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介護事業 買収のメリットとデメリット【介護業界だから知っておくべき事とは】

東京商工リサーチが7日に公表した新たな調査レポートでは、令和4年度の介護事業者の倒産件数が9月までに100件に達したことが発表されており介護事業所の事業譲渡・承継件数も増えています。

この時期100件に至るのは初めてで、過去最多を更新する可能性が高くなっている状況です。

深刻な人手不足や競争の激化に苦しむ事業者は多く存在していましたが、新型コロナウイルスの大流行を経て、サービスの“利用控え”は以前より緩和されたものの、光熱費や燃料費、食材費などのコストが高騰しています。

ICT化が推奨される中で資金繰りが悪化している介護事業所に新たな投資を行う事は困難で、事業をたたむという選択肢を選ぶ介護事業所、事業譲渡・承継を考える介護事業所が増えています。

業買収の大きな目的は「競争力の強化」です。自社が抱えている短所を、その分野で長所を持つ企業の買収によって補強し、市場での競争力を強化します。

介護事業の買収を考えられている場合、多くは現在存在する事業とのシナジーを見込んでいらっしゃるはずです。

介護業界らなではの業界特徴や留意すべき点を知ることで、今一度見込んでいた通りのシナジーが見込めるかを検討しましょう。

【事業譲渡に関する記事】

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企業買収と合併の違い

企業買収と合併は、どちらもM&Aの手法の一つです。しかし、この2つは異なるものです。

合併とは?

2つ以上の会社を統合して1つの会社にする企業再編を指します。
合併によって消滅する会社の権利義務は、すべて合併後に存続する会社に引き継がれます。既存の会社が他社を合併して存続会社として残す場合は「吸収合併」と言い、新設した会社を存続会社として既存の会社をすべて吸収させてしまう場合は「新設合併」と言います。

企業買収とは?

合併のように企業同士が統合されて一つになるわけではありません。会社が統合されるのではなく経営権が移動する点に違いがあります。

中小企業の企業買収で最も活用されている株式譲渡では、買収する側も、買収される側も消滅することはありません。買収によって経営権が買収側の企業に移動しますが、買収される側もグループ企業の一員としてこれまでと同様に法人格を有したままで企業活動を継続します。

企業買収と完全子会社化の違い

株式会社はその株式をどれくらい保有しているのかに応じて、以下の権利を株主に付与しています。

買収側の持株比率が3分の2を超えた段階で被買収企業の経営権を完全に掌握できるため、経営権の掌握を目的とする企業買収であればすべての株式を取得する必要はありません。

一方、「完全子会社化」とは親会社が子会社の発行済株式の100%を保有している状態を指します。

 

株式譲渡と事業譲渡 どちらを選ぶか?

介護の事業を買収する際、『株式譲渡』と『事業譲渡』のどちらが良いかというご相談を頂きます。ここでは、それぞれのメリットデメリットをご紹介させて頂きます。

株式譲渡とは

株式譲渡とは、譲り渡し側の株主が譲り受け側となる企業に対して保有する対象会社の発行株式を譲渡する手法のことをいいます。株式譲渡は株主が入れ替わるだけで、会社そのものに変更はありません。

株式譲渡では、原則として対象会社の資産負債、従業員、契約関係、許認可関係のすべてを、譲り受け側が引き継ぐこととなります。

株式譲渡は株式を譲渡して株主を変更するというシンプルな方法であるため、事業譲渡と比較すると手続きが簡単であることが特徴であり、株主が個人の場合には、所得税の申告分離課税に該当するため、譲渡益の約20%に課税されます。総合課税であれば利益に対して最大で約55%の税金が課税されることと比較して、税制面でもメリットが大きいと言えます。

出典:中小M&Aの主な手法と特徴 |経済産業省

出典:No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)|国税庁

 

事業譲渡とは

事業譲渡とは、対象会社の事業の全部または一部を買い手に譲渡する手法です。株式譲渡とは異なり、会社の法人格すべてを引き継ぐのではなく、資産や負債等を個別に特定して引き継ぐことになります。

そのため、債権債務や従業員との雇用関係など、相手方がいる契約関係は当然に承継されるものではなく、相手方の同意を取ったり契約の再締結を行う必要があります。

引き継ぐ対象を特定することができるという上記の性質を生かし、買収目的として都合のよくないもの(例えば訴訟で係争中の案件等)を分断して条件交渉を有利に進められるといった点がメリットです。

また、事業譲渡の場合、譲渡価格と純資産の差額がのれんとして計上されるため、買い手企業にとっては、のれんの償却費用による節税のメリットを受けることができます。

出典:中小M&Aの主な手法と特徴 |経済産業省

株式譲渡か事業譲渡かを選択するポイント

株式譲渡か事業譲渡かの選択には、以下のようなポイントを確認しながら状況に合わせて選択していくことが大切です。

1:全部を譲渡するか一部事業を譲渡するか

株式譲渡の場合、株主が保有株式を譲渡することで、対象会社の法人格のまま相手先へ譲渡することになるため、一部を譲渡するということができません。これに対し、事業譲渡の場合は何を譲渡するのか個別に特定することが出来ます。一部の事業を譲渡したい場合には事業譲渡が基本となります。

また対象会社の事業の一部を会社分割して新しい法人を設立し、その法人の株式を譲渡するという手法を使えば、事業の一部を譲渡することが可能です。

2:再取得が難しい許認可等がないか

事業譲渡の場合、許認可については引き継がれないため、再取得が難しいような許認可がある場合には事業譲渡を採用することは困難です。

株式譲渡を実施する場合は会社の株主が変更となるだけで、会社の介護指定には全く影響がありません。その会社が過去に受けた介護事業者としての指定は、株式譲渡後も変わりなく有効になります。

そのため株式譲渡の場合は、そもそも許認可を引き継げるかどうかは問題にならないため、以前と変わらず介護保険領域の訪問介護や放課後等デイサービス、デイサービス、施設介護などの介護指定も引き継ぐことができます。

事業譲渡の場合、譲渡対象となる介護事業が売り手側企業から買い手側企業へと法人間を移転することになります。そのため許認可は自動的に引き継がれません。

事前に行政と相談をして手続き・スケジュールを確認して合意したうえで、売り手側企業が「廃止届」を提出するのと同時に、買い手側企業が「新設申請」を提出する必要があります。

2:再取得が難しい許認可等がないか

事業譲渡の場合、許認可については引き継がれないため、再取得が難しいような許認可がある場合には事業譲渡を採用することは困難です。具体的には産業廃棄物処理の許認可や酒造の許認可等が挙げられます。

このような再取得が難しい許認可がある場合には、株式譲渡のスキームにした方がよいでしょう。

3:契約の承継同意を得ることが物理的に可能か

事業譲渡の場合、契約上の地位を承継するためにはすべての相手先から同意を得る必要があります。

例えば非常に多くの従業員を抱えている会社や、数多くの取引先との契約があり物理的にすべての相手方から同意を取ることが現実的でない場合には、株式譲渡のほうが都合が良いと言えます。

4:潜在債務や訴訟を抱えていないか

売り手企業が潜在債務や訴訟を抱えており、これが交渉を進める上でネックになるようなケースもあります。このようなケースの場合、株式譲渡であればそのリスクを新しい引継ぎ先が承継することになります。

そのため、このリスクを理由に低い価格を提示されたり、買い手候補からかなり厳しいデューデリジェンスを実施要求されたり、さらには最終契約の段階で表明保証まで求められるケースが考えられます。

このように交渉上、芳しくないような状況であれば事業譲渡というスキームにして、リスクを分断してしまうことも一つの方法として検討しましょう。

介護業界においては、運営指導や監査等で違反を指摘されるようなことが出てきた場合、この違反についても承継することになりますので、この点にも注意が必要です。

5:株主が個人か法人か

個人株主であれば株式の譲渡益については申告分離課税になるので、税率は20.315%です。

これに対して事業譲渡の場合は対象会社にお金が入ってきてしまうため、個人の株主がお金を受け取る際には配当金で受け取るか会社を清算することになります。その際に得た所得は総合課税となってしまうため、住民税を合わせて最大55%となり、非常に高い税率となってしまいます。

法人株主の場合は、事業譲渡した子会社が100%子会社で完全支配関係があれば受け取った配当金は益金不算入となるため、特に課税されません。ただし、事業譲渡した際に出た利益については、もちろんのこと対象会社がその利益に応じた税金を支払うことになりますので注意しましょう。

出典:株式・配当・利子と税|国税庁

介護事業の事業譲渡・事業売却の注意点

●離職者を出さないようにする

介護事業の事業承継においては、従業員が非常に大きな意味を持ちます。介護業界は従業員の数で売上が左右されることから、従業員が企業価値を決めるといっても過言ではありません。

離職者が増えた事で事業譲渡自体の話がなくなるといった事も珍しくありませんので、話がまとまるまで従業員への通知はふせ、また伝え方にも十分な配慮が必要です。

●資料やデータをまとめておく

買い手側は資料やデータでしか企業価値や購入する、しないを判断することが出来ません。

資料やデータが必要なのはデューデリジェンスだけでなく、売り手側は交渉が開始してからは資料の提出作業に追われることになります。

通常のM&Aに加え、介護業界ならではの『指定通知書』や『ケアマネジメント一連の書類』等も該当になります。

買い手側は『依頼した資料が早く出てくる』=しっかりしていると判断しますし、また資料がいい加減であれば買うという判断が出来ないでしょう。交渉の前に一通りの資料を準備しておくことが大切です。

●再指定が必要になる

事業譲渡により法人が変更になるため、新たに指定の申請を受ける必要があります。

吸収合併・分割に伴う指定の取扱いについては、厚生労働省より以下の通知の中で取り扱いが指定されており、申請業務を簡素化することが可能です。

【厚生労働省通知 介護保険最新情報vol.862】事業所の吸収分割等に伴う事務の簡素化について

●各種契約関係の巻き直しがある

法人の変更となりますので、新たに契約書等の再締結が必要になります。ご利用者様は勿論、リース契約や包括との契約等にも影響しますので、譲渡前に契約関係にある先を取りまとめておくことが必要です。

●利用者に影響がある事を考えて対策を考える

保険給付においてはご利用者様に大きな影響等はありませんが、自費のサービス等は譲渡先によって料金が変更になったり、受け入れていなかったりといった事も想定されます。買い手の選定の際はこれについても確認の必要があります。

●事業譲渡・事業売却には時間がかかることを認識する

先の通り、事業譲渡までは半年から1年程度の時間を要します。この間に廃業を迫られることの無いよう、資金繰りも含めて早期の決断を行う必要があることを念頭に進めないといけません。

また、従業員が企業価値に影響を及ぼすことも忘れてはいけません。

●加算の見直しの確認

指定を申請しなおすと、それまでの実績は無いものとなり、また新たにスタートを切ることとなります。一時的に売り上げが下がることも見込んで買収の計画を立てていく必要があります。

●介護ならではのM&Aに注意する

介護事業のM&Aには、確認すべき書類や取り決めるべき約束に特徴があります。例えば、大きな指摘事項を受けた運営指導(実地指導)の後に改善されることなく事業が存続し、これを承継した場合、改善の責任は承継された先に移ります。

このようなことを知らずに買収に至った場合、大きな返還リスクを伴う事は言うまでもありません。

介護事業のM&Aにおいては、このような専門知識をもった相談先を得ることがとても大切です。

加算減算まとめ

介護業界における後継者問題は深刻になってきています。

このような中で、多くの方が選ばれるのは『廃業』であり、ご利用者様と従業員は正式な契約で引き継がれる事はなく、『口約束』のみの引継ぎとなっており、これまでの業務をはじめとする業務のやり方、給与形態、受けられるサービス内容等が継続出来ずにトラブルに発展するといった事が起きています。

経営者にとっても、ご利用者様にとっても、従業員にとってもこれまでの日々はかけがえのない時間です。

関わる全ての人がより幸せだと感じれる未来にいくために、最善の方法が何なのかを見極める事、これが経営者の大切な最後の仕事だと言えます。

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