この記事では、 介護事業所の廃業を考えたときについてご紹介をします。
目次
令和4年の介護事業者の倒産件数は9月までに100件に達したことが発表されており介護事業所の事業譲渡・承継件数も増えています。
この時期100件に至るのは初めてで、過去最多を更新する可能性が高くなっている状況です。
深刻な人手不足や競争の激化に苦しむ事業者は多く存在していましたが、新型コロナウイルスの大流行を経て、サービスの“利用控え”は以前より緩和されたものの、光熱費や燃料費、食材費などのコストが高騰しています。
ICT化が推奨される中で資金繰りが悪化している介護事業所に新たな投資を行う事は困難で、事業をたたむという選択肢を選ぶ介護事業所、事業譲渡・承継を考える介護事業所が増えています。
同じような意味合いで使用される言葉ですが、経営者が自らの意思で事業所を畳むことを『廃業』といい、事業を継続したいが資金不足または債務超過で継続不可能となった状態を『倒産』といいます。
介護事業の廃業を考えた時の手段は主に以下4点です。
1:親族内承継
2:内部承継
3:外部承継
4:廃業
親族や内部に承継できれば1番良いと捉えることができますが、実際は『ご利用者を近隣の他事業所に振り、廃業を行う』ことが多いのが介護業界の特徴です。
介護は専門職であり、親族が居るからと簡単に引き継げるものではありませんし、一緒に働いている従業員に事業を任せるためには、ある程度明るい見通しがなければ渡せません。人手不足で苦労しているのを身近で見てきた親族は引き継ぎたくない。といった事例も増えてきています。
また、いざ外部承継(M&A)を考えたときには『人が辞めることになって採算が取れなくなった』『経営者が体調を壊し、廃業せざるをえなくなった』等、ギリギリの経営を続けている中で不測の事態が起こり、本来承継できる事業であるにも関わらず、『廃業』を選ぶことになってしまったという事例が後を絶ちません。
また一般的に法人解散に必要な書類としては、主に以下のような書類が挙げられます。
申請書
解散の理由書
社員総会(評議員会)議事録
理事会議事録
議決時点の財産目録・貸借対照表
残余財産の処分に関する事項を記載した書類
残余財産を他に帰属させるときは、相手方の同意書
社員及び役員の名簿
社員全員の印鑑登録証明書
清算人の履歴書・就任承諾書・印鑑登録証
法人履歴事項証明書
法人印鑑登録証
直近の決算書(決算から6か月が経過している場合は、試算表も添付)
現定款・寄附行為
原本証明
廃業手続きは廃業届などの必要書類や費用を準備することから始まります。
これらは専門的な要素が多く、書類作成の段階で膨大な作業が発生するため、清算などの手続きを弁護士や税理士などに代行してもらうのが一般的です。
清算後は残った資産が債権者に分配され、解散・清算確定申告や清算決算報告書の承認を得て、廃業手続きは終了となります。
廃業手続きは関係者各所への連絡や対応が発生し、複数の債務者とのやり取りは精神的に大きな負担がかかるものです。
廃業をトラブルなく無事に終わらせるためには、士業専門家を厳選することがとても大事になります。
また、同時に指定申請を廃止させる手続きや、介護・福祉業界ならではの手続きにも専門的な方の知識が必要になります。
廃業を決めた時点で、会社の財産を債権者に支払う作業を清算といいます。
清算ができる場合は、債権者に迷惑をかけることはありません。しかし清算できない場合、中小企業では経営者が金融機関からの借り入れの保証人になっているケースがほとんどのため経営者が個人の資産を取り崩して対応することが多くなっています。
解散や清算には、登記に数万円程度の費用がかかります。場合によっては、仕業の方への報酬や事務所の原状回復費などが発生すれば、経済的負担も大きくなってしまいます。
承継の場合には、廃業と比べて手続きが簡易的で済むケースが多く、営業権に価値がつき売却できることも多くなります。この営業権の価値により赤字で通常は倒産を余儀なくされるような事業所でも承継が叶うケースあります。
コロナ禍も相まって介護の業界の倒産件数も最多を更新しており、出口戦略としての事業承継を考えなくてはならなくなってきています。
廃業・事業承継を考えるにあたっては経営者にとってはもちろん、ご利用者や従業員、取引先や地域にとってのよりよいカタチとなるように長期的に計画立てて検討していくことが重要となってきます。