この記事では、 介護のM&Aにおけるデューデリジェンスの注意点についてご紹介をします。
通常のデューデリジェンスでは、決算書をはじめ経理、人事、労務周り、不動産や紛争関係等の書類を確認します。
一方で介護事業の場合、介護保険法及び厚生省令に則った業務運用を行っているかを確認する必要があります。
実際の業務運用書類を確認しなければ、潜在リスクやそのリスク額を把握する事が出来ず、どのようなリスクで、いくらの返還額が想定されるのかを把握しなければ、買収後に大きな損害を受ける可能性も潜んでいます。
先日もマスク氏によるツイッター社の買収がニュースにもなっていましたが、スパムアカウントの数量の真偽についての確認ができなかったことが買収から撤退する理由だと報道されています。それを身近な介護事業所の事例に置き換えると以下のようなケースが該当します。
①介護報酬や加算など業務運営の書類が出せない
そもそもこれらの書類が準備できない場合は、『違反した運営を行っている』という状況です。指定の取り消し等重い処分を受けるリスクが有りますので、買収はこれらを留意して行わなければいけません。
②人材に関する書類が出せない
①と同様に省令での定めがあり、職責ごとにその保有すべき資格が定められており、これを持たない従業員が介護サービスを実施しても介護報酬を得る事は出来ません。しかしながら、不正請求のニュースは絶えず報道されており、不正に報酬を得ているケースも有りますので、資格に関する書類が適正かを確認する必要があります。
いずれも確認できない場合、買収候補がいたとしても頓挫する原因となるケースです。
M&Aを行う際は、仲介会社が仲介を行う事が多くなります。介護の業界理解がない仲介会社ですと、通常のデューデリジェンスのアドバイスはあっても、先述のような介護に特化した書類や加算の確認をされないというお話もよく伺います。介護に精通した仲介会社を選び、なにを準備すべきか、なにを確認すべきかアドバイスをもらったうえで交渉にのぞむとよいでしょう。
運営指導対策や返還リスクへの対応などはM&Aに関わらずとも必要ですが、中小の介護事業所のほとんどが十分な教育やノウハウなく事業をスタートさせ、売り上げを立てる事に注力してきています。
現在までそのような処分が下っていないから『大丈夫』と安心されることのないよう、ここまで幸い処分が下る様な出来事がなかっただけの可能性を探る癖付けをされることをお勧めします。