重度訪問介護は、障害福祉制度のひとつで常時の介護が必要とする障害者にとってなくてはならないサービスです。
この記事では、重度訪問介護の仕事がきついと感じる時や反対にやりがいを感じる時をご紹介します。
「重度訪問介護に興味がある」「職場選びのポイントが知りたい」という方は是非お読みください。
目次
重度訪問介護の対象は18歳以上で重度の肢体不自由や知的障害の人、もしくは精神障害により常に介護が必要な人となります。
仕事内容は食事や入浴などの身体介護、家事援助や外出時の付き添い、生活相談など日常生活全般において多岐にわたります。
ヘルパーとして働くためには介護福祉士や実務者研修修了者など、条件がありますので確認が必要です。
参考:厚生労働省
重度訪問介護についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
重度訪問介護とは?仕事内容や必要な資格などについて徹底解説!
重度訪問介護の業務内容は生活全般にかかわる介護をおこなうだけでなく、長時間利用者宅に滞在して介助する場合があります。
仕事の内容をよく知らないままヘルパーとして働いた場合、思っていたのとは違ってきついと感じるかもしれません。
重度訪問介護の仕事がきついと感じる点は以下の通りです。
①24時間対応のため労働時間が不規則
②賃金が低い傾向にある
③求められる介護技術レベルが高い
④コミュニケーション面での負担
⑤医療ケアの実施を求められる場合がある
この5点について解説していきます。
重度訪問介護は利用者の日常生活を24時間体制で援助するため、シフト勤務で働くことが多くなります。
たとえば早番で働く場合は起床介助や朝食介助をおこない、遅出の場合は入浴介助や夕食介助、就寝前の排泄介助などが業務の中心です。
必然的に利用者の生活パターンにあわせて様々な援助をおこなうため、事業所では三交代勤務となり労働時間は不規則になってしまいます。
重度訪問介護は、身体介護や家事援助、外出時の介護などが区別されずに、総合的な支援をおこなうことが特徴として挙げられます。
そのため援助時間が長時間に及ぶことがあり、休憩が取れず緊張感が続くことでヘルパーの心身負担が増加することがあります。
介護のために長時間訪問しても、介護報酬は国が単価を設定していますので、事業所の収益が増えるわけではありません。
また従業員の給料は事業所で采配することができず、身体的な負担が増えたり労働時間が長くなったりしても賃金に反映されないのが現状といえます。
賃金が低いもう一つの要因は、利用者の体調不良や入所等によりサービスが中止となると、たちまち収入がなくなってしまうことです。
そのため多くの収入を確保しようと思えば、夜勤で働いたり管理職になるなど基本給以外に手当で稼がなくてはなりません。
そうなると通常のヘルパー業務以外にスキルアップや人材管理などさらに時間をかけて取り組む必要があります。
重度訪問介護を利用する人は、「歩行」「移乗」「排尿」「排便」の4動作において、全てなんらかの支援が必要な状態であると認定されています。
そのため、ヘルパーには食事や移乗などの基本介護技術に加えて、これら4動作に関する専門的かつ個別介護技術が必要とされ、即戦力となる技術を持ったヘルパーが求められます。
参考:東京都福祉保健局
コミュニケーションを図ることが難しい人は、必ずしも目や耳に障害をもつ人だけではありません。
高次脳機能障害といって会話の内容を理解することが難しい人や言語障害や失語など言葉を発することが困難な人もコミュニケーションに配慮が必要です。
ヘルパーはこちらの意図をどう伝えるのか、相手が何を言いたいのか、時間をかけて丁寧に対応することが重要となります。
重度訪問介護を利用する人の中には、ALS(筋萎縮性側索硬化症)や筋ジストロフィーといった難病の人、経管栄養や喀痰吸引など医療的ケアが常に必要な人がいます。
利用者の急な状態変化や病気に対して適切な対応をおこなったり、急な判断に迫られたりすることがあるので、経験が浅いヘルパーには精神的な負担を感じることがあります。
重度訪問介護で働くヘルパーは、日頃から介護や生活支援に関する知識だけでなく、病気や医療に関する幅広い知識や個々に合わせた技術を身につけておくことが重要です。
重度訪問介護はきついと感じることがある一方で、やりがいを感じることのできる仕事でもあります。
利用者によっては1回の援助時間が長時間になることがあり、ヘルパーが日中のほとんどを訪問先で過ごすことも珍しくありません。
ヘルパーと利用者の間で信頼関係ができると、利用者や家族にとってヘルパーは頼りになる存在になることは間違いありません。
なにより重度訪問介護は「利用者が自宅において生きがいをもって生活できるように支える」ということが使命であり、ここまで利用者の生活に深くかかわる介護サービスはほかにありません。
その一端を担っているという責任感は、大きなやりがいにもつながるのです。
参考:日本財団ジャーナル
重度訪問介護事業所でやりがいを感じながら自分らしく働くためには、選ぶ際のポイントをおさえておくことが大事です。
あまり情報を得ずに職場を決めてしまうと、働いてからきついと感じて仕事が長続きせず、結果として利用者に迷惑をかけてしまう事につながります。
重度訪問介護で働く時にきついと感じたり、給与面で待遇が低いと感じたりすることはあります。
職場選びのポイントは、事業所として現状と向き合い、従業員に対して待遇改善をどのように図っているかという事に注目すると良いでしょう。
事業所として加算を取得しているか、職員の処遇改善に独自に取り組んでいることがあるかを調べることも職場選びを失敗しない一つの方法です。
また、重度訪問介護事業所が加算を取得しているかどうかは、ホームページで公表することになっていますので、気になる事業所があれば一度情報収集することをおすすめします。
重度訪問介護事業所の設置には地域格差があり、サービスが行き届いている地域とそうでないところがあります。
事業所によっては利用したい人はたくさんいるのに、人手が少ないという理由でヘルパーひとりに残業や過大業務など多くの負担がかかっているケースもあります。
従業員数が確保されている事業所を選ぶメリットは、ヘルパーひとりにかかる負担を抑えられる点だけではありません。
例えば、自分が急に出勤できなくなった時に代替職員が対応してくれたり、家庭の事情に合わせて働く時間帯を選ぶことができます。
重度訪問介護の仕事は、利用者の「自宅で生活したい」という人として当たり前でかけがえのない望みを実現するために、障害福祉サービスの中でもっとも自分の経験やスキルを発揮できる仕事といっても過言ではありません。