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M&A 売却にあたっての実際【訪問介護事業】

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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この記事では、介護業界のM&Aについて実際に売却を考え、仲介業者に問い合わせてみたという方の感想についてご紹介をします。

介護業界について

介護業界について

高齢化の進展とともに要介護認定者数・介護サービス利用者数は速いペースで増加しています。
高齢者人口は今後も着実に増えていくと予想され、介護サービスの需要が拡大していくことは間違いないとされてきました。

社会保障給付費は増加の一途をたどっており、社会保障を支える生産年齢人口(生産活動の担い手となれる人の数)は年々減少しており、『介護』というライフラインを担う介護従事者は未だ『低賃金』と呼ばれ、専門職ながら医療従事者とは大きく待遇が異なります。

岸田内閣になり、『介護従事者の賃金改善』が話題となっていますが、『職員の給与にのみ使用することができる』というお金を得るために、複雑な事務作業を行うための職員を雇い、介護従事者は多少の賃金を得る代わりに経営者が経費をさくというのが実情です。

近年の介護報酬改定は適正化(切り詰め)を基本方針としており、これは今後も継続されます。
また、高齢者・外国人材などの多様な労働力の活用や、ICT・AI・ロボット導入による生産性の向上といった案が進められています。

介護業界のM&A市場とは?

中小企業の経営者平均年齢が60代といわれる中で、介護業界のM&A市場は以下のような特徴があります。

①規模拡大による収益性・効率性向上を目的とした大手企業(既存大手・新規参入大企業)やファンドによる介護事業者の買収

②サービスの多様化・高付加価値化・効率化を目的とした関連業種・異業種の参入

③介護向けICT・AIシステムや介護ロボットを開発する企業への大手企業・ベンチャーキャピタルによる出資

人材が存在することで売上が生まれる業界の特徴から、『採用』という不確実な投資を行うより、M&Aという確実に人材確保が可能な手段を選択するというのが介護業界のM&Aにおける特徴です。

また、介護業界を担う人材は介護に特化した『専門職』で構成されています。

ここに『生産性の向上』を取り入れようと、介護業界も異業種とのM&Aに積極的であるというのも見逃してはいけません。

事業を『やめたい』と思った時の手段について

 

事業をやめたいと思った時の手段について

介護事業をやめたいと思った時の手段は主に以下4点です。

1:親族内承継

2:内部承継

3:外部承継

4:廃業

親族や内部に承継できれば1番良いと捉えることができますが、実際は『ご利用者を他事業所に振り、廃業を行う』ことが多いのも介護業界の特徴です。

介護は専門職であり、親族が居るからと簡単に引き継げるものではありませんし、一緒に働いている従業員に事業を任せるためには、ある程度明るい見通しがなければ渡せません。

いざ外部承継(M&A)を考えたときには『人が辞めることになって採算が取れなくなった』『経営者が体調を壊し、廃業せざるをえなくなった』等、ギリギリの経営を続けている中で不測の事態が起こり、本来売却できる事業であるにも関わらず、『廃業』を選ぶことになってしまったという事例が後を絶ちません。

中、長期的に計画立てて事業承継を考えることは、経営者にとってはもちろん、ご利用者や従業員、取引先や地域にとっても大切な事です。

外部承継(M&A)とは

M&A(エムアンドエー)とは、企業の合併買収のことで、2つ以上の会社が一つになる『合併』、ある会社が他の会社を買ったりすること『買収』です。M&Aの広義の意味では『提携』までを含める場合もあります。

適切な企業間のM&Aは、買い手、売り手の各関係者に大きなメリットを与えます。

「後継者問題の解決」や「業界再編に備えた経営基盤の強化」、「事業領域の拡大」などの経営者の課題解決の実現を可能にし、「存続や発展」をダ実現させるための方法です。

赤字事業でも大丈夫

介護事業は人材不足が深刻です。

赤字でも『人に価値』があれば、買い手が見つかる可能性があります。

大切なのは『買い手にとって必要な人材か』です。

『資格をもっているから』『長く勤めているから』『素直だから』というのは必ずしも『買い手にとって価値』ではありません。

発展のために必要な、価値のある人材かどうかが大切です。

仲介業者は何をしてくれるのか

仲介業者は何をしてくれるのか

M&Aを行う際は、仲介企業が仲介を行う事が多いです。

この仲介業者は介護企業に関する知識があるわけではありませんので、『一般のM&Aの際に行われるデューデリジェンスの書類』を整えるお手伝いは出来ますが、介護に特化した書類の準備や細かい相談を聞くことは出来ません。

一般の事業に照らし合わせて企業価値を算出し、いち早く買ってくれる、企業風土と合うと思われる会社を選定し、売り手に紹介します。

実際に問い合わせをした方の声

先日お会いした方にM&A仲介業者に問い合わせした結果を伺う機会がありましたので、以下ご紹介します。

『訪問介護の事業の承継を考えたとき、真っ先にM&A仲介業者が浮かんだので4社ほど問い合わせをしてみました。売上と収益はトントンで、赤字ではないけれど利益も大きく出ていません。

利用者数は一定あり、職員の質も高いので1,500万円~2,000万円で売れるように育てたいのが希望です。

ーー仲介会社問い合わせ結果ーー

1社目:わが社の現在の売却価格が小さすぎで、グループ内のマッチングサイトを紹介された。

2社名:無料査定をおこなったが、その後連絡すらない状態。

3社目:連絡が来て、話は1度聞いてくれたものの、その後の約束もなく、今も連絡がない状態。

4社目:連絡までに3日ほどかかりましたが、1番丁寧でした。気になるのは“売りましょう” “いつ売りますか”と3日に1回追われていること。今すぐ売りたいのではなく、計画的に高値で売りたいのが希望なのに。

結局、流れ作業で売ってくれようとするのはまだマシで、相手にもされず高値で売れる事業しか相手にしないのが見え見えで、信頼が生まれることはなく、今もどこに相談したらいいかがわからない。』

 

最後に

介護業界で働く従事者は『介護』という世界において専門職です。

業界未経験者が実施する企業価値の査定、買い手との交渉は『適正な取引といえるのか』疑問を抱くのは当たり前のことだと思います。

次回は、どのような仲介業者が『良い』のかをご紹介します。

お役立ち資料:介護事業所の売却をご検討中の方に

介護事業所の売却について、失敗例を紹介しています。
売却を成功に導くための解決策についても解説しているので、事業所の売却をご検討中の方はご一読ください。
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