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これからの障害者支援サービスとは?一人暮らしを希望する利用者の支援や退居後の相談等

2023-12-25

元山 ゆず香

監修者

介護福祉士

元山 ゆず香

大学を卒業後、特別養護老人ホームにて現場業務に従事。その後、福祉系大手企業に入社し、エリアマネージャーとして、施設介護事業・居宅介護事業・障害福祉サービス事業でのエリアマネジメント・行政対応を経験。また、法人本部に異動し教育部門・監査担当部門の部長を歴任。現在は全国の介護・障害福祉事業所の支援やセミナーの開催、DXO株式会社での介護関連事業の支援などを実施。

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2024年に実施される障害者総合支援法の改正では、障がい者の一人暮らし支援について大きく変化することが予測されています。特に、共同生活援助における一人暮らし支援の体制が変わるため、事業所運営に関わっている方は最新の動向について理解しておきましょう。

この記事では、障がい者の一人暮らし支援に関する実態と、これからの支援体制について解説します。この記事を読むことで、2024年以降の共同生活援助に関する変更点も理解できます。

一人暮らし障がい者の実態

平成25年度の内閣府の報告によると、身体障害者の10.9%、知的障害者の4.3%、精神障害者の17.9%が一人暮らしをしています。しかし、大多数の障がい者は家族との同居を選択しており、調査によると精神障害者の約75%は家族と生活していることがわかりました。

身体障害者の多くは、配偶者との共同生活を送っています。知的障害者は、一人暮らしや配偶者との生活が少なく、親や兄弟姉妹との同居が一般的です。

一方で、令和3年度に厚生労働省が実施した全国調査によると、グループホーム利用者約2,400人のうち「将来一人暮らしまたはパートナーと暮らしてみたい」と回答した者は約45%という結果も出ています。

これらの調査結果から、特にグループホームの利用者で一人暮らしを希望している障がい者が多いが、実際に一人暮らしができる障がい者の割合はかなり低いといえるでしょう。

参考:内閣府「平成25年版 障害者白書(概要)第1編 障害者の状況等(基礎的調査等より)」

参考:厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部「共同生活援助に係る報酬・基準について≪論点等≫」

なぜ障がい者の一人暮らしは困難なのか

障がい者の一人暮らしが困難な理由として、身体的・精神的な特性によって日常生活におけるさまざまな課題に直面する可能性の高さが挙げられます。

身体能力の制約によって、日常生活動作を安全に行えずに、一人暮らしができないこともあります。また、健康状態が安定しない場合も、一人暮らしによって健康を害するリスクが高くなるため危険です。日常の家事や移動が困難な場合、住環境の十分なバリアフリー化ができずに一人で暮らせないこともあります。

精神的な特性によって一人暮らしが困難になることもあるでしょう。例えば、頻繁にパニック発作を起こしてしまったり、トラブルが発生した際に助けを求められなかったりといった方は、一人暮らしによってケガや事故を起こすリスクも高くなります。

このように、障がいの特性によって解決すべき課題が多くなるため、一人暮らしができる障がい者は限られてしまうのです。

障がい者の一人暮らしに向けた準備

障がい者が一人暮らしをするためには、事前にさまざまな準備をしておく必要があります。ここでは、障がい者が一人暮らしをするために実施しておくべき準備について解説します。

緊急時の対処法を決めておく

障がい者が一人暮らしを始める前に、緊急時の対処法を決めておくことは非常に重要です。

昨今、地震などの災害が増えています。障がい者が一人暮らしをする場合、一般的な災害対策とは別に障がいの種類や度合いに応じた特別な対策を立てておくとよいでしょう。例えば、地震で窓ガラスが割れるリスクを減らすためにガラスフィルムを貼る、カーテンを閉めておくなどの対策が考えられます。

また、ヘルプカードを携帯することも重要です。ヘルプカードには住所、電話番号、障がいの種類・程度、周囲に求める対応などを記入しておき、外出中や災害時に周囲に助けを求める際に役立ちます。

非常事態の避難場所は、自宅近くの小・中学校が一般的です。しかし、災害時には通常のルートが使えない場合があるため、事前に複数の避難ルートや代替の避難場所を確認しておくとよいでしょう。

障がいがある場合、避難に時間が必要となる可能性が高いため、普段から準備しておくことが重要です。自宅待機が可能な備蓄の準備や、家の安全対策、非常用持ち出し袋の準備、避難経路や避難場所の確認などをしっかり行い、災害に備えましょう。

生活費の確保

障がい者が一人暮らしの生活費を確保するためには、さまざまな戦略が必要です。障がい者の一人暮らしは金銭的に厳しいため、節約を考える必要があるでしょう。さらに、障害年金の収入があっても、働くことが可能なら収入を増やすように計画を立てることも大切です。

例えば、厚生労働省の調査結果によると、知的障がい者本人の総支出額は、全体平均では月140,000円弱、家族同居の場合は142,580円、グループホーム入居の場合は94,823円、入所施設の場合は、89,789円となっています。障害年金を入れて、14万円以上を目安に収入を考えておくとよいでしょう。

しかし、家賃補助が受けられるグループホームを利用したり、格安の都営住宅に住んだりといった選択肢もあります。上記の金額は、あくまで目安としてお考えください。

これらのサービスが利用できない場合は、障害者雇用のサービスを利用して働くという選択肢もあります。

参考:厚生労働省 平成30年度障害者総合福祉推進事業「障害者の生活実態に関する調査方法に係る研究報告書」 

 

自立した日常生活が送れるようになる

一人暮らしを希望する障がい者は、一人で自立した日常生活を送れるようになっておく必要があります。

障がい者が一人暮らしをするためには、健常者に比べて多くの課題があり、さまざまなトラブルを想定して準備を進めなければいけません。特に服薬管理は大きな課題で、病院や施設では看護師が行っていた服薬管理を自分で行う必要があります。また、洗濯や掃除などの家事が自力で行えないことも想定されるでしょう。

家事も含めた日常生活動作のすべてを一人で行えれば問題ありませんが、一人で行えない方の場合は障害福祉サービスを活用する必要があります。例えば、自立生活援助というサービスがあります。自立生活援助とは、職員が定期的に訪問し、生活上の困りごとへの助言や情報提供を受けるサービスです。

日常生活動作のすべてを自力で行えるように準備を進めることが大切です。しかし、もし自力で日常生活動作が行えない場合は、障害福祉サービスの活用を検討しましょう。

家事ができるようになる

障がい者が一人暮らしをするためには、家事を一人で行えるかが重要なポイントになります。

一人暮らしでは、洗濯や部屋の掃除、毎日の食事の準備など、すべてを自分で行わなければいけません。これらの家事は、部屋を衛生的に保ち、心身の健康を維持するためにも必要です。しかし、障害があるとこれらすべての家事を自力で行うことが難しい場合もあります。仮に、家事を一人で行えない場合、自立生活援助を利用する方法もひとつの解決策となるでしょう。

家事動作は、障がい者の一人暮らし支援において重要なポイントです。一人暮らし支援を行う際には、家事訓練を積極的に行いましょう。しかし、障害の特性によっては、支援者の手を借りなければいけない場合もあります。その際には、自立生活援助などのサービスを活用する方法を検討するとよいでしょう。

2024年の制度改正と一人暮らし支援

2024年の制度改正により、一人暮らしを希望する障がい者への支援が強化されます。

厚生労働省は、共同生活援助から一人暮らしに移る障がい者への支援を拡大する計画です。具体的には、「移行支援住居」の新設や、退居後の定着を支えるための継続的なサポートが検討されています。

一人暮らしを望む人のみを受け入れる移行支援住居は、7人以下で構成され、一人暮らしに向けた計画的な支援が提供されます。サービス管理責任者は社会福祉士や精神保健福祉士が担い、ピアサポートによる支援が行われます。

さらに、国は既存のグループホームでの支援を強化し、新たな仕組みの創設を計画しています。退居後の相談にも応じる体制を整えることで、障がい者の一人暮らし支援体制を充実させていく予定です。

これらの改正により、障がい者が一人暮らしに移行するためのサポートが強化され、より多くの障がい者が自立した生活を送れるようになるでしょう。

一人暮らし障がい者の相談窓口

障がい者が一人暮らしを始めた後も継続的な支援が必要です。現在、一人暮らしを検討している障がい者や、すでに一人暮らしをしている障がい者の相談窓口が複数あります。ここでは、一人暮らし障がい者の相談窓口についていくつかご紹介します。

自治体の窓口

各自治体の福祉担当窓口では、障がい者の暮らしに関するお悩みや福祉サービスに関する一般的な相談に応じています。

仮に障がい者が一人暮らしをする際にトラブルが発生した場合、福祉担当窓口が具体的なサポート方法を案内することも可能です。

例えば、自立生活援助の利用について相談したり、移動支援サービスについて相談したりといった場合、制度の説明や専門機関の紹介などを行ってくれる可能性があるでしょう。

自治体の相談窓口の場合、障害福祉に関係することだけでなく、同じ施設内で生活に関連するさまざまな情報を教えてくれるメリットもあります。

基幹相談支援センター

基幹相談支援センターは、障がい者やその家族がサービスを選択する際の支援を目的とする施設です。

基幹相談支援センターでは、障害の種別や個々のニーズに対応するための専門知識を持ったスタッフが常駐しています。また、地域の関連施設と連携して対応してくれるため、相談から必要な支援までワンストップで行うことが可能です。

具体的なサービスとしては、福祉サービスの利用援助、社会資源の活用、ピアカウンセリング、権利擁護、専門機関への情報提供などがあり、これにより地域での生活を支援します。

特定相談支援事業所

特定相談支援事業所は、障がい者が一人暮らしを始める際に必要な支援を提供する施設です。

特定相談支援事業所では、基本相談支援として障がい者の日常生活に関する相談や福祉サービスに関する情報提供、サービス等利用計画の作成を行っています。

障がい者総合支援法に基づく福祉サービスを利用する際には、サービス等利用計画の作成が必要です。特定相談支援事業所では、相談や情報提供のみならず、サービス等利用計画作成まで行っている特徴があります。

 

一般相談支援事業所

一般相談支援事業所は、障がい者が地域生活にスムーズに移行するためのサポートを提供する施設です。

特に、病院や施設で暮らしていた方が、再び入院せずに地域での生活を続けることができるよう支援します。

具体的には、地域生活への移行支援や必要な障害福祉サービスの体験利用、宿泊体験の提案などが含まれます。

また、地域での生活を続ける中で生じる悩みや不安、心配事の解消に向けて総合的な支援を行います。

まとめ:障がい者の一人暮らし支援は強化されていく

この記事では、障がい者の一人暮らし支援について詳しく解説しました。

障がい者が一人暮らしをするためには、緊急時の対処方法や生活費の工面など、解決すべき課題がいくつかあります。それらの問題を解決するためには、自治体の相談窓口や基幹相談センターなどの相談窓口を活用するとよいでしょう。

厚生労働省の調査によると、多くの障害者が一人暮らしを希望している実態がある一方で、共同生活援助等での一人暮らし支援を十分に行えていない実態が明らかになりました。

これにより、2024年障害者総合支援法改正に伴い、共同生活援助での一人暮らし支援を強化する内容が検討中です。

一人暮らしを始めた障がい者をサポートする障害福祉サービスとして、日常生活自立支援支援事業や居宅介護などのサービスがあります。障がい者の能力や生活環境に応じて適切なサービスを利用するとよいでしょう。

将来的には、障がい者の一人暮らし支援体制は強化されていく傾向にあります。障がいを持っていても、理想的な生活を実現できる社会を目指して、制度の改正やサービスの整備が進められていくでしょう。

 

参考資料:

内閣府「平成25年版 障害者白書(概要)第1編 障害者の状況等(基礎的調査等より)」

厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部「共同生活援助に係る報酬・基準について≪論点等≫」

厚生労働省 平成30年度障害者総合福祉推進事業「障害者の生活実態に関する調査方法に係る研究報告書」

 

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