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訪問介護のM&A 買収・売却の流れ

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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この記事では、 訪問介護のM&A 買収・売却の流れについてご紹介をします。

訪問介護のM&Aの流れ

訪問介護のM&Aの流れ

訪問介護事業における、一般的なM&Aの流れは以下の通りです。

1:相談

仲介会社へ買収・売却の相談を行います。ここでは、事業規模や売却の理由等の確認があります。

2:契約

秘密保持や仲介にあたっての契約を取り交わします。この時点では、他の仲介会社に依頼をしないこと等、買収・売却を進めるために誓約が有るかを確認する必要があります。

3:相手先の募集

買収・売却の価額も含めた諸条件の摺り合わせをした後に、匿名での概要書を仲介会社が作成し、買手・売手の募集が開始します。

4:マッチング

売手候補の情報をもとに買手候補が、概要書を基に買収の検討を進めるケースが一般的です。買手が買収を進めたいと仲介会社へ依頼し、秘密保持契約が締結されます。秘密保持契約の締結の後、買手側に詳細な資料が開示され、具体的な検討に入っていきます。

5:トップ面談

マッチングを経て具体的な検討を進めたい買い手候補が、実際に売り手企業と面談を行い、買収を行うか否かの判断を判断するために面談を行います。

6:意向表明・基本合意

トップ面談の後に、買手候補が話を進める場合に、「価額・スケジュール・諸条件」をどのように考えているかを記載した、意向表明書を提出します。
複数の買手候補より意向表明書が出された場合は、どの買手候補に売却をするのか、このタイミングで決定し、諸条件を定めた基本合意を締結することとなります。

7:買収監査(デューデリジェンス)

買手候補は、売手企業が提出した資料が適切かどうか、判断する検証を行います。
主には、財務・法務・労務が中心となりますが、介護企業の場合においては、人員基準、設備基準、運営基準、介護報酬算定が適切かの資料が求められることとなります。

8:最終調整

買収監査の後、買い手側が買収によって大きなリスクが無いと認めた場合、最終的な条件を踏まえた譲渡契約を締結します。

9:従業員、関係者への周知

買収が決定した後に従業員や関係者へ説明を行います。基本的には、最終調整が済むまで従業員への周知は行わない事が基本です。

10:譲渡実行

売却価額の支払いは、この際に行われます。また、仲介業者が手数料の発生もこの時点で行う事となっています。

M&A時に売手・買手が互いに注意したいリスク

介護ならではのリスク

通常のデューデリジェンスでは、決算書をはじめ経理、人事、労務周り、不動産や紛争関係等の書類を確認しますが、介護事業を買収する際は追加で介護保険法及び厚生省令に則った業務運用を行っているかを確認します。

介護事業を運営する企業の中小企業では、介護業務以外に手を避ける人材が配置できず、コンプライアンスを遵守して業務運用を行えている事業所は稀です。教育も儘ならない状態で法令の知識を持つ人材はおらず、日々の作業をこなすためのサポートとして専門知識のない事務員を配置しているのが現状です。

この状態で売り上げをあげてきた企業は、以下の記事にもあるように実地指導においてその売上すべてが返還となり得るリスクを抱えていると言っても過言ではありません。

【訪問介護の実地指導】介護報酬に関する指摘理由と指摘事項|令和4年最新版 

 

まとめ

    以下2点に関しては、売手買手の双方にとってリスクになります。

    ①介護に特化した業務運営の書類があるか

    ②人材に関する書類があるか

    買手にとっては買収後の返還のリスク、売手にとっては譲渡価格が下がってしまうリスクとなります。

    実地指導では、指摘を受けて数百万円〜数千万円の返還を求められている例もありますので、甘くみてはいけません。算定誤りが原因で不正請求と判断されることもあるため、日々の適切な運用が求められます。

    訪問介護のM&Aにおいても日々の適切な運用ができているか、確認しながら進めていくことをお勧めします。