お泊りデイサービスは、利用者が日中のデイサービスを受けたあとに、そのまま施設に宿泊することができる介護保険外の宿泊サービスで、介護者の介護負担を軽減することを目的として提供されています。
このお泊りデイサービスをうまく利用することで、利用者・介護者ともに多くのメリットがあります。
この記事では、お泊りデイサービスの具体的なサービス内容や利用方法、ショートステイとの違い、注意点などを詳しく解説します。ぜひ、最後までお読みください。
目次
お泊りデイサービスとは、デイサービス(通所介護)ができる施設で、高齢者が日中のサービスを受けた後、そのまま施設に宿泊することができる介護保険外の宿泊サービスです。
このお泊まりデイサービスは、夜間における家族の介護負担を減らすなど、緊急または短期間の宿泊ニーズに対応することを目的にサービスが展開されています。
利用者としては、中等度の要介護度・中重度の認知症の方がお泊りデイサービスを多く利用しています。
短期間の宿泊をおこなうサービスとして、最も一般的に利用されるサービスの1つとしてショートステイがあります。
ショートステイは短期入所生活介護とも呼ばれており、施設に短期間宿泊し、介護や生活支援を受けられるサービスのことです。
お泊まりデイサービスとショートステイは、短期間の宿泊を提供することは同じ目的ですが、下記のように異なる点があります。
お泊りデイサービス | ショートステイ | |
サービスの目的 | 日中のデイサービス利用者が、夜間も滞在できるようにする | 一時的な介護や家族の休息を目的として、短期間の滞在を提供する |
サービス内容 |
など |
など |
利用時間 | デイサービスの延長として夜間も含む | 数日~数週間までの期間 |
提供場所 | デイサービス施設内 |
など |
対象者 | デイサービスの利用者中心 | 要介護認定を受けており、下記のような場合に利用ができる
など |
介護保険の適用有無 | 全額自己負担 | 介護保険適用 |
費用 | 比較的低い | 比較的高い傾向 |
利用の手続き | 重要事項の説明を受け、契約をおこなう | 下記の手続きをおこない、事前に施設と契約する
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サービス提供者 | 介護職員または看護職員が1人以上 *デイサービスのスタッフであること *食事の提供を行う場合は、食事の介助などに必要な人数は確保が必要 |
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緊急時の対応 | 医療サービスは基本的に提供されない | 基本的に医療スタッフが常駐 |
*¹常勤換算(うち1人は常勤※利⽤定員が20人未満の併設事業所を除く)
*²利⽤定員が40人以下の事業所は、一定の場合は栄養士を置かないことができる
お泊りデイサービスの運営基準は、平成27年に厚生労働省により下記のとおり定められています。
人員基準 | |
職員配置基準 | 宿泊サービスの提供を行う時間帯を通じて、夜勤職員として介護職員または看護職員(看護師・准看護師)を常時1人以上確保すること *介護職員については、介護福祉士の資格を有する者、実務者研修や介護職員初任者研修を修了した者であることが望ましい |
責任者の配置 | 宿泊サービスにかかわるスタッフの中から責任者を決めること |
利用定員基準 | 日中のデイサービス利用定員の、2分の1以下かつ9人以下とすること |
設備基準 | |
利用定員 |
*相部屋の場合は、プライバシーを確保するために、パーティションや家具などで利用者同士の視線の遮断を確保すること |
床面積 | 宿泊室は1部屋あたり最低7.43㎡(4畳半)以上の広さが必要 *相部屋の場合は、7.43㎡に相部屋利用者の数を乗じた面積以上の広さが必要 |
安全基準 | |
消防法の遵守 | 消防法によって定められている、スプリンクラー・火災報知器・消防器などの防火設備を設置しておく必要がある |
防災対策 |
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緊急対応 |
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一般的なお泊まりデイサービスでは下記のようなサービスがおこなわれます。
お泊まりデイサービスを利用した場合は、基本的に当日の夕食と翌日の朝食が提供されます。
厚生労働省によると、お泊まりデイサービスの食事提供については下記のように定めされています。
- 栄養並びに利用者の心身の状況および、嗜好を考慮した食事を用意する
- 適切な時間に食事を提供する
- 利用者が可能な限り離床して、食堂で食事を摂ることを支援する
お泊りデイサービスでは、栄養バランスのとれた食事内容が提供されるほか、噛む力・飲み込む力に合わせた介護食、塩分・糖分などを制限した食事を提供する場合もあります。
なお、食費はお泊まりデイサービスの利用料に含まれていないので、別途自己負担となり、施設によって異なりますが、1食500円前後が多い傾向です。
着替え・排せつ・入浴などの基本的な生活援助もお泊りデイサービス中におこなわれるサービスの内容です。
具体的な内容としては、利用者自身で着替えができない場合は、就寝前や起床後の着替えを援助します。
また、着替えと同じように利用者自身で排せつの動作が難しい場合は、一人ひとりの状態を確認しながら、必要に応じてトイレ誘導・排せつの援助・パッドやオムツなどの交換をおこないます。
基本的には着替え・排せつがお泊りデイサービス時の生活援助ですが、入浴までおこなう場合もあります。入浴は日中の利用時間帯に済ませることが一般的ですが、施設のスタッフ体制によっては、夜間の入浴が可能です。
夜間の入浴を希望される場合には、施設やケアマネジャーに確認してみましょう。
また、就寝準備、起床時の援助として洗面・歯磨き(口腔ケア)などもサービスの対象です。
お泊りデイサービスの利用では、下記のようなメリットがあげられます。
お泊りデイサービスは、基本的に日中利用しているデイサービスの施設に宿泊するため、慣れた場所に泊まれることができます。
短い期間でもいつもと違う施設に宿泊することで、環境の変化が利用者に大きなストレスを与えてしまうこともあり、場合によってはこのストレスが原因で体調不調になってしまうかもしれません。
しかし、慣れた場所やスタッフであれば、利用者自身も精神的負担も少なく、安心感をもって過ごせます。また、家族もいつもと同じ施設であれば安心して宿泊をお願いすることもできます。
お泊りデイサービスの目的の1つとして、介護者の休息もあります。いつも利用しているデイサービスを利用するのであれば、日中のデイサービスからそのまま宿泊することができるので、その時間はゆっくり介護者自身の時間を過ごすことができます。
お泊りデイサービスの利用者は中等度の要介護度・中重度の認知症が多くなっています。
そのため、以前に比べて自宅で過ごす時間が長くなり、家族以外と社会的交流を持つ機会が少なくなる傾向です。
社会的な交流が少なくなると、動くきっかけがなくなったり、認知症になるリスクを高めたりするなど多くのデメリットがありますが、お泊りデイサービスを利用することで、家族以外と社会的な交流を持てるため身体機能や認知症の低下の予防が期待できます。
お泊りデイサービスは、日中のデイサービスの利用とセットで宿泊の予約できる施設が多く、申し込みができる人が限定されていることが多いため、ショートステイなどのサービスより予約が取りやすい傾向です。
ショートステイなどは空き状況が少ないため、希望通りの日程で予約が取りにくかったり、急な予定変更が難しかったりしますが、お泊まりデイサービスは、介護者の急な予定変更などにも柔軟に対応できることが多いため、介護者にとっても、外出など諸事情に柔軟に対応してもらえるので心強いサービスです。
実際にお泊りデイサービスを利用したい場合は下記のような方法があります。
介護保険を取得しており、ケアマネジャーと契約を結んでいる場合は、そのケアマネジャーにお泊まりデイサービスをおこなっている施設を紹介してもらいましょう。
ケアマネジャーは現在利用している介護サービスだけでなく、さまざまなサービス事業者の紹介や仲介役もおこなっているため、利用者ごとに合った施設を見つけてくれるはずです。
ケアマネジャー以外でも、インターネット・ホームページ・パンフレットなどから施設の情報を見つける方法もあります。
施設のホームページを見れば、お泊りデイサービスの実施有無だけでなく、サービス内容や費用などの詳細を知ることができるため、利用者や家族の希望に沿った施設をゆっくり探せます。
施設を見つけた後は、可能であれば見学・体験利用をおこなって、実際の雰囲気をつかみましょう。
お泊りデイサービスはさまざまなメリットがありますが、下記の点には注意が必要です。
厚生労働省からは、宿泊期間について明確なガイドライン規定は定められていませんが、お泊まりデイサービスは原則的に緊急時または短期的な利用を想定しています。
実際、自治体によっては利用できる日数の上限が設定されている場合もあり、最大30日前後が多い傾向なので利用前には上限日数を確認しましょう。
確認した結果、長期滞在や連泊を希望するものの、上限日数を超える場合は、ショートステイなど他の介護サービスの利用を検討することが重要です。
ターミナルケアとは、余命がわずかな方が穏やかな時間を過ごすために、看護・介護的なケアをおこなうことで、終末期医療ともいわれています。
ターミナルケアの期間は、一般的に3〜6ヵ月程度ですが、お泊りデイサービスは短期間の利用が前提なため長期間の滞在や、本格的な医療処置が難しいため、ターミナルケアには基本的に対応していません。
ショートステイなどのサービスは介護保険の対象になるため、自己負担が1〜3割に抑えられます。一方、お泊まりデイサービスは介護保険適用外のため、全額自己負担です。
1泊の利用料金は、3,000〜5,000円程度が一般的ですが詳細の費用は事前に各事業所へ確認しましょう。
お泊りデイサービスは、デイサービス利用者が夜間も施設に、そのまま宿泊できる介護保険外のサービスです。
お泊りデイサービスは、家族の介護負担を軽減するために提供されており、特に中等度の要介護度や中重度の認知症を持つ高齢者にとって有効です。
メリットとしても多く、利用者は慣れた環境で食事の提供や生活援助がおこなわれるため、日常生活の延長として利用できるだけでなく、家族も介護から一時的に解放されることで、リフレッシュする機会が得られます。
また、お泊りデイサービスは予約が取りやすい傾向があるため、急な予定変更にも柔軟に対応でき、介護者にとって心強いサービスです。
ただし、介護保険の適用外で全額自己負担となるため、利用時の費用は事前に確認しましょう。また、長期滞在やターミナルケアには対応していないため、必要に応じて他の介護サービスと併用することが重要です。
介護者の負担軽減のために、短期間のリフレッシュ機会を入れたい場合などは、今回の内容をきっかけにお泊りデイサービスの利用を1度ご検討ください。