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運営基準

介護事業・施設におけるM&Aの相場と価値向上のポイント

2021-12-15

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

詳細プロフィール

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介護業界において最大の課題は人材不足です。介護保険法発足当時の2000年は、資格を取得すれば高時給の業務に就けると特に主婦層に人気のある職業でした。今では国が『介護職の処遇改善』を掲げ、様々な政策をとっていますが、介護職は低賃金重労働と言われ、医療と比較しても担い手が少なく介護の専門学校も続々と閉鎖を余儀なくされています。

そんな中注目されているのが『大規模化・協働化』というキーワードであり、大手企業を中心にM&Aが活発になっています。これまで中小企業においてはあまりなじみの無かったM&Aも『紹介会社より安価に大量の採用ができる手段』だと、新たな人材採用の手段として注目を集めています。

目次

介護事業・施設におけるm&a

m&aとは

M&A(エムアンドエー)はMerger And Acquisition(合併と買収)の略で、M&Aの意味は文字通り「企業の合併・買収」のことで、2つ以上の会社がひとつになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)です。

コロナ禍においては倒産件数の増加や人材不足の背景から介護業界でのM&Aも増加の一途をたどっています。

そんな中、介護事業においては廃業や休業を選択される企業の多くに『介護事業には価値がつかないと思っている』経営者の方を多く見かけます。

介護業界m&a 譲渡価格の相場

一般的な中小企業のM&Aの譲渡価格相場としては、

『純資産+営業利益の24か月(2年)~60か月(5年)』言われています。

一方で介護業界の譲渡価格の相場は、

『純資産+営業利益の18か月(1.5年)~24か月(2年)』と言われています。

これほどまで差が出る理由としては、以下のような理由が挙げられます。

①人材の数が売上や収益を左右することから、人材ありきの不安定な事業と言える。

②譲渡価格には資産が含まれるが、特に居宅系事業は賃貸物件があれば開設でき、不動産をはじめとする資産なども事業としては必要がない。

対象となる事業所の規模や利益などの経営状況によってはもちろん、資産によって譲渡価格が大きく左右されることとなります。

例えば有料老人ホームや住宅型有料老人ホームで、土地や建物が自社保有の者であった場合、これが譲渡対象に含まれれば取引の額は高くなりますし、株式譲渡か事業譲渡なのかによっても異なってきます。

国が推奨する介護業界の『大規模化・協働化』

従業員数20人未満の事業者が約3割、100人未満が約7割と、中小事業者が多数を占めるのが介護業界です。

健全運営でも、後継者不在で事業継続が危ぶまれる法人は少なくない中で、新型コロナウイルスが追い打ちをかけた状況になっており、クラスター発生により営業停止になったデイサービス(通って利用する介護施設)など、業績不振によって事業譲渡を望む中小事業者は増え、M&A(企業の買収・合併)市場は活況となっています。

2022年4月に、財務省財政制度等審議会財政制度分科会が示した介護分野の改革案では、小規模事業者が多い現状に対する厳しい指摘が相次ぎ、小規模事業所は『サービスの質の向上が十分に図られていない。』『業務効率化が進まない。』『規模の大きい事業者ほどスケールメリットにより平均収支率が高い。』このため、介護業界は「大規模化・協働化」を進めるべきだというのが国の考えです。

また、2024年には医療介護の同時改定が予定されており、このタイミングで事業の廃業を検討される方も多くいらっしゃいます。

介護事業・施設をやめたいと考えたときm&a

介護事業・施設をやめたいと思った時の手段について

介護事業をやめたいと思った時の手段は主に以下4点です。

1:親族内承継

2:内部承継

3:外部承継

4:廃業

親族や内部に承継できれば1番良いと捉えることができますが、実際は『ご利用者を他事業所に振り、廃業を行う』ことが多いのも介護業界の特徴です。

介護は専門職であり、親族が居るからと簡単に引き継げるものではありませんし、一緒に働いている従業員に事業を任せるためには、ある程度明るい見通しがなければ渡せません。

いざ外部承継(M&A)を考えたときには『人が辞めることになって採算が取れなくなった』『経営者が体調を壊し、廃業せざるをえなくなった』等、ギリギリの経営を続けている中で不測の事態が起こり、本来売却できる事業であるにも関わらず、『廃業』を選ぶことになってしまったという事例が後を絶ちません。

中、長期的に計画立てて事業承継を考えることは、経営者にとってはもちろん、ご利用者や従業員、取引先や地域にとっても大切な事です。

外部承継とは

外部承継はM&A(エムアンドエー)と同義語です。企業の合併買収のことで、2つ以上の会社が一つになる『合併』、ある会社が他の会社を買ったりすること『買収』です。M&Aの広義の意味では『提携』までを含める場合もあります。

適切な企業間のM&Aは、買い手、売り手の各関係者に大きなメリットを与えます。

「後継者問題の解決」や「業界再編に備えた経営基盤の強化」、「事業領域の拡大」などの経営者の課題解決の実現を可能にし、「存続や発展」をダ実現させるための方法です。

赤字事業でも大丈夫

介護事業は人材不足が深刻です。

赤字でも『人に価値』があれば、買い手が見つかる可能性があります。

大切なのは『買い手にとって必要な人材か』です。

『資格をもっているから』『長く勤めているから』『素直だから』というのは必ずしも『買い手にとって価値』ではありません。

発展のために必要な、価値のある人材かどうかが大切です。

M&Aの仲介業者は何をしてくれるのか

M&Aを行う際は、仲介企業が仲介を行う事が多いです。

この仲介業者は介護企業に関する知識があるわけではありませんので、『一般のM&Aの際に行われるデューデリジェンスの書類』を整えるお手伝いは出来ますが、介護に特化した書類の準備や細かい相談を聞くことは出来ません。

一般の事業に照らし合わせて企業価値を算出し、いち早く買ってくれる、企業風土と合うと思われる会社を選定し、売り手に紹介します。

実際に問い合わせをした方の声

先日お会いした方にM&A仲介業者に問い合わせした結果を伺う機会がありましたので、以下ご紹介します。

『訪問介護の事業の承継を考えたとき、真っ先にM&A仲介業者が浮かんだので4社ほど問い合わせをしてみました。売上と収益はトントンで、赤字ではないけれど利益も大きく出ていません。

利用者数は一定あり、職員の質も高いので1,500万円~2,000万円で売れるように育てたいのが希望です。

ーー仲介会社問い合わせ結果ーー

1社目:売却価格が小さすぎで、グループ内のマッチングサイトを紹介された。

2社名:無料査定をおこなったが、その後連絡すらない状態。

3社目:連絡が来て、話は1度聞いてくれたものの、その後の約束もなく、今も連絡がない状態。

4社目:連絡までに3日ほどかかりましたが、1番丁寧でした。気になるのは“売りましょう” “いつ売りますか”と3日に1回追われていること。今すぐ売りたいのではなく、計画的に高値で売りたいのが希望なのに。

結局、流れ作業で売ってくれようとするのはまだマシで、相手にもされず高値で売れる事業しか相手にしないのが見え見えで、信頼が生まれることはなく、今もどこに相談したらいいかがわからない。』

どんなm&a仲介業者がいいか

当たり前のことですが、信頼できる会社に依頼をするのが1番です。

大切に育ててきた会社と従業員を、大切にしてくださる買い手企業に託したいというのが売り手の心からの本音であり、そして少しだけ高値で売りたいと思うのが正直なところです。

自社の価値を本当の意味で理解し、自社に合う買い手先を見つけてくれる仲介会社。自社の発展を自社以上に考えてくれる仲介会社。

これは介護業界のM&Aに特化しているだけでなく、制度や業界に精通している会社でなければ行うことができません。

介護事業・施設におけるm&aのメリット

介護事業・施設売り手側のm&aのメリット

介護業界のM&Aで売り手に考えられる主なメリットは、以下の通りです。

・後継者問題の解決(廃業の回避)

・従業員の雇用継続

・個人保証・担保の解消

・売却益の獲得

・経営の安定

一番は廃業を回避できること、従業員の雇用を維持できることが重要です。

中小規模の介護事業所では従業員の人数が限られるため、残業が多くなる傾向がありますが、買い手が同業の大手企業なら、必然的に従業員の数が増え間接部門も充実しているケースも多くあるため、今よりも従業員一人一人の労働負担が軽減される等、細かなメリットも複数あります。

介護事業・施設買い手側のm&aのメリット

次に買い手に考えられる主なメリットは、以下の通りです。

・弱点サービスの補強

・人材・拠点の確保

・エリアシェアの拡大・獲得

・業績拡大

・簡易に新規参入(異業種)

買い手側としてはドミナント戦略を取れるようになることや、それに伴う業績の拡大が一番のメリットでしょう。

その他には、介護事業以外の異業種の企業がM&Aにて介護事業を引き継ぐ場合、行政からの許認可を引き継げることがあります。M&Aが株式譲渡のみで実行される際は、株主が変更されるだけのため許認可申請の必要はありません。

また地域によっては介護の事業に総量規制が掛かり新しく新規事業所を開業出来ない等の問題で事業を拡大出来ない場合もありますが、事業を引き継ぐ事で事前に確認を取る事で、本来取れなかった指定が取れるケースも多くあります。

介護事業・施設の経営者にとって『良いm&a』とは

買い手側経営者様

事業譲受を考えたとき、譲受側の経営者様にとって良いM&Aとは、法人と法人が合わさる事で更なる拡大を図れることです。

『更なる拡大』は、単に規模の話だけでなく、職員の数、ご利用者の数、事業数の数等多岐にわたりますが、このために必要不可欠なのはM&Aを行うにあたり事前に思っていた姿と、行った後の姿に大きな違いを生じさせない事です。

売り手側経営者様

譲渡側の経営者様にとっての『良いM&A』とは、ご利用者・従業員が解散後も変わらず笑顔で生活できることが『確約されている状態である』ことは勿論、一定の条件や金額で譲渡が可能になる事です。

また、従業員は法人変更後、『賃金、労働条件、環境に変更がない』という前提条件が最低限保証され、少しだけ自分の将来に希望が見えることが良いM&Aだと言えます。

買い手側にM&Aが注目される理由

昨今の介護業界の人材不足における課題は、この先も解決の目途は立っていません。

そんな中人員基準や配置基準を満たすために、紹介業者からの人材紹介や派遣会社から派遣を受けたり等、多くの資金を投じてその場その場で必死に解決を図って何とかやりくりしているのが現状だと思います。

紹介業者に人材の紹介を依頼すると、介護福祉士常勤の紹介を受けるのに100万円程度かかることも有ります。

このような背景からも100万円程度から事業を譲受できるM&Aは、数名の職員に利用者が存在するという状態で引き継ぐ事が可能であり、昨今注目を集めている人材採用の手法となっています。

売り手側にm&aが注目される理由

廃業手続きは廃業届などの必要書類や費用を準備することから始まり、これらは専門的な要素が多く、書類作成の段階で膨大な作業が発生するため、清算などの手続きを弁護士や税理士などに代行してもらうのが一般的ですが、清算後は残った資産が債権者に分配され、解散・清算確定申告や清算決算報告書の承認を得て、廃業手続きは終了となります。

また、同時に指定申請を廃止させる手続きや、介護・福祉業界ならではの手続きにも専門的な方の知識が必要になります。

このことから、『廃業』ではなく事業を存続させる『事業承継』を選択される経営者の方が増えています。

事業承継とは

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことを言い、中小企業にとっては特に代表者の経営手腕が会社の強みや存立基盤そのものになっていることが多く、「誰」を後継者にして事業を引き継ぐのかは重要な経営課題です。

また、事業承継は単に「次の社長を誰にするか(経営承継)」という問題ではなく、会社の経営権そのものの「自社株を誰に引き継ぐか(所有承継)」、「後継者教育をどう行うか(後継者教育)」を考えることもとても重要です。

介護事業・施設m&a事例 廃業の理由とは

経営者の高齢化と後継者不足によりm&aを選択

介護保険制度がスタートした時に介護事業を起業した当時40代50代の経営者の方々が、60代を超えてきています。経営者の平均引退年齢は68歳といわれており、経営者がその年齢に近い事業所は少なくありません。健康上の理由や気力の減衰によって廃業や譲渡を検討し始めます。

また介護の大変な仕事を継がせたくない、あるいは継ぎたくないというような声も聞こえてきます。

人手不足による経営難や先行き不安m&aを選択

全産業の中で圧倒的に新規・有効求人数が多く、3.6社に対し1の求職者しかいない状況です。

全産業を見ても有効求人倍率は1%台にとどまっており、失業率を上回る介護サービスの3%代は異常とも言え、特に居宅系サービスの求職者に絞ればより求人倍率は高くなり、今後も人材不足が解消される見込みは立っていません。

人手不足が売り上げに直結するのが訪問介護です。コロナ禍による経営疲れも相まってM&Aについて調べられたり、専門家へ相談される方も増加しています。

本業への集中、不採算事業の切り離しm&aを選択

上記のような理由から不採算事業を売却することを検討される方もいらっしゃいます。

訪問介護の事業者では、資本を多く持ち合わせていない場合が多く、不採算事業を抱えることは経営悪化へと繋がるため廃業・譲渡を検討されます。

事業が好調なうちに早期に引退したい

また数自体は少ないですが40代50代の訪問介護経営者の中には近年話題になっているFIRE・早期リタイアを検討される方もいらっしゃるようです。

第三者による客観的な価値知る

廃業か譲渡を考えるために、まずは自事業所の客観的な価値を正しく知ることから始めることをおすすめします。

訪問介護の場合上記のような理由においてほとんどのケースで、引き継ぎ手が見つかります。これまでは『利用者と職員を他事業所に口利きをして振る』という手法が選ばれてきましたが、トラブル回避のためや、事業所と利用者、経営者と従業員で契約が結ばれていることと同様に事業の引継ぎにおいても書面による契約取り交わしが必要と捉えられるようになってきています。

コロナ禍も相まって介護の業界の倒産件数も最多を更新しており、出口戦略としても事業承継を考えなくてはならなくなってきています。経営者にとってはもちろん、ご利用者や従業員、取引先や地域にとってのよりよいカタチとなるように長期的に計画立てて検討していくことが重要です。

また譲渡を検討される場合、まずは自事業所の価値を正しく把握し、その価値を理解してもらえる買手を見つけることも大切になります。介護業界について理解があり同じ価値観で話せる仲介会社を探されることをお勧めします。

廃業か承継かの判断

廃業を決めた時点で、会社の財産を債権者に支払う作業を清算といいます。

清算ができる場合は、債権者に迷惑をかけることはありません。しかし清算できない場合、中小企業では経営者が金融機関からの借り入れの保証人になっているケースがほとんどのため経営者が個人の資産を取り崩して対応することが多くなっています。

解散や清算には、登記に数万円程度の費用がかかります。場合によっては、仕業の方への報酬や事務所の原状回復費などが発生すれば、経済的負担も大きくなってしまいます。

承継の場合には、廃業と比べて手続きが簡易的で済むケースが多く、営業権に価値がつき売却できることも多くなります。この営業権の価値により赤字で通常は倒産を余儀なくされるような事業所でも承継が叶うケースあります。

介護事業・施設が赤字でもm&aで買い手はつくか

進む大規模化に対し、中小零細企業がとるべき戦略としてランチェスター戦略やドミナント戦略があります。

一定の市場において複数拠点や複数事業を展開し、○○のエリア、○○市においては競合他社や大手企業よりもシェアを獲得するような戦略のことを指しますが、中小企業の戦略としてしばしば取り上げられます。経営不振の事業所を譲りたいと考えた時に、多くのケースでは近隣にこういった戦略を取られている企業が存在するのです。

シェアの拡大 赤字でも買い手がついた事例1

その地域で大規模化したいと考えている企業への譲渡である場合、買い手は赤字でもシェア拡大のためにM&Aを希望することが多々あります。

人材不足 赤字でも買い手がついた事例2

介護業界において人材不足は深刻です。有資格者の常勤職員を雇おうと思うと、1人あたり50万円から100万円かかる事もあります。赤字事業でも、採用単価と比較して安価だった場合は、売上も見込めるM&Aを選択される経営者の方が増えています。

m&a成約までの期間は?

m&aは結婚のようなものと良くいわれます。タイミングや条件が揃えば、赤字でも成約まで期間は要しません。

大体は半年から1年程度と言われており、相手先が見つかってから面談やデューデリジェンスを経て譲渡となります。黒字だから早い、赤字だから遅いということではありません。

成約に至りやすい案件とは

成約に至りやすい案件とは『汎用性が高い』案件です。m&aにおいて譲受を考える企業は、企業を発展させるために譲り受けを行います。

例えば同じ通所介護でも物件が広ければ居宅介護支援等の併設を考えることが出来ますし、駐車場が広ければ駐車場でイベントを行う事も出来ます。

譲受することで様々な展望がイメージできる案件には買い手がつきやすいという特徴があります。

介護事業・施設のm&a仲介会社の選び方

m&aの仲介会社とは

M&Aのアドバイザーが売手企業と買手企業の間に入り、M&Aを成功に導くために中立的な立場で交渉しサポートしていく業者を指します。本来であれば、売手であればできるだけ高く、買手であればできるだけ安くM&Aをしたいという考えが働きますが、両方からの条件を聞いて両方が納得する着地点を目指した交渉サポートを行います。

介護業界においては、これまで知人の事業所やケアマネに従業員や利用者をお願いして事業所をたたむ。という手段が択ばれてきました。しかし、昨今のM&A件数自体の増加に伴い、介護業界においても仲介会社の関わる機会も増えてきています。

仲介手数料について

多くの仲介会社では仲介手数料を以下のようにしたレーマン方式と呼ばれるものが一般的です。

5億円以下の部分   5%

5~10億円の部分   4%

10~50億円の部分    3%

50~100億円の部分     2%

100億円を超える部分  1%

5%であれば人材会社の紹介手数料などに比べると安価に見えるしれませんが、多くの場合、最低報酬500万円、1,000万円、2,000万円と高額に設定している会社が多く存在します。訪問介護やデイサービス、強いては地域密着型サービスを提供する中小の介護事業所がM&Aを自分事にとらえられないのはこのためです。仮に譲渡対価を得られたとしても仲介会社に大半を持っていかれるようなことになっては元も子もありません。

また成功報酬以外にも着手金や中間報酬などの料金設定をしている仲介会社もありますので、注意が必要です。

中には介護に特化した仲介会社で最低報酬100万円~というようなところもありますので、M&Aをお考えの際は仲介手数料の面では相談してみるのもありかもしれません。

仲介会社を選ぶ際のポイント

仲介手数料以外の面では、介護のM&A実績があるか、介護業界に精通しているかが大きなポイントになります。

介護福祉士や実務者研修修了者の人数などが事業所の価値評価に加味してもらえるのか、実地指導でみられるような法令書類や加算の取得状況、介護ならではの価値について相談のできる相手でないと、売上や利益など数字のみでの価値の判断をされてしまう恐れがあります。

M&Aに限ったことではありませんが、何事にも情報収集は必要です。

どこの仲介会社でも相談無料としているケースが多いため平均値や相場を知る意味でも、検討し始める際は仲介会社へ問い合わせ、無理な営業をしてこないように念押して営業マンをうまく使い教えてもらうのが良いかもしれません。

介護事業・施設のm&a時の譲渡価格を左右する要因

譲渡価格が低くなってしまう事業所・施設の特徴としては以下のような点が挙げられます。

①譲渡後の従業員雇用の継続が見込めない。

60代の職員が多い事業所と、40代の職員が多い事業所では長く雇用が可能な可能性という意味で後者の方が高値になる傾向があります。また、人員基準配置上必要な役職に就くための資格保持者(介護福祉士や実務者研修修了者など)が存在すれば、譲受企業も将来の展望が見えやすくなります。

②書類整備がされていない。

介護業界においてコンプライアンスは軽視されやすく、介護技術のプロは多く居ても行政への対応や書類整備の知識がある職員は少ないのが現状です。実地指導時にて返還がない状態を維持できている企業は、リスクが少なく、整えることができる従業員は『譲渡先企業にない知識がある』と重宝されます。

③売上が見込めない

多くの加算を『手間だから』と『よくわからないから』と取得していない事業所は多く存在しています。現在の売上・将来の売上を見込むためにも可能な限り加算を取得する必要があります。

 
上記に該当する場合でも、買い手側企業が大手で有る場合や譲渡後のビジョンが確立している場合においては、取引において大きな問題にならない場合もありますが、譲渡価格においては低額となる可能性があることに注意しなければいけません。

介護事業・施設ならではのm&aデューデリジェンスにおける注意点

デューデリジェンスとは

デューデリジェンス(Due Diligence)とは、投資を行うにあたって、投資M&A対象となる企業や投資先の価値やリスクなどを調査することを指します。デューデリジェンスには、組織や財務活動の調査をするビジネス・デューデリジェンス、財務内容などからリスクを把握するファイナンス・デューデリジェンス、定款や登記事項などの法的なものをチェックするリーガル・デューデリジェンスなどがあります。

m&aの際に潜むリスク

通常のデューデリジェンスでは、決算書をはじめ経理、人事、労務周り、不動産や紛争関係等の書類を確認します。

一方で介護事業の場合、介護保険法及び厚生省令に則った業務運用を行っているかを確認する必要があります。

実際の業務運用書類を確認しなければ、潜在リスクやそのリスク額を把握する事が出来ず、どのようなリスクで、いくらの返還額が想定されるのかを把握しなければ、買収後に大きな損害を受ける可能性も潜んでいます。

m&aの取引額や取引そのものを左右する具体的なリスクの例

先日もマスク氏によるツイッター社の買収がニュースにもなっていましたが、スパムアカウントの数量の真偽についての確認ができなかったことが買収から撤退する理由だと報道されています。それを身近な介護事業所の事例に置き換えると以下のようなケースが該当します。

①介護報酬や加算など運営基準に関連する書類が出せない

そもそもこれらの書類が準備できない場合は、『違反した運営を行っている』という状況です。指定の取り消し等重い処分を受けるリスクが有りますので、買収はこれらを留意して行わなければいけません。

②人材(人員基準)に関する書類が出せない

①と同様に省令での定めがあり、職責ごとにその保有すべき資格が定められており、これを持たない従業員が介護サービスを実施しても介護報酬を得る事は出来ません。しかしながら、不正請求のニュースは絶えず報道されており、不正に報酬を得ているケースも有りますので、資格に関する書類が適正かを確認する必要があります。

いずれも確認できない場合、買収候補がいたとしても頓挫する原因となるケースです。

トラブル回避方法

M&Aを行う際は、仲介会社が仲介を行う事が多くなります。介護の業界理解がない仲介会社ですと、通常のデューデリジェンスのアドバイスはあっても、先述のような介護に特化した書類や加算の確認をされないというお話もよく伺います。介護に精通した仲介会社を選び、なにを準備すべきか、なにを確認すべきかアドバイスをもらったうえで交渉にのぞむとよいでしょう。

また、売り手側企業においては、最低限『基準を満たしている』と示せる書類の準備が必要です。まれにこのような状態でも買い手がつくことは有りますが、譲渡価格に大きな影響を及ぼすことを忘れてはいけません。

介護事業・施設m&a案件の事例

介護事業所の売却案件は、以下のような形で譲渡先を募集しています。

既に譲渡先が決定している案件となっております。一例としてご紹介させて頂きますが、案件のご紹介を希望される場合はお問い合わせください。

■通所介護の事例 100万円での譲渡希望

[事業]通所介護(定員29名 1単位) 

[売上]単月100万円程度の赤字

[設備]賃貸40万円

建物150㎡(機能訓練スペース90㎡)駐車場5台分、トイレ3、キッチン3、風呂1、事務室※申請上の基準に問題なし

[人員]

生活相談員:常勤2名・非常勤1名 看護師兼機能訓練指導員:常勤1名・非常勤1名

介護職員:非常勤4名

[その他譲渡対象設備]バン2台(車いすリフト付き) 机・椅子 消火設備

[譲渡理由]前管理者が経営者であったが、逝去のため

■訪問介護の事例 300万円での譲渡希望

[事業]居宅介護支援・訪問介護・障害訪問系サービス

[売上]単月300万円 利益単月20万円程度

[設備]賃貸10万円

[人員]介護支援専門員:管理者常勤1名・非常勤1名 サービス提供責任者:管理者常勤1名

訪問介護員:常勤3名、非常勤5名

[その他設備]机、椅子、自転車等

加算減算

m&a株式譲渡か事業譲渡かを選択するポイント

株式譲渡か事業譲渡かの選択には、以下のようなポイントを確認しながら状況に合わせて選択していくことが大切です。

1:全部を譲渡するか一部事業を譲渡するか

株式譲渡の場合、株主が保有株式を譲渡することで、対象会社の法人格のまま相手先へ譲渡することになるため、一部を譲渡するということができません。これに対し、事業譲渡の場合は何を譲渡するのか個別に特定することが出来ます。一部の事業を譲渡したい場合には事業譲渡が基本となります。

また対象会社の事業の一部を会社分割して新しい法人を設立し、その法人の株式を譲渡するという手法を使えば、事業の一部を譲渡することが可能です。

2:再取得が難しい許認可等がないか

事業譲渡の場合、許認可については引き継がれないため、再取得が難しいような許認可がある場合には事業譲渡を採用することは困難です。

株式譲渡を実施する場合は会社の株主が変更となるだけで、会社の介護指定には全く影響がありません。その会社が過去に受けた介護事業者としての指定は、株式譲渡後も変わりなく有効になります。

そのため株式譲渡の場合は、そもそも許認可を引き継げるかどうかは問題にならないため、以前と変わらず介護保険領域の訪問介護や放課後等デイサービス、デイサービス、施設介護などの介護指定も引き継ぐことができます。

事業譲渡の場合、譲渡対象となる介護事業が売り手側企業から買い手側企業へと法人間を移転することになります。そのため許認可は自動的に引き継がれません。

事前に行政と相談をして手続き・スケジュールを確認して合意したうえで、売り手側企業が「廃止届」を提出するのと同時に、買い手側企業が「新設申請」を提出する必要があります。

2:再取得が難しい許認可等がないか

事業譲渡の場合、許認可については引き継がれないため、再取得が難しいような許認可がある場合には事業譲渡を採用することは困難です。具体的には産業廃棄物処理の許認可や酒造の許認可等が挙げられます。

このような再取得が難しい許認可がある場合には、株式譲渡のスキームにした方がよいでしょう。

3:契約の承継同意を得ることが物理的に可能か

事業譲渡の場合、契約上の地位を承継するためにはすべての相手先から同意を得る必要があります。

例えば非常に多くの従業員を抱えている会社や、数多くの取引先との契約があり物理的にすべての相手方から同意を取ることが現実的でない場合には、株式譲渡のほうが都合が良いと言えます。

4:潜在債務や訴訟を抱えていないか

売り手企業が潜在債務や訴訟を抱えており、これが交渉を進める上でネックになるようなケースもあります。このようなケースの場合、株式譲渡であればそのリスクを新しい引継ぎ先が承継することになります。

そのため、このリスクを理由に低い価格を提示されたり、買い手候補からかなり厳しいデューデリジェンスを実施要求されたり、さらには最終契約の段階で表明保証まで求められるケースが考えられます。

このように交渉上、芳しくないような状況であれば事業譲渡というスキームにして、リスクを分断してしまうことも一つの方法として検討しましょう。

介護業界においては、運営指導や監査等で違反を指摘されるようなことが出てきた場合、この違反についても承継することになりますので、この点にも注意が必要です。

5:株主が個人か法人か

個人株主であれば株式の譲渡益については申告分離課税になるので、税率は20.315%です。

これに対して事業譲渡の場合は対象会社にお金が入ってきてしまうため、個人の株主がお金を受け取る際には配当金で受け取るか会社を清算することになります。その際に得た所得は総合課税となってしまうため、住民税を合わせて最大55%となり、非常に高い税率となってしまいます。

法人株主の場合は、事業譲渡した子会社が100%子会社で完全支配関係があれば受け取った配当金は益金不算入となるため、特に課税されません。ただし、事業譲渡した際に出た利益については、もちろんのこと対象会社がその利益に応じた税金を支払うことになりますので注意しましょう。

出典:株式・配当・利子と税|国税庁

介護事業の事業譲渡・事業m&aの注意点

1離職者を出さないようにする

介護事業の事業承継においては、従業員が非常に大きな意味を持ちます。介護業界は従業員の数で売上が左右されることから、従業員が企業価値を決めるといっても過言ではありません。

離職者が増えた事で事業譲渡自体の話がなくなるといった事も珍しくありませんので、話がまとまるまで従業員への通知はふせ、また伝え方にも十分な配慮が必要です。

2資料やデータをまとめておく

買い手側は資料やデータでしか企業価値や購入する、しないを判断することが出来ません。

資料やデータが必要なのはデューデリジェンスだけでなく、売り手側は交渉が開始してからは資料の提出作業に追われることになります。

通常のM&Aに加え、介護業界ならではの『指定通知書』や『ケアマネジメント一連の書類』等も該当になります。

買い手側は『依頼した資料が早く出てくる』=しっかりしていると判断しますし、また資料がいい加減であれば買うという判断が出来ないでしょう。交渉の前に一通りの資料を準備しておくことが大切です。

3再指定が必要になる

事業譲渡により法人が変更になるため、新たに指定の申請を受ける必要があります。

吸収合併・分割に伴う指定の取扱いについては、厚生労働省より以下の通知の中で取り扱いが指定されており、申請業務を簡素化することが可能です。

【厚生労働省通知 介護保険最新情報vol.862】事業所の吸収分割等に伴う事務の簡素化について

4各種契約関係の巻き直しがある

法人の変更となりますので、新たに契約書等の再締結が必要になります。ご利用者様は勿論、リース契約や包括との契約等にも影響しますので、譲渡前に契約関係にある先を取りまとめておくことが必要です。

5利用者に影響がある事を考えて対策を考える

保険給付においてはご利用者様に大きな影響等はありませんが、自費のサービス等は譲渡先によって料金が変更になったり、受け入れていなかったりといった事も想定されます。買い手の選定の際はこれについても確認の必要があります。

6事業譲渡・事業売却には時間がかかることを認識する

先の通り、事業譲渡までは半年から1年程度の時間を要します。この間に廃業を迫られることの無いよう、資金繰りも含めて早期の決断を行う必要があることを念頭に進めないといけません。

また、従業員が企業価値に影響を及ぼすことも忘れてはいけません。

7加算の見直しの確認

指定を申請しなおすと、それまでの実績は無いものとなり、また新たにスタートを切ることとなります。一時的に売り上げが下がることも見込んで買収の計画を立てていく必要があります。

8介護ならではのM&Aに注意する

介護事業のM&Aには、確認すべき書類や取り決めるべき約束に特徴があります。例えば、大きな指摘事項を受けた運営指導(実地指導)の後に改善されることなく事業が存続し、これを承継した場合、改善の責任は承継された先に移ります。

このようなことを知らずに買収に至った場合、大きな返還リスクを伴う事は言うまでもありません。

介護事業のM&Aにおいては、このような専門知識をもった相談先を得ることがとても大切です。

m&aまとめ


    M&Aにおいては希望譲渡価格を算出しても、最終的には交渉で実売価格が決まります。
    そのため、企業価値を高め、希望価格を高く算出しても、実際の価値や期待値などを含めた交渉や、経営者同士の相性、M&A仲介会社の手腕などさまざまな要因が絡みます。

    特に訪問介護のM&Aの場合、設備面での資産が少ないことも多いため、人の価値の向上や加算の取得、実地指導のリスクの排除などに取り組む必要が高まってきます。また仲介会社にご依頼される場合においても介護業界ならではの特性を熟知した会社を探されることをお勧めします。

     

    【参考】2024年に控えている介護報酬改定

    令和4年7月時点で正式に決定しているものは有りませんが、国の予算に深く関わる財務省が議論している内容は以下の通りです。

    財政制度等審議会(2022年5月25日)『歴史の転換点における財政運営』P66~

    この後介護保険・障害者総合支援法の部会で議論を詰めていくこととなりますが、国の予算が無ければ話を進めることも十分に出来ませんので、財務省の示す意向は大きく各審議会に影響を与えることとなります。

    次項より、現在財務省の方で議論されている2024年に向けた内容について解説していきます。

    業務の効率化と経営の大規模化・協働化

    規模別に見ると、規模の大きな事業所・施設や事業所の数が多い法人ほど平均収支率が高い結果となっており、介護分野では主として収入面が公定価格によって規定されるという特徴がありますので、費用面の効率化が最も重要です。

    このことから、備品の一括購入、請求事務や労務管理など管理部門の共通化、効率的な人員配置といった費用構造の改善、さらにはその実現に資する経営の大規模化・協働化が推奨されています。

    また、小規模な法人が他との連携を欠いたまま運営を行うということは、新型コロナウイルスのような新興感染症発生時や災害時において、業務継続も施設内療養の実現もおぼつかなくなってしまう。このため、根本的に介護事業の経営の大規模化・協働化が抜本的に推進されるべきであるとしています。

    介護施設・事業所等の経営状況の把握

    医療・障害の情報公表制度では、経営状況の見える化が義務化されており、この目的は経営の大規模化・共同化を推奨していく動きの後押しをしていくためだと議論されています。

    このことからも、小規模事業所においては『共同化』が大きなポイントとなることは間違いありません。

    利用者負担の見直し

    利用者負担については、2割・3割負担の導入が進められてきましたが、2022年に行われる後期高齢者医療における患者負担割合の見直し等を踏まえ、介護保険サービスの利用者負担も原則2割とすることや2割負担の対象範囲の拡大を図ること、現役世代との均衡の観点から現役世代並み所得(3割)等の改定を図る必要があると議論されています。

    ケアマネジメントの利用者負担の導入等

    居宅介護支援(ケアマネジメント)については、要介護者等が積極的にサービスを利用できるようにする観点から、利用者負担をとらない例外的取扱いがなされてきました。

    しかしながら、介護保険制度創設から 20 年を超えサービス利用が定着し、他のサービスでは利用者負担があることを踏まえれば、2024年から利用者負担を導入することが『当然』であるとされています。

    また、居宅介護支援事業所の約9割が他の介護サービス事業所に併設しており、「法人・上司からの圧力により、自法人のサービス利用を求められた」という経験を見聞きしたケアマネジャーが約4割いるなど、サービス提供に公正中立性の問題が存在することから『介護報酬のために福祉用具だけを位置付けているサービスの報酬を減らす』ことも議論に挙げられています。

    多床室の室料負担の見直し

    地域包括ケアシステムを推奨し、居宅での生活を基本とする概念のもと、これまで施設の室料と光熱費は介護給付費の対象とされてきました。

    これを今後は、居宅と施設の公平性を確保し、どの施設であっても公平な居住費(室料及び光熱水費)を求めていく観点から、給付対象となっている室料相当額について、基本のサービス費用から外す議論がなされています。

    区分支給限度額の在り方の見直し

    制度創設以降、様々な政策上の配慮を理由に、区分支給限度額の対象外に位置付けられている加算が増加していることについて、制度創設時に企図したように、設定された限度額の範囲内で給付を受けることを徹底すべきであり、特に居宅における生活の継続の支援を目的とした加算について区分支給限度額の中に戻すべきだという議論がされています。

    地域支援事業(介護予防・日常生活支援総合事業)の在り方の見直し

    地域支援事業の介護予防・日常生活支援総合事業は、各地方公共団体が高齢者の伸び率を勘案した事業費の上限内で事業を実施し、その枠内で交付金を措置する仕組みとされています。

    多くの地方公共団体がこの上限を超えて総合事業のサービスを提供しているため、今後はこの上限を守る様厳格にルールを徹底していくという事が言われており、2024年の改定を待たず2022年既に運営のガイドラインが見直され、上限を守る様にという通知が行われました。

    軽度者へのサービスの地域支援事業への移行等

    要介護1・2への訪問介護・通所介護についても地域支援事業への移行を検討し、生活援助型サービスをはじめとして、全国一律の基準ではなく地域の実情に合わせた多様な人材・多様な資源を活用したサービス提供を可能にすべきであるという議論が進んでいます。

    軽度者に対する居宅療養管理指導サービス等の給付の適正化

    近年、居宅療養管理指導・訪問看護・訪問リハビリテーションといった医療系の居宅系サービス費用が、総費用や要介護者数の伸びを大きく上回って増加しています。

    少なくとも独歩で家族・介助者等の助けを借りずに通院ができる者などは、居宅療養管理指導費は算定できない」と算定要件が明確化されたことも踏まえ、2024年の改定を待たずに算定要件を満たす請求のみが適切に行われるようにすべきであると言われています。

    介護給付費適正化事業(適正化計画)の見直し

    ケアプラン点検等の実施が位置付けあっれている『介護給付費適正化事業』において、医療費適正化計画と比較すると適正化計画は殊更に費用節減や効率化の観点が乏しいことが問題視されています。

    介護給付費の地域差について、一人当たりの介護給付費を都道府県別に比較すると、居宅サービスの内訳では訪問介護の地域差が最も大きく、地域差の是正には、広域的な要因分析が不可欠であり、都道府県が主体的に市町村の適正化事業の進捗状況の公表など「見える化」を進めることが重要だとされています。

    居宅サービスについての保険者等の関与の在り方

    都道府県が指定権者である居宅サービスのうち、訪問介護・通所介護・短期入所生活介護について、市町村が、都道府県に事前協議を申し入れ、その協議結果に基づき、都道府県が指定拒否等を行う枠組みがありますが、現在は指定の拒否が行われることはほぼ有りません。

    サービス見込み量を超えた場合に、市町村が都道府県への事前協議の申し入れや指定拒否ができるようにし、保険者である市町村が実際のニーズに合わせて端的に地域のサービス供給量をコントロールできるようにすべきだと議論されています。

     

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