「家で家族の介護をしているけれど、いまいちやり方が不安」「家族で頑張って自宅介護をしているけれどそろそろ限界かも…」「最近病院に行くのがつらい」
このようなお悩みを抱えてはいませんか。
高齢化が進み、1人暮らしの患者さんが増える一方で家族の負担も増えています。
施設に入るというのもひとつの選択ですが、「できる限り住み慣れた家で過ごしたい」と考える人も多くいます。
しかし自宅で療養するということは、家族がいなければ難しく、家族がいて頑張って介護をしてくれたとしても、だんだんと衰えていく身体に疲弊してしまう方も多いのが現状です。
在宅で療養をされている方は、条件を満たしていれば居宅療養管理指導という制度が利用でき、自宅へ医師や薬剤師などが訪問することで医療的ケアを受けることができます。
今回の記事では、居宅療養管理指導とは何か、居宅療養管理指導を利用するための条件、居宅療養管理指導で受けられるサービス、居宅療養管理指導の費用などについて詳しく解説します。
目次
まずは、居宅療養管理指導とは何かを解説していきます。
居宅療養管理指導の定義は、厚生労働省により以下のように決められています。
要介護状態となった場合でも、利用者が可能な限り居宅で、有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、医師、歯科医師、薬剤師、管理栄養士又は歯科衛生士等が、通院が困難な利用者の居宅を訪問して、心身の 状況、置かれている環境等を把握し、それらを踏まえて療養上の管理及び指導を行うことにより、その者の療養生活 の質の向上を図るもの。
引用:厚生労働省
在宅で療養をしている要介護1以上と認定された患者さんが、通院が難しい場合に医師や薬剤師等が自宅を訪問して指導を受けることができるサービスです。
自宅で医療の専門家の指導を受けることができるため、通院する必要がなく利用者を家族の負担を軽減することができます。
医師や薬剤師以外にも管理栄養士、歯科衛生士などあらゆる医療職種の方の訪問が可能です。
また、要支援1、2と診断された方でも、介護予防居宅療養管理指導と呼ばれる似たサービスを利用することができます。
居宅療養管理指導の対象となるのは、要介護1以上に認定されており自力での通院が困難な場合です。
同居家族がおらず1人暮らしの患者さんも対象です。利用例としては以下のような場面が挙げられます。
・認知症で1人暮らしをしている母が、薬をきちんと飲めているか心配なとき
・父の足が弱ってきていて、薬をもらいに行くための通院が厳しい
・歯医者に行く元気はないけれど、入れ歯が合わなくなってきている気がする
居宅療養管理指導は、指導であり医療行為を受けることはできません。
居宅療養管理指導での訪問の目的は指導になるため、入浴や食事の介助や診察、傷の処置等の医療行為をしてもらえるのではなく、療養生活についてのアドバイスがもらえるサービスとなります。
例えば歯科衛生士の訪問で、歯磨きや入れ歯の洗浄の方法についてアドバイスをもらうことができますが、実際に歯磨きをしてもらったり入れ歯の洗浄はしてもらえない、ということです。
入浴などの介助を頼みたい時はケアマネージャーに相談して、訪問診療や訪問介護、訪問看護などのサービスを利用すると良いでしょう。
居宅療養管理指導を利用するには、医師や歯科医師の指示が必要になります。
看護師や薬剤師は医師の指示があってはじめて利用者の自宅を訪問し、指導を行うことが可能になります。
そのため、看護師やヘルパーが居宅療養管理指導が必要だと判断しても、看護師自身には利用を開始する権限はありません。
患者さん本人や家族が希望したときも同じで、必ず医師の指示が必要になるため注意が必要です。
居宅療養管理指導の算定要件としては、次の4つを挙げることができます。
①利用者が通院困難な状況であること
②利用者やその家族に療養上の指導を行っていること
③ケアマネージャーに対して、ケアプランの作成に必要な情報を提供していること
④ほかの介護サービス事業所への情報提供や助言を行っていること
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
居宅療養管理指導の算定要件を徹底紹介!費用や加算算定率はどのくらい?
「医療行為が受けられないなら、どんなメリットがあるの?」と感じる方も多いでしょう。
ここでは、居宅療養管理指導を利用するメリットについて解説をしていきます。
居宅療養管理指導を利用することで、通院の必要がなくなるため、患者さんと家族の負担を軽減することが可能です。
通院しなくても自宅にいながら療養生活に関するアドバイスを受けることができるのは、通院が困難な患者さんにとっては大きな負担軽減になると言えるでしょう。
居宅療養管理指導を利用することで、日常的な介護の疑問や不安を相談でき、アドバイスをもらうことが可能です。
通院しての診察は時間が限られているため、相談をしにくい方も多いかと思います。
居宅療養管理指導は、医療行為ではなく指導が目的の訪問であるため、介護の現場を見てもらいながら、アドバイスをしっかりもらうことができます。
居宅療養管理指導では、実際に患者さんの生活環境を専門職に見てもらうことにもなるため、新しく必要な介護用品やサービス等を案内してもらうことが可能です。
訪問したスタッフから、医師やケアマネージャーなどへ情報が共有されるため、患者さんの状態に合わせて必要なケアを随時更新していくことができます。
居宅療養管理指導で訪問ができる職種はさまざまです。
それぞれに専門があるため、もちろん指導の内容も変わってきます。
ここからは、職種ごとの指導の内容を紹介していきます。
医師の訪問では、診断されている病気に関する指導や居宅療養管理指導で入っている他の職種に向けての情報提供などが行われます。
それぞれの病気には特徴があるため、それに沿った介護の方法や療養環境の整え方などの指導を受けることができます。
また、他の職種が居宅療養管理指導を行う場合は医師の指示が必要になるため、他職種に向けての情報提供も含まれています。
医師による居宅療養管理指導には、居宅療養管理指導(Ⅰ)と(Ⅱ)があります。
居宅療養管理指導(Ⅰ)と(Ⅱ)の違いについてはこちらの記事を参考にしてください。
薬の専門家である薬剤師の訪問では、処方されている薬の管理方法や飲み方などのアドバイスを受けることができます。
高齢者の方は、段々と飲み込む機能が低下していき、錠剤や粉薬が飲み込みにくくなることがあるため、状態によって薬の形態を変えたり、とろみを加えるなどの工夫が必要になります。
医師と同じく、他の職種に薬に関する情報提供も行っています。
薬剤師による居宅療養管理指導については、こちらの記事を参考にしてください。
居宅療養管理指導における薬局の算定要件や点数を紹介!算定できない場合についても詳しく解説!
歯科衛生士の居宅療養管理指導では、歯磨きの指導や入れ歯の洗浄方法の指導を行います。
身体の筋肉が弱ってきたり認知症がある場合、歯磨きがしっかり行えない方も多く、虫歯や歯周病などの原因で歯が抜けてしまう原因となります。
入れ歯やブリッジの場合は不快感もあり食事が取りづらくなることにも繋がっていき、噛む力や飲み込む力が弱っていくという悪循環になってしまいます。
そのため、口内環境を良い状態で保つことはとても大切なことです。
管理栄養士による居宅療養管理指導では、食事に関する相談はもちろん、どういう食事が合っているかや使える宅配サービスの案内などを受けることができます。
居宅療養管理指導にかかる費用は職種ごとに異なるため、以下の表にまとめてみました。
居宅療養管理指導にかかる費用(自己負担額1割の場合)
単一建物居住者が 1人の場合 | 単一建物居住者が 2〜9人の場合 | 単一建物居住者が 10人以上の場合 | 利用回数の上限 | |
医師※ | 509円 | 485円 | 444円 | 月2回 |
歯科医師 | 509円 | 485円 | 444円 | 月2回 |
薬剤師(病院) | 560円 | 415円 | 379円 | 月2回 |
薬剤師(薬局) | 509円 | 377円 | 345円 | 月4回 |
歯科衛生士 | 356円 | 324円 | 296円 | 月4回 |
管理栄養士 | 539円 | 485円 | 444円 | 月2回 |
※医師は診療報酬の「在宅時医学総合管理料」又は「施設入居時等医学総合管理料」を算定する場合、金額が変わる場合があります。
※自己負担額1割の場合
参考:厚生労働省
職種ごとに利用できる回数に制限があるため、利用する頻度やタイミングが重要になります。
また、介護保険の負担額が2、3割と変わると負担金額が大きく変わってくるため、注意が必要です。
居宅療養管理指導に単位数については、こちらの記事を参考にしてください。
居宅療養管理指導の点数・単位数の算定方法まとめ!加算算定率はどのくらい?
他にも医療従事者が自宅に訪問してくれるサービスとして訪問介護や往診がありますが、居宅療養管理指導とどのような違いがあるのでしょうか。
居宅療養管理指導は、医療専門職が要介護1以上の認定を受けている患者さんが通院が難しい場合に、自宅を訪問して医療行為ではなく療養生活に関する指導を行うというサービスです。
重要なのは、医療行為は行えないということと、医師以外の職種は医師に指示がないと実施できないということです。
介護保険を使用するサービスであるため、ケアマネージャーも介入する必要があります。
往診は、患者や家族の求めに応じて医師が患者さんの自宅を訪問し、診察や投薬、治療等を行うサービスです。
居宅療養管理指導との違いは、診察等の医療行為が行われる点です。
また、あくまで往診は医師の不定期な訪問のことです。
急に体調が悪くなった時やいつもの通院ができない時に利用するもので、定期的な訪問は往診とは呼びません。
往診はケアマネージャーの介入がなくても利用することが可能です。
訪問診療は、往診と同様に医師が患者さんの自宅を訪問して診察などの医療行為を行います。
往診と異なる点は、定期的に受けられるという点です。
通院が困難な患者に対して、自宅を訪問して診察や投薬を行うことで、寝たきりの患者さんでも自宅にいながら質の高い医療を受けることができます。
高齢化が進むなかで、最後は自宅で過ごしたいと考える方が多く、病院のベッドも足りなくなることが予想されることから、現在注目されている医療サービスです。
訪問介護は、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、食事や排泄、入浴などの介助を行うサービスです。
看護師が訪問する場合は、訪問看護といい、薬の管理や傷の処置などをしてもらうことが可能です。
生活の介助は医療行為になるため、居宅療養管理指導では実際に食事の介助や傷の処置を行うことはできません。
居宅療養管理指導はあくまで、利用者が自宅でより良い療養生活が送れるようにアドバイスをするということが目的です。
まずは、担当の医師かケアマネージャーに通院が困難であることを伝え、居宅療養管理指導のサービスを利用を希望する旨を伝えましょう。
ケアマネージャーは、居宅療養管理指導が必要かどうかの判断をし医師に連絡、実際にサービスを行う事業所の選定を行います。
医師は、居宅療養管理指導の必要性を判断し、他の職種に対しての指示を出すことが可能です。
次に、ケアマネージャーが患者さんや家族、医師と相談しながらケアプランを作成していきます。
ケアプランには、利用する医療職や頻度、具体的にどのような指導が必要か記入します。
ケアマネージャーが居宅療養管理指導のサービスを提供している事業所を探してくれます。
選んでくれたサービスの内容や注意事項を確認したら契約に進みます。
契約ができたら、居宅療養管理指導のサービスを受けることが可能になります。
居宅療養管理指導についてまとめると
・要介護1以上に認定されている患者が、通院が困難な場合に利用できる
・医師の指示がないと利用できない
・医師や薬剤師、管理栄養士などが患者の自宅を訪問し、療養生活についての指導が受けられる
・医療行為は受けられない
今記事では居宅療養管理指導とは何か、利用するための条件、サービス内容、費用について紹介してきましたが、いかがだってでしょうか。
居宅療養管理指導は、自力での通院は困難ですが、訪問介護や訪問診療はまだ必要ないという段階でも利用しやすいサービスです。
自宅で療養する患者さんの数は増えており、居宅療養管理指導のサービスを利用する方も増えてきています。
是非、居宅療養管理指導の導入を検討してみてはいかがでしょうか。