遣される訪問介護員は『介護福祉士』『実務者研修』『ヘルパー2級』等、国家資格をはじめとする有資格者のみに限られ、派遣元である訪問介護事業所の法人は行政の指定受けなければ、介護保険制度の中の訪問介護は提供することが出来ません。
また、行政の指定を受けた後も、少なくとも3年~6年に1度行政による運営指導という『実地またはオンラインで行われる指導』を受けており、訪問介護事業所が介護保険法に則った適正な運営をしているか否かが常に問われています。訪問介護事業所を運営するには、人員基準、設備基準、運営基準を満たした運用を行う必要があり、この基準を満たさなければいけないということになります。
目次
訪問介護は、要介護認定を受けた方が利用できる介護サービスの内、訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅に訪問し、家事や身体に伴う支援を提供する役割を担います。
訪問介護サービスを受ける方が在宅で生活を継続するにあたって、課題であることを訪問介護員(ホームヘルパー)が手伝うことによって解決し、在宅での日常生活の継続を可能にするのが訪問介護です。
介護サービスは生活援助と身体介護に区分され、必要な時間に訪問介護員(ホームヘルパー)が介護サービスを実施し、必要な費用は1割から3割の範囲内です。
ご家族ごとのスタイルや生活に合わせて支援を行います。
訪問介護の収入源は『介護サービスを提供すること』により発生します。
介護サービスを受ける際は『単位』というものを用いて計算を行います。
『単位』は、介護の世界の通貨単位をとらえると分かりやすく理解が可能です。
要介護認定を受けると、その介護度ごとに『区分支給限度額』というものが割り振られます。
これが介護の世界で使える月のお金の上限であり、介護支援事業所の介護支援専門員(ケアマネージャー)はこの上限額を超えないように毎月ケアプランを作成します。
介護サービスには、商品のように提供を受けるひとつひとつに単位数が定められています。
例えば生活援助(掃除、調理等)の基本単位は20分以上45分以内で183単位、45分以上で225単位、身体介護(入浴や食事介助等)の基本単位は20分~30分250単位、30分~60分396単位と決定しており、この単位は日本全国共通です。
これに地域に応じて決定されている『地域区分』の数字をかける事で介護の世界の通貨単位を現実の『円』に変換させることが出来ます。
さらに個人個人の収入に応じた負担額を割合計算することで、訪問介護サービスを受けた方の負担額(利用者負担額)を算出することが出来ます。
例)身体介護60分を月4回実施した場合 利用者負担額1割 地域区分11.4円
396単位(身体介護60分の値段)×4回(その月の実施回数)×11.4円(地域区分)=18076.6円
18076.6円÷10=1805円(利用者自己負担額)
この他、基本単位や月の総単位数に対し増減される制度を『加算』『減算』と呼び、以下のようなものが有ります。
これらを掛け合わせたものが月の利用額となります。
事業所とは、営利・非営利を問わず、事業活動が行われる場所を意味します。
事業者とは、事業をおこなう者(人物・主体)を指します。
ステーションとは、一般的に業務や作業を受け持つ施設や部署を指します。(サービスステーション、ナースステーション、宇宙ステーション等)介護の場合は『訪問介護ステーション』等と事業所名に使用されることが多いです。
訪問介護の指定を受けるにあたり、知らなければいけないルールが存在します。
このルールとは、厚生労働省が定めた『指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準』を呼ぶことが多いです。
◆指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成十一年三月三十一日)(厚生省令第三十七号)
全15章有り、訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハ、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハ、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、福祉用具貸与、販売について事業を運営するためのルールが書かれています。
居宅介護支援は、平成30年4月から、居宅介護支援事業所の指定権限が都道府県から所在地市町村へ移譲されたため、各市町村で運用のためのルールが定められています。
指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準に定められたルールを守らず事業を運用すれば『基準違反』として行政処分を受ける事もあります。
『人員基準、設備基準、運営基準』の大きく3つの柱で構成されており、運営基準が1番ボリュームが多く1番違反の多い項目ですので『運営基準』という言葉を耳にする機会が多いかと思いますが、指定の取消等の重い処分に至るのは『人員基準』が多い事案でもあります。
省令のため、記載されている文章はなじみのない表現が使われていたり、細かい部分が分からず認識を間違えてしまうという事も多々発生しますので、指定を受けた後に適切な運営を行っていくためにも把握しておきましょう。
自宅の浴槽での入浴が困難な方に対して、浴槽を積んだ入浴車が利用者の居宅を訪問し、看護職員や介護職員が入浴の介護を行うサービスです。
【対象者】要介護1以上の認定を受けた方
【サービス内容】
医師の指示に基づき、看護師等が利用者の居宅を訪問し、健康チェック、療養上の世話または必要な診療の補助を行うサービスです。
【対象者】要介護1以上の認定を受けた方
【サービス内容】
医師の指示に基づき理学療法士や作業療法士等が利用者の居宅を訪問し、利用者の心身機能の維持回復および日常生活の自立を助けるために理学療法、作業療法その他必要なリハビリテーションを行うサービスです。
【対象者】要介護1以上の認定を受けた方
【サービス内容】
在宅で療養していて、通院が困難な利用者へ医師、歯科医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士などが家庭を訪問し療養上の管理や指導、助言等を行うサービスです。
また、ケアマネジャーに対して、ケアプランの作成に必要な情報提供も行います。
【対象者】要介護1以上の認定を受けた方
【サービス内容】
夜間において、①定期的な巡回による訪問介護サービス、②利用者の求めに応じた随時の訪問介護サービス、③利用者の通報に応じて調整・対応するオペレーションサービスを行います。従業者は有資格者であり、夜間は夜勤者が介護サービスを担当します。
【対象者】要介護1以上の認定を受けた方
【サービス内容】
【対象者】要介護1以上の認定を受けた方
次のサービスを適切に組み合わせて提供します。
【サービス内容】
一体型では、①~④のサービスを提供します。
連携型では、①~③のサービスを提供し、④のサービスは、連携先の訪問看護事業所が提供します。
多くの訪問介護事業所は日中に支援が集中していますが、24時間対応している訪問介護事業所であれば、夜勤を行う可能性があると言えます。
夜間に生活援助を行う事は少ないため、夜勤者に求められるのは身体介護のスキルである場合が多いです。また、夜勤においては車で移動を行う事も多く、運転免許が必須であることも有ります。
訪問介護員は女性が多く、住んでいる地域で働くことを希望するスタイルの方が多いです。このため、夜勤者を雇用するのは困難だと言えますので、法人の方針を固めてから営業時間などの設定を行う事も大切です。
管理者は、1人配置が必要です。常勤であり、原則として専ら当該訪問介護事業に従事する者でなければなりません。
ただし、以下の場合であって、管理業務に支障がないと認められる場合、同一の者が他の職務を兼ねることができます。
① 当該訪問介護事業サービス事業の従業者(サービス提供責任者、訪問介護員)としての職務に従事する場合
② 当該訪問介護事業所サービス事業所と同一敷地内にある他の事業所、施設等の職務
(※)に従事する場合であって、特に当該訪問介護事業の管理業務に支障がないと認められる場合(※同一の事業者の併設する事業所等に限る。)
障害者総合支援法に定める居宅介護や重度訪問介護の管理者を兼務したりすることが可能です。
常勤の訪問介護員等のうち、利用者の数が 40 又はその端数を増すごとに1人以上の者をサービス提供責任者としなければなりません。
※一定の条件を満たした場合、利用者 50 人に対して1人以上とすることができます。
※「利用者」には居宅介護等の障がい居宅サービスや、地域生活支援事業、総合事業の利用者も含めます。
【資格要件】
訪問介護員はと常勤換算で2.5人以上居なければいけないとされており、研修を修了した有資格者のみが介護サービスを担当することが出来ます。
常勤換算とは、『総労働時間を足すと常勤何人分になるか』を指し、
常勤換算2.5人以上とは、例えば所定労働時間が168時間だった場合、420時間以上働ける人材を確保している状態を指します。
【常勤換算計算方法】
「常勤職員の人数」+「非常勤職員の勤務時間÷常勤職員が勤務すべき時間」
※管理者の就労時間を除く(管理者がサービス提供責任者と兼務している場合は、管理者の時間のみ除きます)
【資格要件】
サービス提供責任者が立てることの出来る訪問介護サービスは、国のルールによって決定しています。厚生労働省 老計10号
指定、資格が必要な公的なサービスであるため、ここに決められた介護サービス内容に対し、有資格者が提供した場合のみ介護給付費が支払われる仕組みになっています。
ここに記載の有る行為以外を訪問介護サービスとして訪問介護計画に組み込むことはできず、万が一実施していたことが分かった場合は介護保険外のサービス提供として、介護保険の料金からは外れる(給付負担対象外)こととなります。
【前提条件】
例えば本人以外の家族や来客のための調理、家族と共用で使用する場所の掃除や洗濯は実施することが出来ません。
【生活援助】
生活援助とは、掃除、洗濯、調理などの日常生活の援助(そのために必要な一連の行為を含む)であり、利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるものをいいます。
実施可能項目:掃除、洗濯、ベットメイク、衣類の整理・被服の補修、一般的な調理、配下膳、買い物・薬の受け取り
【身体介護】
身体介護とは、訪問介護員(ホームヘルパー)がご利用者の身体に直接接触して行う介助サービス(そのために必要となる準備、後かたづけ等の一連の行為を含む)等の訪問介護サービスを指します。
実施可能項目:排泄介助、食事介助、清拭・入浴、身体整容(髭剃り、爪切り等)介助、更衣介助、体位変換、移乗・移動介助、通院・外出介助(同行)、起床及び就寝介助、服薬介助、
自立生活支援のための見守り的援助(ご利用者様の動作補助を行いながら生活援助の内容等を一緒に行います)特段の専門的配慮をもって行う調理(嚥下困難者のための流動食の調理を行います)
直接介助を行う訪問介護サービスと、お声がけをして誘導を実施し本人の行動を援助する場合等が有ります。
上記の他、準備、健康チェック、環境整備、相談援助、情報収集・提供、介護記録の作成等を実施します。
訪問介護では、下記3点の条件を満たさなければ訪問介護サービスを提供することが出来ません。
この3つの条件を満たし、初めて訪問介護員(ホームヘルパー)がご自宅に訪問しての訪問介護サービスを行うことができるようになります。
また、下記に記載するご支援については介護保険のサービスとして実施することが出来ません。万が一居宅サービス計画や訪問介護計画に記載があっても実施することが出来ませんので注意が必要です。
【実施出来ない訪問介護サービスの事例】
【同居家族がいる場合の訪問介護サービス】
同居家族がいる場合は原則的に生活援助の訪問介護サービスで家事の支援は出来ないことになっています。これは、同居家族がいるのであれば、家事は家族が実施できるだろうというのが前提に有ります。
例えば『同居家族が家事を行うことが出来ない』『住民票上では同居家族は居るが単身赴任で帰ってこない』等、同居家族が家事を行うことが出来ない理由がある場合には訪問介護サービスによる支援が可能です。
訪問介護事業を始めるには、法人格(株式会社、合同会社など)を持つことが必要になります。既に介護以外の業種を行っている法人がある場合は、定款の目的の変更と登記の変更を行うことが必要です。
管理者、サービス提供責任者、訪問介護員が必要となるため、これらの人員を確保する必要があります。申請時にはサービス提供責任者や訪問介護員、介護福祉士の資格証等も必要となるため、これを見越した採用計画を立てなければいけません。
都道府県・市町村など行政の窓口を事前確認し、必要な申請書類を作成します。書類の種類が多く、訂正も多いため、これを見越して少なくとも3か月前には窓口で確認をすることをお勧めします。書類を提出(受理)したあとは審査後に決定の通知を受ける流れとなります。
【一人暮らしの方の掃除、洗濯の訪問介護サービス】
10:00 訪問、ご挨拶、体調確認、本日の支援の流れ説明
10:05 洗濯(洗濯籠に有る契約者本人のもの、ポケットの中等確認)
10:15 居室掃除(掃除機掛け、ウェットクイックルワイパーがけの実施)
10:35 洗濯(ベランダへ干す)
10:45 トイレ掃除
10:55 支援記録の記入
11:00 退室
【家族と同居の方の食事介助・水分補給・服薬介助の訪問介護サービス】
17:30 訪問、ご挨拶、体調確認、本日の支援の流れ説明
17:35 食事介助・水分補給(家族が用意したご飯を安全に食べて頂き、食器を流し台におく)
18:15 服薬介助(一包化された処方薬をお渡しして服薬されたことを確認する)
18:25 支援記録の記入
18:30 退室
【家族と同居の方の通院介助サービス】
10:00 訪問、ご挨拶、体調確認、本日の支援の流れ説明
10:05 準備(更衣介助、診察券の確認、車いすへの移乗)
10:08 移動(車いすにて家から3分程度離れた内科へ移動)・病院受付
10:10 診察待ち時間・診察(介護保険外サービス)
10:30 会計・移動(薬局への移動介助)
10:40 薬局待ち時間(介護保険外サービス)
10:45 会計・移動(薬局からご自宅への移動介助)
10:50 更衣介助、水分補給
10:55 支援記録の記入
11:00 退出
上記は事例であり、実際に訪問介護サービスを受ける場合は事前にサービス提供責任者と打ち合わせを実施して決定します。
訪問介護サービスでは、ご家庭の中に入り家事を行ったり、ご利用者様のお体に直接触れて身体介助を行ったりします。
家事には物損がつきものですし、身体介助では事故が100%無いと保証出来るものも有りません。
このような不測の事態に備え、訪問介護事業所には『損害賠償保険加入』が義務付けられていますので、万が一破損事故や身体に傷がつくような事故が有った場合は、この損害賠償保険から保険がおりることになります。
また、『訪問介護員(ホームヘルパー)が来ない』『対応が悪い』等の苦情を申し出ることも可能であり、この場合まずは訪問介護事業所の相談窓口に相談を行い、解決しない場合は居宅介護支援専門員や市役所や区役所等の行政窓口等へ相談することとなります。
身体や生命に関わるトラブルの際は、あらかじめ訪問介護事業所と打合せをして対応方法を決定しておく事がとても大切で、緊急連絡先だけでなく普段服薬している薬の情報や、既往歴等の情報はもちろん『どのような状態であれば救急車を呼ぶ』といった詳細まで決定しておくことが重要です。
訪問介護は、在宅において生活をしていくために、その本人がこれまで出来ていたことが出来なくなってしまった時に支援を行う介護サービスです。
何かしらの理由により買い物が出来なくなってしまった、買い物が出来ればこのまま家でこれまでのように生活できるという課題に対し、買い物の訪問介護サービスを提供することで『これまでと同じ生活が家で出来ること』を支援します。
また、買い物を一連の作業として考えた場合に『買い物には行けないけど冷蔵庫にしまう事はできる』という事であれば、『冷蔵庫にしまう』作業はこれまで通り本人が行い、『現在出来ていることはこのまま出来る状態にある努力をする』という事が前提です。
『これをしてくれたら豊かになるな』『これをしてくれたら面倒が減る』といったことには介護保険外のサービスを使用することに注意が必要です。