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成功事例から考える地域包括ケアシステムの概要とメリット

2024-01-17

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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地域包括ケアシステムは今後高齢化が進む国内において非常に重要なシステムです。今回は、地域包括ケアシステムの理解を深めるとともに、実際の成功事例まで紹介します。

ぜひ最後までお読みください。

地域包括ケアシステムとは?実施の目的や構成要素を解説

今後、国内において地域包括ケアシステムの構築は重要です。ここでは、地域包括ケアシステムの概要・要素について紹介します。

地域包括ケアシステムとは

団塊の世代が75歳以上となる2025年を目安に、重度な要介護状態になってしまっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで継続できるよう、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体的に提供されるシステムのことを地域包括ケアシステムといいます。

今後の国内の高齢者人数は増加し、それに伴い要介護認定を受ける人も同じように増加することが予測されています。その一方で、要介護者を支える介護職員数は大きく不足し、既存の介護保険サービスだけでは高齢者を支え切れない状況になりつつあります。

このような背景から、公的なサービスだけでなく「地域」の力を活用しながら高齢者を支えるため、2014年に「医療介護総合確保推進法」が施行され、「地域包括ケアシステム」の構築を厚生労働省が全国的に推進するようになりました。

なお、地域包括ケアシステムについては以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせて参考にしてください。
令和5年!いまさら聞けない地域包括ケアシステムとは?

参考

内閣府「第1章 高齢化の状況(第1節 1)」

経済産業省「将来の介護需給に対する高齢者ケアシステムに関する研究会」

厚生労働省「医療介護総合確保推進法(介護部分)の概要について」

地域包括ケアシステムを構成する5つの要素

地域包括ケアシステムは、以下の5つで構成されます。

医療

かかりつけ医や地域の連携病院、その他急性期・亜急性期・回復期リハビリテーション病院などが含まれ、日常的な医療をかかりつけ医や連携病院が行い、体調不要や病気になった際の入院を病院が対応するイメージです。

このように日常的な診察と緊急性の高い医療ケアを連携させ、お互いに情報共有を行うことで、在宅での生活から入院、退院後の在宅での生活などの切り替えに対しても素早く対応できます。

介護

介護サービスは在宅系サービス・施設系サービスの2つに分かれます。

在宅系サービスは、訪問介護・訪問看護など在宅での生活での支援を受けるために利用するサービスです。

一方で施設系サービスは、特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護療養型医療施設などの施設以外に、小規模多機能型居宅介護のような地域密着型サービスもあります。

住まい

自宅や各介護施設など、人生の最期を迎える場所が住まいです。

この住まいには、ただ単に住宅を提供するだけでなく、賃貸住宅に居住する際に必要になる保証人の確保などといった手続き関連の支援も地域包括ケアシステムに含まれています。

介護予防

介護予防の項目は地域包括ケアシステムにおいて重要なポイントです。

高齢者の自立を促し、健康な状態を維持することで、高齢者が要介助状態になるリスクを減らし、少しでも長く自宅での生活を継続できるように取り組みます。

具体的な内容としては、自治体が主体となって行う介護予防サービスなどがあり、要支援1・2の方でも快適に日常生活を送れるような体制を構築するために進められています。

生活支援

自治体・老人会・ボランティア・NPO法人などが主体になって、カフェやサロンの開催・運営を行うだけでなく、配食・買い物支援・見守り・安否確認などのサービスがあります。

このような生活支援を積極的に行うことで、高齢者の方々が日々を元気に暮らすことができます。

実際、最近では地域住民が主体となって生活支援の取り組みを実施している自治体も多くあります。

参考:厚生労働省「地域包括ケアシステムの5つの構成要素と「自助・互助・共助・公助」

地域包括ケアシステムが機能するために重要な「4つの助」

地域包括ケアシステムがしっかりと機能するためには、上記の5つの要素に加え、以下の4つの「助」の力を連携させることが重要です。

自助

自分で自分を助けることです。住み慣れた地域で最期まで生活を続けるためには、自分自身で健康に注意して、介護予防活動を積極的に行うことが重要です。

具体的な内容としては、検診を受ける・他者との交流を積極的にするなど自分自身をケアする行動になります。

互助

家族・友人・クラブ活動仲間など親しい間柄や知り合い同士で助け合って問題を解決することです。

互助はあくまで自主的な支え合いであるため、費用の負担や人員の配置などに関する制度ではなく、公的な制度にのっとらないプライベートな助け合いの仕組みです。

共助

介護保険・医療保険サービスといった制度に基づくサービスです。共助は互助とは異なり、医療・年金・介護保険・社会保険制度など必ず制度化されたものです。

公助

自助・互助・共助では対応することが難しい生活困窮者の支援を目的として、行政が主導する生活保障制度や社会福祉制度のことをいいます。

公助は税による負担で成立しており、生活保護だけでなく人権擁護や虐待対策などの取り組みも行われます。

参考:板橋区「「自助・互助・共助・公助」からみた地域包括ケアシステム」

地域包括ケアシステムの事例

全国で5,000ヵ所以上に地域包括支援センターが設置されており、多くの事例があります。そのため、厚生労働省は全国の市区町村で行われている地域包括ケアシステム構築の具体的な取り組み事例をまとめています。

ここではその中から、いくつかの事例を紹介します。

参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム構築に関する事例集」

大阪府大阪市

NPO法人が中心となって、高齢者支援・地域交流支援・子育て支援・障害者支援など多くの方に対して包括的なサービスを実施しており、その利用者数は約600名で従事者は約100名と大規模です。

このNPO法人は、親の介護に関する悩みを抱える50代の主婦が集まって結成されたため、自分たちが経験した悩みをお互いに出し合うことでサービス内容を正確に把握した結果、ヘルパー派遣・デイサービス・ケアプラン事業所・配食サービス・コミュニティ喫茶など多様なサービスが展開されました。

それと並行して、見守りサービス・たすけあい活動・各種行事などの制度に関係ない活動を行うなど、「公助」や「介助」と「自助」のすみ分けやそれらの共存もみられます。

参考:厚生労働省「NPO 法人による自主サービスと公的サービスの一体的提供」

熊本県上天草市

熊本県上天草市は、高齢化率50%と非常に高齢化率が高いにも関わらず、離島という地理条件の悪さから介護サービス事業所がありませんでした。

しかし、長く生活したこの島に住み続けたいという高齢者の希望も強かったため、離島における在宅生活の基盤づくりが推進されました。

具体的には、島内の婦人会・老人会・民生委員などによる住民主体の検討委員会の設置、全島民を対象にした聞き取り調査による現状の把握・分析を行った結果、65歳以上の単身世帯に、緊急通報システムを導入し見守り体制を強化しました。それと合わせて、地区内で11名のヘルパーを養成し、介護予防事業を実施しています。今度は、このような体制を整えつつ、介護サービス事業所の開所が目標です。

参考:厚生労働省「離島における在宅生活の基盤づくり」

新潟県長岡市

地域において完結する支援体制の構築として、長岡駅を中心としたエリアに13ヵ所のサポートセンターを設置し、医療・介護・予防・生活支援・住まいの5要素全てをカバーできる一体的なサービスを提供するという取り組みが実施されました。

また地元町内会と事業所が連携し、小規模多機能型居宅介護事業所を町内の祭りの休憩場所に提供するなど工夫して地域住民との交流を深めた結果、協力体制の構築に成功しました。

参考:厚生労働省「小地域での医療・介護・予防・生活支援・住まいの一体的な提供に関する取組」

東京都世田谷区

都市型の地域包括ケアシステムの事例です。世田谷区は独自に全高齢者実態把握調査を実施したところ、一人暮らしまたは高齢者のみの世帯が約半数を超えていることが分かりました。

その結果、「住み慣れた地域で、いつまでも安心して暮らし続けられる地域社会の実現」を基本理念に医療・介護・予防・住まい・生活支援の5つの要素をバランスよく取り込み、それぞれの連携を強化しました。

その中でも医療分野では、在宅医療の充実に向けた体制作りとして、ケアマネージャーと医師で構成する協議会を発足させるなど、連携強化に努めています。

参考:厚生労働省「都市部の世田谷らしい地域包括ケアシステムの構築」

大分県竹田市

竹田市は40.5%と全国平均を大幅に超える高齢化率となっていることから、取り組みとして介護予防の推進に特化するため、介護保険外のサービスを利用して、高齢者が自立した生活ができる支援の構築を目指しました。

具体的な内容としては、暮らしのサポートセンター・久住「りんどう」を立ち上げてさまざまな通所型の予防サービスを展開しています。

介護予防事業により自立度が高まった高齢者は介護予防事業や生活支援サービスの新たな担い手となる循環を目標としており、皆が「支援者」であり「利用者」でもあるという考えのもとシステムを構築しています。

参考:厚生労働省「介護保険外のサービスの開発とそれを活用した介護予防と自立生活支援」

千葉県柏市

在宅医療と介護の連携を強化するために、ICTを利用した情報共有システムが導入されました。

システムの内容は、在宅療養中の患者を支援する医療・介護専門職が、患者さんに関する情報をパソコンなどを通じて随時更新・閲覧できるよう設計されています。また、文字の情報だけでなく、画像・動画の添付も可能なため、多職種によるリアルタイムの情報共有を実現しています。

参考:厚生労働省「平成 27 年度厚生労働省委託事業地域における医療・介護の連携強化に関する調査研究」

地域包括ケアシステムのメリット

地域包括ケアシステムが構築されると下記のようなメリットがあります。

医療と介護の連携が強化される

今までは医療と介護はそれぞれ独立した事業で、連携体制が不十分だったため、柔軟なサービス提供が困難な状況がありました。

特に医療的な場面では、病院への入院がきっかけで自分の住み慣れた地域から離れてしまう場面も多くみられました。

しかし、病院などの医療機関に地域包括ケアシステムが機能することで、在宅医療と介護サービスが連携され一体的なサポートが可能となり、自宅にいながら医療と介護サポートの両方を受けることができます。

また、さまざまな職種が連携することで利用者だけでなく、介護者の負担軽減にもつながります。

認知症の程度にあわせた暮らしやサポートが可能に

認知症の利用者をご家族だけで介護していくのは困難ですが、地域包括ケアシステム構築の一環として推進されている「地域支援ネットワーク」を利用すれば「認知症サポーター」が増えていくことが予想されます。

「認知症サポーター」は、認知症への知識を持っており、地域や職域で認知症の人や家族に対してできる範囲で手助けをする応援者のため、認知症で困っていることがあれば手助けしてくれます。

また、認知症サポーターの増加と合わせて認知症介護者の情報交換や息抜きの場となる「認知症カフェ」も増加し、地域全体で認知症を支える体制が構築されるため、認知症を発症した高齢者の方でも住み慣れた地域・自宅での生活が可能です。

地域にあわせた介護サービスを提供できる

地域によって介護の実情が変わるため、どのような介護サービスが必要なのかはそれぞれ異なります。

しかし、地域包括ケアシステムによって、介護に対する施策が行政から自治体へと移行されることで、地域で暮らす高齢者のニーズや、高齢者を支える関係各所の実態に即した介護サービスを提供できるようになるため、地域で暮らす高齢者たちがより安心して生活できるようになると期待されています。

地域包括ケアシステムの課題

一方、地域包括ケアシステムには下記のような課題もあります。

浸透率が低い

現在、地域包括ケアシステムの認知度は低いため、この認知度をどのように向上させるかが大きな課題です。

利用者やご家族に知ってもらうのはもちろんですが、それ以外にも医療機関・介護事業所・地域住民への理解を求めることが重要です。

そのため、地域包括ケアシステムの目的や関連する事業所はそれぞれの役割を明確にした上で、地域全体でシステムを構築できるように今まで以上に連携する必要があります。

地域格差がある

地域の財政、高齢者人口、医療・介護従事者数などはそれぞれの地域によって異なります。そのため、今回紹介した事例は非常に参考にはなるものの、必ずしも全ての地域に当てはまるシステムとは限りません。

そのため、それぞれの地域の事例を参考にして、地域の自治体が主体となって各地域独自の体制を構築することが重要です。

まとめ:地域包括ケアシステムを実現させるために介護ソフトの導入検討も必要

地域包括ケアシステムは各自治体独自のシステムを構築することが重要ですが、そのためには、関連する事業所それぞれの情報を共有する必要があります。

ただ、高齢者は短期間で大きく身体状態が変化するため情報共有するのは簡単なことではありません。

そのような場合は、介護ソフトなどICTの導入を検討することで各事業所の情報も円滑に行えるため、今回をきっかけに介護ソフトの導入を一度ご検討ください。

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