高齢者や障害者など介護が必要な方にとって、自宅で自立した生活を送るためには居宅介護サービスの利用が重要です。
今回の記事では居宅介護の利用条件や、サービス内容、サービス提供時の注意点について詳しく解説していきます。
居宅介護とは「介護を受ける人が家に居ながらにして受けられる介護サービス」のことで、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスの1つです。
利用者の自宅に訪問し日常生活の支援をするサービスのためホームヘルプと呼ばれることもあります。
身体障害や知的障害、精神障害、難病患者や障害児を対象としており「障害を持っている人で支援が必要と考えられる人」であれば18歳未満の子どもでも受けられます。
居宅介護サービスには、以下のようなものがあげられます。
これらのサービスは、自宅などで生活する方に提供され、住み慣れた地域での生活を維持するための支援を行います。
また、居宅介護サービスは「介護給付」に位置づけられます。介護給付とは日常生活をサポートするためのサービスのことです。
介護給付では、原則として利用料の9割が支給され、残りの1割を自己負担します。利用料は、金銭で支給するのではなく、医療や施設利用、サービス提供などの現物支給で行われます。
居宅介護と居宅サービスは、制度の仕組みや主な対象者が違いますのでよく確認しましょう。
制度 | 主な対象者 | |
居宅介護 | 障害者支援法に基づく障害福祉サービス | 障害支援区分1以上の方 |
居宅サービス | 介護保険法に基づく訪問系の介護保健サービス | 要支援・要介護認定を受けた方 |
65歳以上で要支援・要介護認定を受けた方は、原則として介護保険サービス(居宅サービス)が優先されます。
しかし、高齢者、障害者の両方を支援する「共生型サービス」が生まれたため、居宅介護の利用者が65歳以上になっても同じ事業所を利用できる場合もあります。
居宅介護によく似た言葉で『居宅介護支援』という支援がありますが、全く異なる制度です。
居宅介護では、障害者が自宅での生活を充実させるための介護サービスで、日常生活の支援や身体介護が含まれます。
これに対して居宅介護支援はケアマネジメント支援の1つです。対象者は要介護1~5に認定された方です。
居宅介護支援では、要介護者が要介護度やニーズ、環境に応じた適切な支援を受け、自立した生活を自宅で送れるように、訪問介護や短期入所などの介護サービス受けるための手続きを代行する介護保険給付対象サービスです。
ケアマネージャーが利用者の状況に応じたケアプランを作成して、ケアマネージャーが介護サービス事業所や関係機関との連絡や調整を担います。
訪問介護は、自宅で暮らす利用者の生活を支援するため、介護福祉士やホームヘルパーなどの訪問介護員が、自宅を訪問し、身体介護や生活援助などの必要な支援を行う介護サービスです。
以下に違いをまとめましたのでご参照ください。
居宅介護 | 訪問介護 | |
根拠となる法律 | 障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス | 介護保険法の介護保健制度による介護サービス |
対象者 | 身体障害・精神障害・知的障害で障害支援区分1以上の人 (18歳未満の障害児も含む) |
|
サービス内容 | 移動や外出に関わる支援ができない。 (買い物代行はできるが、身体介護を伴う買い物同行はできない) | 移動や外出に関わる支援ができる。 (買い物代行、身体介護での買い物同行ができる) |
居宅介護の利用条件として挙げられるのは「要支援あるいは要介護状態にある人」で、年齢に制限はなく18歳未満であっても条件を満たせば利用することができます。
厚生労働省によると以下の通り条件が定められています。
障害支援区分が区分1以上である者。(障害児にあってはこれに相当する支援の度合いである者)
ただし、通院など介助(身体介護を伴う場合)を算定する場合にあっては、次のいずれにも該当する支援の度合いであること(障害児にあってはこれに相当する支援の度合いであること)
- 障害支援区分が区分2以上に該当していること。
- 障害支援区分の認定調査項目の内、次に掲げる状態のいずれか1つ以上に認定されていること
- 歩行:全面的な支援が必要
- 移乗:見守り等の支援が必要、部分的な支援が必要、全面的な支援が必要
- 移動:見守り等の支援が必要、部分的な支援が必要、全面的な支援が必要
- 排尿:部分的な支援が必要、全面的な支援が必要
- 排便:部分的な支援が必要、全面的な支援が必要
参考:厚生労働省「障害福祉サービスの内容 |厚生労働省 (mhlw.go.jp)」
また、要支援状態の利用者の相談窓口は地域包括ケアセンターが行い、ケアマネージャーが「3か月に1回以上」利用者の訪問を行いますが、要介護状態の利用者の場合は居宅介護支援事業者が相談業務を請け負い、ケアマネージャーが「1か月に1回以上」訪問するという違いがあります。
居宅介護の介護報酬は【サービスコード】×【地域単価】で計算することができます。
【サービスコード】身体介護、家事援助、通院等介助の1回分の単位数。
【地域単価】地域ごとの1単位の値段。
介護報酬は1単位=10円を基本としていますが、地域性や人件費割合などに応じて10~11.20円の8つに区分されます。
令和6年度~8年度まで適用される地域区分ごとの地域単価は以下の通りです。
地域区分 | 居宅介護 | 重度訪問介護 | 同行援護*¹ | 行動援護*² |
1級地 | 11.20円 | 11.20円 | 11.20円 | 11.20円 |
2級地 | 10.96円 | 10.96円 | 10.96円 | 10.96円 |
3級地 | 10.90円 | 10.90円 | 10.90円 | 10.90円 |
4級地 | 10.72円 | 10.72円 | 10.72円 | 10.72円 |
5級地 | 10.60円 | 10.60円 | 10.60円 | 10.60円 |
6級地 | 10.36円 | 10.36円 | 10.36円 | 10.36円 |
7級地 | 10.18円 | 10.18円 | 10.18円 | 10.18円 |
*¹同行援護:外出や移動時に、著しい困難がある視覚障害者の方に対して一緒に外出を行い介助や支援を行う。
*²行動援護:知的障害や精神障害の方を対象に外出や行動時の危険を回避したり、移動に対する支援やサポートを行う。
地域区分の詳細については、「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」より確認することができます。
要介護者や要支援者が、居宅介護サービスを利用するためには、居宅介護計画書を作成することが必須になります。
居宅介護計画書とは、要介護者やその家族の状況やニーズを踏まえて、要介護者に対する支援の方法や課題、提供する介護サービスの目標や内容をまとめた計画書です。
居宅介護計画書には、以下のような内容を記載します。
作成した居宅介護計画書に基づき、サービス提供をしていきます。サービスの内容など、変更が生じた場合には再作成します。
定められたフォーマットはなく、事業所独自の書式でかまいません。作成後は居住地の役所に提出します。
具体的な提出先や、提出方法は自治体によって異なります。郵送や窓口への提出だけでなく、オンライン申請が可能な自治体もありますので、予め確認しましょう。
参考:渋谷区「居宅サービス計画の届出・介護サービス計画等作成資料の提示申請 | 介護 | 渋谷区ポータル (city.shibuya.tokyo.jp)」
居宅介護では、基本的にホームヘルパーが自宅へ向かい、身体介護や家事援助などの生活のサポートを行ったり、必要時には通院等への介助を行ったりします。
サービス内容は以下の3つです。
訪問介護、訪問看護、訪問入浴などを各家庭で提供します。主となる介護者の負担を軽減するために使われます。
あくまでも要介護者に向けたサービスのため、同居家族への家事などを行うことはできません。
専門施設に通って介護やリハビリテーションを提供します。それと同時に、家に引きこもりがちな要介護者の方に外出の機会を与えたり、他者との交流を持たせたりすることで人間関係を広げることにも繋がります。
30日以内を前提に、要介護者が専門施設に宿泊しながら介護や生活支援サービスが提供され「ショートステイ」とも呼ばれます。主となる介護者の入院時や冠婚葬祭の際に利用されることが多いです。
居宅介護を開始するにあたって、制度上の注意点が6つありますので、順番に見ていきましょう。
居宅介護での外出支援は、通院、選挙、官公署への公的手続き、障害福祉サービスの指定相談支援事業所へ相談に行く、といった公的機関への外出をサービス対象としています。
同行する際も公共交通機関を用い、ヘルパーが車を運転することはありません。
居宅介護の外出支援では趣味や旅行などの余暇活動を目的とした利用はできません。その場合は地域生活支援事業の移動支援を利用することになります。
原則、経済活動に関することは認められていません。自宅内での内職の支援についても認められません。
居宅介護の利用者の中には、2人体制での介助でないと対応できない場合もあります。
厚生労働省によると、2人介助の算定要件は以下の3つです。
見守り的援助とは「自立生活支援、重度化防止のための見守り的援助」といい、利用者の自立支援・ADL・IADL・QOL向上の観点から安全を確保しつつ、常に解除できる状態で見守りを行う身体介護サービスです。
障害福祉サービスの居宅介護にも見守り的援助が適用されるかどうかは、自治体の取り扱いによって異なりますので、確認しましょう。
障害者総合支援法と介護保険法のどちらでも提供されているサービスの場合、介護保険法に基づくサービスが優先されます。
そのため、居宅介護の利用者が65歳になった場合は、介護保険サービスに切り替わります。
障害者総合支援法に基づく居宅介護を受けている方は65歳になる年に、介護保険法にて判定される要介護認定・要支援認定を受ける必要があります。
居宅介護は見守りのみや利用者が外出している間の留守番などの行為はサービスとして認められていません。居宅介護では、サービス利用中に利用者には在宅してもらう必要があります。
デイサービスの通所時などに家事のサポートを行ったとしても介護報酬を算定できなくなるだけでなく、利用者とのトラブルになる可能性もあります。
利用者が外出したい場合には、サービス終了後に出かけるように促す、その時点でサービス提供を終了するなどの対応をしましょう。
今回は居宅介護について詳しく紹介しました。
居宅介護は、自宅で暮らす要介護者が自分らしく過ごしていくために必要なサービスです。また、日々の介護にあたる家族にとっても居宅介護は大きな支えとなるでしょう。
具体的なサービス内容や利用条件は自治体によっても異なりますので、詳細は各自治体に確認することをおすすめします。