この記事では、 介護業界M&Aの売手・買手のそれぞれの注意点についてご紹介をします。
目次
まず売手側の経営者が売却を考えらた時に意識されるのは、
・ご利用者へのサービスの継続させること
・従業員の雇用を守ること
一方で売却までの近い未来のことを重視して物事を考えるため以下のような意識も生まれます。
・自分が育ててきた事業を高く売りたい
・引退を決めたので早く売りたい
・実地指導対策への意識が薄れる
・安全に買いたい
・売上や成長が見込めるか(稼働・売上・加算)
・従業員の退職・簿外債務等リスクはないか
・実地指導・返還のリスクはないか
買手側は以上のような買収後の数年先の未来のリスクや事業の成長見込みを重要視します。
そのためミスマッチが起こってしまうことや、介護業界特有の統合後の実地指導での返還などのリスクにより売り手が出す希望よりも譲渡価格が下がるようなケースも多く見受けられます。
先述のように譲受ける側は譲受後の運営について、軌道に乗るまでのスピードやコストを考えますが、売ると決めた側はもう手放すからと記録管理等がおざなりになってしまいがちなのも事実です。
例年指定取り消しや返還の事例も多くなっております。買収を検討される際には売上規模や価格だけでなく、潜んでいるリスクや成長性など企業価値を正しく理解、見定めるをことが必要です。
また法令遵守の面においてはデューデリジェンスでの確認はもちろんのこと、統合後の記録書類の管理や運用体制に注力していくことになりますのでその見通しが立つのかどうかも見定める重要なポイントとなります。
またM&Aを行う際は、仲介会社が仲介を行う事が多いくなります。
仲介会社は介護業界に関する知識が豊富なケースは多くないため、『一般のM&Aの際に行われるデューデリジェンスの書類』を整えるお手伝いは出来ますが、『介護に特化した書類』の支援や理解は乏しいのが実情です。
介護に特化した業務運用書類が準備出来ない状態であれば、提示されている売上すべてが返還の対象となり得る状態ですので、このような企業を買収する事には大きなリスクを伴います。
また、このような状態で働いてきた職員は、買収先でコンプライアンスを守る業務を指示された場合に大きなギャップを感じ、退職へとつながる可能性も生じてしまいます。
介護事業の買収目的の大部分を占める『人材の確保』にも、大きな影響を及ぼすことも忘れてはいけません。
実地指導対策や返還リスクへの対応などはM&Aに関わらずとも必要ですが、中小の介護事業所のほとんどが十分な教育やノウハウなく事業をスタートさせ、売り上げを立てる事に注力してきています。
現在までそのような処分が下っていないから『大丈夫』と安心されることのないよう、ここまで幸い処分が下る様な出来事がなかっただけの可能性を探る癖付けをされることをお勧めします。